選択的IgA欠損症では,IgA濃度が7mg/dL(70mg/L,0.4375μmol/L)未満で,IgGおよびIgMの濃度は正常である。最も頻度が高い原発性免疫不全症である。多くは無症状であるが,一部の患者は繰り返す感染症および自己免疫疾患を発症する。経過中に分類不能型免疫不全症を発症する患者もあり,その一部は自然に寛解する。診断は血清免疫グロブリンの測定による。治療は,必要に応じて(ときに予防的)抗菌薬投与とし,通常はIgAを含む血液製剤を避ける。
(免疫不全疾患の概要および免疫不全疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。)
IgA欠損症にはB細胞の異常が関与する。有病率は1/100~1/1000である(1)。
遺伝パターンは不明であるが,選択的IgA欠損症の家系員がいる場合は,リスクが約50倍まで増加する(2)。
一部の患者はTACI(transmembrane activator and calcium-modulator and cyclophilin ligandinteractor)遺伝子に変異を有する。選択的IgA欠損症は,特定のHLAハプロタイプの患者でも生じる頻度が高い;主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスIII領域にまれなアレルまたは遺伝子欠失がよくみられる。
一部の患者では,フェニトインやサラゾスルファピリジン,金,ペニシラミンなどの薬剤が後天性IgA欠損症を引き起こすことがある。
総論の参考文献
1. Palmer DS, O'Toole J, Montreuil T, et al.Screening of Canadian Blood Services donors for severe immunoglobulin A deficiency. Transfusion 2010;50(7):1524-1531.doi:10.1111/j.1537-2995.2010.02588.x
2.Vorechovský I, Zetterquist H, Paganelli R, et al.Family and linkage study of selective IgA deficiency and common variable immunodeficiency. Clin Immunol Immunopathol 1995;77(2):185-192.doi:10.1006/clin.1995.1142
選択的IgA欠損症の症状と徴候
大半の選択的IgA欠損症患者は無症状である;そうでない場合は,反復性の副鼻腔肺感染症,下痢,アレルギー(例,喘息,随伴性の鼻茸),または自己免疫疾患(例,セリアック病または炎症性腸疾患,全身性エリテマトーデス,慢性活動性肝炎)がみられる。
輸血,免疫グロブリン(IVIG),その他の血液製剤中に存在するIgAに曝露した後に,抗IgA抗体が出現することがあり,まれに,それらの製剤に再び曝露した場合にアナフィラキシー反応が起きることもある。
選択的IgA欠損症の診断
血清Ig濃度の測定
ワクチン抗原に対する抗体応答の測定
繰り返す感染症(ジアルジア症を含む)がみられる患者,アナフィラキシー性輸血反応がみられた患者,分類不能型免疫不全症(CVID),IgA欠損症,または自己免疫疾患の家族歴がある患者,および後天性IgA欠損症を引き起こす薬剤を服用している患者では,選択的IgA欠損症が疑われる。
IgA欠損症が疑われる患者では免疫グロブリン値を測定すべきであり,血清IgA値が7mg/dL(70mg/L,0.4375μmol/L)未満で,かつIgGおよびIgM値が正常であれば,診断が確定する(1)。ワクチン抗原の投与前後にIgG抗体価を測定する;患者の抗体価上昇は正常であるはずである(2~3週間後の抗体価上昇が2倍以上)。
IgAが低値の大半の患者は臨床的に意味のある症状を示さないため,家系員の検査は推奨されない。しかしながら,輸血関連反応の既往がある患者ではIgA欠損症の検査を行うべきであり,特に家系員にIgA欠損症患者がいる場合はその必要がある。
診断に関する参考文献
1.Bonilla FA, Khan DA, Ballas ZK, et al: Practice parameter for the diagnosis and management of primary immunodeficiency. J Allergy Clin Immunol 136(5):1186–205.e2078, 2015.doi:10.1016/j.jaci.2015.04.049
選択的IgA欠損症の治療
治療には必要に応じて抗菌薬投与および重度の症例では予防的抗菌薬投与
IgAを含有する血液製剤の回避
アレルギー性症状を治療する。耳,副鼻腔,肺,消化管,または泌尿生殖器の細菌感染症に対しては必要に応じて抗菌薬を投与する。重度の症例では,抗菌薬を予防的に投与する。
免疫グロブリン補充療法では主にIgGが含まれ,IgAは最小限しか含まれないため,IgA欠損症の患者には有益ではない。一方で,患者がIgAに感作したり,以前に抗IgA抗体を発現していた患者でアナフィラキシー反応を誘発したりするリスクは依然として存在する。まれであるが,ワクチンに対する抗体応答がみられない場合,および予防的抗菌薬投与が感染予防に効果がなかった場合は,IgA含有量を極めて低く抑えるよう特別に調合した免疫グロブリン製剤を試みてもよく,いくらか効果が得られる可能性がある。
IgAは抗IgA介在性アナフィラキシー反応を誘発する可能性があるため,IgA欠損症の患者ではlgAを含有する血液製剤を避ける。赤血球輸血が必要であれば,洗浄濃厚赤血球のみは用いてもよい。その他の血液成分が必要な場合は,IgAを含まず,かつ細胞成分の洗浄がなされているべきである。
選択的IgA欠損症の患者には,アナフィラキシーを引き起こしうる血漿または免疫グロブリン製剤が偶発的に投与されることを防止するために,個人医療情報カードの携帯を勧める。
選択的IgA欠損症の予後
少数のIgA欠損症患者は経過中にCVIDを発症する一方,自然に改善する患者もいる。自己免疫疾患が出現した場合,予後は不良である。
要点
選択的IgA欠損症は最もよくみられる原発性免疫不全症である。
無症状のこともあるし,繰り返す感染症または自己免疫疾患に罹患することもある;経過中にCVIDを発症する患者もいるが,選択的IgA欠損症が自然に消失する患者もいる。
輸血に対するアナフィラキシー反応,後天性IgA欠損を引き起こす薬剤の使用,繰り返す感染症の既往,または疑わしい家族歴がある場合は,選択的IgA欠損症を疑う。
ワクチンを接種した後に免疫グロブリン濃度および抗体価を測定して診断を確定する;IgA濃度が7mg/dL(70mg/L)未満で,IgGおよびIgM濃度と抗体価がいずれも正常であれば,診断につながる。
必要に応じて抗菌薬を投与し,重度の症例では予防的抗菌薬投与とする。
IgA含有量が最小限まで減らされていない血液製剤または免疫グロブリンの投与を避ける。



