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免疫不全疾患の概要

執筆者:

James Fernandez

, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2016年 8月
本ページのリソース

免疫不全疾患では,感染症,自己免疫疾患,リンパ腫,その他の癌など,様々な合併症がみられたり,そのような合併症が発生しやすくなったりする。原発性免疫不全症は遺伝性であり,続発性免疫不全症は後天性である。続発性免疫不全症の方がはるかに多くみられる。

免疫不全症の評価には病歴,身体診察,および免疫機能の検査が含まれる。どのような検査を行うかは以下によって決まる:

  • 疑われる免疫不全症が原発性か続発性か

  • 原発性免疫不全症の場合,免疫系のどの構成要素に欠陥があると考えられるか

続発性免疫不全症

原因( 続発性免疫不全症の原因)としては以下のものがある:

  • 全身性疾患(例,糖尿病,低栄養,HIV感染症)

  • 免疫抑制療法(例,細胞傷害性薬剤による化学療法,移植前の骨髄破壊的処置,放射線療法)

  • 長期にわたる重篤な疾病

続発性免疫不全症は,重症(critically ill)の患者,高齢の患者,または入院患者でも起こる。長期にわたる重篤な疾病があると免疫応答が減弱することがある;基礎疾患が解消すれば元に戻ることが多い。

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続発性免疫不全症の原因

分類

内分泌

消化管

肝機能不全肝炎腸リンパ管拡張症,タンパク漏出性胃腸症

血液

医原性

化学療法薬,免疫抑制薬,コルチコステロイドなどの特定の薬剤;放射線療法;脾臓摘出

感染性

ウイルス感染症(例,サイトメガロウイルスエプスタイン-バーウイルスHIV麻疹ウイルス水痘帯状疱疹ウイルス),細菌感染症,スーパー抗原(多数のT細胞を活性化して大量のサイトカイン産生をもたらす可能性のある抗原で,最も有名なのは黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus]に由来するもの)を伴うまれな細菌感染症,抗酸菌感染症

栄養

生理的

免疫系が未発達なことによる乳児の生理的な免疫不全症,妊娠

ネフローゼ症候群,腎機能不全,尿毒症

リウマチ学

SLE

その他

熱傷,癌,染色体異常(例,ダウン症候群),先天性無脾症,重症および慢性疾患,組織球症サルコイドーシス

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免疫抑制を引き起こす一部の薬剤

クラス

抗てんかん薬

ラモトリギン,フェニトイン,バルプロ酸

疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)

IL-1阻害薬(例,anakinra

IL-6阻害薬(例,トシリズマブ)

IL-17阻害薬(例,ブロダルマブ)

TNF阻害薬(例,アダリムマブ,エタネルセプト,インフリキシマブ)

T細胞活性化阻害薬(例,アバタセプト,バシリキシマブ)

CD20阻害薬(例,リツキシマブ)

CD3阻害薬(例,ムロモナブ-CD3)

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(例,ルキソリチニブ)

カルシニューリン阻害薬

シクロスポリン,タクロリムス

コルチコステロイド

メチルプレドニゾロン,プレドニゾン

細胞傷害性の化学療法薬

プリン代謝阻害薬

アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェチル

ラパマイシン

エベロリムス,シロリムス

免疫抑制作用のある免疫グロブリン

抗リンパ球グロブリン,抗胸腺細胞グロブリン

免疫不全症は,以下の部位から血清タンパク(特にIgGおよびアルブミン)を喪失する結果として発生することがある:

  • ネフローゼ症候群で腎臓から

  • 重度熱傷または皮膚炎で皮膚から

  • 腸炎で消化管から

腸疾患では,リンパ球の喪失につながり,リンパ球減少症が生じることもある。いずれの疾患も,B細胞およびT細胞の異常に似た臨床像がみられることがある。治療は基礎疾患に重点を置く;中鎖脂肪酸トリグリセリドが多い食事は,消化管からの免疫グロブリン(Ig)およびリンパ球の喪失を軽減するため,非常に有益なことがある。

特定の続発性免疫不全症が臨床的に疑われる場合は,当該疾患(例,糖尿病,HIV感染症,嚢胞性線維症,原発性線毛機能不全症)に焦点を合わせた検査を行うべきである。

原発性免疫不全症

これらの疾患は遺伝性である;単独で起こることもあれば症候群の一部として生じることもある。100を超える疾患が報告されており,各疾患は互いにかなり異なることがある。約80%については分子的基盤が知られている。

原発性免疫不全症は,典型的には乳児期および小児期に現れ,患者は異常に高頻度(反復性)に感染症にかかったり,まれな感染症にかかったりする。約70%の患者は発症時20歳未満である;X連鎖で遺伝する場合が多いため,60%が男性である。症状がみられる症例の全発生率は約280人に1人である。

原発性免疫不全症は,以下の免疫系の主な構成要素の欠乏,欠失,または欠陥によって分類される:

より多くの分子生物学的異常が明らかになるにつれ,対応する分子生物学的異常による免疫不全症の分類が一層妥当なものになるであろう。

原発性免疫不全症候群は,免疫系の異常および免疫系以外の異常を伴う遺伝性免疫不全症の総称である。非免疫系の臨床像は,免疫不全症のそれより容易に見分けられることが多い。非免疫系の臨床像として,毛細血管拡張性運動失調症,軟骨毛髪形成不全症,DiGeorge症候群高IgE症候群,およびWiskott-Aldrich症候群などがある。

免疫不全症は,典型的には反復性感染症として現れる。反復性感染症が始まった年齢は,免疫系のどの構成要素に異常があるかの手がかりとなる。他の特徴的な所見により,暫定的に臨床診断が示唆される ( 一部の原発性免疫不全症に特徴的な臨床所見)。しかしながら,免疫不全症の診断を確定するには検査が必要である ( 免疫不全症の初回および追加臨床検査)。臨床所見または初回検査で,免疫細胞または補体機能の特定の異常が示唆された場合,追加の検査が適応となる( 免疫不全症*に対する特異的で高度な臨床検査)。

原発性免疫不全症の予後は,個々の疾患によって異なる。

液性免疫不全

液性免疫不全(B細胞の異常)は抗体の欠損を生じるもので,原発性免疫不全症の50~60%を占める( 液性免疫不全)。血清抗体価が低下し,細菌感染を起こしやすくなる。

最もよくみられるB細胞疾患は,以下のものである:

液性免疫不全の診断評価については, 免疫不全症が疑われる患者へのアプローチおよび 免疫不全症*に対する特異的で高度な臨床検査を参照のこと。

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液性免疫不全

疾患

遺伝形式

異常のある遺伝子

臨床所見

多様

TACIICOSBAFFR

再発性副鼻腔肺感染症,自己免疫疾患(例,免疫性血小板減少症,自己免疫性溶血性貧血),吸収不良,ジアルジア症,肉芽腫性間質性肺疾患,消化管の結節性リンパ組織過形成,気管支拡張症,リンパ性間質性肺炎,脾腫;10%で,胃癌およびリンパ腫

通常,20~40歳の患者で診断される

常染色体劣性

AIDUNG

X連鎖高IgM症候群に似るがリンパ組織過形成を伴う

白血球減少症なし

常染色体劣性

CD40

X連鎖高IgM症候群に似る

リンパ組織形成不全,好中球減少症

X連鎖

CD40リガンド(CD40L)

X連鎖無ガンマグロブリン血症(例,反復性の化膿性細菌副鼻腔肺感染)に似るが,Pneumocystis jirovecii肺炎,クリプトスポリジウム症,重度の好中球減少症,およびリンパ組織形成不全がより高頻度

原因不明

再発性の副鼻腔肺感染症

ときにアトピーの症状(例,アトピー性皮膚炎,喘息,慢性鼻炎)

軽症,中等症,重症,およびメモリーフェノタイプのいずれでもありうる

原因不明

一部の症例ではTACI

無症状のことが最も多い

再発性の副鼻腔肺感染症,下痢,アレルギー(アナフィラキシー性の輸血反応[まれ]を含む),自己免疫疾患(例,セリアック病,炎症性腸疾患,SLE,慢性活動性肝炎)

原因不明

通常無症候性

ときに再発性の副鼻腔肺感染症または消化管感染症,カンジダ症,髄膜炎

X連鎖

BTK

乳児期の反復性の副鼻腔肺感染症および皮膚感染症,一過性の好中球減少症,リンパ組織形成不全

経口弱毒生ポリオワクチン,エコーウイルス,またはコクサッキーウイルスに起因する持続的な中枢神経系感染症

感染性関節炎,気管支拡張症,および特定の癌のリスク増加

AID= activation-dependent (induced) cytidine deaminase(活性化誘導シチジンデアミナーゼ);BAFFR = B-cell activating factor receptor(B細胞活性化因子受容体);BTK = Bruton tyrosine kinase(ブルトン型チロシンキナーゼ);C = 補体;CAML = calcium-modulator and cyclophilin ligand(カルシウム調節因子およびシクロフィリンリガンド);CD = clusters of differentiation;ICOS = inducible T-cell co-stimulator(誘導可能T細胞共刺激分子);TACI = transmembrane activator and CAML interactor(膜貫通型活性化因子およびカルシウム調節因子およびシクロフィリンリガンド相互作用因子);UNG= uracil DNA glycosylase(ウラシルDNA グリコシラーゼ)。

細胞性免疫不全

細胞性免疫不全(T細胞の異常)は,原発性免疫不全症の約5~10%を占め,ウイルス,Pneumocystis jirovecii,真菌,その他の日和見病原体,および多くの一般的な病原体による感染症の素因となる( 細胞性免疫不全)。B細胞およびT細胞の免疫系は相互依存性のため,T細胞疾患でもIg欠損症が生じる。

最も頻度の高いT細胞疾患は以下の通りである:

原発性のナチュラルキラー細胞の異常は,非常にまれであり,ウイルス感染症および腫瘍の素因となることがある。続発性のナチュラルキラー細胞の異常は,他の様々な原発性または続発性の免疫不全症患者に発生することがある。

細胞性免疫不全の診断評価については, 免疫不全症の初回および追加臨床検査および 免疫不全症*に対する特異的で高度な臨床検査を参照のこと。

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細胞性免疫不全

疾患

遺伝形式

異常のある遺伝子

臨床所見

常染色体優性または劣性

STAT1(優性)

AIRE(劣性)

持続性または反復性のカンジダ感染症,爪真菌症,常染色体劣性の自己免疫性多腺性内分泌不全症–カンジダ症–外胚葉ジストロフィー(副甲状腺機能低下症および副腎機能不全を伴う)

常染色体

染色体22q11.2領域の遺伝子

染色体10p13の遺伝子

耳介低位を伴う異常顔貌,先天性心疾患(例,大動脈弓異常),胸腺低形成または無形成,低カルシウム血症性テタニーを伴う副甲状腺機能低下症,反復性感染症,発達遅滞

X連鎖

SH2D1A(1型)

XIAP(2型)

エプスタイン-バーウイルス感染症の発症まで無症状,その後,肝不全を伴う劇症性または致死性の伝染性単核球症,B細胞リンパ腫,脾腫,再生不良性貧血

常染色体劣性

一般的感染症および日和見感染症

CD8陽性細胞なし

AIRE = autoimmune regulator(自己免疫調節遺伝子);CD = clusters of differentiation;SH2D1A = SH2 domain containing 1A;STAT = signal transducer and activator of transcription(シグナル伝達兼転写活性化因子);TYK = チロシンキナーゼ;UNG= uracil DNA glycosylase(ウラシルDNAグリコシラーゼ);WASP = Wiskott-Aldrich 症候群タンパク;XIAP = X-linked inhibitor of apoptosis(X連鎖アポトーシス阻害タンパク)

液性免疫および細胞性免疫の複合免疫不全

液性免疫および細胞性免疫の複合免疫不全(B細胞およびT細胞の両方の異常)は,原発性免疫不全症の約20%を占める( 液性免疫および細胞性免疫の複合免疫不全)。

最も重要な病型は以下のものである:

複合免疫不全症の一部の病型(例,プリンヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症)では,Igレベルは正常または上昇しているが,T細胞機能が不十分なため,抗体産生が阻害される。

液性免疫および細胞性免疫の複合免疫不全の診断評価については, 免疫不全症*に対する特異的で高度な臨床検査を参照のこと。

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液性免疫および細胞性免疫の複合免疫不全

疾患

遺伝形式

異常のある遺伝子

臨床所見

常染色体劣性

ATM

運動失調,毛細血管拡張,反復性の副鼻腔肺感染症,内分泌異常(例,性腺形成不全,精巣萎縮,糖尿病),癌のリスク増大

軟骨毛髪形成不全症

常染色体劣性

四肢短縮による低身長,一般的感染症および日和見感染症

T細胞機能は不十分であるが欠失しておらず,免疫グロブリンは正常または高値の複合免疫不全症

常染色体劣性またはX連鎖

NEMO

一般的感染症および日和見感染症,リンパ球減少症,リンパ節腫脹,肝脾腫,一部の患者でランゲルハンス細胞組織球症に似た皮膚病変

常染色体優性または劣性

STAT3(優性)

TYK2DOCK8(劣性)

副鼻腔肺感染;皮膚,肺,関節,内臓のブドウ球菌性膿瘍;肺気瘤;そう痒性皮膚炎;顔貌粗造;乳歯の脱落遅延;骨減少症;頻回骨折;組織中および血中の好酸球増多

MHC抗原欠損

常染色体劣性

一般的感染症および日和見感染症

常染色体劣性またはX連鎖

JAK3,PTPRC(CD45),RAG1RAG2(常染色体劣性)

IL-2RG(X連鎖)

口腔カンジダ症,P. jirovecii肺炎,生後6カ月未満での下痢,発育不良,移植片対宿主病,胸腺陰影の欠如,リンパ球減少症,骨の異常(ADA欠損症における),Omenn症候群の一部としての剥脱性皮膚炎

X連鎖劣性

WASP

典型的には化膿性感染症および日和見感染症,湿疹,血小板減少症

場合により消化管出血(例,血性下痢),反復性の呼吸器感染症,癌(10歳以上の患者の10%において),水痘帯状疱疹ウイルス感染症,ヘルペスウイルス感染症

ADA = adenosine deaminase(アデノシンデアミナーゼ); ATM = ataxia telangiectasia–mutated(毛細血管拡張性運動失調症変異); DOCK = dedicator of cytokinesis;IL-2RG = IL-2 receptor gamma(IL-2受容体γ);ITGB2 = integrin beta-2(インテグリンβ2);JAK = Janus kinase(ヤヌスキナーゼ);MHC = major histocompatibility complex(主要組織適合抗原複合);NEMO = nuclear factor–κB essential modulator;PTPRC = protein tyrosine phosphatase, receptor type, C(プロテインチロシンホスファターゼ,C型受容体);RAG = recombination activating gene(組換え活性化遺伝子);STAT = signal transducer and activator of transcription(シグナル伝達兼転写活性化因子);TYK = チロシンキナーゼ;WASP = Wiskott-Aldrich syndrome protein(Wiskott-Aldrich症候群タンパク)

食細胞の異常

食細胞の異常は,原発性免疫不全症の10~15%を占める;食細胞(例,単球,マクロファージ,好中球および好酸球などの顆粒球)の病原体殺傷能が低下する( 食細胞の異常)。皮膚のブドウ球菌およびグラム陰性菌による感染が特徴的である。

最も頻度の高い(とはいっても一般的にはまれであるが)食細胞の異常は以下のものである:

食細胞の異常の診断評価については, 免疫不全症の初回および追加臨床検査および 免疫不全症*に対する特異的で高度な臨床検査を参照のこと。

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食細胞の異常

疾患

遺伝

異常のある遺伝子

臨床所見

常染色体劣性

LYST(CHS1)

眼皮膚白皮症,反復性感染症,発熱,黄疸,肝脾腫,リンパ節腫脹,神経障害,汎血球減少症,出血性素因

X連鎖劣性または常染色体劣性

gp91phox(CYBB;X連鎖)

p22phox,p47phox,p67phox(常染色体劣性)

肺,肝臓,およびリンパ節における肉芽腫性病変,ならびに消化管および泌尿生殖器における肉芽腫性病変(閉塞を引き起こす);リンパ節炎;肝脾腫;皮膚,リンパ節,肺,肝臓,および肛門周囲の膿瘍;骨髄炎;肺炎;黄色ブドウ球菌,グラム陰性菌,およびアスペルギルスによる感染症

常染色体劣性

β2インテグリンのCD18をコードするITGB2遺伝子(1型)

GDP-フコース輸送体遺伝子(2型)

軟部組織感染,歯周炎,創傷治癒不良,臍帯脱落遅延,白血球増多症,膿形成なし

発達遅滞(2型)

メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD)

常染色体優性または劣性

IFN-γ受容体,IL-12,またはIL-12受容体をコードする遺伝子の異常

抗酸菌感染症

遺伝子異常に応じて症状の重症度は多様

周期性好中球減少症

常染色体優性

ELA2

好中球減少症の反復性エピソード中(例,14~35日毎)の化膿性細菌感染症

CD = clusters of differentiation;CHS = Chédiak-Higashi syndrome(Chédiak-Higashi症候群);CYBB = cytochrome b-245, beta polypeptide(チトクロムb-245βポリペプチド);DOCK = dedicator of cytokinesis;ELA = エラスターゼ;GDP = glucose diphosphate(グルコース二リン酸);gp = glycoprotein(糖タンパク);IFN = インターフェロン;ITGB2 = integrin beta-2(インテグリンβ2);JAK = Janus kinase(ヤヌスキナーゼ);LYST = lysosomal transporter。

補体欠損症

補体の欠損はまれである(2%以下);補体成分または補体インヒビターの単独欠損があり,遺伝性も後天性もありうる( 補体欠損症)。遺伝性の欠損症は,常染色体優性のC1インヒビター欠損症およびX連鎖のプロパージン欠損症を除いて,常染色体劣性である。これらの欠損症により,病原体のオプソニン化,食作用,および溶解作用の欠陥,ならびに抗原抗体複合体のクリアランスの欠陥が生じる。

最も重篤な転帰は以下のものである:

  • 反復性感染症(オプソニン化作用の欠陥による)

  • 抗原抗体複合体のクリアランスの欠陥による自己免疫疾患(例,SLE,糸球体腎炎)

補体制御タンパクの欠損は遺伝性血管性浮腫を引き起こす。

補体欠損症は,古典経路および/または副経路に影響を及ぼす( 補体系)。副経路は,C3およびC5~C9を古典経路と共有するが,さらにD因子,B因子,プロパージン(P),ならびに制御因子のH因子およびI因子といった成分を必要とする。

補体欠損症の診断評価については, 免疫不全症の初回および追加臨床検査および 免疫不全症*に対する特異的で高度な臨床検査を参照のこと。

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補体欠損症

疾患

遺伝

臨床所見

C1

常染色体劣性

SLE

C2

常染色体劣性

SLE,幼児期に始まる莢膜を有する細菌(特に肺炎球菌)による反復性の化膿性感染症,他の自己免疫疾患(例,糸球体腎炎,多発性筋炎,血管炎,ヘノッホ-シェーンライン紫斑病,ホジキンリンパ腫)

C3

常染色体劣性

出生時に始まる莢膜を有する細菌による反復性の化膿性感染症,糸球体腎炎,他の抗原抗体複合体疾患,敗血症

C4

常染色体劣性

SLE,他の自己免疫疾患(例,IgA腎症,全身性強皮症,ヘノッホ-シェーンライン紫斑病,1型糖尿病,自己免疫性肝炎)

C5,C6,C7,C8,C9(膜侵襲複合体)

常染色体劣性

反復性の髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)感染症および播種性淋菌(N. gonorrhoeae)感染症

MBL経路における補体欠損

MBL

常染色体劣性

出生時に始まる莢膜を有する細菌による反復性の化膿性感染症;原因不明の敗血症;コルチコステロイド使用,嚢胞性線維症,または慢性肺疾患による続発性免疫不全症における感染の重症度増加

MASP-2

原因不明

自己免疫疾患(例,炎症性腸疾患,多形紅斑),莢膜を有する細菌(例,肺炎球菌[Streptococcus pneumoniae])による反復性の化膿性感染症

副経路における補体欠損

B因子

常染色体劣性

化膿性感染症

D因子

常染色体

化膿性感染症

プロパージン

X連鎖

劇症型ナイセリア感染症のリスク上昇

補体調節タンパクの欠損

C1インヒビター

常染色体優性

血管性浮腫

I因子

常染色体共優性

C3欠損症と同じ

H因子

常染色体共優性

C3欠損症と同じ

溶血性尿毒症症候群

崩壊促進因子

常染色体劣性

発作性夜間ヘモグロビン尿症

補体受容体(CR)の欠損

CR1

後天性

免疫(抗原抗体)複合体が介在する疾患における二次所見

CR3

常染色体劣性

白血球接着不全症候群(反復性の黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus]および緑膿菌[Pseudomonas aeruginosa]による感染症)

C = 補体;MASP = mannose-binding lectin-associated serine protease(マンノース結合レクチン関連セリンプロテアーゼ);MBL = mannose-binding lectin(マンノース結合レクチン)

老年医学的重要事項

加齢に伴ってある程度の免疫低下が起こる。例えば,高齢者では,胸腺によるナイーブT細胞の産生が少ない傾向にある;そのため,新たな抗原に応答できるT細胞が少ない。T細胞の数は減少しない(オリゴクローナルであるため)が,このような細胞は限られた数の抗原を認識できるに過ぎない。

シグナル伝達(抗原結合シグナルが細胞膜を越えて細胞内に伝達されること)が阻害され,T細胞が抗原に応答する可能性が低くなる。さらに,ヘルパーT細胞がB細胞に抗体産生を促すシグナルを伝える可能性が低くなる場合もある。

好中球の数は減少しないが,これらの細胞の食作用および殺菌作用は低下する。

高齢者でよくみられる低栄養は,免疫応答を阻害する。カルシウム,亜鉛,およびビタミンEは,免疫にとって特に重要である。加齢とともに腸管からのカルシウム吸収能力が低下するため,高齢者ではカルシウム欠乏症のリスクが高まる。さらに,高齢者では食事で十分なカルシウムを摂取しないことがある。亜鉛欠乏症は,施設に入居した高齢者および在宅患者に非常に多くみられる。

高齢者により多くみられる特定の疾患(例,糖尿病,慢性腎臓病,低栄養),および高齢者に使用する可能性が高い特定の治療法(例,免疫抑制薬,免疫調節性の薬剤および治療)により免疫が損なわれることもある。

要点

  • 続発性(後天性)免疫不全症は,原発性(先天性)免疫不全症よりはるかに多くみられる。

  • 原発性免疫不全症は,液性免疫(最も頻度が高い),細胞性免疫,液性免疫および細胞性免疫の両方,食細胞,または補体系に影響を及ぼすことがある。

  • 原発性免疫不全症の患者では,免疫不全症よりも容易に見分けられる非免疫性の症状がみられることがある。

  • 免疫機能は年齢とともに低下する傾向があり,部分的には加齢性変化が原因である;さらに高齢者では,免疫機能を損なう状態(例,特定の疾患,特定の薬物の使用)がより多く発生する。

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