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肥満

執筆者:

Adrienne Youdim

, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA

最終査読/改訂年月 2018年 10月
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本ページのリソース

肥満は体重の過剰であり,BMI(body mass index)が30kg/m2以上であることと定義される。合併症として,心血管疾患(特に過剰な腹部脂肪のある人),糖尿病,特定のがん,胆石症,脂肪肝,肝硬変,変形性関節症,男女の生殖障害,精神障害,およびBMIが35以上の人での若年死などがある。診断はBMIに基づく。治療法としては,生活習慣の改善(例,食事,身体活動,行動)や,特定の患者に対する薬剤または肥満(減量)外科手術などがある。

有病率は,白人(37.9%),およびアジア系(12.7%[2 総論の参考文献 肥満は体重の過剰であり,BMI(body mass index)が30kg/m2以上であることと定義される。合併症として,心血管疾患(特に過剰な腹部脂肪のある人),糖尿病,特定のがん,胆石症,脂肪肝,肝硬変,変形性関節症,男女の生殖障害,精神障害,およびBMIが35以上の人での若年死などがある。診断はBMIに基づく。治療法としては,生活習... さらに読む ])と比べて,ヒスパニック系(47.0%),非ヒスパニック系黒人(46.8%)で最も高い。高所得層の黒人男性は,低所得層よりも肥満である可能性が高い。しかしながら高所得層の女性は,黒人女性を除き,肥満である可能性が低い。黒人女性については,収入に基づく肥満の有病率に差はみられなかった。

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米国では,肥満およびその合併症が毎年300,000人もの若年死を引き起こしており,予防しうる死亡の原因としては喫煙に次いで第2位である。

総論の参考文献

病因

肥満の原因はおそらく多因子的であり,遺伝的素因が含まれる。肥満は究極的には,エネルギー摂取とエネルギー消費(基礎代謝過程のためのエネルギー利用および身体活動によるエネルギー消費を含む)の長期にわたる不均衡に起因する。しかし,その他にも内分泌撹乱物質(例,ビスフェノールA[BPA]),腸内細菌叢,睡眠/覚醒のサイクル,環境因子など,多数の因子によって肥満になりやすい傾向が強まると考えられる。

遺伝因子

BMIの遺伝率は約66%である。遺伝因子は,視床下部および消化管の一部が食物摂取量を調節するために用いる多数のシグナル伝達分子および受容体に影響を及ぼす可能性がある(コラム「食物摂取を調節する経路 食物摂取を調節する経路 肥満は体重の過剰であり,BMI(body mass index)が30kg/m2以上であることと定義される。合併症として,心血管疾患(特に過剰な腹部脂肪のある人),糖尿病,特定のがん,胆石症,脂肪肝,肝硬変,変形性関節症,男女の生殖障害,精神障害,およびBMIが35以上の人での若年死などがある。診断はBMIに基づく。治療法としては,生活習... さらに読む 」を参照)。遺伝因子は,遺伝的に受け継がれるか,または子宮内の状態に起因する(遺伝子刷り込みと呼ばれる)可能性がある。まれに,肥満は食物摂取を調節するペプチド(例,レプチン)の濃度異常またはその受容体(例,メラノコルチン-4受容体)の異常によって生じる。

食物摂取を調節する経路

消化管からの吸収前と吸収後のシグナルおよび栄養素の血漿中濃度の変化が,以下のように,食物摂取を調節するための短期的および長期的なフィードバックをもたらす:

  • 消化管ホルモン(例,グルカゴン様ペプチド1[GLP-1],コレシストキニン[CCK],ペプチドYY[PYY])は食物摂取を減少させる。

  • 主に胃から分泌されるグレリンは食物摂取を増大させる。

  • 脂肪細胞から分泌されるレプチンはどの程度の脂肪が蓄積されているかを脳に知らせる。レプチンは正常体重の人の食欲を抑制するが,高濃度のレプチンは体脂肪の増加と相関する。体重が減少するとレプチン濃度が低下することがあり,空腹シグナルを脳に送る。

視床下部がエネルギーバランスの調整に関わる様々なシグナルを統制し,以下のように,食物摂食量を増加または減少させる経路を活性化する:

  • 神経ペプチドY(NPY),アグーチ関連ペプチド(ARP),α‐メラノサイト刺激ホルモン(α‐MSH),コカインおよびアンフェタミン関連転写物(cocaine- and amphetamine-related transcript;CART),オレキシン,およびメラニン凝集ホルモン(MCH)は,食物摂食量を増やす。

  • 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)およびウロコルチンは食物摂食量を減少させる。

環境因子

体重は,カロリー摂取量がエネルギー必要量を超えた場合に増加する。エネルギー摂取量の重要な決定因子としては以下のものがある:

  • 食物の分量

  • 食品のエネルギー密度

高カロリー食品(例,加工食品),精製炭水化物を多く含む食事,ならびにソフトドリンク,フルーツジュース,およびアルコールの摂取は,体重増加を促進する。新鮮な果物および野菜,食物繊維,複合炭水化物,ならびに低脂肪で高タンパク質の食品を多く含み,水を主な水分摂取源とする食事は,体重増加を最小限に抑える。

座位時間の長い生活習慣は,体重増加を促進する。

調節因子

妊婦の肥満,妊婦の喫煙,および子宮内胎児発育不全は体重調節を乱し,小児期およびその後の体重増加の一因となることがある。肥満が幼児期を超えて持続すると,その後の減量がより困難になる。

内分泌撹乱化学物質の一種であるオビソゲン(obesogen)(例,タバコ煙,ビスフェノールA,大気汚染,難燃剤,フタル酸エステル,ポリ塩化ビフェニル)への早期曝露は,エピジェネティック変化や核への作用を介して代謝のセットポイントを変化させ,肥満の発生傾向を高める可能性がある(2 肥満は体重の過剰であり,BMI(body mass index)が30kg/m2以上であることと定義される。合併症として,心血管疾患(特に過剰な腹部脂肪のある人),糖尿病,特定のがん,胆石症,脂肪肝,肝硬変,変形性関節症,男女の生殖障害,精神障害,およびBMIが35以上の人での若年死などがある。診断はBMIに基づく。治療法としては,生活習... さらに読む )。

女性の約15%は,妊娠のたびに永続的に体重が20ポンド(9.1kg)以上増加する。

睡眠不足(通常は一晩当たり6~8時間未満とされる)が,空腹感を促す満腹ホルモンの濃度を変えることにより体重を増加させる可能性がある。

コルチコステロイド,リチウム,従来の抗うつ薬(三環系抗うつ薬,四環系抗うつ薬,モノアミン酸化酵素阻害薬[MAOI]),ベンゾジアゼピン系薬剤,抗てんかん薬,チアゾリジン系薬剤(例,ロシグリタゾン,ピオグリタゾン),β遮断薬,および抗精神病薬などの薬剤は,体重を増加させる可能性がある。

まれに,以下の疾患の1つによって体重増加が引き起こされる:

摂食障害

少なくとも2つの病的な摂食パターンが肥満と関連している可能性がある:

おそらく,似ているがそれほど極端ではないパターンが,より多くの人で過剰な体重増加の一因になっている。例えば,夕食後の摂食は,夜食症候群ではない多くの人の過剰な体重増加の一因となっている。

病因論に関する参考文献

  • 1. Ajslev TA, Andersen CS, Gamborg M, et al: Childhood overweight after establishment of the gut microbiota: The role of delivery mode, pre-pregnancy weight and early administration of antibiotics.Int J Obes 35 (4): 522–529, 2011.doi: 10.1038/ijo.2011.27.

  • 2. Heindel JJ, Newbold R, Schug TT: Endocrine disruptors and obesity.Nat Rev Endocrinol 11 (11):653–661, 2015.doi: 10.1038/nrendo.2015.163.

合併症

肥満の合併症としては以下のものがある:

インスリン抵抗性,脂質異常症,および高血圧(メタボリックシンドローム)が生じることがあり,しばしば糖尿病および冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血,狭心症,急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞),心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の是正である... さらに読む 冠動脈疾患の概要 につながる。これらの合併症は,腹部に集中した脂肪,血清トリグリセリドの高値,2型糖尿病もしくは早期の心血管疾患の家族歴,またはこれらの危険因子の組合せがある患者でより可能性が高い。

頸部の過剰な脂肪が睡眠中に気道を圧迫すると,閉塞性睡眠時無呼吸症候群を来すことがある。一晩に数百回にも及ぶ頻度で呼吸が短時間停止する。この疾患は,しばしば診断されないまま,大きな音のいびきおよび日中の過度の眠気を引き起こし,高血圧,不整脈,およびメタボリックシンドロームのリスクを高める可能性がある。

肥満は肥満低換気症候群(ピックウィック症候群)の原因となることがある。呼吸障害により,高炭酸ガス血症,呼吸刺激の二酸化炭素に対する感受性低下,低酸素症,肺性心,および若年死のリスクが生じる。この症候群は,単独でまたは閉塞性睡眠時無呼吸症候群に続発して起こることがある。

皮膚疾患がよくみられる;厚い皮膚のヒダに閉じ込められる汗と皮膚の分泌物が増えて真菌および細菌の増殖を助長し,間擦部の感染の頻度が特に高くなる。

過体重であることは,おそらく,痛風,深部静脈血栓症,および肺塞栓症の素因となる。

肥満により,偏見,差別,不良な身体像,および低い自尊心の結果として,社会的,経済的,および心理的な問題が生じる。例えば,不完全雇用や失業中であるなどである。

診断

  • BMI

  • ウエスト周囲長

  • ときに身体組成分析

  • 過体重 = 25~29.9kg/m2

  • 肥満 = 30kg/m2以上

しかし,BMIは大まかなスクリーニングツールであり,多くの亜集団で限界がある。一部の専門家は,BMIのカットオフ値は民族,性別,および年齢に基づいて変えるべきであると考えている。例えば,特定の非白人集団では,白人よりも大幅に低いBMIで肥満の合併症が発生する。

小児および青年では,CDCが CDCのウェブサイトで提供する年齢別および性別成長曲線に基づいて,過体重は95パーセンタイル以上のBMIと定義されている。

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アジア人および多数の先住民族では,過体重のカットオフ値が低い(23kg/m2)。さらに,BMIは過剰な体脂肪がない筋肉質のアスリートで高くなることがあり,以前に過体重であり筋肉量が減少した人では正常または低いことがある。

ウエスト周囲長およびメタボリックシンドロームの有無は,代謝性および心血管系の合併症のリスクを,BMIよりよく予測するように思われる。

肥満による合併症のリスクが増大するウエスト周囲長は,以下のように民族集団および性別によって異なる:

  • 白人男性:93cm超(36.6in超),特に101cm超(39.8in超)

  • 白人女性:79cm超(31.1in超),特に87cm超(34.2in超)

  • インド人男性:78cm超(30.7in超),特に90cm超(35.4in超)

  • インド人女性:72cm超(28.3in超),特に80cm超(31.5in超)

身体組成分析

肥満を診断する場合は身体組成(体脂肪と筋肉の割合)も考慮する。おそらくルーチンの臨床診療には必要でないが,高いBMIが筋肉によるものか過剰な脂肪によるものか医師が疑問をもつ場合,身体組成分析が役立つことがある。

生体電気インピーダンス法(BIA)で体脂肪率を簡単かつ非侵襲的に推定できる。BIAでは,体内総水分量の割合を直接推定し,体脂肪率を間接的に求める。BIAは,健常者および体内総水分量の割合が変わらない少数の慢性疾患(例,中等度の肥満,糖尿病)だけがある患者で最も信頼できる。植込み型除細動器の使用者でBIAによる測定を行うとリスクをもたらすか否かは不明である。

水中(静水)体重測定が体脂肪の割合を測定する最も正確な方法である。高価で時間がかかり,臨床診療よりも研究で用いられることが多い。水中に入っている間に正確に体重を測定するために,あらかじめ完全に息を吐き出しておく必要がある。

CT,MRI,および二重エネルギーX線吸収法(DXA)などの画像検査法でも体脂肪の割合および分布を推定できるが,通常は研究のためだけに用いられる。

その他の検査

肥満患者には,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,糖尿病,脂質異常症,高血圧,脂肪肝,うつ病など,よくみられる併存症のスクリーニングを行うべきである。スクリーニングツールが役に立つことがあり,例えば,閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して,医師はSTOP-BANG質問票(閉塞性睡眠時無呼吸症候群に関するSTOP-BANGリスクスコア 閉塞性睡眠時無呼吸症候群に関するSTOP-BANGリスクスコア 米国では半数近い人々が睡眠に関連する問題を有している。睡眠の障害は,情動障害,記憶困難,運動技能の低下,作業効率の低下,および交通事故のリスク増加につながる可能性がある。また,心血管疾患および死亡の一因になることさえある。 (睡眠時無呼吸症候群および小児における睡眠障害も参照のこと。)... さらに読む の表を参照)およびしばしば無呼吸-低呼吸指数 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は,睡眠時に生じ呼吸停止(10秒を超える無呼吸または低呼吸と定義される)を引き起こす部分的または完全な上気道閉塞エピソードから成る。症状としては,日中の過度の眠気,不穏状態,いびき,反復性覚醒,起床時の頭痛などがある。診断は睡眠歴および睡眠ポリグラフ検査に基づく。治療は,持続陽圧呼吸療法(CPAP),口腔... さらに読む (睡眠1時間当たりの無呼吸および低呼吸の総エピソード数)などの方法を使用できる。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は過小診断されることが多く,肥満によりリスクが増大する。

予後

無治療では,肥満は進行する傾向がある。合併症の確率および重症度は以下のものに比例する:

  • 脂肪の絶対量

  • 脂肪の分布

  • 筋肉の絶対量

減量後には,ほとんどの患者が5年以内に治療前の体重に戻ることから,他の慢性疾患と同様,肥満には生涯にわたる管理プログラムが必要となる。

治療

  • 食事管理

  • 身体活動

  • 行動療法

  • 薬剤(例,フェンテルミン[phentermine],オルリスタット,ロルカセリン[lorcaserin],フェンテルミン[phentermine]/トピラマート,徐放性ナルトレキソン/ブプロピオン,リラグルチド)

  • 肥満外科手術

5~10%の減量でさえ全体的な健康の改善につながり,心血管系合併症(例,高血圧,脂質異常症,インスリン抵抗性)が発生するリスクの軽減およびそれらの合併症の重症度の軽減に役立ち,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,脂肪肝,不妊症,うつ病など,他の合併症および併存症の重症度の軽減に役立つことがある。

医療従事者,同僚,および家族からの支援と様々な体系的なプログラムが体重の減量と維持に役立つ可能性がある。

食事

体重の減量と維持にはバランスのとれた食事が重要である。

戦略には以下のものがある:

  • 少量の食事を摂り,間食は避けるまたは注意して選ぶ

  • 精製炭水化物と加工食品の代わりに,新鮮な果物および野菜ならびにサラダを摂る

  • ソフトドリンクまたはジュースの代わりに水を摂る

  • アルコールの摂取を中等度レベルに制限する

  • 健康食の一部であり十分なビタミンDを供給するのに役立つ無脂肪または低脂肪乳製品を含める

適度にカロリーを制限し(600kcal/日)低脂肪で高タンパク質の食品を組み込んだ,低カロリーの高食物繊維食が,長期的に最善の結果をもたらすと思われる。グリセミック指数(食品のグリセミック指数 食品のグリセミック指数 栄養学とは,食物および食物と健康との関係に関する科学である。栄養素は身体が成長,維持,およびエネルギーに利用する食物中の化学物質である。 体内で合成できず,そのため食事から摂る必要がある栄養素は,必須栄養素とされる。具体的には以下のものがある: ビタミン ミネラル 一部のアミノ酸 さらに読む の表を参照)の低い食品および魚油または植物由来の一価不飽和脂肪(例,オリーブ油)は,心血管疾患および糖尿病のリスクを減少させる。

食事代わりの栄養補給食の使用が体重の減量と維持に役立つことがあり,それらの製品は定期的または断続的に利用できる。

過度に制限を加えた食事は,継続する可能性や長期的な減量につながる可能性が低い。基礎エネルギー消費量 エネルギー消費量 多くの低栄養患者には,除脂肪体重の増加を目的とする栄養サポートが必要である。食欲不振の患者または食事の摂取や吸収に問題のある患者では,経口摂食が難しいことがある。重症(critically ill)の患者でも,しばしば栄養サポートが必要である(1)。 経口摂取をときに増進させる行動面での対策として以下のものがある:... さらに読む (BEE)の50%未満にカロリー摂取を制限する食事は,超低カロリー食と称されるが,カロリーがわずか800kcal/日となることがある。超低カロリー食は肥満患者に適応となることがあるが,そのような食事には医師による監督が必要であり,体重が減少した後に摂取量を徐々に増やして患者の体重が再び増えるのを予防する必要がある。

身体活動

運動はエネルギー消費量,BMR,および食事誘発性熱産生を増やす。また運動により,食欲がカロリーの必要量によりよく合うように調節されると考えられる。身体活動に伴う他の便益には以下のものがある:

  • インスリン感受性の増加

  • 脂質プロファイルの改善

  • 血圧の低下

  • 有酸素運動能の向上

  • 心理的健康感の増進

  • 乳癌および結腸癌のリスク低下

  • 余命の延長

筋力強化(抵抗)運動など,運動は筋肉量を増大させる。筋肉組織は安静時に脂肪組織よりも多くカロリーを燃焼するため,筋肉量が増大するとBMRが持続的に増加する。面白く楽しい運動の方が,持続する可能性が高い。有酸素運動およびレジスタンス運動を組み合わせる方が,どちらか一方のみを行うよりもよい。ガイドラインでは,健康上の便益には150分/週,体重の減量と維持には300~360分/週の身体活動が提唱されている。より身体活動量の多い生活習慣を作り出すことが,体重の減量と維持に役立つ可能性がある。

行動療法

医師は減量の助けになる様々な行動療法を患者に勧めることができる。具体的には以下のものがある:

  • 支援

  • セルフモニタリング

  • ストレス管理

  • 随伴性マネジメント

  • 問題解決

  • 刺激統制法

支援は,グループ,友人,または家族から受けることができる。支援団体への参加は,生活習慣の改善に対するアドヒアランスの改善から,減量の促進につながる可能性がある。グループミーティングにより多く参加する患者ほど,より多くの支援,モチベーション,および監督を受けられ,責任感が増し,結果としてより大幅な減量を達成できる。

セルフモニタリングには,食事の記録(食物中のカロリー数を含む),定期的な体重測定,行動パターンの観察および記録などが含まれる。他に記録すべき有用な情報には,食物を摂取した時間および場所,他の人の有無,気分などがある。医師は,患者がどのように食習慣を改善できるかについてのフィードバックを与えることができる。

ストレス管理としては,ストレスの多い状況を特定することおよび食べることを伴わずにストレスを管理するための戦略を作り出すこと(例,散歩に行く,瞑想,深呼吸)を患者に教える。

随伴性マネジメントとしては,望ましい行動(例,ウォーキング時間の増加や特定の食品の摂取量の減少)に対して有形報酬を与える。報酬は,他の人(例,支援団体のメンバーまたは医療従事者から)が与えても,本人によるものでもよい(例,新しい服やコンサートチケットの購入)。言葉での報酬(称賛)も有用となることがある。

問題解決としては,不健康な摂食のリスクが増す状況(例,旅行,夕食の外食)または身体活動の機会が減る状況(例,国中をドライブする)を前もって特定し計画を立てる。

刺激統制法としては,健康的な食事や活動的な生活習慣に対する障壁を特定して,それらを克服する戦略を考案する。例えば,ファストフードレストランに立ち寄るのを避けたり,家に甘いものを置かないようにしたりすることがある。より活動的な生活習慣のために,活動的な趣味を始める(例,庭仕事),定期的なグループ活動に参加する(例,エクササイズクラス,スポーツチーム),もっと歩く,エレベーターの代わりに階段を使う習慣をつける,および駐車場の遠い端に駐車する(より多く歩くことになる)などがありうる。

インターネットの情報源,モバイル機器のアプリケーション,その他の電子機器も,生活習慣の改善や減量に対するアドヒアランスの補助となりうる。アプリケーションは,患者が減量のゴールを設定したり,自身の進歩をモニタリングしたり,食事内容をたどったり,身体活動を記録したりするのに役立つことがある。

薬剤

BMIが30以上または合併症(例,高血圧,インスリン抵抗性)のある患者のBMIが27以上である場合,薬剤(例,オルリスタット,フェンテルミン[phentermine],フェンテルミン[phentermine]/トピラマート,ロルカセリン[lorcaserin])を用いることがある。通常,薬物治療によって軽度(5~10%)の減量がみられる。

オルリスタットは腸リパーゼを阻害し,脂肪の吸収を減らし,血糖および血中脂質を改善する。オルリスタットは吸収されないため,全身作用はまれである。放屁,脂肪便,および下痢がよくみられるが,2年間の治療の間に消失することが多い。120mg,経口,1日3回の用量を,脂肪を含む食事とともに服用すべきである。オルリスタットを服用する少なくとも2時間前または2時間後にビタミンサプリメントを服用すべきである。吸収不良および胆汁うっ滞が禁忌であり,過敏性腸症候群および他の消化管疾患ではオルリスタットに耐えるのが困難になることがある。オルリスタットは米国では一般用医薬品として入手できる。

フェンテルミン(phentermine)は,短期間用いる(3カ月以内)中枢作用性の食欲抑制薬である。通常の開始量は15mgを1日1回であり,用量は30mgを1日1回,37.5mgを1日1回,15mgを1日2回,または8mgを食前1日3回まで増量することがある。よくみられる副作用には,血圧および心拍数の上昇,不眠症,不安,便秘などがある。フェンテルミン(phentermine)は,心血管疾患がすでにある患者のほか,コントロール不良の高血圧,甲状腺機能亢進症,または薬物乱用もしくは薬物依存の既往がある患者に用いるべきではない。1日2回投与によって,1日を通して食欲を管理しやすくなることがある。

フェンテルミン(phentermine)とトピラマート(痙攣発作および片頭痛の治療に用いる)の併用は,米国では長期使用が承認されている。この合剤により,最長で2年間の体重減少が起こる。徐放性製剤の開始量(フェンテルミン[phentermine]3.75mg/トピラマート23mg)は2週間後に7.5mg/46mgに増量すべきであり,その後,減量後の体重維持に必要であれば,最大で15mg/92mgまで徐々に増量できる。先天異常のリスクがあるため,妊娠可能年齢の女性へのこの併用は,患者が避妊を行い,妊娠検査を毎月受ける場合のみに限定すべきである。他に起こりうる有害作用には,睡眠障害,認知障害,心拍数増加などがある。心血管系への長期の影響は明らかではなく,市販後調査が実施中である。

ロルカセリン(lorcaserinは,セロトニン2c(5-HT2c)脳内受容体の選択的作動を介して食欲を抑制する。減量のために以前用いられていたセロトニン作動薬とは異なり,ロルカセリン(lorcaserin)は視床下部の5-HT2c受容体を選択的に標的にし,これが標的にされると,食欲低下が生じる;これは心臓弁の5-HT2b受容体は刺激しない。臨床研究では,ロルカセリン(lorcaserin)を投与された患者における弁膜症の発生率には,プラセボを投与された患者と比較して有意な上昇は認められなかった。ロルカセリン(lorcaserin)の通常用量かつ最大用量は,10mgの12時間毎経口投与である。糖尿病のない患者における最も頻度の高い有害作用は,頭痛,悪心,めまい,疲労,口腔乾燥,および便秘であり,これらは通常は自然に軽快する。ロルカセリン(lorcaserin)は,セロトニン症候群 セロトニン症候群 セロトニン症候群とは,通常は薬物に関連した,中枢神経系におけるセロトニン作動活性の亢進によって生じる,生命を脅かす可能性のある病態である。症状としては,精神状態の変化,高体温,自律神経および神経筋の活動亢進などがある。診断は臨床的に行う。治療は支持療法による。 (熱中症の概要も参照のこと。)... さらに読む のリスクがあるため,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI),モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)などのセロトニン作動薬と併用すべきではない。

ナルトレキソン/ブプロピオン徐放錠を減量の補助として用いることができる。ナルトレキソン(断酒の補助に用いられる)はオピオイド拮抗薬であり,脳内における満腹感を伝える経路の負のフィードバックを遮断すると考えられている。ブプロピオン(うつ病治療および禁煙補助に用いられる)は,視床下部におけるアドレナリン系およびドパミン系に作用することによって,食欲低下を誘発できる。開始量はナルトレキソン8mg/ブプロピオン90mgの錠剤1錠であり,用量を4週間かけて最大量である2錠の1日2回投与まで漸増する。最も頻度の高い有害作用としては,悪心,嘔吐,頭痛,ならびに収縮期および拡張期血圧の1~3mmHgの上昇がある。この薬剤の禁忌は,コントロール不良の高血圧,痙攣発作の病歴または危険因子を有する患者などである(ブプロピオンは痙攣発作の閾値を低下させるため)。

リラグルチドは,2型糖尿病の治療に最初に用いられるGLP-1受容体作動薬である。リラグルチドは,ブドウ糖を介した膵臓からのインスリン分泌を増強し,血糖コントロールを改善する;リラグルチドはまた,満腹感を刺激し食物摂取を減らす。研究では,リラグルチド3mgを毎日投与することで,56週間後に12.2%の体重減少が得られることが示されている。初回投与量は0.6mgの1日1回投与であり,用量は週に0.6mgずつ,最大量である3mgの1日1回投与まで増量する。リラグルチドは注射で投与する必要がある。有害作用には悪心および嘔吐があり,リラグルチドには急性膵炎や甲状腺C細胞腫瘍のリスクに関する警告がある。

減量薬は,治療開始後12週間で患者に体重減少がみられない場合は中止すべきである。

ほとんどの一般用医薬品の減量薬は有効性が示されていないため推奨されない。そのような薬物の例として,ブリンドルベリー,l‐カルニチン,キトサン,ペクチン,グレープシードエキス,トチノキ,ピコリン酸クロム,コンブ,およびイチョウが挙げられる。一部のもの(例,カフェイン,エフェドリン,ガラナ,フェニルプロパノールアミン)には利点を上回る有害作用がある。さらに,これらの薬物の一部には,混ぜ物が入っているものや,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)が禁止している有害物質(例,エフェドラ,トウヒ,シブトラミン)が含まれているものがある。

手術

特別な集団

肥満は,小児および高齢者では特に懸念となる。

小児

肥満児では,肥満の期間がより長いため,合併症を発症する可能性がより高い。25%を超える小児および青年が過体重または肥満である。

乳児の肥満の危険因子は,低出生体重,ならびに母体の肥満,糖尿病,および喫煙である。

思春期以降,食物摂取が増大し,男児では過剰なカロリーはタンパク質蓄積の増大に利用されるが,女児では脂肪蓄積が増大する。

肥満児では,心理的合併症(例,低い自尊心,社会的困難,抑うつ)および筋骨格系合併症が早期に発生することがある。大腿骨頭すべり症など一部の筋骨格系合併症が,小児にのみ起こる。その他の早期合併症としては,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,インスリン抵抗性,高脂血症,非アルコール性脂肪肝炎などが考えられる。こうした小児が成人になった際,心血管系,呼吸器,代謝性,肝臓,その他肥満関連の合併症のリスクが増大する。

成人期まで持続する肥満のリスクは,以下のように,いつ肥満が最初に出現するかに部分的に依存する:

  • 乳児期:リスクは低い

  • 6カ月~5歳:25%

  • 6歳以降:50%を超える

  • 親が肥満である場合で青年期:80%を超える

小児では,減量よりもそれ以上の体重増加を防ぐことが合理的目標である。食事を見直し,身体活動を増やすべきである。一般的な活動や遊びを増やす方が,構造化された運動プログラムよりも効果的である可能性が高い。小児期に身体的な活動に参加することにより,生涯にわたる身体的に活発な生活習慣が促される可能性がある。座ったままの活動(例,テレビを見る,コンピュータまたは携帯端末を使用する)の制限も役立つことがある。薬物および手術は避けるが,肥満の合併症が生命を脅かすものである場合は正当化される。

小児の体重を管理し肥満を予防する対策が,公衆衛生上最も便益が大きい可能性がある。そのような対策を,家族,学校,およびプライマリケアのプログラムで実施すべきである。

高齢者

米国では,高齢者の肥満の割合が増えている。

加齢に伴って,主に運動不足のために体脂肪が増加して腹部に再分布し,筋肉量が減少するが,それにはアンドロゲンおよび成長ホルモン(タンパク質同化性)の減少ならびに肥満において産生される炎症性サイトカインも関与する可能性がある。

合併症のリスクは以下のものに依存する:

  • 体脂肪分布(主に腹部の分布を伴う増加)

  • 肥満の期間および重症度

  • 合併するサルコペニア

腹部脂肪の分布を示唆するウエスト周囲長の増加は,高齢者の病的状態(例,高血圧,糖尿病,冠動脈疾患)および死亡のリスクをBMIよりもよく予測する。加齢とともに,脂肪はウエストにより多く蓄積する傾向がある。

高齢者に対して,医師はカロリー摂取を減らし身体活動を増やすように推奨することがある。しかし,高齢患者がカロリー摂取を大幅に減らしたいと望む場合は,医師が患者の食事を監督すべきである。身体活動はさらに筋力,持久力,および全体的な健康状態を改善し,糖尿病などの慢性疾患の発生リスクを下げる。活動には,筋力強化運動と持久力運動を含めるべきである。

カロリー制限が必要であると考えられるかどうかにかかわらず,栄養を最適化すべきである。

減量薬は,高齢者で特別に研究されていないことが多く,考えられる便益が有害作用を上回らないことがある。しかし,オルリスタットは肥満の高齢患者(特に糖尿病または高血圧がある場合)に有用なことがある。身体機能状態の良好な健常な高齢患者では手術を考慮してもよい。

予防

定期的な運動および健康な食事は,全身の健康状態を改善し,体重を管理でき,肥満および糖尿病の予防に役立つ。体重減少がなくても,運動は心血管疾患のリスクを低減する。食物繊維は,結腸癌および心血管疾患のリスクを減らす。

十分で質の高い睡眠,ストレスの管理,および飲酒の節制も重要である。

要点

  • 肥満は,多くの一般的な健康問題のリスクを増加させ,米国では最多で毎年300,000人の若年死を引き起こしており,予防しうる死亡の原因としては喫煙に次いで第2位である。

  • 過剰なカロリー摂取および少な過ぎる身体活動が肥満に最も寄与するが,遺伝的感受性および様々な障害(摂食障害を含む)も一因となることがある。

  • BMIおよびウエスト周囲長によって患者をスクリーニングし,身体組成分析が適応となる場合は,皮下脂肪厚の測定または生体電気インピーダンス法によってスクリーニングする。

  • 肥満患者には,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,糖尿病,脂質異常症,高血圧,脂肪肝,うつ病など,よくみられる併存症のスクリーニングを行う。

  • 食生活の変更,身体活動の増加,および可能であれば行動療法を用いることによって,体重をたとえ5~10%でも減らすよう,患者に奨励する。

  • BMIが30以上の場合,またはBMIが27以上で合併症(例,高血圧,インスリン抵抗性)がある場合は,オルリスタット,フェンテルミン(phentermine)/トピラマート,ロルカセリン(lorcaserin),ナルトレキソン/ブプロピオン,またはリラグルチドによる治療を試みる;しかし,極度の肥満には手術が最も効果的である。

  • 全ての患者に,運動,健康な食事,十分な睡眠,およびストレスの管理を奨励する。

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本章の目次
肥満およびメタボリックシンドローム
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