発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)

執筆者:Gloria F. Gerber, MD, Johns Hopkins School of Medicine, Division of Hematology
Reviewed ByJerry L. Spivak, MD, MACP, Johns Hopkins University School of Medicine
レビュー/改訂 2024年 4月 | 修正済み 2024年 9月
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発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)はまれな後天性の疾患で,血管内溶血およびヘモグロビン尿を特徴とする。白血球減少症,血小板減少症,動静脈血栓症,および発作性のクリーゼがよくみられる。診断にはフローサイトメトリーを要する。治療は補体阻害薬による。

溶血性貧血の概要も参照のこと。)

発作性夜間ヘモグロビン尿症の発症年齢の中央値は30歳代であるが,あらゆる年齢層で発生しうる(1)。発生率は男女でほぼ同じである。その疾患名とは裏腹に,溶血は夜間だけでなく,1日中発生する。

総論の参考文献

  1. 1.de Latour RP, Mary JY, Salanoubat C, et al.Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: natural history of disease subcategories. Blood 2008;112(8):3099-3106.doi:10.1182/blood-2008-01-133918

発作性夜間ヘモグロビン尿症の病因

発作性夜間ヘモグロビン尿症は,造血幹細胞のPIGA遺伝子における後天性の突然変異によるクローン性の疾患である。 PIGAはX染色体上に存在し,膜タンパク質のグリコシルホスファジルイノシトール(GPI)アンカーの形成に不可欠なタンパク質をコードする。PIGAの突然変異によって,血球表面上の全てのGPIアンカー型タンパク質(重要な補体調節タンパク質であるCD55およびCD59など)が失われる。結果として,血球が補体の活性化に脆弱となり,赤血球の持続的な血管内溶血につながる。

発作性夜間ヘモグロビン尿症の病態生理

四肢に動脈血栓症と静脈血栓症の両方が起きる可能性があるほか,門脈や脳静脈洞など比較的まれな部位にも血栓が生じることがある。血栓症は補体活性の亢進と溶血の結果である。

長期にわたる尿中へのヘモグロビンの喪失によって,鉄欠乏が生じることがある。

発作性夜間ヘモグロビン尿症には骨髄機能障害が関連しており,それは造血幹細胞に対する免疫反応が原因である可能性が高く,しばしば白血球減少症血小板減少症につながる。自己免疫性の骨髄不全疾患である後天性再生不良性貧血では,約50%の患者でPNHクローンが検出限界を超える量で認められる(1)。

病態生理に関する参考文献

  1. 1.Babushok DV.When does a PNH clone have clinical significance? Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2021;2021(1):143-152.doi:10.1182/hematology.2021000245

発作性夜間ヘモグロビン尿症の症状と徴候

通常は感染症,輸血,ワクチン接種,または月経などの「トリガー」によりクリーゼが誘発される。腹痛,胸痛,腰痛,および重度の貧血の症状が生じることがある。

血栓症の臨床像は,血栓が生じた血管の部位に依存し,下肢または上肢の腫脹に加えて腹痛や頭痛などの症状が生じる可能性がある。

発作性夜間ヘモグロビン尿症の診断

  • フローサイトメトリー

典型的な貧血症状(例,蒼白,疲労感,めまい,場合によって低血圧)がみられる患者と血管内溶血を伴う原因不明の正球性貧血の患者では,発作性夜間ヘモグロビン尿症が疑われ,特に白血球減少症もしくは血小板減少症および/または血栓症が認められる場合,その疑いが強くなる。

PNHの診断はフローサイトメトリーによるが,この検査では赤血球上または白血球上に特異的な細胞表面タンパク質(CD59,CD55,およびFLAER[fluorescein-labeled proaerolysin])の発現がないことを確認する。フローサイトメトリーは感度および特異度が非常に高い。

骨髄検査は不要であるが,他の疾患を除外するために実施すると,通常は赤芽球過形成を示す。

クリーゼでは肉眼的ヘモグロビン尿が多くみられ,尿には常にヘモジデリンが含まれる。

PNHクローンがみられる患者の約3分の1は,溶血および血栓リスクを特徴とする古典的PNHである(1)。PNHクローンは,PNH関連症状のない骨髄不全(後天性再生不良性貧血)の患者でよくみられる。このような患者では典型的にはより小型(30%未満)のsubclinical PNHクローンが認められ,補体阻害薬は有益とならないため,代わりに,再生不良性貧血に対して根治的治療を行う。しかしながら,再生不良性貧血から古典的PNHに進行する可能性もあるため,再生不良性貧血の患者にはPNHクローンのスクリーニングを年1回の頻度で行うべきである。一方,古典的PNHを発症した患者が進行性の骨髄不全を来すこともあり,最終的には免疫抑制または骨髄移植による再生不良性貧血の治療が必要になることもある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Babushok DV.When does a PNH clone have clinical significance? Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2021;2021(1):143-152.doi:10.1182/hematology.2021000245

発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療

  • 補体阻害薬(例,エクリズマブ)

  • 支持療法

クローンサイズが小さく(すなわち,フローサイトメトリーで10%未満),概ね無症状の患者は,一般的に治療を必要としない。以下が治療の適応となる:

  • 症候性貧血または輸血を必要とする状態

  • 血栓症

補体阻害薬は輸血の必要性,血栓塞栓症のリスク,および症状を低減し,生活の質を改善させる。

C5に結合して終末補体阻害薬として作用するモノクローナル抗体(例,エクリズマブ)がしばしば用いられる。ある臨床試験において,エクリズマブは血管内溶血を減少させ,PNHに対して効果的な治療法となった(1)。

近位補体阻害薬であるペグセタコプラン(C3阻害薬,皮下投与)およびイプタコパン(補体B因子阻害薬,経口投与)は,副経路を介した溶血を阻止する。近位補体阻害薬は,C5阻害の結果として起こる血管内溶血と血管外溶血の両方を阻止できる可能性がある(2)。終末および近位の補体阻害はいずれも髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の感染リスクを高めるため,治療を開始する14日以上前に髄膜炎菌ワクチンを接種するか,抗菌薬の予防投与を開始するべきである。

補体阻害薬が使用できない場合は,一部の患者ではコルチコステロイドの投与によりヘモグロビンが増加し,溶血が軽減する可能性があるが,これらの効果を裏付けるエビデンスはない。ただし,長期使用時の有害作用のため,長期治療としてのコルチコステロイドの使用は避けるべきである。補体阻害は併存する骨髄不全の治療にはならない。

支持療法としては,鉄および葉酸の経口補充に加え,ときに輸血が行われる。

一般に,輸血はクリーゼまたは症候性貧血に対してのみ使用される。急性血栓症に対してはヘパリンとその後にワルファリンまたは別の抗凝固薬が投与されるが,補体阻害薬による治療を開始すれば,その後は通常,ヘパリンの長期使用は必要にならない。

治療に関する参考文献

  1. 1.Hillmen P, Young NS, Schubert J, et al.The complement inhibitor eculizumab in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. N Engl J Med 2006;355(12):1233-1243.doi:10.1056/NEJMoa061648

  2. 2.Hillmen P, Szer J, Weitz I, et al.Pegcetacoplan versus Eculizumab in Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria. N Engl J Med 2021;384(11):1028-1037.doi:10.1056/NEJMoa2029073

要点

  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は,夜間だけでなく一日のどの時間帯にも溶血を引き起こす可能性がある。

  • 一般的な臨床的特徴としては,ヘモグロビン尿症,汎血球減少症,動脈および静脈血栓症などがある。

  • 静脈血栓症は,例えば肝静脈など,まれな部位に発生する。

  • 症状のある患者は補体阻害薬で治療する。

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