産科患者の評価

執筆者:Jessian L. Muñoz, MD, PhD, MPH, Baylor College of Medicine
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2024年 7月 | 修正済み 2024年 8月
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理想的には,妊娠を計画している患者とそのパートナーは,プレコンセプション健診のために産科医の診察を受けるべきである。この健診時に,医師は妊娠前に講じることができる一般的な予防策を確認する。また,患者およびパートナー(またはドナー[提供精子を用いる場合でドナーの病歴が入手可能な場合])双方の病歴,妊娠・分娩歴,および家族歴も確認する。医師は,慢性疾患もしくは薬剤の管理,または妊娠前のワクチン接種について患者に助言する。適切であれば,患者とパートナーを遺伝カウンセリングに紹介する。

プレコンセプションケアの一環として,医師は妊娠を計画しているか妊娠する可能性のある全ての女性に葉酸400~800μg(0.4~0.8mg)を含むビタミンを1日1回服用するよう助言すべきである(1)。葉酸は神経管閉鎖不全のリスクを減少させる。神経管閉鎖不全の胎児または乳児をもったことのある女性の場合は,推奨1日量は,4000μg(4mg)である。

妊娠したら,妊娠をモニタリングし,母体または胎児の合併症を検出または予防するために,女性はルーチンの出生前ケアを受けるべきである。また,疾患の症状と徴候がないかをモニタリングして評価するために,1~4週間毎の健診が必要とされる。

妊婦における具体的な産科疾患および産科以外の疾患については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

ルーチンに行う妊婦健診は,初回を妊娠6~8週とすべきである。

フォローアップの健診は通常,以下のタイミングで行う:

  • 妊娠28週までは約4週毎

  • 28~36週は2週毎

  • 36週~分娩までは毎週

産科合併症のリスクが高い場合は,妊婦健診をより頻回に予定する場合がある。

出生前ケアには以下のものが含まれる:

  • 身体疾患全般,感染症,および精神疾患のスクリーニングおよび管理

  • 健康の社会的決定因子のスクリーニング

  • 産科疾患の既往に関する話し合い(例,妊娠糖尿病,妊娠高血圧腎症,早産)

  • 胎児の染色体異常症のスクリーニングの提案

  • 胎児および母体のリスクを低減させる対策の実行

  • 新たな母体疾患または産科合併症がないかのモニタリング

  • 胎児の成長および発育のモニタリング

  • 健康増進および患者教育

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総論の参考文献

  1. 1.US Preventive Services Task Force: Final Recommendation Statement, Folic Acid Supplementation to Prevent Neural Tube Defects: Preventive Medication, August 01, 2023

産科患者の病歴聴取

初診時に,以下を含めた完全な病歴を聴取すべきである:

  • 母体および胎児の合併症(例,妊娠糖尿病,妊娠高血圧腎症,先天性形成異常,死産)など,これまでの全妊娠の転帰を含む妊娠・分娩歴

  • 病歴(手術歴および精神疾患の病歴を含む)

  • 家族歴(可能性のある遺伝性疾患を同定するため)

  • 薬剤(OTC医薬品を含む),サプリメント,違法薬物の使用,および毒性物質への曝露の可能性

  • 健康の社会的決定因子

  • 妊娠合併症の危険因子

初回およびそれ以降の健診時に,妊娠合併症の可能性のある症状(例,性器出血,液体の漏出,骨盤痛または腹痛,頭痛,視覚の変化,顔面や手指の浮腫,胎動の頻度や強度の変化)について患者に尋ねるべきである。

経妊回数および経産回数

基本的な妊娠・分娩歴を特定の形式で記録し,経妊回数および経産回数を記載する。

経妊回数(G)は確認された妊娠の回数のことである;経妊婦とは妊娠を1回以上経験したことがある人を指す用語である。

経産回数(P)とは妊娠20週以降の分娩回数のことである。他の妊娠転帰とともに経産に関する数字を記録する:

多胎妊娠の場合,経妊回数および経産回数のいずれも1回と数えるが,生存児は例外とする(例,単胎妊娠1回と双胎妊娠1回の経験がある女性で,全員が生存児である場合,生存児は3と記載する)。

この記録形式では,以下のように数字を記録する:

  • G(経妊回数)P(経産回数;4つの数字で満期産,早産,流産,および生存児について記載)

例えば,満期産を1回,32週での双子の分娩を1回,自然流産を1回,および異所性妊娠を1回経験したことがある患者の妊娠・分娩歴は,G4 P1-1-2-3と記録する。

産科患者の身体診察

血圧,身長および体重を含めて,最初に十分な全身状態の観察を行う。妊婦健診毎に血圧および体重を測定すべきである。尿検体を採取し,試験紙でタンパク尿および感染の所見がないか確認する。

初回の産科診察では,以下を目的として完全な内診を行う:

  • 子宮の大きさに基づいて在胎期間を推定する

  • 子宮の異常(例,平滑筋腫)または圧痛がないかを調べる

  • 病変,分泌物,または出血がないかを調べる

  • 検査のための子宮頸部検体を得る

内診は通常,症状(例,性器出血または帯下,骨盤痛)がある場合にのみ繰り返す。子宮頸管の開大および展退を確認するために,子宮頸管の無菌的な指診を約37週から開始することがある。

身体診察で在胎期間を推定することができるが,これらの推定値は不正確であるため,最終月経および超音波測定値に基づいて分娩予定日を決定すべきである。通常のアプローチは以下の通りである:

  • 12週未満:双合診での子宮の大きさに基づいて在胎期間を推定する。従来から,一般的な指針では,子宮は妊娠6週では小さなオレンジ,8週では大きなオレンジ,12週ではグレープフルーツのように感じられるとされている(1);正確性は臨床経験とともに向上する可能性がある。

  • 12週:恥骨結合の高さで子宮底を触知できる。

  • 16週:子宮底が恥骨結合と臍の高さの中間に位置する。

  • 20週:子宮底が臍の高さに位置する。

  • 20週以降:恥骨結合から子宮底までの測定値(cm)が在胎期間とほぼ相関する。

子宮平滑筋腫または多胎妊娠など,子宮がさらに増大する理由がある場合,在胎期間を推定するための身体診察は正確ではない。

第3トリメスター後半には,母体の腹部触診により胎位を評価し,胎児の体重を推定する(レオポルド手技の図を参照)。

従来,骨盤の大きさを推定し,骨盤のタイプ(女性型,男性型,類人猿型,または扁平型)を記載するために診察による骨盤計測が行われていたが,その目的は鉗子・吸引分娩または帝王切開の必要性を予測することであった。これは,内診,X線検査,CT,またはMRIによる骨盤入口の測定に基づいていた。しかしながら,診察による骨盤計測は分娩様式の予測において分娩を試すことよりも効果的であることが示されていないため,現在では臨床で用いられることはまれである(2)。

胎児の心拍数を健診のたびに測定する。

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身体診察に関する参考文献

  1. 1.Margulies R, Miller L.Fruit size as a model for teaching first trimester uterine sizing in bimanual examination. Obstet Gynecol.2001;98(2):341-344.doi:10.1016/s0029-7844(01)01406-5

  2. 2.Pattinson RC, Cuthbert A, Vannevel V: Pelvimetry for fetal cephalic presentations at or near term for deciding on mode of delivery. Cochrane Database Syst Rev.2017;3(3):CD000161.Published 2017 Mar 30.doi:10.1002/14651858.CD000161.pub2

妊娠の症状と徴候

妊娠によりエストロゲン(主に)とプロゲステロンの値が上昇するため,月経前の乳房腫大と同様に,乳房に腫大と軽度の圧痛が認められることがある。

受精の10日後より,エストロゲンおよび胎盤の合胞体細胞によるヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット(β-hCG)の分泌の増加により,悪心および嘔吐が生じることがある(受胎および出生前発育を参照)。卵巣の黄体は,β-hCGによって刺激され,大量のエストロゲンプロゲステロンを分泌し続けて妊娠を維持する。多くの妊婦がこの時期に疲労感を覚え,少数の妊婦では非常に早期から腹部膨満に気づくことがある。

女性は通常,16~20週に胎動を感じるようになる。

妊娠後期では,下肢に浮腫および静脈瘤がよくみられ,その主な原因は増大した子宮による下大静脈の圧迫である。

妊娠の診断

  • 尿中または血清β-hCG測定

通常は尿,およびときに血液検査を用いて妊娠を確定または除外する;月経予定日の数日前およびしばしば受胎の数日後という早期に行われても結果は典型的には正確である。

以下のような他の所見により妊娠を確定することもある:

  • 子宮内の胎嚢の存在,典型的には4~5週頃,血清β-hCG値が約1500mIU/mLとなる時期と一致して,超音波検査で認められる(卵黄嚢は通常5週までに胎嚢内に認められる)

  • 胎児の心拍動,早ければ5~6週に超音波検査で視認できる

  • 胎児心音,経腹的に子宮へ到達できれば,8~10週という早期から手持ち式のドプラ超音波装置で聴取できる

  • 胎動,20週以降診察する医師により触知される。

妊娠中の分娩予定日

分娩予定日(EDD)は最終月経(LMP)に基づいて算出される。EDDを算出する1つの方法として,LMPから3カ月を引き,7日を足すというものがある(ネーゲレ概算法)。その他の方法としては以下のものがある:

  • 受胎日 + 266日

  • LMP + 280日(40週)(月経周期が規則的で,28日周期の女性)

  • LMP + 280日 +(周期の長さ – 28日)(月経周期が規則的で,長さが28日以外の女性)

予定日の3週間前または2週間後までの分娩は正常とみなされる。妊娠37週より前の分娩は早産とみなされ,42週を超えた分娩は過期産とみなされる。

月経が規則的である場合,月経歴はEDDを決定するのに比較的信頼できる方法の1つである。他の情報が不足している場合,第1トリメスターの超音波検査により,最も正確に在胎期間を推定できる。受胎日が不明で,月経周期が不規則である,またはそれに関する情報がない場合,超音波検査だけがEDDを推定する手がかりになることがある。

月経日による日付に確信がもてない場合は,最終月経に基づく在胎期間と現在の妊娠における最初の胎児超音波検査に基づく在胎期間を比べる。これらの在胎期間の推定が一致しない場合は,週数と不一致の程度に応じて,EDD(したがって推定在胎期間も)を変更することがある。American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)(Methods for Estimating Due Dateを参照)は,超音波検査の結果に基づく日付と月経日による日付の差が以下の場合,超音波検査の結果に基づく日付を用いることを推奨している:

  • 妊娠8週6日まで:> 5日

  • 妊娠9週~15週6日:> 7日

  • 妊娠16週~21週6日:> 10日

  • 妊娠22週~27週6日:> 14日

  • 妊娠28週以降:> 21日

月経日による日付と超音波検査による日付の照合は,現在の妊娠における最初の超音波検査後にのみ行い,それ以降の超音波検査に基づくEDDの変更は行わない。超音波検査による推定は妊娠の後半になると精度が低下するため,第2および第3トリメスターでの超音波検査結果を用いて推定在胎期間を変更することはまれであり,また,もし分娩予定日の変更を考慮する場合には,胎児超音波検査の専門医へのコンサルテーションを行うべきである。

産科患者における検査

臨床検査

出生前評価には,血液検査,尿検査,子宮頸部検体,超音波検査のほか,ときにその他の検査が含まれる。最初に十分な臨床検査を実施する;いくつかの検査は,フォローアップ健診時にも再度行われる(ルーチンの出生前評価スケジュールの表を参照)。

表&コラム
表&コラム

ルーチン検査では,貧血,タンパク尿,および胎児の発育または母体の健康に影響を及ぼす可能性のある感染症について評価する。妊娠20週前のタンパク尿は腎疾患を示唆する。妊娠20週以降のタンパク尿は妊娠高血圧腎症を示唆している可能性がある。妊娠期間中の尿培養において,コロニー数にかかわらずB群レンサ球菌(GBS)が検出された患者には(これは腟と直腸への大量の定着を示唆する),分娩時に抗菌薬の予防投与を行うべきである(1)。

血液型がRh陰性の女性ではRh(D)抗体産生リスクがあるため(過去にRh陽性の血液に曝露している場合),血液型および同種抗体を調べる。父親の血液型がRh陽性であれば,胎児もRh陽性である可能性があり,母体の抗Rh(D)抗体が胎盤を通過して胎児溶血性疾患を引き起こす可能性がある。妊婦ではRh(D)抗体価を初回の妊婦健診時に測定し,血液型がRh陰性の場合は,約28週時に再度測定すべきである。

一般に,妊婦には24~28週の間に,経口ブドウ糖負荷試験を用いて,妊娠糖尿病に対するスクリーニングをルーチンに行う。ただし,2型糖尿病と診断はされていないがその重大な危険因子を妊婦が有する場合には,第1トリメスターに随時または空腹時血清血糖値およびHbA1Cによるスクリーニングを行う。このような危険因子としては,肥満と以下の因子のうち1つ以上を併せもつ場合が挙げられる(2):

  • 運動不足

  • 糖尿病を有する第1度近親者

  • リスク増加と関連している人種または民族(例,アフリカ系アメリカ人,ラテン系,アメリカ先住民,アジア系アメリカ人,太平洋諸島系)

  • 以前の妊娠における妊娠糖尿病または巨大児(体重4000g以上)

  • 高血圧(140/90mmHgまたは高血圧の治療中)

  • 高比重リポタンパク質コレステロール値 < 35mg/dL(0.90mmol/L)またはトリグリセリド値 > 250mg/dL(2.82mmol/L)

  • 多嚢胞性卵巣症候群

  • 過去の検査でのHbA1C ≥ 5.7%,耐糖能異常,または空腹時血糖異常(impaired fasting glucose)

  • インスリン抵抗性に関連する他の臨床状態(例,40kg/m2を超える妊娠前のBMI,黒色表皮腫)

  • 心血管疾患の既往

第1トリメスターの検査結果が正常であれば,24~28週に妊娠糖尿病のスクリーニングを行う。

出産予定のカップルのどちらかに既知または疑われる遺伝学的異常がある場合,そのカップルに遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査を紹介するべきである。妊婦には,胎児の染色体異数性に対する非侵襲的スクリーニングまたは診断検査の選択肢についてのカウンセリングも行うべきである。American College of Obstetricians and Gynecologistsは,ベースラインのリスクや母体年齢にかかわらず,全ての女性に対して非侵襲的出生前検査(NIPT)または細胞フリーDNA検査を含む診断検査を勧めることを推奨している(3)。

以下の1つ以上を認める女性では,甲状腺疾患のスクリーニングまたはそのモニタリングのために血液検査(甲状腺刺激ホルモン[TSH]の測定)を行う(4):

  • 症状またはその他の理由により臨床的な疑いがある場合

  • 甲状腺疾患または甲状腺疾患の家族歴

  • 1型糖尿病

病歴,危険因子,症状,および最近の曝露歴に応じて,他の疾患(例,鉛濃度,麻疹,細菌性腟症,ジカウイルス感染症,シャーガス病など)の評価を行う。

超音波検査

大部分の産科医が,各妊娠中に少なくとも1回の超音波検査を,理想的には16~20週に行うことを勧めている。分娩予定日(EDD)が不確かな場合,または患者に症状(例,性器出血,骨盤痛)がある場合は,より早期に超音波検査を行うことがある。

超音波検査具体的な適応としては以下のものがある:

  • 多胎妊娠,胞状奇胎異所性妊娠の検出

  • 胎児の異常(例,非侵襲的な母体スクリーニング検査の異常結果または推定在胎期間と一致しない子宮の大きさにより示される)に関する精査

  • 染色体異数性に対する非侵襲的なスクリーニング検査の一部としてのNT測定

  • 胎児の詳細な解剖学的評価(通常16~20週頃)

  • 先天性心疾患のリスクが高ければ(例,1型糖尿病または先天性心疾患の子供がいる女性),場合により20週で胎児心エコー検査

  • 胎盤の位置,羊水過多,または羊水過少の判定

  • 胎児の位置および大きさの判定

超音波検査はまた,絨毛採取羊水穿刺,および胎児輸血における針の誘導にも使用される。

超音波検査が第1トリメスターに必要になる場合(例,疼痛,出血,または妊娠の存続性を評価するため),経腟プローブを使用することで診断精度は最大となる;子宮内妊娠の証拠(胎嚢または胎児の極)は4~5週ほどで認められる可能性があり,7~8週時には症例の95%以上で認められる。胎児の動きおよび心拍動は5~6週ほどで超音波検査で直接的に観察できる。

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その他の画像検査

X線や他の画像検査が医学的に必要であれば,妊娠により延期すべきではない。しかしながら,腹部の待機的X線は分娩後まで延期する。

画像検査による胎児の電離放射線への曝露のリスクは,在胎期間と放射線量に依存する。様々な在胎期間における影響および閾線量は以下の通りである(5):

  • 2~3週(受精から着床まで):胚の死亡または影響なし(50~100ミリグレイ[mGy])

  • 4~10週(器官形成期):先天異常(200mGy);発育不全(200~250mGy)

  • 8~15週:重度の知的障害のリスクが高い(60~310mGy);小頭症(200mGy)

  • 16~25週:重度の知的障害のリスクは低い(250~280mGy)

画像検査は胎児への放射線量によって以下のように分類できる(5):

  • 極めて低線量(0.1mGy未満):頭頸部または四肢のX線またはCT;胸部X線

  • 低~中線量(0.1~10mGy):腹部または脊椎のX線;静脈性腎盂造影;二重造影法による下部消化管造影;胸部CT;核医学検査(例,低線量のシンチグラフィーまたは血管造影)

  • 高線量(10~50mGy):腹部または骨盤CT

したがって,妊娠可能年齢の女性には,X線またはCTを施行する前に現在の妊娠の可能性について尋ねるべきである(また,適応があれば妊娠検査を行うべきである)。腹部または骨盤CTは,診断上の特別な適応に対して標準かつ最も効果的な画像検査法である場合,ときに妊娠中にも用いられる。この場合,患者にリスクと便益についてカウンセリングを行い,インフォームド・コンセントを取得すべきである。

MRIは放射線を放出しないものであり,妊娠に関連するリスクの懸念なく,妊娠期間を通して用いられることがある。

さらに,画像検査の質を向上させるために造影剤がしばしば使用される。CT用造影剤と催奇形作用との関連は認められていない。一方で,MRIで一般的に使用されるガドリニウム含有造影剤については,催奇形性を示唆する動物モデルのデータに基づく議論があるが,これはヒトでは確認されていない。したがって,MRIにおける造影剤の使用は,臨床管理の変更の可能性がある場合や,妊婦の生命を脅かす状態と考えられる場合など,特定の状況に限定される(5)。

検査に関する参考文献

  1. 1. American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): Prevention of Group B Streptococcal Early-Onset Disease in Newborns: ACOG Committee Opinion, Number 797 [published correction appears in Obstet Gynecol. 2020 Apr;135(4):978-979]. Obstet Gynecol.2020;135(2):e51-e72.doi:10.1097/AOG.0000000000003668

  2. 2.ACOG Committee on Practice Bulletins: ACOG Practice Bulletin No. 190: Gestational Diabetes Mellitus. Obstet Gynecol.2018;131(2):e49-e64.doi:10.1097/AOG.0000000000002501

  3. 3.ACOG Committee on Practice Bulletins—Obstetrics; Committee on Genetics; Society for Maternal-Fetal Medicine: Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol.2020;136(4):e48-e69.doi:10.1097/AOG.0000000000004084

  4. 4.ACOG Committee on Practice Bulletins—Obstetrics: Thyroid Disease in Pregnancy: ACOG Practice Bulletin, Number 223. Obstet Gynecol.2020;135(6):e261-e274.doi:10.1097/AOG.0000000000003893

  5. 5.ACOG Committee on Obstetric Practice: Opinion No. 723: Guidelines for Diagnostic Imaging During Pregnancy and Lactation [published correction appears in Obstet Gynecol. 2018 Sep; 132(3):786. doi: 10.1097/AOG.0000000000002858]. Obstet Gynecol.2017 (reaffirmed 2021);130(4):e210-e216.doi:10.1097/AOG.0000000000002355

産科患者の管理

既存の母体疾患や産科合併症の危険因子,または妊娠中にみられる母体や胎児の問題は,必要に応じて管理する。出生前ケアには,健康増進に関するカウンセリングのほか,陣痛,分娩,および新生児ケアに向けて準備を整えるための予予備的ガイダンス(anticipatory guidance)も含める。カップルに母親教室への参加を勧める。

ハイリスク妊娠には,綿密なモニタリング,専門的なケア,および集学的医療チームのほか,ときに周産期センターへの紹介が必要である。周産期センターでは,母体・胎児・新生児の専門家により,基本診療に加え,より専門性の高い診療が行われる。妊娠期間を通じた綿密なモニタリングには,慢性疾患の管理,ならびに妊婦健診,血液検査,超音波検査およびその他の胎児モニタリングをより頻回に行うことが含まれる場合がある。妊婦やその家族とのコミュニケーションは,妊婦を共有意思決定(shared decision-making)に関与させ,ケア計画を作成し,心理的支援を提供する上で不可欠である。

評価を必要とする症状

妊娠による正常な変化,感覚,および胎動のほか,食事,体重増加,精神状態,推奨される予防策,ならびに健康増進について患者にカウンセリングを行う。また,産科医に連絡すべき懸念される症状についても患者にカウンセリングを行い,そのような症状としては例えば性器出血,持続する子宮収縮,液体の漏出,発熱,排尿困難,頻尿,尿意切迫,胎動の減少,持続する重度の痛み(頭痛,骨盤痛,腹痛,背部痛,腓腹部の痛み),失神またはめまい,息切れ,顔や手の浮腫または腓腹部の非対称性の浮腫,視覚の変化などがある。

急速な分娩の既往がある経産婦は,分娩の最初の症状が起きた時点で医師に知らせるべきである。

食事および栄養補助食品

BMI(body mass index)が正常範囲内で妊娠した場合の,胎児に栄養を供給するために追加で必要となるカロリーの平均量は,トリメスターによって異なる:第1トリメスターではカロリーの追加は必要ないが,第2トリメスターでは1日当たり約340kcalの追加,第3トリメスターでは1日当たり約450kcalの追加が必要となる。Eat Healthy During Pregnancy: Quick Tipsを参照のこと。カロリーの大半はタンパク質由来であるべきである。母体の体重増加が過度(初期に > 1.4kg/月),または不十分(< 0.9kg/月)な場合,食事をさらに調整する必要がある。

予防として,全ての妊婦および妊娠を計画しているか妊娠する可能性のある女性は葉酸を0.4~0.8mg,1日1回経口で補充すべきである(1)。二分脊椎の胎児をもった経験のある妊婦は,受胎の3カ月前から妊娠12週まで継続して葉酸を4mg,1日1回服用すべきである(2)。

妊婦用ビタミン剤の大半には,妊娠中の1日当たり推奨量の二価鉄(27mg)が含まれている(3)。鉄欠乏性貧血の患者では,より高用量が必要である(例,硫酸鉄325mg[元素鉄65mg])。鉄剤は通常毎日服用するが,消化管への厄介な影響,特に便秘がある患者では,1日おきに服用してもよい。

妊婦はまた,以下のような水銀濃度の高い特定の魚介類およびListeriaによる汚染のリスクが高い食品の摂取を避けるなど,食品の安全な取り扱いについてのカウンセリングも受けるべきである:

  • 生または加熱不十分な魚,貝類・甲殻類,肉,鶏肉,または卵

  • 無殺菌のジュース,牛乳,またはチーズ

  • ランチョンミートまたはデリミート,燻製魚介類,およびホットドッグ(湯気が出るほどの高温にまで加熱されたものを除く)

  • ハムサラダ,鶏肉のサラダ,またはツナサラダなどの,調理済みの肉やシーフードのサラダ

  • アルファルファ,クローバー,ラディッシュ,リョクトウなどの生のスプラウト

体重増加

妊婦には運動や食事についてカウンセリングを行い,体重増加についてはInstitute of Medicineのガイドライン(妊娠前のBMIに基づくもの―妊娠中の体重増加に関するガイドラインの表を参照)に従うよう助言するべきである。妊娠中の減量ダイエットは,たとえ重度肥満の妊婦であっても推奨しない。

表&コラム
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運動

妊娠中の運動はリスクも最小であり,大半の妊婦に対して,体力の維持または改善,妊娠中の体重増加のコントロール,腰痛の軽減,および可能性として妊娠糖尿病または妊娠高血圧腎症の発生リスク低下などの便益があることが実証されている(4)。中等度の運動は不良な妊娠転帰の直接の原因ではない;ただし,妊婦では関節損傷,転倒,および腹部外傷のリスクがより高い可能性がある。腹部外傷は常位胎盤早期剥離を引き起こすことがあり,これにより胎児の罹病または死亡につながる可能性がある。

性行為は,性器出血,骨盤痛もしくは腟痛,帯下,羊水の漏出,または子宮の収縮が起こらない限り,妊娠中を通じて続けることができる。

薬剤,物質使用,および毒性物質への曝露

医師は妊娠中の薬物安全性の確保に取り組み,その観点から患者の薬剤および栄養補助食品を精査して,中止,調節,または変更が必要な薬剤または栄養補助食品があるかどうかを判断すべきである。

少量のカフェイン摂取(例,1日1杯のコーヒー)は,胎児にほとんどまたは全くリスクをもたらさないと考えられる。

妊婦はアルコール,タバコ(そして,受動喫煙も避けるべきである),大麻,および違法薬物を使用すべきでない。物質使用症の患者は,産科医,依存症専門医,小児科医を含む,適切な専門知識を有する集学的チームが管理すべきである。

妊婦は以下も避けるべきである:

  • ネコのトイレの素手での処理(トキソプラズマ症のリスクのため)

  • 長時間の体温上昇(例,温水浴槽やサウナ)

  • 活動期のウイルス感染(例,風疹伝染性紅斑[リンゴ病],水痘)患者への曝露

環境中の毒性物質への妊娠中の曝露は,不妊,流産,早産,低出生体重,神経発達遅滞,小児がんなど,生殖および児の発達における不良転帰との関連が報告されている(5)。不良転帰のリスクは,毒性物質および曝露の程度に依存する。産科医は,病歴聴取の一環として環境面からみた健康状態についての質問を含めるべきである。

患者には,鉛,殺虫剤,溶剤,フタル酸エステルなどの特定の物質への曝露を回避または最小限に抑えるよう助言すべきである。妊娠中に使用する個人的なケア製品は,フタル酸エステル,パラベン,オキシベンゾン,トリクロサンを含有しないものとすべきである。「無香料(fragrance-free)」と表示された化粧品および個人的なケア製品は,「無香性(unscented)」と表示されたものよりも毒性物質を含む可能性が低い。

予防接種

妊娠中のワクチンの接種は,妊娠していない女性と同様に妊婦においても効果的である。

風疹ワクチンまたは水痘ワクチンなどの生ウイルスワクチンは妊娠中に使用すべきではない。

American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)は,全ての妊婦または選択された妊婦に対して以下のワクチンを推奨している(ACOG: Maternal Immunizationを参照):

その他のワクチンは,妊婦または胎児が危険な感染症に曝露するリスクが有意に高い,および/または合併症のリスクが高い,かつワクチンによる有害作用のリスクが低い状況でのみ,使用すべきである。重度の肺炎球菌感染症のリスクが高い妊婦には,肺炎球菌ワクチン接種が推奨される。コレラA型肝炎B型肝炎麻疹,ムンプス,ペスト,ポリオ狂犬病チフス,および黄熱に対するワクチン接種は,感染のリスクが非常に高い場合,妊娠中に行ってもよい。

周産期合併症の予防

血液型がRh陰性の妊婦には,胎児や新生児に溶血性疾患を引き起こす可能性がある同種免疫を防ぐためにRho(D)免疫グロブリンを投与する。Rho(D)免疫グロブリンは,28週時点,胎児母体間出血を引き起こす可能性のあるあらゆるエピソードまたは手技の前,および分娩後に投与する。

妊娠高血圧腎症のリスクが高い妊婦には,予防のために低用量アスピリン(81mg/日)が推奨される。アスピリンの使用は,妊娠12~28週(理想的には16週より前)に開始し,分娩まで継続すべきである。

心理社会的問題

初回の妊婦健診時に抑うつおよび不安のスクリーニングを行い,第3トリメスターおよび分娩後にも繰り返すべきである。パートナーからの暴力についてもスクリーニングを行うべきである。

医療アクセスにおける障壁や支援または配慮を必要とする障壁(例,身体障害または認知障害,言語障壁,個人的な問題,家族の問題,社会的問題,宗教的問題,または経済的問題)について,患者に尋ねるべきである。医師は患者に情報を提供し,患者が利用可能な資源にアクセスできるよう支援すべきである。

旅行

妊娠中のいかなる時期においても,旅行に対する絶対的禁忌はない。妊婦は,妊娠期間および車種にかかわらず,シートベルトを装着すべきである。

飛行機での旅行は,大半の航空会社で妊娠36週までとされており,これはフライト中に陣痛が始まって分娩にいたるリスクがあるためである。

どのような旅行であれ,静脈うっ滞および血栓症の可能性を防ぐため,妊婦は定期的に両脚と両足首の屈伸運動を行うべきである。例えば,長時間のフライトでは,2~3時間毎に歩行またはストレッチをすべきである。症例によっては,医師が長時間の旅行のために血栓予防薬を推奨することもある。

治療に関する参考文献

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  2. 2.American College of Obstetricians and Gynecologists' Committee on Practice Bulletins: Practice Bulletin, Number 187, Neural Tube Defects. Obstet Gynecol.2017 (reaffirmed 2021);130(6):e279-e290.doi:10.1097/AOG.0000000000002412

  3. 3.American College of Obstetricians and Gynecologists' Committee on Practice Bulletins: Practice Bulletin, Number 233, Anemia in Pregnancy. Obstet Gynecol.2021;138(2):e55-e64.doi:10.1097/AOG.0000000000004477

  4. 4.Syed H, Slayman T, Thoma KD: ACOG Committee Opinion No. 804: Physical activity and exercise during pregnancy and the postpartum period.2020.PMID: 33481513.doi: 10.1097/AOG.0000000000004266

  5. 5.ACOG Committee on Obstetric Practice: Reducing Prenatal Exposure to Toxic Environmental Agents: ACOG Committee Opinion, Number 832. Obstet Gynecol.2021;138(1):e40-e54.doi:10.1097/AOG.0000000000004449

  6. 6.Committee Opinion No. 718: Update on Immunization and Pregnancy: Tetanus, Diphtheria, and Pertussis Vaccination. Obstet Gynecol.2017;130(3):e153-e157.doi:10.1097/AOG.0000000000002301

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