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慢性閉塞性肺疾患(COPD)

執筆者:

Robert A. Wise

, MD, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 1月
本ページのリソース

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例では体重減少,気胸,頻回の急性代償不全のエピソード,右心不全,かつ/または急性もしくは慢性呼吸不全などを合併することがある。診断は病歴,身体診察,胸部X線,および肺機能検査に基づく。治療は気管支拡張薬,コルチコステロイド,また必要があれば酸素および抗菌薬を投与する。重症COPD患者の約50%は診断から10年以内に死亡する。

COPDは以下の要素で構成される:

  • 慢性閉塞性気管支炎(臨床的定義)

  • 気腫(病理学的または放射線学的定義)

患者の多くは両方の特徴をもつ。

慢性閉塞性気管支炎は,気流閉塞(airflow obstruction)を伴う慢性の気管支炎である。慢性気管支炎は,ほぼ毎日湿性咳嗽がみられる週が合計で少なくとも3カ月続き,かつそのような年が2年間連続することと定義される。慢性気管支炎は,スパイロメトリーにより気流閉塞の存在が判明すれば,慢性閉塞性気管支炎となる。慢性の喘息性気管支炎は,類似かつ重複する病態であり,慢性の湿性咳嗽,喘鳴,および部分的に可逆的な気流閉塞によって特徴づけられ,主に喘息の病歴のある喫煙者に生じる。一部の症例では,慢性閉塞性気管支炎と慢性の喘息性気管支炎の区別は不明瞭であり,ときに喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)と呼ばれることがある。

肺気腫は,肺実質の破壊であり,弾性収縮力の喪失ならびに肺胞中隔および気道開存のための牽引力の喪失を招き,その結果気道虚脱の傾向が強まる。それに続いて肺の過膨張,気流制限,エアトラッピングが起こる。気腔が拡大し,やがてブレブまたはブラが発生することもある。

疫学

米国では,約2400万人に気流制限がみられ,そのうち約1200万人はCOPDと診断されている。COPDは死亡原因の第3位であり,1980年の死亡者数52,193人と比較して,2010年の死亡者数は135,000人であった。1980年から2000年の間に,COPDの死亡率は64%上昇し(40.7/100,000から66.9/100,000へ),それ以降横ばいである。有病率,発生率,および死亡率は年齢が高くなるとともに上昇する。有病率は現在,女性の方が高いが,全死亡率は男女で同程度である。COPDは,α1-アンチトリプシン欠乏症α1-antiprotease inhibitor deficiency)とは無関係に,家族集積性があるようである。

COPDは,発展途上国における喫煙の増加,感染症による死亡の減少,およびバイオマス燃料(例えば,木材,牧草,または他の有機資材)の広範囲の利用により,世界的に増加しつつある。またCOPDによる死亡率は,先進国よりも発展途上国に対し影響を与える可能性がある。2005年には,世界のCOPDの患者数は6400万人,死亡者数は300万人を超えており,2030年までに世界の死因の第3位になると予測されている。

病因

COPDにはいくつかの原因がある:

  • 喫煙(および頻度は低くなるがその他の吸入曝露)

  • 遺伝因子

吸入曝露

あらゆる吸入曝露のうち,ほとんどの国において喫煙が第一の危険因子となっているが,臨床的に明らかなCOPDを発症するのは喫煙者の約15%のみである;40 pack-year以上の曝露歴は強い予測因子である。発展途上国では,室内での調理や暖房によって生じる煙が原因として重要である。すでに気道反応性(メサコリン吸入への感受性亢進により定義される)のある喫煙者は,たとえ臨床的に喘息がなくても,反応性がない喫煙者と比べてCOPDを発症するリスクが高い。

低体重,小児期の呼吸器疾患,ならびにタバコの受動喫煙,大気汚染,および職業性塵埃(例,鉱物塵または綿塵)または吸入化学物質(例,カドミウム)への曝露は,COPDのリスクを高めるが,喫煙に比べれば重要性は低い。

遺伝因子

原因となる最も明確な遺伝性疾患は,α1-アンチトリプシン欠乏症で,これは非喫煙者における肺気腫の重要な原因であり,喫煙者においては疾患への感受性に影響を与える。

近年,特定の集団において30を超える遺伝子多型がCOPDまたは肺機能の低下と関連することが判明しているが,α1-アンチトリプシンと同程度に重大であると示されているものはない。

病態生理

様々な要因が気流制限やCOPDのその他の合併症を引き起こす。

炎症

吸入曝露は気道および肺胞における炎症反応の誘因となるが,遺伝的感受性を有する人々においては,それがCOPDの発症につながる。その過程にはプロテアーゼ活性の増大とアンチプロテアーゼ活性の減少が介在すると考えられている。好中球エラスターゼ,マトリックスメタロプロテアーゼ,およびカテプシンなどの肺プロテアーゼは,正常な組織修復過程においてエラスチンや結合組織を分解する。その活性は,正常では,α1-アンチトリプシン,気道上皮由来の分泌型白血球プロテアーゼインヒビター,エラフィン,およびマトリックスメタロプロテアーゼ組織インヒビターなどのアンチプロテアーゼにより均衡が保たれる。COPD患者では,炎症過程の一部として,活性化された好中球および他の炎症細胞がプロテアーゼを放出し,プロテアーゼ活性がアンチプロテアーゼ活性を上回り,その結果,組織の破壊および粘液の過分泌が生じる。

好中球およびマクロファージの活性化はまた,フリーラジカル,スーパーオキシドアニオン,および過酸化水素の蓄積にもつながり,それがアンチプロテアーゼを阻害して気管支収縮,粘膜浮腫,および粘液過分泌を引き起こす。好中球誘発性の酸化傷害,線維化誘導神経ペプチド(profibrotic neuropeptide[例,ボンベシン])の放出,および血管内皮増殖因子の濃度低下は,アポトーシスによる肺実質破壊に寄与している可能性がある。

疾患重症度が増すとともにCOPDの炎症は悪化し,重症(進行)例では,禁煙したとしても炎症は完全には消失しない。この慢性炎症はコルチコステロイドに反応しないようである。

感染

呼吸器感染症(COPD患者は感受性が高い)は肺破壊の進行を拡大させる。

細菌,特にインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は,約30%のCOPD患者の下気道に定着する。より重症例(例,入院歴のある患者)では,緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)または他のグラム陰性細菌の定着がよくみられる。喫煙および気流閉塞が下気道の粘液クリアランスの障害につながる場合があり,それが感染の素因となる。繰り返す感染が炎症による負荷を増大し,それが疾患の進行を速める。しかしながら,抗菌薬の長期使用が,COPDの進行を遅らせるというエビデンスはない。

気流制限

COPDの主要な病態生理学的特徴は,気道の狭小化/閉塞,弾性収縮力の喪失,またはその両方に起因する気流制限である。

気道の狭小化/閉塞は,炎症による粘液分泌過多,粘液栓子,粘膜浮腫,気管支攣縮,気管支周囲線維化,末梢気道の破壊,あるいはこれらの機序が組み合わさることにより生じる。肺胞中隔が破壊され,肺実質の気道への付着が弱くなることにより,呼気時の気道閉塞が助長される。

拡大した肺胞腔は,ときに癒合してブラ(直径1cm以上の気腔と定義される)となる。局所的に重度の気腫が生じた領域では,ブラ内は完全な空洞となるか,紐状の肺組織が内部を走行した状態となる;ときに一側胸郭全体をブラが占めることもある。これらの変化は弾性収縮力の喪失および肺の過膨張につながる。

気道抵抗の増大は,呼吸仕事量を増大させる。肺の過膨張は,気道抵抗を低下させるものの,やはり呼吸仕事量を増大させる。呼吸仕事量の増大は,低酸素症および高炭酸ガス血症を伴う肺胞低換気につながることがあるが,低酸素症は,換気/血流(V/Q)不均衡によっても引き起こされる。

合併症

気流制限およびときに生じる呼吸機能不全に加え,以下のような合併症がみられる:

  • 肺高血圧症

  • 呼吸器感染症

  • 体重減少およびその他の併存症

慢性低酸素血症は肺血管の緊張を高め,これがびまん性に起これば,肺高血圧および肺性心を引き起こす。肺胞中隔の破壊による肺毛細血管床の破壊により,肺血管圧の上昇が助長されると考えられる。

COPD患者では,ウイルス性または細菌性呼吸器感染症がよくみられ,急性増悪の原因の大きな割合を占める。現在のところ,急性細菌感染の原因は,慢性的に定着した細菌の増殖過多ではなく新しい細菌株の獲得によると考えられている。

体重が減少する可能性があり,これはおそらくカロリー摂取量の減少および腫瘍壊死因子(TNF)αの血中濃度上昇の結果である。

QOLおよび生存率に悪影響を与えるその他の併存疾患または合併症には,骨粗鬆症うつ病不安冠動脈疾患肺癌などの癌,筋萎縮,および胃食道逆流などがある。これらの疾患がどの程度までCOPD,喫煙,およびそれに伴う全身性炎症の結果であるかは不明である。

症状と徴候

COPDは何年もかけて発生および進行する。患者の多くはタバコ20本/日以上の喫煙を20年以上続けている。

  • 通常は湿性咳嗽が最初の症状であり,40代から50代の喫煙者に発生する。

  • 進行性,持続性,労作性,または呼吸器感染時に増悪する呼吸困難が,患者が50代後半から60代の頃に現れる。

喫煙を継続し,生涯におけるタバコへの曝露が多い患者では,通常は症状の進行が速い。起床時の頭痛は,さらに進行した症例でみられ,夜間の高炭酸ガス血症または低酸素血症を示唆する。

COPDの徴候には,喘鳴,呼気相の延長,心音および肺音の減弱として現れる肺の過膨張,および胸郭の前後径の増大(樽状胸)などがある。進行した肺気腫患者は,体重が減少し,活動低下,低酸素症,または全身性の炎症メディエータ(TNF-αなど)放出に起因する筋萎縮を経験する。

進行例の徴候には,口すぼめ呼吸,呼吸補助筋の使用,吸気時における下部肋間部の奇異性の内側への動き(Hoover徴候),およびチアノーゼなどがある。肺性心の徴候には,頸静脈怒張,肺動脈成分の亢進を伴うII音の分裂,三尖弁閉鎖不全の雑音,および末梢浮腫などがある。COPDでは肺が過膨張しているため,傍胸骨拍動はまれである。

自然気胸(おそらくブラの破裂と関連する)が起こることもあり,肺の状態が突然悪化したCOPD患者ではこれを疑うべきである。

急性増悪

急性増悪はCOPDの経過中に散発的に起こり,その予兆は症状の重症化である。増悪の具体的な原因の同定はほとんどの場合不可能であるが,しばしばウイルス性上気道感染症,急性の細菌性気管支炎,または呼吸器刺激物への曝露が原因となる。COPDが進行するにつれて,急性増悪はより頻繁になる傾向があり,平均して1~3エピソード/年である。

診断

  • 胸部X線

  • 肺機能検査

診断は病歴,身体診察,および胸部画像検査により示唆され,肺機能検査で確定される。同様の症状は,喘息,心不全,および気管支拡張症によっても起こりうる( COPDの鑑別診断)。COPDと喘息はときに容易に混同され,重複することもある(気管支喘息-COPDオーバーラップ症候群,ACOS)。

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COPDの鑑別診断

診断

発症時期

画像検査結果

その他の特徴

COPD

中年期

ときに肺の過膨張,ブラ,胸骨後方の気腔の増大,かつ/または気管支壁肥厚(胸部X線でわかる)がみられるが,通常は診断には有用でなく,主に他の疾患の除外のために行われる

緩徐に進行する症状

喫煙歴またはタバコへの曝露歴,またはその他の形態の喫煙歴

生涯の早い時期(しばしば小児期)

通常は正常,過膨張または区域性無気肺がみられることもある

症状は日毎に大きく変動する

症状は夜間または早朝に悪化することが多い

アレルギー,鼻炎,または湿疹の病歴

しばしば喘息の家族歴

全年齢層,しかし高齢期または中年期に最も多い

気管支拡張および気管支壁肥厚(胸部X線または胸部CTでみられる)

しばしば大量の膿性痰がみられる

しばしば最近の細菌感染症の既往がある

びまん性汎細気管支炎

通常,10~60歳の間(平均は40歳)

胸部X線および高分解能CTでみられる,びまん性の小葉中心性結節影および過膨張

大抵は男性の非喫煙者

ほぼ全ての患者に慢性副鼻腔炎がみられる

アジア人の系統に多い

全年齢層,しかし高齢期または中年期に最も多い

心拡大,胸水,大葉間裂内の液体貯留,ときに肺水腫(胸部X線でみられる)

気流制限を伴わない肺気量制限(肺機能検査で発見される)

閉塞性細気管支炎

比較的若年での発症

低吸収域(呼気時のCTでみられる)

非喫煙者にみられ,関節リウマチまたは煙霧への急性曝露の既往がある場合がある

肺移植または骨髄移植の既往

全年齢層

肺の浸潤影(典型的には多結節性),ときに肺門リンパ節の石灰化(胸部X線でみられる)

微生物学的検査により確定

通常,結核の有病率が高い地域でみられる

Data adapted from The Global Strategy for the Diagnosis, Management and Prevention of COPD Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD), 2016. Available at http://www.goldcopd.org.

気流制限の要素があると考えられる全身性疾患はCOPDを示唆しうる;そのような疾患には,HIV感染,静脈内投与薬剤の乱用(特にコカインおよびアンフェタミン),サルコイドーシス,シェーグレン症候群,閉塞性細気管支炎,リンパ脈管筋腫症,好酸球性肉芽腫などがある。COPDと間質性肺疾患(ILD)の鑑別は,ILDにおいては胸部画像検査で間質の陰影が増加し,肺機能検査で閉塞性換気障害ではなく拘束性換気障害を示すことにより可能である。中にはCOPDおよびILDが併存する(気腫合併肺線維症[CPFE])例もあり,この場合肺気量は比較的保たれているが,ガス交換能が重度に障害されている。

肺機能検査

COPDが疑われる患者では,気流制限の確認,その重症度および可逆性の定量化,ならびにCOPDと他疾患との鑑別のために肺機能検査を行うべきである。肺機能検査は,進行のフォローアップや治療に対する反応のモニタリングにも有用である。主な診断検査項目は以下の通りである:

  • FEV1:最大吸気に続く努力呼気で,最初の1秒間に呼出される気量

  • 努力肺活量(FVC):最大努力で呼出した全気量

  • フローボリューム曲線:努力最大呼気および吸気を行う間に,スパイロメトリーで気流および気量を同時に記録したもの

FEV1,FVC,およびFEV1/FVCの比の低下は,気流制限の明確な指標である。フローボリューム曲線は,呼気時に凹形のパターンを示す( フローボリューム曲線)。COPDの発症とその後の症状発現の様式には基本的に2つの経過がある。1つは,成人期初期の肺機能は正常で,その後,FEV1の減少率が高まる(約 ≥ 60mL/年)という経過である。もう1つの経過は,成人期初期に肺機能が障害され,しばしば喘息その他の小児呼吸器疾患と関連するものである。これらの患者では,FEV1の正常な加齢に伴う減少率(約30mL/年)を示しながらCOPDが発症する。この2つの経過モデルは役立つ概念であるものの,患者ごとに非常に多様な軌跡を辿る可能性がある(1)。FEV1がおよそ1L未満に低下すると,患者は日常生活動作で呼吸困難を生じるようになる(しかし,呼吸困難は気流制限の程度よりも動的過膨張[労作時の不完全呼出による進行性の過膨張]の程度に密接に関連する)。FEV1がおよそ0.8L未満に低下すると,低酸素血症,高炭酸ガス血症,および肺性心のリスクが生じる。

FEV1およびFVCは外来でスパイロメトリーにより簡単に測定でき,症状および死亡率と相関があるため,これらの値により疾患の重症度( COPDの分類および治療)が定義される。正常の基準値は患者の年齢,性別,および身長により決定される。

追加の肺機能検査は,肺容量減少手術の前など,特定の状況でのみ必要とされる。その他の検査結果の異常には以下のようなものがある:

  • 全肺気量の増加

  • 機能的残気量の増加

  • 残気量の増加

  • 肺活量の減少

  • 1回呼吸法(single breath)による一酸化炭素拡散能(DLco)の低下

全肺気量,機能的残気量,および残気量はCOPDでは増加するが,拘束性肺疾患では減少するため,これらの測定値はCOPDと拘束性肺疾患の鑑別に役立つ。

DLcoの低下は非特異的であり,間質性肺疾患など肺血管床を侵す他の障害でも低下するが,喘息ではDLcoが正常または上昇するため,肺気腫と喘息との鑑別に役に立つ。

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COPDの分類および治療

患者群

所見

治療

代替治療

全ての患者

危険因子(例,喫煙)の回避

毎年のインフルエンザの予防接種

肺炎球菌多糖体ワクチン

呼吸リハビリテーションの一環としての運動トレーニング

合併症の治療

A(低リスク,症状は少ない)

FEV1が予測値の ≥ 50%

0~1回増悪/年

mMRC*:0~1

必要に応じてSABAまたはSAC

LAC

または

LABA

または

SABAとSACの併用

B(低リスク,症状はより多い)

FEV1が予測値の ≥ 50%

0~1回増悪/年

mMRC ≥ 2

LAC

または

LABA

LABAとLACの併用

または

SABAかつ/またはSAC

C(高リスク,症状は少ない)

FEV1が予測値の < 50%

≥ 2回増悪/年

mMRC:0~1

ICSとLABAの併用

または

LAC

LABAとLACの併用

または

LACとPDE4Iの併用

または

LABAとPDE4Iの併用

D(高リスク,症状はより多い)

FEV1が予測値の < 50%

≥ 2回増悪/年

mMRC:≥ 2

ICSとLABAの併用

かつ/または

LAC

ICSとLABAとLACの併用

または

ICSとLABAとPDE4Iの併用

または

LABAとLACの併用

または

LACとPDE4Iの併用

*COPD Assessment Test (CAT)はmMRCの代わりに症状評価に用いられることがある。MRCの定義については, Modified British Medical Research Council(mMRC)Questionnaireを用いた息切れの評価を参照のこと。

FEV1 = 1秒量(1秒間の努力呼気量);ICS = 吸入コルチコステロイド;LABA = 長時間作用型β作動薬;LAC = 長時間作用型抗コリン薬;mMRC = Modified British Medical Research Council(mMRC)Questionnaire;PDE4I = ホスホジエステラーゼ4阻害薬;SABA = 短時間作用型β作動薬;SAC = 短時間作用型抗コリン薬。

Data from the Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of Chronic Obstructive Pulmonary Disease (revised 2011). www.goldcopd.org.

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Modified British Medical Research Council(mMRC)Questionnaireを用いた息切れの評価

グレード

息切れ

0

激しい運動中以外みられない

1

平地を急いで歩いている時,または緩い坂道を歩いて登っている時に生じる

2

平地で同年齢の人より歩く速度が遅くなる

または

平地を自分のペースで歩いている時,息継ぎのために立ち止まってしまう

3

平地を約100mまたは数分歩いた後,息継ぎのために立ち止まってしまう

4

外出が妨げられる程,重度である

または

衣服の着脱中に生じる

Adapted from Mahler DA, Wells CK: Evaluation of clinical methods for rating dyspnea. Chest 93:580–586, 1988.

画像検査

胸部X線では特徴的な所見がみられる場合がある。肺気腫の患者では,横隔膜の平坦化として現れる肺過膨張(すなわち,胸骨と横隔膜前方のなす角が側面像で正常の45°に対し,90°を超える),肺門部の血管の急峻な先細り(tapering),およびブラ(すなわち,弓状の毛髪のように細い線に囲まれた > 1cmのX線透過像)などの変化がみられる。その他の典型的な所見には,胸骨後方の気腔の拡大および幅の狭い心陰影などがある。主に肺底部に生じる気腫性変化は,α1-アンチトリプシン欠乏症を示唆する。肺は正常のように見えるか,または肺実質の喪失に伴う透過性の上昇がみられる。慢性閉塞性気管支炎の患者では,胸部X線は正常か,または気管支壁肥厚の結果として両側肺底部に気管支血管影の増加がみられる場合がある。

肺門部の突出は,中心部の肺動脈の拡大を示唆し,これは肺高血圧を意味する。肺性心で生じる右室拡大は,肺の過膨張により認識できないこともあれば,心陰影の胸骨後腔への侵入として示されるか,または過去の胸部X線写真と比べて心陰影の横幅が広がることによって示されることもある。

胸部CTでは,胸部X線では明らかではない異常が示される場合があり,肺炎,塵肺症,肺癌などの併存疾患または合併症が示唆されることがある。CTは肺気腫の程度と分布の評価に有用であり,これらは視覚的スコア,または肺密度の分布を分析することによって推定される。COPD 患者でCT撮影が適応となるのは,肺容量減少手術の評価,胸部X線で明らかでないまたは除外できない併存疾患または合併症が疑われる場合,肺癌の疑いがある場合,および肺癌のスクリーニングを行う場合などである。

補助検査

α1-アンチトリプシン欠乏症を検出するため,50歳未満で症状があるCOPD患者,および非喫煙患者でCOPDのある全年齢層で,α1-アンチトリプシン濃度の測定を行うべきである。α1-アンチトリプシン欠乏症を示唆する他の指標には,若年でのCOPDまたは説明のつかない肝疾患の家族歴,下葉に分布する気腫,抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性の血管炎を伴うCOPDなどがある。α1-アンチトリプシン濃度が低ければ,α1-アンチトリプシン表現型判定のための遺伝子検査により診断を確定すべきである。

心電図は,呼吸困難の原因として心疾患を除外するためにしばしば施行されるが,進行した肺気腫の典型例では,肺の過膨張による立位心を伴ったびまん性のQRS波低電位,および右房拡大によるP波の増高またはPベクトルの右軸偏位を認める。右室肥大の所見には,V1誘導でRまたはR波がS波と同高,あるいはS波より高い;V6誘導でR波がS波より低い;右脚ブロックを伴わない > 110°の右軸偏位;またはこれらの所見の組合せなどがある。多源性心房頻拍は,COPDに随伴することのある不整脈であるが,これはP波の多形性およびPR間隔の変動を伴った頻拍性不整脈として出現する。

心エコー検査は,ときに右室機能および肺高血圧の評価に有用であるが,COPDの患者ではエアトラッピングがあるため技術的に困難である。心エコー検査は,左室疾患または心臓弁膜症の併存が疑われる場合に,最もよく利用される。

血算はCOPDの評価において診断的価値はほとんどないが,慢性低酸素血症のある患者では,赤血球増多症(Hct > 48%)を示すことがある。貧血(COPD以外の原因による)のある患者では,不相応に激しい呼吸困難がみられる。

血清電解質分析の重要性は低いが,慢性の高炭酸ガス血症があれば,重炭酸濃度の上昇を認めることがある。

増悪の評価

急性増悪の患者では通常,咳嗽,喀痰,呼吸困難,および呼吸仕事量の増加,またパルスオキシメトリー上の酸素飽和度の低下,発汗,頻脈,不安,およびチアノーゼなどが複合してみられる。しかしながら,二酸化炭素の滞留を伴う増悪患者は,嗜眠または傾眠状態といった,非常に異なる容態を示すことがある。

入院を必要とする全ての急性増悪患者で,低酸素血症および高炭酸ガス血症を定量化するための検査(例,動脈血ガス分析)を行うべきである。低酸素血症を伴わずに高炭酸ガス血症がみられることがある。

呼吸性アシデミアの患者に,Pao2< 50mmHgまたはPaco2> 50mmHgがみられれば,急性呼吸不全と定義される。しかしながら,急性呼吸不全がなくとも,慢性的にこのレベルのPao2やPaco2の値を示す患者もいる。

胸部X線はしばしば肺炎または気胸を確認するために行われる。極めてまれではあるが,長期的にコルチコステロイドの全身投与を受けている患者では,浸潤影がアスペルギルス(Aspergillus)肺炎を意味することがある。

黄色または緑色の喀痰は,喀痰中の好中球を示す信頼できる指標であり,細菌の定着または感染を示唆する。入院患者では通常培養を行うが,外来患者では通常は必ずしも必要ではない。外来患者の検体のグラム染色では,しばしばグラム陽性双球菌(肺炎球菌[Streptococcus pneumoniae]),グラム陰性桿菌(インフルエンザ菌[H. influenzae]),またはその両方の微生物が混在した好中球像が通常みられる。その他の中咽頭の常在菌,例えばMoraxellaBranhamellacatarrhalisも,ときに増悪を引き起こす。入院患者では,培養により,耐性を示すグラム陰性菌(例,Pseudomonas属),またはまれにブドウ球菌[Staphylococcus]属がみられることもある。

診断に関する参考文献

予後

気道閉塞の重症度からCOPD患者の生存率が予測できる。FEV1 が予測値の50%以下である患者の死亡率は,一般集団よりもわずかに高い。FEV1が0.75~1.25Lであれば,5年生存率は約40~60%であり,0.75L未満であれば,約30~40%である。

より正確な死亡リスクの予想は,BMI(B),気流閉塞の程度 (O:obstruction,FEV1),呼吸困難の程度(D:dyspnea,Modified British Medical Research Council[mMRC]Questionnaire[ Modified British Medical Research Council(mMRC)Questionnaireを用いた息切れの評価]で測定),および運動耐容量(E:exercise capacity,6分間歩行試験で測定)を同時に測定することで可能であり,これはBODE指数と呼ばれる。また,高齢,心疾患,貧血,安静時頻脈,高炭酸ガス血症,および低酸素血症は,生存率を低下させる一方,気管支拡張薬に対する有意な反応は,生存率改善を予測する。入院が必要な急性増悪患者における死亡の危険因子には,高齢,Paco2高値,および維持療法のための経口コルチコステロイドの使用などがある。(BODE指数の計算方法の詳細はMedical Criteriaで参照可能である。)

説明のつかない進行性の体重減少または重度の機能低下がある患者(例,更衣,入浴,または食事などの自己管理を行う際に呼吸困難を経験する患者)は,切迫した死亡のリスクが高い。COPDにおける死亡は,喫煙をやめた患者ではこの基礎疾患の進行ではなく,併発疾患に起因する場合がある。死亡は一般に,急性呼吸不全,肺炎,肺癌,心疾患,または肺塞栓による。

治療

安定期COPDの治療およびCOPDの急性増悪の治療も参照のこと。)

  • 禁煙

  • 吸入気管支拡張薬,コルチコステロイド,またはその両方

  • 支持療法(例,酸素療法,呼吸リハビリテーション )

COPDの管理には,慢性安定期の治療および増悪時の治療がある。長期にわたる重症COPDの一般的な合併症である肺性心の治療については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

禁煙は,COPDの治療において極めて重要である。

慢性安定期COPDの治療は,増悪を予防し,肺および身体の機能を改善することを目標とする。主に短時間作用型β作動薬により症状を急速に緩和させ,吸入コルチコステロイド,長時間作用型β作動薬,長時間作用型抗コリン薬,またはこれらの併用により増悪を減少させる( COPDの分類および治療)。

増悪の治療では,十分な酸素化および正常に近い血液pHを確実に保ち,気道閉塞を改善し,原因を治療する。

要点

  • 先進国では,感受性のある患者における喫煙がCOPDの主な要因である。

  • COPDの診断および同様の特徴を有する他の疾患(例,喘息,心不全)との鑑別は,まず症状(特に経過),発症年齢,危険因子,およびルーチン検査の結果(例,胸部X線,肺機能検査)などの基本的臨床情報に基づいて行う。

  • FEV1,FVC,およびFEV1/FVCの比の低下は,特徴的所見である。

  • 症状および増悪のリスクに基づいて患者を4群のうちの1つに分類し,この分類を指針として薬物治療を行う。

  • 主に短時間作用型β作動薬により症状を急速に緩和させ,吸入コルチコステロイド,長時間作用型β作動薬,長時間作用型抗コリン薬,またはこれらの併用により増悪を減少させる。

  • 多様な手段で禁煙を奨励する。

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