ホジキンリンパ腫

(ホジキン病)

執筆者:Peter Martin, MD, Weill Cornell Medicine;
John P. Leonard, MD, Weill Cornell Medicine
レビュー/改訂 2022年 5月
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ホジキンリンパ腫は,リンパ細網系細胞の限局性または播種性の悪性増殖であり,主にリンパ節組織,脾臓,肝臓,および骨髄に浸潤する。典型的な症状としては,無痛性のリンパ節腫脹のほか,ときに発熱,盗汗,意図しない体重減少,そう痒,脾腫,肝腫大などがある。診断はリンパ節生検に基づく。治療により大半の症例で治癒が得られるが,化学療法を基本として,抗体薬物複合体や免疫療法,放射線療法など,他の治療法を併用する場合もある。

リンパ腫の概要も参照のこと。)

米国では,毎年約8000例が新たにホジキンリンパ腫と診断されており,900人がこの疾患で死亡している。男女比は1.4:1である。10歳未満でのホジキンリンパ腫はまれで,15~40歳で最も多くみられ,60歳以上で2つ目のピークがみられる。

ホジキンリンパ腫の病態生理

ホジキンリンパ腫は,B細胞由来の細胞におけるクローン性転化から発生し,特徴的な二核性のリード-ステルンベルグ細胞がみられる。

原因は不明であるが,遺伝的感受性(例,家族歴)と環境因子が関係している。ホジキンリンパ腫との関連がみられる環境因子としては,フェニトイン,放射線療法,または化学療法による治療歴や,エプスタイン-バーウイルス(EBV)またはHIVへの感染歴などがある。以下の患者ではリスクがわずかに高い:

大半の患者では緩徐に進行する細胞性免疫(T細胞機能)の障害もみられ,進行期には,一般的には細菌感染症に,まれに真菌,ウイルス,原虫感染症の発生につながる。進行期には液性免疫(抗体産生)が抑制される。感染症または進行性疾患により死亡する可能性がある。

ホジキンリンパ腫の症状と徴候

ホジキンリンパ腫では,大半の患者で無痛性の頸部リンパ節腫脹がみられる。機序は不明であるが,アルコール飲料を摂取した直後に病変部位に疼痛がまれに生じ,早期に診断が示唆されることがある。

他の症状は,一般に細網内系を通して隣接部位に拡がったときに現れる。通常の治療では,難治性の激しいそう痒が早期に生じることもある。全身症状としては,発熱,盗汗,食欲不振とその結果としての意図しない体重減少(過去6カ月で10%を超える体重減少)などがあり,これらの症状は「B症状」と呼ばれている。B症状は深部のリンパ節(縦隔または後腹膜),内臓(肝臓),または骨髄への浸潤を示唆している場合があるため,予後推定上および病期診断上意義のある所見である。脾腫がしばしばみられるが,肝腫大はまれである。ペル-エブスタイン熱(数日間の高熱が数日から数週間の平熱または平熱以下の期間を挟んで規則的に繰り返す)が散見される。疾患の進行時に悪液質が多くみられる。

骨浸潤はしばしば無症状であるが,椎骨の造骨性病変(象牙椎)のほか,まれに溶骨性病変による疼痛や,圧迫骨折を引き起こすことがある。頭蓋内,胃,および皮膚の病変はまれであり,これが認められる場合は,コントロール不良のHIVに関連したホジキンリンパ腫を示唆している可能性がある。

腫瘍が形成する腫瘤によって局所が圧迫されることで,しばしば以下のような症候が現れる:

  • 肝内胆管または肝外胆管の閉塞に起因する黄疸

  • 腫瘍によるリンパ管閉塞に起因する限局性浮腫(リンパ浮腫

  • 縦隔病変による気管気管支の圧迫に起因する重度の呼吸困難および喘鳴

  • 肺実質への浸潤による呼吸困難,咳嗽,および/または胸部不快感(肺葉の硬化または気管支肺炎に類似することがある)

脊髄を圧迫する硬膜外浸潤により,対麻痺が現れることがある。腫大したリンパ節が頸部交感神経および反回神経を圧迫すると,ホルネル症候群および喉頭麻痺を来すことがある。神経根の圧迫によって神経痛が生じる。

ホジキンリンパ腫の診断

  • リンパ節生検

  • 病期診断のための胸部,腹部,および骨盤部のFDG-PET/CT

  • 神経症状がみられる場合のMRI

ホジキンリンパ腫は通常,身体診察またはルーチンの胸部X線で無痛性のリンパ節腫脹または縦隔リンパ節腫脹が検出された患者で疑われる(1)。伝染性単核球症(EBV)やサイトメガロウイルス(CMV)感染症などのウイルス感染症,トキソプラズマ症非ホジキンリンパ腫,または白血病によっても,同様のリンパ節腫脹がみられることがある。同様の胸部X線所見が肺癌サルコイドーシス,または結核によって生じることもある。縦隔腫瘤の評価については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

胸部X線検査または身体診察で異常を認めた場合は,最も効果的な生検手技を選択するために胸部のCTまたはPETで確認すべきである。縦隔リンパ節腫脹のみが認められる場合は,縦隔鏡検査,胸腔鏡検査(VATS),またはチェンバレン手技(頸部縦隔鏡検査による接近が難しい縦隔リンパ節の生検を可能にする左前に限定した縦隔切開術)が適応となることがある。 CTガイド下のコア生検も考慮してよいが,穿刺吸引細胞診はホジキンリンパ腫の診断に不十分である場合が多い。

生検では,組織球,リンパ球,単球,形質細胞,および好酸球から成る特徴的に不均一な細胞浸潤物の中にリード-ステルンベルグ細胞(大型の二核細胞)が認められる。古典的ホジキンリンパ腫には4つの組織型があるほか(ホジキンリンパ腫の病理組織学的亜型の表を参照),ホジキンリンパ腫の全症例の約5%のみを占める結節性リンパ球優位型もある。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の鑑別および古典的ホジキンリンパ腫と結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫の鑑別には,リード-ステルンベルグ細胞上の特定の抗原が役立つ場合がある。

一般に,白血球分画を含めた血算,赤血球沈降速度(赤沈),乳酸脱水素酵素(LDH),腎機能検査,および肝機能検査が施行される。検査で異常を認めることがあるが,診断の決め手にはならない。

血算では,軽微な多形核白血球増多がみられることがある。リンパ球減少が早期に生じることがあり,これは予後不良因子である。約20%の患者に好酸球増多がみられ,血小板増多が認められることもある。貧血は,小球性貧血が多く,通常は疾患進行により現れる。進行期の貧血でみられる鉄再利用障害は,血清鉄の低値,鉄結合能の低下,血清フェリチン高値,および骨髄鉄の増加を特徴とする。ときに骨髄浸潤による汎血球減少症がみられ,リンパ球減少型で生じることが多い。

血清アルカリホスファターゼ値の上昇が認められることがあるが,この上昇が必ずしも骨髄または肝臓への浸潤を示すとは限らない。白血球アルカリホスファターゼ,血清ハプトグロビン,およびその他の急性期反応物質の増加は,通常,活動性のホジキンリンパ腫から放出される炎症性サイトカインの存在を反映している。これらの検査は,ときに非特異的症状を評価するために行われ,ホジキンリンパ腫を示唆することがあるが,全てのリンパ腫患者で行われるわけではない。炎症の間接的なマーカーである赤血球沈降速度(赤沈)がよくオーダーされ,これは予後不良を予測する。

著明な脾腫がある患者では,脾機能亢進症がみられることがある。

胸部,腹部,および骨盤部のFDG(フルオロデオキシグルコース)-PET/CT検査は,ホジキンリンパ腫の病期診断で選択すべき画像検査である(以下参照)。FDG-PET検査を用いれば,骨病変がより高い頻度で検出される。FDG-PET/CT検査を行えない場合は,胸部,腹部,および骨盤部の造影CTを施行する。

その他の検査は所見に応じて施行する(例,脊髄圧迫の症状がある場合のMRI)。PET/CT画像が得られず,得られる所見によって治療方針が変わる可能性がある場合のみ,通常は骨髄生検を施行する。その他の推奨される検査としては,アントラサイクリン系薬剤の使用が予想される場合の心駆出率の測定や,ブレオマイシンを考慮する場合の肺機能検査などがある。

表&コラム
表&コラム

病期分類

診断後は,病期を判定して治療の指針とする。一般的に用いられているLugano分類(ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫のLugano分類の表を参照)には以下の因子が採用されている:

  • 症状

  • 身体所見

  • 胸部,腹部,および骨盤部CTなどの画像検査ならびにFDG-PETによる機能的画像検査の結果

  • ときに骨髄生検

病期分類に開腹は不要である。

表&コラム
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診断に関する参考文献

  1. 1.Cheson BD, Fisher RI, Barrington SF, et al: Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma: The Lugano classification.J Clin Oncol 32(27):3059-3068, 2014.

ホジキンリンパ腫の予後

古典的ホジキンリンパ腫の治癒率は,限局期では約85~90%であるのに対し,進行期では75~80%である。限局期は,しばしば予後良好群と予後不良群に細分される。予後不良の基準となる危険因子の例としては以下のものがある:

  • Bulky病変の存在

  • 4つ以上のリンパ節部位の病変

  • 年齢50歳以上

  • 赤血球沈降速度(赤沈)> 50mm/hかつB症状なし,または赤沈 > 30mm/hかつB症状(体重減少,発熱,または盗汗)あり

進行期ホジキンリンパ腫の危険因子としては以下のものがある:

  • 男性

  • 年齢45歳以上

  • 腫瘍性炎症の徴候(アルブミン低値,貧血,白血球増多,リンパ球減少症)

ただし,予後の推定に用いる危険因子の選択には依然として検討が必要である。治療を受けて完全寛解に達しなかった患者と12カ月以内に再発した患者は,予後不良である。

ホジキンリンパ腫の治療

  • 化学療法

  • 抗体薬物複合体(例,ブレンツキシマブ ベドチン)

  • 免疫療法(例,免疫チェックポイント阻害薬)

  • 放射線療法

  • ときに自家造血幹細胞移植

治療法の選択は複雑であり,疾患の正確な病期で決まる。治療前に適切であれば,男性には精子バンクの利用を勧め,女性は妊孕性温存の選択肢について腫瘍医および不妊治療専門医と相談すべきである。

初期治療

限局期では,一般にドキソルビシン(Adriamycin),ブレオマイシン,ビンブラスチン,およびダカルバジン(ABVD)の短期レジメンによる化学療法を施行し,これに放射線療法を併用する場合もある。縦隔にbulky病変がある患者では,化学療法の期間を長くしたり,別の種類の化学療法を用いたりするとともに,しばしば放射線療法を併用する。

進行期では,2つの大規模ランダム化試験のいずれかの知見に基づいた治療が可能である。RATHL(Response-Adapted Therapy in Advanced Hodgkin Lymphoma)試験では,ABVDによる治療が行われ,2サイクル後にPETで陰性と判定された患者にはさらに4サイクルのAVD(ブレオマイシンなし)が投与された一方,PETで陽性と判定された患者はBEACOPP(ブレオマイシン,エトポシド,ドキソルビシン,シクロホスファミド,ビンクリスチン,プロカルバジン,およびプレドニゾン)に移行した(1)。ECHELON-1試験では,AVDと抗CD30抗体薬物複合体(ブレンツキシマブ ベドチン)による治療を受けた患者の方が,ABVDによる治療を受けた患者よりも成績良好となり,高リスクの若年患者ほどベネフィットが大きいようであった(2)。60歳以上の患者では,肺毒性のリスクが高まるため,ブレオマイシンの使用は一般に避けられており,高齢患者またはフレイル患者に対する至適管理方針は標準化されていない。

二次以降の治療

一次治療で治癒しない患者に対しては,複数の二次化学療法レジメンが許容可能と考えられている。二次治療で良好な反応が得られた患者では,大量化学療法と自家造血幹細胞移植を考慮すべきである一方,反応が得られない患者は三次治療または同種造血幹細胞移植の適応となる場合がある。

2種類以上の治療歴を有するホジキンリンパ腫患者の治療には,ブレンツキシマブ ベドチンと免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブおよびペムブロリズマブを使用することができるが,これらは二次治療のレジメンで使用されることが増えてきている。

治療の合併症

化学療法は,特にアルキル化薬(メクロレタミン,シクロホスファミド,プロカルバジン),ドキソルビシン,エトポシドなどの薬剤を使用した場合,治療後3~10年で発生する白血病のリスクを高める。放射線療法は悪性固形腫瘍(例,乳房,消化管,肺,甲状腺,軟部組織)のリスクを高める。ドキソルビシンと縦隔照射は,心筋症冠動脈硬化症,および心臓弁膜症のリスクを高める。ブレオマイシンは,重症化してまれに死に至ることもある肺損傷を引き起こす可能性がある。

治療後のサーベイランス

寛解導入療法の終了時点でPET陰性とならない患者には全例で生検を行うか継続的な画像検査により注意深くフォローアップすべきであり,残存病変が認められる場合は,追加の治療が必要である。寛解になれば,5年間にわたり再発の症候について患者を追跡すべきである。過去または新規の部位での病変の再出現と定義される再発の所見が認められた患者には,PET/CTまたはCT単独による画像検査を行うべきである。無症状の患者におけるルーチンの計画的な画像検査は必須ではない。治療後のサーベイランスのスケジュールについては,ホジキンリンパ腫の治療後のサーベイランスの表を参照のこと。

表&コラム
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治療に関する参考文献

  1. 1.Johnson P, Federico M, Kirkwood A, et al: Adapted treatment guided by interim PET-CT scan in advanced Hodgkin's lymphoma.N Engl J Med 374(25):2419– 2429, 2016.

  2. 2.Connors JM, Jurczak W, Straus DJ, et al: Brentuximab vedotin with chemotherapy for stage III or IV Hodgkin's lymphoma.N Engl J Med 378(4):331–344, 2018.Epub 2017 Dec 10.

  3. 3.Straus DJ, Długosz-Danecka M, Connors JM, et al: Brentuximab vedotin with chemotherapy for stage III or IV classical Hodgkin lymphoma (ECHELON-1): 5-year update of an international, open-label, randomised, phase 3 trial.Lancet Haematol 8(6):e410–e421, 2021. doi: 10.1016/S2352-3026(21)00102-2

要点

  • ホジキンリンパ腫は,B細胞由来である。

  • 通常は,胸部X線または身体診察で検出された無痛性のリンパ節腫脹か,偶発的な頸部または縦隔のリンパ節腫脹で診断に至る。

  • 生検で本疾患に特有な二核のリード-ステルンベルグ細胞がみられる。

  • 多剤併用化学療法とときに追加の全身療法または放射線療法により,大半の患者が治癒する。

  • その後の治療選択肢としては,大量化学療法,自家造血幹細胞移植,またはブレンツキシマブ ベドチンと免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブおよびペムブロリズマブの併用などがある。

より詳細な情報

医師向けの情報と患者向けの支援および情報を提供する英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Leukemia & Lymphoma Society: Resources for Healthcare Professionals : provides educational resources for health care practitioners as well as information for patient referrals

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