大腸癌

(結腸癌;直腸癌)

執筆者:Anthony Villano, MD, Fox Chase Cancer Center
Reviewed ByMinhhuyen Nguyen, MD, Fox Chase Cancer Center, Temple University
レビュー/改訂 修正済み 2023年 10月
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大腸癌は極めてよくみられる。症状としては血便や排便習慣の変化などがある。診断は大腸内視鏡検査による。治療は外科的切除とリンパ節転移に対する化学療法である。行動面の対策と低用量アスピリンはリスクの低下につながる可能性がある。

大腸癌は,米国で4番目に多く診断されるがんである。およそ40~50歳で発生率が急激に高まる。2023年には,新たに結腸癌の症例が106,970例,直腸癌の症例が46,050例診断されると推定されている(1)。大腸癌による死亡例数は過去数十年で着実に減少しており,これはスクリーニングが改善され,早期段階での診断が可能になった結果と考えられている。

全症例の半数以上が直腸およびS状結腸で発生し,95%は腺癌である。大腸癌は,女性より男性でわずかに多くみられる。同時性重複がん(2つ以上)が患者の約5%で発生する(2)。

総論の参考文献

  1. 1.Siegel RL, Miller KD, Wagle NS, Jemal A: Cancer statistics, 2023.CA Cancer J Clin 73(1):17–48, 2023. doi: 10.3322/caac.21763

  2. 2.Thiels CA, Naik ND, Bergquist JR, et al: Survival following synchronous colon cancer resection. J Surg Oncol 114(1):80-85, 2016.doi: 10.1002/jso.24258

大腸癌の病因

大腸癌は,ほとんどの場合,腺腫性ポリープ内の形質転換として発生する。約80%の症例が散発性であり,20%が遺伝的要素を有する。多くの遺伝性症候群が大腸癌の素因となる:

慢性炎症性疾患(例,潰瘍性大腸炎大腸クローン病)も素因となる病態であり,この種の疾患の罹病期間が長くなるほど,がんのリスクが高まる。

大腸癌の発生率が高い集団の患者は,動物性タンパク質,脂肪および精製炭水化物を多く含む低繊維食を食べている。発がん物質は食事から摂取される可能性もあるが,食物中の物質,胆汁,または腸分泌物に対する細菌の作用により産生される可能性の方が高い。正確な機序は不明である。

大腸癌の進展には,腸壁を貫通する直接浸潤,血行性転移,所属リンパ節転移,神経周囲浸潤がある。

大腸癌の症状と徴候

大腸腺癌は増殖が遅く,症状が出現するほど増大するまでに長い期間が経過する。症状は,病変の部位,種類,進展範囲,および合併症により異なる。

右側結腸は内腔が広く,壁が薄く,腸内容も液状であるため,閉塞は経過の後期に発生する事象である。出血は通常,潜血である。重度の貧血による疲労感と脱力が唯一の愁訴となる場合もあり,腫瘍はしばしば無症状で,別の理由で大腸内視鏡検査や断層撮影の画像検査を行って初めて検出される。腫瘍はときに大きく成長し,他の症状が現れる前に,腹壁を通して触知できることがある。

左側結腸は内腔が狭く,便は半固形状で,がんは右側結腸の場合より早期に閉塞を引き起こす傾向がある。仙痛性の腹痛を伴う部分閉塞または完全閉塞が初発症状のことがある。血液が便に縞状に付着,または混入することがある。一部の患者は穿孔の症状を呈し,通常は被覆穿孔で(限局性の疼痛および圧痛),またはまれにびまん性腹膜炎を呈する。

直腸癌で最もよくみられる初期症状は,排便時の出血である。下血がみられた際には,たとえ明らかな痔核や既知の憩室性疾患がある場合でも,常にがんの併存を除外する必要がある。しぶり腹または残便感を呈することがある。直腸周囲が罹患している場合には疼痛を伴うことが多い。

一部の患者は転移病変の症状と徴候(例,肝腫大,腹水,鎖骨上リンパ節腫大)を最初に呈する。

大腸癌の診断

  • 大腸内視鏡による生検

  • 腫瘍の増殖および進展の程度を評価するためのCT

  • 遺伝子検査

結腸癌を示唆する症状がみられる患者またはスクリーニング検査で陽性と判定された患者には,がんの有無を確認するための診断検査が必要である。現行のガイドラインは,危険因子に関係なく,全ての個人を対象としてスクリーニングを推奨している。

便潜血または便DNA検査で陽性となった患者には,S状結腸鏡検査または画像検査で病変が認められた患者と同様に,大腸内視鏡検査が必要である。組織学的検査のために,全ての病変を完全に切除すべきである。病変が無茎性または大腸内視鏡検査時に切除できない場合は,潜在がんを除外するために外科的切除を強く考慮すべきである。

下部消化管造影(特に二重造影法)は,多くの病変を発見できるが,大腸内視鏡検査と比較してやや精度が低く,現在では便潜血陽性やDNA検査陽性のフォローアップとしては受け入れられていない。

がんと診断された時点で,胸部,腹部,および骨盤CTを用いた一連の画像検査による病期診断,ならびにルーチンの臨床検査を行って,転移病変と貧血を検索し,全身状態を評価すべきである。

血清がん胎児性抗原(CEA)は大腸癌患者の70%で高値を示す。CEA値は大腸癌の初期評価の一部としてルーチンに測定されるが,感度も特異度も低いため,スクリーニング目的では推奨されない。しかしながら,CEAが術前に高値を示し,結腸腫瘍切除後に低下した場合には,この値のモニタリングが再発の早期発見に役立つことがある。

現在,手術時に切除された結腸癌には,リンチ症候群を引き起こす遺伝子変異の検査がルーチンに行われる。結腸癌,卵巣がん,または子宮内膜がんを若年で発症した近親者がいるか,それらのがんの患者である近親者が複数いる患者には,リンチ症候群の検査を行うべきである。リンチ症候群が確認された患者やリンチ症候群が懸念される家族歴を有する患者は,遺伝カウンセリングに紹介する。

大腸癌の治療

  • 外科的切除,ときに化学療法,放射線療法,またはその両方を併用

手術

大腸癌の根治的治療では外科的切除が中核となる。外科的切除としては,腫瘍が存在する大腸の解剖学的区分を切除するとともに,所属リンパ節群を郭清する。一般に,5cmの広いマージンをとった切除が計画されるが,断端陰性であれば距離を問わず許容可能である。典型的には切除に続いて,腸管の連続性を回復させるために腸管の再吻合を行う。

直腸癌の場合,肛門括約筋群に近接しているが達していない下部直腸腫瘍を有する患者において,局所再発の有意なリスクや長期生存率の低下を伴うことなく,括約筋を温存する外科的切除(低位前方切除術)を行うことが可能である。括約筋温存術には低位吻合が必要であり,しばしば術後に機能的問題(例,便漏れ,便失禁)が生じる。括約筋温存術後に局所再発または便失禁が生じた場合は,通常は永久的人工肛門造設術を伴う腹会陰式直腸切断術(APR)が推奨される(1)。

肝転移がある場合は,以下のような複数の因子に応じて外科的切除が行われることがある:

  • 肝臓の転移病変の数

  • 転移巣に侵された肝実質の量

  • 肝臓の病変部の切除可能性

  • 同時性か異時性か

  • 腫瘍の生物学的特徴(KRASNRAS,またはBRAF変異の存在)

肝転移がある患者には,腫瘍内科医,放射線腫瘍医,IVR専門医(interventional radiologist),および肝胆道外科医を含む集学的チームによる治療選択肢の評価を行うべきである。治療に関する意思決定プロセスには集学的チームが極めて重要である。

アジュバント療法

結腸癌では,III期(リンパ節転移陽性)または高リスクII期(リンパ節転移陰性であるが,脈管侵襲など,病理学的検査で高リスクの所見を認める場合)の患者に対して術後化学療法が適応となる(大腸癌の病期分類の表を参照)。

直腸癌では,過去5年間でアジュバント療法に関する決定がますます複雑化しているが,これは最近のいくつかの研究でtotal neoadjuvant therapy(術前に全ての化学療法と放射線療法を施行する)を用いる戦略が導入されたためである(2, 3, 4)。

一般に,T3またはT4の患者とリンパ節転移が疑われる患者には,外科的切除と併せて化学療法と化学放射線療法の両方が施行される。

フォローアップ

治療としての大腸癌の外科的切除後には,サーベイランスとしての大腸内視鏡検査を,術後1年時点または術前大腸内視鏡検査の1年後に行うべきである(5)。2回目のサーベイランス大腸内視鏡検査は,1年後のサーベイランス大腸内視鏡検査でポリープや腫瘍が認められなければ3年後に行うべきである。その後,サーベイランス大腸内視鏡検査は5年毎に行うべきである。がんによる閉塞のために術前の大腸内視鏡検査が不完全に終わった場合は,同時性重複がんの有無を調べると同時に,前がん性ポリープがあれば検出して切除するために,手術の3~6カ月後に全大腸内視鏡検査を施行すべきである(5)。

再発を検出するための追加スクリーニングとして,病歴聴取,身体診察,および血清がん胎児性抗原値測定を,最初の3年間は3カ月毎に,その後の2年間は6カ月毎に行うべきである。

画像検査(CTまたはMRI)を6~12カ月毎に5年間行う。

緩和療法

根治手術が不可能な場合,または患者に容認できない手術リスクがある場合には,限られた緩和手術(例,閉塞の解除または穿孔部位の切除を目的とする)が適応の場合があり,生存期間の中央値は7カ月である。一部の閉塞性腫瘍は,電気凝固術により腫瘍を減量するか,またはステントによって開存性を維持することができる。化学療法により,腫瘍が縮小し,生存期間が数カ月間延長することがある。

単剤または併用で使用される化学療法薬として,カペシタビン(フルオロウラシルの前駆体),イリノテカン,オキサリプラチンなどがある。ベバシズマブ,セツキシマブ,パニツムマブなどのモノクローナル抗体も選択的に使用されており,ある程度の有効性を示す。遠隔転移を伴う大腸癌患者の生存期間延長という点で他と比べて明らかに効果的なレジメンは存在しないが,一部のレジメンは進行を遅らせる。進行結腸癌に対する化学療法は,研究段階の薬剤や臨床試験にアクセスできる経験豊富な腫瘍内科医が管理すべきである。

転移が肝臓に限局しているが切除不能な場合には,フロクスウリジンまたは放射性マイクロスフェアの肝動脈注入療法(放射線科で間欠的に施行するか,皮下埋め込み式ポンプまたはベルト装着式の外部ポンプを通して持続的に施行する)が全身化学療法より有効となりうるが,それらの治療法の便益は不明であり,便益と害のバランスを解明するための臨床試験が進行中である。症状緩和を目的として,定位放射線治療またはラジオ波もしくはマイクロ波治療による熱焼灼も考慮できる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Bujko K, Rutkowski A, Chang GJ, et al: Is the 1-cm rule of distal bowel resection margin in rectal cancer based on clinical evidence?A systematic review.Ann Surg Oncol 19(3):801–808, 2012.doi: 10.1245/s10434-011-2035-2

  2. 2.Garcia-Aguilar J, Patil S, Gollub MJ, et al: Organ preservation in patients with rectal adenocarcinoma treated with total neoadjuvant therapy. J Clin Oncol 40(23):2546–2556, 2022.doi: 10.1200/JCO.22.00032

  3. 3.Bahadoer RR, Dijkstra EA, van Etten B, et al: Short-course radiotherapy followed by chemotherapy before total mesorectal excision (TME) versus preoperative chemoradiotherapy, TME, and optional adjuvant chemotherapy in locally advanced rectal cancer (RAPIDO): A randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol 22(1):29–42, 2021.doi: 10.1016/S1470-2045(20)30555-6.Clarification and additional information.Lancet Oncol 22(2):e42, 2021.

  4. 4.Conroy T, Bosset JF, Etienne PL, et al: Neoadjuvant chemotherapy with FOLFIRINOX and preoperative chemoradiotherapy for patients with locally advanced rectal cancer (UNICANCER-PRODIGE 23): A multicentre, randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncol 22(5):702–715, 2021.doi: 10.1016/S1470-2045(21)00079-6

  5. 5.Kahi CJ, Boland R, Dominitz JA, et al: Colonoscopy surveillance after colorectal cancer resection: Recommendations of the US multi-society task force on colorectal cancer.Gastroenterology 150:758–768, 2016.doi: 10.1053/j.gastro.2016.01.001

大腸癌の予後

予後は病期に大きく依存する(大腸癌の病期分類の表を参照)。

5年生存率は,がんが粘膜に限局している場合は90%近くに達し,腸壁を越えて進展している場合は70~80%,リンパ節転移陽性の場合は30~50%,遠隔転移がある場合は20%未満である。

表&コラム

大腸癌の予防

  • 環境因子の是正

  • ときに低用量アスピリン

大腸癌発生の是正可能な危険因子としては以下のものがある(1):

  • 運動不足

  • 肥満

  • タバコへの曝露

  • 赤身肉および加工肉の過剰摂取

  • 低繊維食

  • 過度の飲酒

また,U.S. Preventive Services Task Force(USPSTF)は,大腸癌リスクが平均的で以下の全てを満たす成人に対して,心血管疾患および大腸癌の一次予防として低用量アスピリンの使用を推奨している(2):

年齢60~69歳を除いて同じ基準を満たす成人に低用量アスピリンを使用するかどうかは,共有意思決定(shared decision-making)によって決定すべきである。

予防に関する参考文献

  1. 1.Martínez ME: Primary prevention of colorectal cancer: Lifestyle, nutrition, exercise.Recent Results Cancer Res 166:177-211, 2005.doi: 10.1007/3-540-26980-0_13

  2. 2.Bibbins-Domingo K; U.S. Preventive Services Task Force: Aspirin Use for the Primary Prevention of Cardiovascular Disease and Colorectal Cancer: U.S. Preventive Services Task Force Recommendation Statement. Ann Intern Med 164(12):836-845, 2016.doi: 10.7326/M16-0577

要点

  • 大腸癌は欧米で最も多くみられるがんの1つであり,典型的には腺腫性ポリープ内に発生する。

  • 右側大腸の病変は症状として通常出血および貧血を,左側大腸の病変は通常閉塞症状(例,腹部仙痛)を引き起こす。

  • 平均的なリスクの患者では45歳からルーチンのスクリーニングを開始すべきであり,その典型的な方法として,大腸内視鏡検査,年1回の便潜血検査,S状結腸内視鏡検査,または後者2つの併用がある。

  • 血清中のがん胎児性抗原(CEA)値はしばしば上昇しているが,スクリーニングに使用できるほど特異的ではない;しかしながら,治療後のCEA値モニタリングは再発を検出する上で役立つことがある。

  • 治療は外科的切除により行い,ときに化学療法および/または放射線療法を併用する;転帰は病期によって幅広く異なる。

  • 行動面の対策(例,身体活動,食習慣の変更,喫煙や過度の飲酒の回避)やときに低用量アスピリンによってもリスクが低下する可能性がある。

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