環境性および職業性肺疾患は,塵埃,化学物質,ガス,ヒューム,その他の空気中の物質を吸入することで生じる。肺は絶えず外部環境に曝され,様々な環境的・職業的負荷の影響を受けやすい。病理学的プロセスには,以下の肺の部位が関与する:
吸入曝露が喘息の危険因子であることは古くから知られていた(作業関連喘息を参照)。また,喫煙とは関係のないCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の原因としても認識されている。American Thoracic Societyは職業曝露によるCOPDの人口寄与割合を約15%と見積もっている(1)。
医師は,全ての患者から職業歴および生活環境歴を聴取すべきであり,業種と業務内容,過去および現在の曝露状況,ならびに症状に仕事,家庭,またはその他の環境との時間的関連性があるかどうかについて具体的に尋ねるべきである。肯定的な回答があれば,その後さらに詳細な質問を行う。
総論の参考文献
1.Balmes J, Becklake M, Blanc P, et al.American Thoracic Society Statement: Occupational contribution to the burden of airway disease. Am J Respir Crit Care Med 2003;167(5):787-797.doi:10.1164/rccm.167.5.787
予防
環境性および職業性肺疾患の予防は,曝露を低減または排除することが中心となる(一次予防)。効果の高い順に並べた以下の階層を管理に用いることで,曝露を低減または排除することができる:
排除(例,職場から危険を取り除く)
製品の置換(例,より安全で毒性の低い物質を使用する)
工学的対策(例,囲い込み,換気システム,安全な清浄化法)
管理的対策(例,有害な環境に曝される人数を制限する)
個人防護具(例,レスピレーターマスク)
レスピレーターマスクは曝露を減少させるが,最も推奨されない種類の対策である。より効果的な介入が選択できない場合や,より効果的な介入で危険を十分に軽減できない場合に,考慮に入れるべきものである。呼吸用保護具は,典型的にはリスクの高い特定の作業に際して装着するもので,勤務中に終始装着しておくものではない。
従業員の健康を守るためにレスピレーターマスクが必要な場合は,雇用主が文書化することを義務づけられている呼吸器保護プログラムに従業員を登録すべきであり,そのプログラムには医学的評価とレスピレーターマスクが適切にフィットしていることを確認するための年1回の装着検査が含まれる。医学的評価には,患者の健康状態を考慮した上で,職場で使用される種類のレスピレーターマスクに患者が耐えられるかどうかの評価が含まれる。
医学的サーベイランスは二次予防の1つの形態である。医学的サーベイランスでは,スパイロメトリーや胸部画像検査などの定期評価を実施することで,曝露の低減やその他の介入が長期的影響の軽減に役立つであろう早期の段階で疾患を特定すること試みる。米国労働安全衛生庁(United States Occupational Safety and Health Administration:OSHA)は,アスベストやシリカなど,特定の物質への曝露について医学的サーベイランスを義務づけている。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Blanc PD, Annesi-Maesano I, Balmes JR, et al: The Occupational Burden of Nonmalignant Respiratory Diseases.An Official American Thoracic Society and European Respiratory Society Statement.Am J Respir Crit Care Med 2019 Jun 1;199(11):1312-1334.
United States Department of Labor, Occupational Safety and Health Administration, Standard Number 1910.134 - respiratory protection
European Agency for Safety and Health at Work: Respiratory Protection Equipment — Requirements and Selection.Published 17/06/2003.Updated 17/20/2020.



