在胎不当過小児(SGA児)

(胎児発育不全)

執筆者:Arcangela Lattari Balest, MD, University of Pittsburgh, School of Medicine
Reviewed ByAlicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2025年 2月
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体重が在胎期間に対して10パーセンタイル未満の乳児は,在胎不当過小(small for gestational age)に分類される。合併症には,周産期仮死,胎便吸引,赤血球増多症,および低血糖がある。

新生児の在胎期間の標準的な定義は,妊婦の最終正常月経の初日から分娩日までの週数とされている。最終月経による在胎期間の定義は,胎児の成熟を議論する上で産科医および新生児専門医が用いる世界共通の基準であるが,胎児の発育週数を示す正確な指標ではない。これは,排卵や受胎が月経周期の半ばに起こることから,在胎期間を受胎の約2週間前を起点として数えるためである。また,妊婦の月経が不規則な場合,最終月経に基づく在胎期間の決定はさらに不正確になることがある。

Fenton成長曲線によって在胎期間に対するより正確な発育評価が可能である;男児と女児で別のグラフがある。

早産男児のFenton成長曲線

Fenton T, Kim J: A systematic review and meta-analysis to revise the Fenton growth chart for preterm infants.BMC Pediatrics 13:59, 2013.doi: 10.1186/1471-2431-13-59; used with permission.

早産女児のFenton成長曲線

Fenton T, Kim J: A systematic review and meta-analysis to revise the Fenton growth chart for preterm infants.BMC Pediatrics 13:59, 2013.doi: 10.1186/1471-2431-13-59; used with permission.

SGA児の病因

原因は,発育不全が以下のいずれかによって分けられる:

  • 対称性(Symmetric):身長,体重,および頭囲の成長がほぼ同等に抑制されているもの

  • 非対称性(Asymmetric):体重増加が最も抑制され,脳,頭蓋,および長管骨の発育は比較的保たれているもの。

対称性の発育不全は,通常妊娠初期,しばしば第1トリメスターに始まる胎児の問題から生じる。原因が妊娠の比較的初期に生じる場合,全身が影響を受けるため,あらゆる種類の細胞数が少なくなる。一般的な原因としては以下のものがある:

非対称性の発育不全は,典型的には第2トリメスター後期または第3トリメスターに現れる胎盤または母体の問題に通常起因する。原因が妊娠の比較的後期に生じる場合,器官および組織は同等には影響されず,結果,非対称性の発育不全が起こる。一般的な原因としては以下のものがある:

母親が妊娠中にオピオイド,コカイン,アルコール,および/またはタバコを大量に使用した場合も,非対称性の発育不全を呈し,在胎不当過小児(SGA児)となることがある(妊娠中の社会的薬物と違法薬物を参照)。

SGA児の多くは健康であり,単に体格的に小さいだけであって,子宮内で発育が制限されていた児が全てSGA(すなわち,体重が在胎期間に対して10パーセンタイル未満)であるわけではない。

SGA児の症状と徴候

SGA児は体格こそ小さいものの,身体的特徴(例,皮膚の外観,耳介軟骨,足底のしわ)や行動面(例,活発さ,自発運動,哺乳意欲)については在胎期間が同等の標準的な体格の新生児と類似している。しかし,筋肉量および皮下脂肪組織の減少のため,やせているように見えることがある。顔貌はやせこけ,高齢者(「しわくちゃの顔」)のように見えることがある。臍帯は細くかつ小さく見えることがある。

合併症

正期産のSGA児には,ほぼ同じ大きさの早産児にみられるような器官系の未熟性に関係する合併症はない。しかし,以下のリスクがある:

分娩中の周産期仮死は,考えられる合併症の中で最も重篤なものである。胎児発育不全が胎盤機能不全(胎盤灌流がかろうじて足りている)による場合,子宮収縮のたびにらせん動脈が圧迫されることによって母体から胎盤への血流が遅滞または停止するため,周産期仮死のリスクが生じる。このため,胎盤機能不全が疑われる場合,分娩前に胎児を評価し,分娩中には胎児の心拍数のモニタリングを行うべきである。胎児機能不全が検出された場合は,迅速な分娩(多くは帝王切開による)が適応となる。

胎便吸引は周産期仮死の間に生じることがある。SGA児(特に過期産児)は,胎便を羊膜腔に排出し,深いあえぎ呼吸を始めることがある。その結果として起こる吸引によって,胎便吸引症候群が生じる場合がある。胎便吸引症候群は発育不全児および過期産児で最も重症となることが多いが,これは,少量の羊水中に含まれることで,胎便がより濃縮されるためである。

十分なグリコーゲン合成の欠如,およびそれによる貯蔵グリコーゲンの減少により生後数時間から数日にしばしば低血糖が生じるため,ブドウ糖の静脈内投与を行い速やかに治療する必要がある。

赤血球増多症は,胎盤機能不全のためにSGA胎児が慢性的な軽度低酸素症を呈する場合に生じることがある。エリスロポエチンの分泌が増加し,赤血球産生速度が上昇する。赤血球増多症の新生児は出生時に紅潮して見え,頻呼吸や嗜眠がみられることもある。この紅潮様の外観は,皮膚の色が濃い新生児でも認められるが,皮膚の色が薄い新生児ほど明らかでない場合がある。

低体温症は,体温調節の障害により起こることがあり,皮下脂肪減少による熱放散の増加,子宮内ストレスおよび貯蔵栄養の枯渇による熱産生の減少,ならびに体が小さいため体積に比して体表面積が大きいなどの複数の因子が関与している。SGA児は,酸素消費量を最小限に抑えるために中性温度環境(thermoneutral environment)に置くべきである。

SGAの新生児では感染リスクが上昇するが,これは免疫系の機能障害を有することがあるためであり,それにより入院中に感染症を発症するリスクが高い。

SGA児の治療

  • 支持療法

基礎疾患および合併症があれば治療する。

SGA状態に対する具体的な介入はないが,アルコール,タバコ,および違法薬物を避けることの重要性に関する出産前のアドバイスによって予防が促進される。

2~4歳になってもかなり小さいままである特定のSGA児に対し,ときに成長ホルモンを投与することがある。ホルモン療法は数年間行わなければならず,症例毎に検討する必要がある(1)。

治療に関する参考文献

  1. 1.Ferrigno R, Savanelli MC, Cioffi D, Pellino V, Klain A.Auxological and metabolic effects of long-term treatment with recombinant growth hormone in children born small for gestational age: a retrospective study. Endocrine.2024;84(1):213-222.doi:10.1007/s12020-023-03665-4

SGA児の予後

仮死が回避できる場合,正期産SGA児の神経学的予後はかなり良好である。しかし晩年になって,虚血性心疾患,高血圧,および脳卒中のリスク上昇がみられる可能性があり,これは血管の発育異常が原因と考えられている。

胎児発育不全が慢性的な胎盤機能不全によるものである場合,十分な栄養によってSGA児は出生後に顕著な「追いつき」成長を示す可能性がある。

SGAの原因が遺伝因子,先天性感染症,または母親の物質使用である場合は,診断にもよるが予後はしばしば不良となる。

要点

  • 体重が在胎期間に対して10パーセンタイル未満の乳児は,在胎不当過小(small for gestational age)に分類される。

  • 妊娠初期の疾患は対称性の発育不全を引き起こし,身長,体重,および頭囲の成長が同程度に抑制される。

  • 妊娠後期の疾患は非対称性の発育不全を引き起こし,体重増加が最も抑制され,脳,頭蓋,および長管骨の発育は比較的正常に保たれる。

  • 体は小さいが,SGA児には,ほぼ同じ大きさの早産児にみられるような器官系の未熟性に関係する合併症はない。

  • 合併症は主に基礎疾患のものであるが,一般に,周産期仮死,胎便吸引,低血糖,赤血球増多症,および低体温症などもみられる。

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