栄養サポートの概要

執筆者:Kris M. Mogensen, MS, RD-AP, Department of Nutrition, Brigham and Women's Hospital;
Malcolm K. Robinson, MD, Harvard Medical School
Reviewed ByGlenn D. Braunstein, MD, Cedars-Sinai Medical Center
レビュー/改訂 修正済み 2024年 9月
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多くの低栄養患者には,栄養サポートが必要である。栄養サポートは,除脂肪体重の割合を維持または増加させることを目的とする。食欲不振の患者または食事の摂取や吸収に問題のある患者では,経口摂食が難しいことがある。重篤(critically ill)な患者でも,しばしば栄養サポートが必要である(1, 2)。

経口摂取をときに増進させる行動面の対策として以下のものがある:

  • 食べるよう患者に勧める

  • 食事を温めるまたは食事に調味料を加える

  • 好みのものやしっかりと味付けしたものを出す

  • 少量食べるよう患者に勧める

  • 食事にあわせて他のケアや活動の予定を立てる

  • 摂食を介助する

  • 家族および/または友人と食事時間を合わせる

行動面の対策で効果がなければ,経口,経腸チューブ,または静脈栄養による栄養サポートの適応となるが,ときに臨死患者と重度の認知症患者は対象から除外される。

総論の参考文献

  1. 1.Compher C, Bingham AL, McCall M, et al.Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition [published correction appears in JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2022 Aug;46(6):1458-1459. doi: 10.1002/jpen.2419]. JPEN J Parenter Enteral Nutr.2022;46(1):12-41.doi:10.1002/jpen.2267

  2. 2.McClave SA, Taylor BE, Martindale RG, et al.Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.)[published correction appears in JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2016 Nov;40(8):1200]. JPEN J Parenter Enteral Nutr.2016;40(2):159-211.doi:10.1177/0148607115621863

栄養所要量の予測

介入の計画を可能にするため,栄養所要量を予測する。栄養所要量は,公式または間接熱量測定によって推定できる。間接熱量測定には呼気ガス分析装置(酸素消費量と総CO2排出量に基づいてエネルギー消費量を算出する閉鎖式再呼吸システム)を使用する必要がある。間接熱量測定はエネルギー必要量を決定するには望ましい方法であるが,特別な専門技術が必要であり,常に利用できるわけではない。そのため,通常は総エネルギー消費量およびタンパク質必要量を推定する。

エネルギー消費量

総エネルギー消費量(TEE)は,患者の体重,活動レベル,および代謝ストレスの程度(代謝要求)によって異なる。TEEは成人では,20kcal/kg/日という低い値から,外傷または熱傷などの重度の代謝ストレスがある場合の最大45kcal/kg/日までと大きな幅がある(1, 2)。

TEEは以下の合計と等しい:

  • 安静時代謝量(RMR,または安静時エネルギー消費量[REE]),これは正常ではTEEの約70%を占める

  • 食物代謝により失われるエネルギー(TEEの10%)

  • 身体活動時に消費されるエネルギー(TEEの20%)

低栄養により,RMRが最大20%減少することがある。代謝ストレスを増大させる病態(例,重篤な疾患,感染症,炎症,外傷,手術)によりRMRが増加することがあるが,50%を超える増加はまれである。

Mifflin-St. Jeorの式は,一般に用いられるHarris-Benedictの式よりも少ない誤差でRMRをより正確に推定でき,通常は間接熱量測定法による計測値から20%以内に収まる結果が得られる。

TEEはRMRに約10%(座位時間の長い人)または約40%(重篤な状態の人)を加算することによって推定できる。

医学計算ツール(学習用)

タンパク質必要量

健常者では,タンパク質必要量は体重がベースとなり,0.8g/kg/日で推定する。ただし以下の場合には,必要量が増加する可能性がある(成人の1日当たりの推定タンパク質必要量の表を参照):

  • 代謝ストレスのある患者

  • 腎不全で透析を必要とする患者

  • 70歳以上の患者

表&コラム
表&コラム

必要量に関する参考文献

  1. 1.Compher C, Bingham AL, McCall M, et al.Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition [published correction appears in JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2022 Aug;46(6):1458-1459]. JPEN J Parenter Enteral Nutr.2022;46(1):12-41.doi:10.1002/jpen.2267

  2. 2.McClave SA, Taylor BE, Martindale RG, et al.Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.)[published correction appears in JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2016 Nov;40(8):1200. doi: 10.1177/0148607116670155]. JPEN J Parenter Enteral Nutr.2016;40(2):159-211.doi:10.1177/0148607115621863

栄養サポートに対する反応の評価

栄養サポートに対する反応を評価するためのゴールドスタンダードはない。医師は,重度の低体重患者に対してBMI(body mass index)の変化を用いることがあり,この場合,BMIの正常範囲に向けて体重増加を促進することを目標とする。しかし,栄養サポートに対する反応の指標としてBMIをルーチンに用いることは,真の除脂肪体重の増加というよりはむしろ体液の増加(静脈栄養でよくみられる)が反映されることから制限される場合がある。身体組成分析および体脂肪分布の評価をモニタリングすることは可能であるが,診療所や病院では利用できない特殊な機器を必要とする場合がある。創傷治癒,筋力の改善,持久力の改善など,栄養サポートに対する臨床反応をモニタリングすることが重要である。(評価に関する追加情報は,低栄養の評価:身体診察で入手可能である。)

患者が長期的な栄養サポートを必要とする場合,身体組成の測定により除脂肪体重の増加を評価できる。

窒素バランスや筋力測定などの他の測定も栄養サポートに対する反応の評価に用いることができるが,利用可能性によりその使用は制限される。

窒素バランスは,タンパク質の需要と供給間のバランスを反映したものであり,摂取した窒素量と失った窒素量との差である。正のバランス(すなわち,摂取した量の方が失った量よりも多い)は,摂取が十分であることを意味する。正確な測定は実際には不可能であるが,特に連続した測定を行えば(例,週に1~2回など),推定値は栄養サポートに対する反応の評価に役立つ。

  • 窒素摂取量はタンパク質摂取量から推定する:窒素(g)はタンパク質(g)/6.25と等しい。

  • 窒素損失量の推定値は,尿からの窒素損失量(正確に採取した24時間蓄尿中の尿素窒素量を測定することによって推定),糞便からの損失量(排便があれば1g/日と推定し,排便がなければ無視できるものとする),および気づかず測定されない他の損失量(3gと推定)を合計した値である。

筋力は除脂肪体重の増加を間接的に反映する。握力計で,または電気生理学的に(一般的には電極で尺骨神経を刺激する)定量できる。

急性期反応物質の血清タンパク質(特にプレアルブミン[トランスサイレチン],レチノール結合タンパク質,トランスフェリンなどの寿命の短いタンパク質)の濃度が,ときに栄養状態の改善と相関するが,これらの濃度は炎症状態との相関の方が強い(1)。

医学計算ツール(学習用)

反応の評価に関する参考文献

  1. 1.Evans DC, Corkins MR, Malone A, et al.The Use of Visceral Proteins as Nutrition Markers: An ASPEN Position Paper [published correction appears in Nutr Clin Pract. 2021 Aug;36(4):909]. Nutr Clin Pract.2021;36(1):22-28.doi:10.1002/ncp.10588

要点

  • 行動面の対策により栄養サポートの必要性を回避できることがある。

  • 体重,性別,活動レベル,および代謝ストレスの程度(例,重篤な疾患,外傷,熱傷,最近の手術による)に基づいて,患者のエネルギー必要量を予測する。

  • 正常ではタンパク質必要量は0.8g/kg/日であるが,年齢が70歳以上の場合や腎不全または代謝ストレスがある患者ではこの量を補正する。

  • 創傷治癒,筋力の改善,持久力の改善などの臨床指標を用いて,栄養サポートに対する反応を評価する。

  • 長期的な栄養サポートが必要な場合は,身体組成の測定により除脂肪体重の増加を評価する。

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