尿路感染症(UTI)は妊娠中に,より多くみられる(妊娠の18%で報告されている[1])。この発生率の増加は尿の停滞によるもので,これはホルモンを介した尿管の拡張および蠕動低下,ならびに増大した子宮による尿管圧迫が要因である。
無症候性細菌尿はときに症候性の膀胱炎または腎盂腎炎に進行するが,症候性UTIで必ずしも無症候性細菌尿が先行するとは限らない。腎盂腎炎は妊娠中に急速に全身性感染症へと進行し,その結果,敗血症,播種性血管内凝固症候群,および急性呼吸窮迫症候群を引き起こすことがある。
無症候性細菌尿,UTI,および腎盂腎炎は以下のリスクを上昇させる(2):
低出生体重
参考文献
1. Johnson CY, Rocheleau CM, Howley MM, Chiu SK, Arnold KE, Ailes EC: Characteristics of Women with Urinary Tract Infection in Pregnancy. J Womens Health (Larchmt).2021;30(11):1556-1564.doi:10.1089/jwh.2020.8946
2.Romero R, Oyarzun E, Mazor M, Sirtori M, Hobbins JC, Bracken M: Meta-analysis of the relationship between asymptomatic bacteriuria and preterm delivery/low birth weight. Obstet Gynecol.1989;73(4):576-582.PMID: 2927852
妊娠中のUTIの症状と徴候
膀胱炎の症状は,妊娠時と非妊娠時で同様であり,頻尿,尿意切迫,および/または排尿困難のほか,ときに夜間頻尿がみられる。しかしながら,これらの症状の一部はUTIに罹患していなくても妊娠中にみられる。そのため,治療前には診断検査を行うべきである。
急性腎盂腎炎は第2または第3トリメスターでより多く発生する。症状は妊娠時と非妊娠時で同様であり,通常は上部尿路または全身の症状(悪寒,発熱,側腹部痛,腹部仙痛,悪心,および嘔吐)を伴う膀胱炎の症状がみられる。妊婦では,腎盂腎炎を強く疑うべきであり,たとえ特徴的な徴候および症状の一部が認められなくても尿検査を行うべきである。
腎盂腎炎では一般に,身体診察において,感染側に肋骨脊柱角の叩打痛が認められる。
妊娠中のUTIの診断
尿試験紙検査
尿検査および培養
ルーチンの出生前ケアの一環として,全ての妊婦に対し,早期の妊婦健診時に無症候性細菌尿のスクリーニングを行うべきである。無症候性細菌尿の検査は尿培養で行うべきである。
症候性UTIの診断は妊娠時と非妊娠時で同様である。通常は最初に尿試験紙検査を行い,尿検査および尿培養を検査室で行う。
妊娠中のUTIの治療
抗菌薬
B群レンサ球菌には,分娩中の抗菌薬投与
胎児に害を及ぼしうる薬剤(例,フルオロキノロン系薬剤)を避けることを除き,UTIの治療が妊娠によって変わることはない(1)(妊娠中における主な薬物の安全性の表を参照)。
抗菌薬の選択は尿培養の結果,および地域の感受性と耐性パターンに基づく。
無症候性細菌尿が腎盂腎炎にいたることがあるため,尿培養陽性の全ての妊婦に対して,急性UTIと同様の抗菌薬で治療を行うべきである。
無症候性細菌尿または急性膀胱炎に対しては,抗菌薬を経口投与する。症状のある患者が尿試験紙検査で陽性となった場合は,直ちに経験的治療を開始し,その後に必要であれば尿培養の結果に基づいて調整すべきである。
通常選択すべき経験的治療はセファレキシンである。適切な代替薬が利用できない場合は,第1トリメスターにニトロフラントインまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールを使用してもよい。これらの薬剤による治療期間は典型的には5~7日間である。ホスホマイシンは,耐性がよくみられるため,培養で感受性が示された場合にのみ,単回投与が選択肢となる。
ニトロフラントインは,妊娠満期,陣痛・分娩中,または分娩が切迫している妊婦では,新生児に溶血性貧血が起きる可能性があるため禁忌である。G6PD(グルコース-6-リン酸脱水素酵素)欠乏症の妊婦はニトロフラントインを服用すべきではない。妊娠期間の最後の30日間に妊婦がニトロフラントインを服用すると,新生児黄疸の発生率が上昇する。
トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)は,新生児に先天性形成異常(例,神経管閉鎖不全)および核黄疸を引き起こす可能性がある。葉酸補充により,一部の先天性形成異常のリスクが低下する可能性がある。
治療後に,治癒判定のための培養を行う医師もいる。膀胱炎または無症候性細菌尿の単回エピソード後,無症状の患者に対する再スクリーニングは不要である。
腎盂腎炎の妊婦は,重症感染症のリスクがあるため入院させ,最初は次のいずれかの抗菌薬の静脈内投与により治療する:アンピシリンおよびゲンタマイシン;セフトリアキソン;セフェピム;またはアズトレオナム(β-ラクタム系にアレルギーがある患者に対して)。臨床的改善がみられれば,患者を退院させ抗菌薬を経口投与し14日間のコースを完了する場合がある。
腎盂腎炎の妊婦,または2回以上UTIを起こしたことのある妊婦では,再発抑制療法を必要とすることがあり,通常はセファレキシン(250~500mg,経口)またはニトロフラントイン(100mg,経口)を残る妊娠期間中と分娩後4~6週まで継続して毎日投与する。
腎盂腎炎の治療後は,尿を毎月培養すべきである。
妊娠期間中の尿培養において,コロニー数にかかわらずB群レンサ球菌(GBS)が検出された患者には(これは腟と直腸への大量の定着を示唆する),分娩時に抗菌薬の予防投与を行うべきである(2)。
治療に関する参考文献
1. American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG) Committee on Clinical Consensus—Obstetrics: Urinary Tract Infections in Pregnant Individuals Obstet Gynecol.2023;142(2):435-445.doi:10.1097/AOG.0000000000005269
2.ACOG: Prevention of Group B Streptococcal Early-Onset Disease in Newborns: ACOG Committee Opinion, Number 797 [published correction appears in Obstet Gynecol. 2020 Apr;135(4):978-979]. Obstet Gynecol.2020;135(2):e51-e72.doi:10.1097/AOG.0000000000003668
要点
無症候性細菌尿,膀胱炎,および腎盂腎炎は,切迫早産ならびに低出生体重のリスクを上昇させる。
腎盂腎炎は母体の敗血症,播種性血管内凝固症候群,および急性呼吸窮迫症候群を引き起こすことがある。
全ての妊婦に対し,妊娠初期に尿培養で無症候性細菌尿のスクリーニングを行う。
無症候性細菌尿または急性膀胱炎はセファレキシンで治療し,尿培養の結果から適応となるか,または利用可能な抗菌薬が制限されている場合には,ニトロフラントイン,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,またはホスホマイシンで治療する。
腎盂腎炎の治療は,入院下で抗菌薬(アンピシリンとゲンタマイシン,セフトリアキソン,セフェピム,またはアズトレオナム)の静脈内投与を行い,臨床的に改善がみられた場合は,外来でのケアおよび経口抗菌薬に移行する。
腎盂腎炎の妊婦,または2回以上UTIを起こしたことのある妊婦では再発抑制療法を考慮し,通常セファレキシンまたはニトロフラントインを用いる。
妊娠中のどの時点であっても尿培養でGBSが認められた(コロニー数は問わない)患者は,分娩中に予防的抗菌薬投与を行う。



