大規模予防接種の導入により,ポリオは世界的にほぼ根絶された。ただし,サハラ以南アフリカや南アジアなど,現在も野生型ウイルスが循環していて予防接種が不完全な地域では,依然として症例の発生がみられる。循環しているワクチン由来ポリオウイルス(主にSabin OPV 2型)は,野生型ウイルスは存在しないと宣言された医療などの資源が豊富な地域でも検出され続けている。(Global Polio Eradication Initiativeも参照のこと。)
ポリオウイルス(エンテロウイルスの一種)には3つの血清型がある。
(予防接種の概要も参照のこと。)
ポリオワクチンの製剤
不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)は,ホルマリンで不活化されたポリオウイルス1型,2型,および3型の混合物を含有する。IPVにはストレプトマイシン,フラジオマイシン,およびポリミキシンBが微量に含まれている場合がある。
IPVは,2000年以降も米国で接種されている唯一のポリオワクチンである。以下の混合ワクチンも使用可能である:
ジフテリアトキソイド/不活化ポリオウイルスワクチン
ジフテリアトキソイド/B型肝炎ワクチン/不活化ポリオウイルスワクチン
ジフテリアトキソイド/インフルエンザ菌b型結合型ワクチン/不活化ポリオウイルスワクチン
ジフテリアトキソイド/インフルエンザ菌b型結合型ワクチン/B型肝炎ワクチン/不活化ポリオウイルスワクチン
経口弱毒生ポリオウイルスワクチン製剤は,およそ290万人に1人の頻度で被接種者にポリオを引き起こす株に変異する可能性があることから,米国ではもはや入手できなくなっている(1)。それでも世界的には,ベネフィットがリスクを上回る場合があることから,医療資源が限られた多くの状況において望ましいワクチンとされている。
製剤に関する参考文献
1.Alexander LN, Seward JF, Santibanez TA, et al.Vaccine policy changes and epidemiology of poliomyelitis in the United States. JAMA.2004;292(14):1696-1701.doi:10.1001/jama.292.14.1696
ポリオワクチンの適応
IPVは小児の定期接種ワクチンである(1)。
米国に居住する成人には,接種未完了であることが判明しているか疑われる場合を除き,ポリオウイルスワクチンの初回定期接種は推奨されない(2)。1955年以降に米国で生まれ育った成人の大半は,予防接種を受けていないと考えられる具体的な理由がない限りにおいて,小児期にポリオの予防接種を受けたとみなすことができる(3)。予防接種を完了していない成人は,3回の初回接種を完了すべきである。予防接種を完了しているもののポリオウイルスへの曝露リスクが高い成人は,IPVの追加接種(1回)を受けることができる。ポリオのリスクが高いと考えられる国に関する最新情報が公開されている(4, 5)。
米国では,2022年7月にニューヨーク州においてワクチン未接種の感染者でワクチン由来のポリオが1例同定された(6, 7)。ポリオウイルスが繰り返し検出されている地域のニューヨーク住民は,感染リスクが高い可能性があり,ニューヨーク州保健局による最新の予防接種勧告に従うべきである(8)。
適応に関する参考文献
1.CDC.Child and Adolescent Immunization Schedule by Age.May 2025.
2.CDC.Adult Immunization Schedule by Age.May 2025.
3.World Health Organization.History of the Polio Vaccine.Accessed April 15, 2025.
4.CDC.Travelers' Health: Destinations.Accessed June 13, 2025.
5.CDC.Polio Vaccination for International Travelers.July 2024.
6.Rai A, Uwishema O, Uweis L, et al.Polio returns to the USA: An epidemiological alert. Ann Med Surg (Lond).2022;82:104563.Published 2022 Sep 6.doi:10.1016/j.amsu.2022.104563
7.New York State Department of Health.Wastewater Surveillance.May 2025.
8.New York State Department of Health.Polio Vaccine.May 2025.
ポリオワクチンの禁忌および注意事項
IPVの主な禁忌は以下の通りである:
過去の同ワクチンの接種後に発生した重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)またはワクチン成分(例,ストレプトマイシン,フラジオマイシン,ポリミキシンB)に対するアナフィラキシーの既往
IPVの主な注意事項は以下の通りである:
中等症または重症の急性熱性疾患(軽快するまで接種を延期する)
ポリオのリスクが高くない妊婦
ワクチンが妊婦や胎児に害を及ぼすというエビデンスはないが,ポリオのリスクが高くない妊婦はポリオワクチンの接種を受けるべきではない;ただし,妊婦がポリオウイルスに曝露するリスクが高く,直ちに予防が必要な場合は,IPVを接種することができる。
ポリオワクチンの用量および用法
IPVの用量は0.5mLの筋肉内または皮下接種である。
計4回の筋肉内接種を,生後2カ月,4カ月,6~18カ月,および4~6歳時に行う。典型的には,最初の3回の接種には混合ワクチンが使用され,最終回の接種には単抗原ワクチンが使用される。4~6歳時にIPVの接種を受けなかった小児には,可及的速やかに追加接種を行うべきである。
DTaP-IPV/Hibを計4回の接種スケジュール(生後2,4,6,15~18カ月)で使用する場合は,4~6歳時にIPVを含有するワクチン(IPVまたはDTaP-IPV)の追加接種を行うべきであり,そのため計5回の接種スケジュールとなるが,4~6歳時の追加接種にはDTaP-IPV/Hibを使用してはならない。至適な追加免疫を得るため,4回目と5回目の間は6カ月以上の間隔を空けるべきである。
ポリオウイルスへの曝露リスクが高いワクチン未接種の成人には,IPVの初回接種(3回)が推奨される。1回目と2回目の間で推奨される間隔は1~2カ月であり,3回目の接種は6~12カ月後に行う。2~3カ月以内に免疫の獲得が必要な場合は,計3回の接種をそれぞれ1カ月以上の間隔を空けて行う。1~2カ月以内に免疫の獲得が必要な場合は,計2回の接種を1カ月以上の間隔を空けて行う。1カ月未満での免疫獲得が必要な場合は,1回接種とする。いずれのケースでも,その後も高いリスクがある場合は,推奨される間隔を空けた上で残りの接種を行うべきである。
ポリオワクチンの有害作用
よくみられる軽度の有害作用としては,注射部位の圧痛,紅斑,局所的腫脹,硬結などがある。発熱,易刺激性,疲労などの反応も報告されるが,典型的には軽度で一過性である。
重篤な有害作用は注目に値するほどまれである。
データからは,IPVを混合ワクチンの一部として,または他のワクチンと同時に接種した場合において,アレルギー性(例,アナフィラキシー),神経性(例,脳炎),または自己免疫性(例,ギラン-バレー症候群)の反応に関して好ましい安全プロファイルが示されている(1)。
これらのワクチンの有害作用に関する詳細については,処方情報を参照のこと。
有害作用に関する参考文献
1.Iqbal S, Shi J, Seib K, et al.Preparation for global introduction of inactivated poliovirus vaccine: safety evidence from the US Vaccine Adverse Event Reporting System, 2000-12. Lancet Infect Dis.2015;15(10):1175-1182.doi:10.1016/S1473-3099(15)00059-6
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): ACIP Recommendations: Polio Vaccine
ACIP: Changes in the 2025 Child and Adolescent Immunization Schedule
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Polio (Poliomyelitis)
European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Poliomyelitis: Recommended vaccinations



