遺伝性および後天性C1インヒビター欠損症

(後天性血管性浮腫)

執筆者:James Fernandez, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
Reviewed ByBrian F. Mandell, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 8月
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C1インヒビター欠損症による遺伝性および後天性血管性浮腫は,補体活性化の古典経路およびレクチン経路の制御とキニン系および凝固線溶系の経路の制御に関与するタンパク質である補体1(C1)インヒビターの欠乏または機能障害によって引き起こされる。主な症状は,しばしば顔面,口,および上気道の腫脹であり,重度のことがある;そう痒や蕁麻疹は生じない。診断は補体濃度の測定による。C1インヒビターは急性発作の治療に用いる。予防は,C1インヒビターの濃度を増加させる弱化アンドロゲンによる。

アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要血管性浮腫,およびUS HAEA[Hereditary Angioedema Association] Medical Advisory Board 2020 Guidelines for the Management of Hereditary Angioedema[2020]も参照のこと。)

C1インヒビターは,キニン系の経路において活性化したカリクレイン(ブラジキニンの産生に必要)を阻害するため,C1インヒビターの欠乏または機能不全は補体の活性化に影響を及ぼすだけでなく,ブラジキニン濃度の上昇も招く(1)。

補体活性化経路

古典経路,レクチン経路,および副経路は,C3転換酵素(C3 con)がC3をC3aとC3bに切断すると,最終の共通経路に収束する。Ab = 抗体;Ag = 抗原;C1-INH =C1インヒビター;MAC = 膜侵襲複合体;MASP = MBL関連セリンプロテアーゼ;MBL = マンノース結合レクチン。上線は活性化を示す。

遺伝性血管性浮腫

遺伝性血管性浮腫には以下の3つの主な型がある:

  • 1型(80~85%):C1インヒビターの欠乏を特徴とする

  • 2型(15~20%):C1インヒビターの機能不全を特徴とする

  • 3型(まれ):正常なC1インヒビターの機能および値を特徴とする

1型および2型には,C1インヒビターをコードする遺伝子の変異が関与する。1型の遺伝形式は常染色体顕性(優性)である。臨床像は通常,小児期または青年期にみられ,1型の患者の75%では15歳までに発症する(1)。

2型はC1インヒビターの機能不全に起因する。遺伝形式は常染色体顕性(優性)であるが,約25%の症例でde novo変異が発生する(1)。

3型はまれである。正常なC1インヒビターを特徴とし,ときに,遺伝子変異に起因する第XII因子,プラスミノーゲン,アンジオポエチン1,またはキニノーゲンの異常な形態が原因である。3型は女性により多くみられる。

後天性C1インヒビター欠損症

C1インヒビター欠損症は以下の場合,後天性に発生することがある:

患者に関連疾患がある場合は通常,臨床像がより高い年齢で現れる。

誘因

遺伝性および後天性の血管性浮腫の全ての型で,以下のものによって発作が引き起こされることがある:

  • 軽度の外傷(例,歯科処置,舌ピアス)

  • ウイルス性疾患

  • 寒冷曝露

  • 妊娠

  • エストロゲンを含有する薬剤およびタモキシフェン

  • 特定の食物摂取

また,血管性浮腫は精神的ストレスによって悪化することがある。

総論の参考文献

  1. 1.Miyata T, Horiuchi T.Biochemistry, molecular genetics, and clinical aspects of hereditary angioedema with and without C1 inhibitor deficiency. Allergol Int 2023;72(3):375-384.doi:10.1016/j.alit.2023.04.004

遺伝性および後天性C1インヒビター欠損症の症状と徴候

遺伝性および後天性の血管性浮腫の症状と徴候は,他の型のブラジキニン介在性の血管性浮腫と類似しており,非対称性で軽度の有痛性の腫脹がみられ,顔面,口唇,および/または舌に及ぶことが多い。さらに手もしくは足の甲または生殖器に腫脹が生じることもある。

消化管が侵されることが多く,悪心,嘔吐,仙痛性の不快感など,腸閉塞を示唆する多様な症状がみられる。

そう痒,蕁麻疹,および気管支攣縮は起こらないが,喉頭浮腫がみられることがあり,吸気性喘鳴を引き起こす(ときに死に至ることもある)。

腫脹は,発症してから約1~3日以内に消退する。遺伝性血管性浮腫では,補体成分が消費されるにつれて,症状が消失する。

遺伝性および後天性C1インヒビター欠損症の診断

  • 補体濃度の測定

血管性浮腫に蕁麻疹が伴わず,明確な原因なしに再発するまたは局所外傷に誘発される場合は,遺伝性または後天性C1インヒビター欠損症を疑うべきである。

C4,C1インヒビター,およびC1q(C1の一成分)の濃度を測定する。遺伝性血管性浮腫(1型および2型)または後天性C1インヒビター欠損症の診断は,以下によって確定される:

  • C4低値(エピソードとエピソードの間におけるものであっても)

  • C1インヒビター値または機能の低下

他の所見としては以下のものがある:

  • 1型の遺伝性C1インヒビター欠損症:C1インヒビタータンパク質量は低値,C1インヒビター機能は低下,C1q値は正常

  • 2型の遺伝性C1インヒビター欠損症:C1インヒビタータンパク質量は正常または高値,C1インヒビター機能は低下,C1q値は正常

  • 後天性C1インヒビター欠損症:C1qが低値

  • 3型の遺伝性C1インヒビター欠損症:C1インヒビター値,C1インヒビター機能,C1q値いずれも正常

遺伝性C1インヒビター欠損症と確定診断された患者の第1度近親者は全員,症状の有無にかかわらず,スクリーニングを受けるべきである。スクリーニングにはC1インヒビターおよびC4を含めるべきである(1)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Zuraw BL, Bernstein JA, Lang DM, et al: A focused parameter update: Hereditary angioedema, acquired C1 inhibitor deficiency, and angiotensin-converting enzyme inhibitor–associated angioedema.J Allergy Clin Immunol 131 (6):1491-1493, 2013.doi: 10.1016/j.jaci.2013.03.034

遺伝性および後天性C1インヒビター欠損症の治療

  • 急性発作に対しては,C1インヒビター,エカランチド,イカチバント

急性発作に対しては,以下が第1選択の治療と考えられている:

  • 精製ヒト血漿由来C1インヒビター

  • トランスジェニックウサギの乳汁から得た遺伝子組換えC1インヒビター

  • ヒト血漿由来のC1インヒビター

  • エカランチド(カリクレインの可逆的阻害薬として作用する組換えタンパク質)

  • イカチバント(ブラジキニンB2受容体の可逆的かつ競合的な拮抗薬として作用する合成デカペプチド)

遺伝子組換えC1インヒビターは,血漿由来C1インヒビターと同様のプロテアーゼ阻害活性を有するが,半減期はより短い(1)。

これらの薬剤がいずれも入手不能であれば,新鮮凍結血漿または欧州連合でトラネキサム酸が用いられている。

気道が侵されている場合,気道の確保を最優先する。急性発作で気道が侵されている場合,アドレナリンにより一時的に有益となることがある。しかしながら,その有益性は十分でないことや,一過性に終わることもあり,その後に気管挿管が必要になる場合もある。コルチコステロイドおよび抗ヒスタミン薬は効果がない。

鎮痛薬,制吐薬,および補液を用いて症状を緩和することができる。

遺伝性C1インヒビター欠損症患者の治療では,以下の4つの基本原則に焦点を置く(2):

  • 必要なときに利用できる効果的な急性期の治療が全ての患者に利用可能であること

  • 発作の進行を防ぐために早期に治療すること

  • 腫脹部位にかかわらず,発作を治療すること

  • 医師と患者のパートナーシップを反映する,高度に個別化された意思決定に基づいた長期予防を導入すること

これらの原則に基づき,遺伝性血管性浮腫が確定診断されている全ての患者では,急性発作に即応できる治療として標準用量の少なくとも2回分を常に用意しておくべきである(2)。

パール&ピットフォール

  • 抗ヒスタミン薬およびコルチコステロイドは,遺伝性および後天性C1インヒビター欠損症に対して効果的ではない。

治療に関する参考文献

  1. 1.Moldovan D, Bernstein JA, Cicardi M: Recombinant replacement therapy for hereditary angioedema due to C1 inhibitor deficiency.Immunotherapy 7 (7):739–752, 2015.doi: 10.2217/imt.15.44

  2. 2.Busse PJ, Christiansen SC, Riedl MA, et al: US HAEA Medical Advisory Board 2020 guidelines for the management of hereditary angioedema.J Allergy Clin Immunol Pract 9 (1):132–150.e3, 2021.doi: 10.1016/j.jaip.2020.08.046

遺伝性および後天性C1インヒビター欠損症の予防

長期予防

遺伝性C1インヒビター欠損症の長期予防に使用される薬剤としては以下のものがある:

  • 血漿由来C1インヒビター(ヒト)

  • ラナデルマブ

  • ベロトラルスタット

  • 弱化アンドロゲン

  • 抗線溶薬(例,トラネキサム酸)

血漿由来C1インヒビターは,長期予防として定期的な点滴静注または皮下注射で投与されることがある。患者に自己投与の仕方を教えてもよい。血漿由来C1インヒビターは遺伝性血管性浮腫の長期予防用に米国内で入手可能であるが,遺伝子組換えC1エステラーゼ阻害薬は入手できない。

ラナデルマブは血漿カリクレインに結合してその活性を阻害する遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体である。

ベロトラルスタットは,血漿カリクレインの阻害を目的に開発された合成低分子である。

弱化アンドロゲン(例,スタノゾロール,ダナゾール)は,肝臓でのC1インヒビター合成を促進するために使用される。この治療法は,後天性の病型の血管性浮腫にはあまり効果的でないことがある。

抗線溶薬(例,トラネキサム酸)は,小児および妊娠中の患者における長期予防のための第2選択薬として使用されている。

短期予防

遺伝性C1インヒビター欠損症の短期予防は,急性発作の治療にC1インヒビターが利用できない場合,高リスクの手技(例,歯科治療または気道手術)を行う前に適応となる。通常は手技の5日前から2日後まで弱化アンドロゲン(例,ダナゾール,スタノゾロール)を投与する。C1インヒビター(血漿由来または遺伝子組換え)が利用できる場合は,短期予防に弱化アンドロゲンを用いるよりむしろハイリスクの手技を行う1時間前にC1インヒビターを投与するよう提唱している専門家もいる。手技前の血漿製剤(例,新鮮凍結血漿2単位)も選択肢である(1)。

予防に関する参考文献

  1. 1.Prematta M, Gibbs JG, Pratt EL: Fresh frozen plasma for the treatment of hereditary angioedema.Ann Allergy Asthma Immunol 98 (4):383–388, 2007.

要点

  • 発症は通常,遺伝性血管性浮腫では小児期もしくは青年期,後天性血管性浮腫では成人期後期であり,後者は腫瘍性または自己免疫疾患の患者に多くみられる。

  • 軽度の外傷,ウイルス性疾患,寒冷曝露,妊娠,または特定の食物の摂取により発作が誘発されることがある;精神的ストレスにより悪化することもある。

  • 補体濃度を測定する;C4が低値でC1インヒビターの機能低下が認められた場合,遺伝性血管性浮腫または後天性C1インヒビター欠損症が示唆される。

  • 急性発作に対しては,精製ヒトC1インヒビター,遺伝子組換えC1インヒビター,エカランチド,またはイカチバントを用い,症状の緩和には,鎮痛薬,制吐薬,および補液を用いる;抗ヒスタミン薬およびコルチコステロイドは効果がない。

  • 長期予防には,血漿由来C1インヒビター,ラナデルマブ,またはベロトラルスタットの定期的な注入を用いる。

  • 短期予防(例,歯科治療または気道手術の前)には,C1インヒビター,弱化アンドロゲン(例,スタノゾロール,ダナゾール)または新鮮凍結血漿などの血漿製剤を検討する。

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