出生前遺伝学的診断の手技

執筆者:Jeffrey S. Dungan, MD, Northwestern University, Feinberg School of Medicine
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2024年 1月 | 修正済み 2024年 2月
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遺伝性疾患の確定診断を可能にする出生前の手技は侵襲的であり,胎児に対していくらかのリスクを伴う。検査で深刻な異常が検出された場合に妊娠中絶を考慮するかどうかにかかわらず,女性は出生前に胎児の異常を知るための手技を受けることを選択することがある。

着床前遺伝学的検査(PGT)

体外受精が行われた場合,着床前遺伝学的検査(PGT)がときに可能である;卵母細胞からの極体,6~8細胞胚からの卵割球,または胚盤胞からの栄養外胚葉検体を使用する。このような検査は専門のセンターでのみ利用でき,費用も高い。しかしながら,新しい技術によって費用が軽減され,より多くのカップルがこのような検査を利用できるようになる可能性がある。

PGTには3つの種類がある:

  • PGT-M(preimplantation genetic testing for monogenic):単一遺伝子(すなわち1個の遺伝子の)異常の検査

  • PGT-A(preimplantation genetic testing for aneuploidy):異数性の検査

  • PGT-SR(preimplantation genetic testing for structural rearrangements):不均衡型転座などの構造異常の検査

PGT-Mは主に,胎児の特定のメンデル遺伝病(例,嚢胞性線維症)のリスクが高い場合に用いられる。PGT-AやPGT-SRは,胎児の染色体異常のリスクがある場合に用いられる。

PGT-Aは主に年齢の高い女性の胚に使用されるが,ルーチンの使用については議論がある(1)。ある大規模多施設ランダム化試験では,PGT-A後または形態学的評価後に凍結融解単一胚移植を行った場合の継続妊娠率に有意差は認められなかった (2)。

絨毛採取

絨毛採取(CVS)では,絨毛をシリンジに吸引して培養を行う。CVSにより,胎児の遺伝子および染色体の状態に関して羊水穿刺と同様の情報が得られ,精度も同等である。しかしながら,CVSは妊娠10週~第1トリメスター終わりに実施されるため,より早くに結果が得られる。そのため,必要な場合により早期に(またより安全かつ容易に)中絶が可能で,結果が正常の場合は,親の不安をより早くに解消できる。

羊水穿刺とは異なり,CVSでは羊水を得ることはできず,α-フェトプロテインを測定することはできない。したがって,CVSを受けた女性には,胎児の神経管閉鎖不全のリスクを評価するために,16~18週で血清α-フェトプロテインの母体スクリーニングを勧めるべきである。

胎盤の位置(超音波検査によって確認する)に応じて,カテーテルを子宮頸部から通すか,針を妊婦の腹壁に挿入することによりCVSを実施できる。CVS後,Rh陰性の未感作の妊婦には,Rho(D)免疫グロブリン300μgを投与する。

母体細胞の混入による診断のエラーはまれである。ある種の染色体異常(例,四倍体)の検出は,胎児の真の状態ではなく,むしろ胎盤に限局したモザイク現象を反映していることがある。CVS検体の約1%に胎盤限局性モザイクが検出される。これらの異常に詳しい専門家のコンサルテーションが勧められる。まれに,さらなる情報を得るために追加の羊水穿刺を行う必要がある。

CVSによる胎児死亡率は,羊水穿刺の胎児死亡率(すなわち,約0.2%)と同様である(3)。横断性の四肢欠損および口腔顎肢発育不全症はCVSが原因とされているが,経験豊富な術者が妊娠10週以降にCVSを行う場合には,極めてまれである。

羊水穿刺

羊水穿刺では,化学的マーカー(例,α-フェトプロテイン,アセチルコリンエステラーゼ)測定などの検査のため,超音波ガイド下で針を経腹的に羊膜腔に挿入し,羊水および胎児細胞を吸引する。羊水穿刺に最も安全な時期は妊娠14週以降である。羊水穿刺の直前に,超音波検査を行って胎児の心拍動を評価し,在胎期間,胎盤の位置,羊水の所在,および胎児数を確認する。母親がRh陰性で未感作の場合,処置後にRho(D)免疫グロブリン300μgを投与し,Rh感作の予防に役立てる。

35歳以上の妊婦ではダウン症候群やその他の染色体異常がある子が生まれるリスクが上昇するため,そうした妊婦には従来から羊水穿刺が勧められている。しかしながら,羊水穿刺が広く普及し安全性が向上しているため,American College of Obstetricians and Gynecologistsは全ての妊婦に羊水穿刺を勧めることを推奨している(3)。

ときに,採取した羊水は血性である。通常,血液は母親由来であり,羊水細胞の増殖には影響しない;ただし,血液が胎児由来である場合,羊水中α-フェトプロテイン濃度が見かけ上,上昇することがある。暗赤色または褐色の羊水は羊膜内で出血があったことを示し,胎児死亡のリスクが大きいことを示唆する。緑色羊水(通常胎便による羊水混濁により生じる)は,胎児死亡のリスク上昇を示唆するわけではないようである。

羊水穿刺により,母体に重大な疾患(例,症候性の羊膜炎)が生じることはまれである。経験豊富な術者では,胎児死亡のリスクは約0.1~0.2%である(4)。少量の性器出血または羊水の漏れが検査を受けた妊婦の1~2%で起こる(通常,自然治癒する)。羊水穿刺は,在胎14週前,特に13週前に行われると胎児死亡率がより高くなり,内反尖足(内反足)のリスクが上昇し,めったに行われない。

経皮的臍帯血採取

胎児の血液検体は,超音波ガイドを用いて臍帯静脈を経皮的に穿刺(臍帯穿刺)することで採取できる。染色体分析は48~72時間で完了する。この理由から,経皮的臍帯血採取(PUBS)は結果が早急に必要な場合に,以前はしばしば行われていた。この検査は妊娠第3トリメスター後期に,特に,この時期に胎児の異常が初めて疑われた場合に,非常に有用であった。現在では,蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を用いた羊水細胞または絨毛の遺伝子解析で,24~48時間以内により一般的な染色体異常の暫定的診断(または除外)が可能であるため,PUBSが遺伝学的検査のために適応となるのはまれである。

PUBSに伴う処置に関連した胎児死亡率は約1%である(5)。

参考文献

  1. 1.Practice Committees of the American Society for Reproductive Medicine and the Society for Assisted Reproductive Technology: The use of preimplantation genetic testing for aneuploidy (PGT-A): A committee opinion.Fertil Steril 109 (3):429–436, 2018.doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.01.002

  2. 2.Munné S, Kaplan B, Frattarelli JL, et al: Preimplantation genetic testing for aneuploidy versus morphology as selection criteria for single frozen-thawed embryo transfer in good-prognosis patients: A multicenter randomized clinical trial.Fertil Steril 112 (6):1071–1079.e7, 2019.doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.07.1346

  3. 3.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): ACOG Committee on Practice Bulletins—Obstetrics; Committee on Genetics; Society for Maternal-Fetal Medicine.Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226.Obstet Gynecol.2020;136(4):e48-e69.doi:10.1097/AOG.0000000000004084 

  4. 4.Beta J, Zhang W, Geris S, et al: Procedure-related risk of miscarriage following chorionic villus sampling and amniocentesis. Ultrasound Obstet Gynecol 54(4):452-457, 2019.doi:10.1002/uog.20293

  5. 5.Tongsong T, Wanapirak C, Piyamongkol W, et al: Second-trimester cordocentesis and the risk of small for gestational age and preterm birth. Obstet Gynecol 124(5):919-925, 2014.doi:10.1097/AOG.0000000000000502

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