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慢性腎臓病

(慢性腎不全;CKD)

執筆者:

Anna Malkina

, MD, University of California, San Francisco

レビュー/改訂 2020年 2月
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慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患に対して行うが,具体的には水・電解質バランスの管理,血圧のコントロール,貧血の治療,様々な種類の透析,腎移植などがある。

米国成人の一般集団におけるCKD(ステージ1~5)の有病率は14.8%と推定されている。(より詳細な情報については,National Health and Nutrition Examination Survey[NHANES, 2018]およびBehavioral Risk Factors Surveillance System[BRFSS, 2018]のデータに基づく"CKD in the General Population"を参照のこと。)

CKDの病因

一定以上の腎機能障害を引き起こすあらゆる病態が慢性腎臓病の原因となりうる(慢性腎臓病の主な原因 慢性腎臓病の主要な原因 慢性腎臓病の主要な原因 の表を参照)。

米国における最も一般的な原因を有病率の順に以下に示す:

CKDの病態生理

慢性腎臓病は,まず腎予備能低下または腎機能不全として報告され,そこから腎不全(末期腎臓病)に進行することがある。初期には,腎組織の機能が失われても顕著な異常はほとんど認められず,これは残存組織の機能が亢進することによるものである(腎臓の機能的適応)。

腎機能が低下すると,水および電解質の恒常性を維持する腎臓の能力が障害される。尿の濃縮能が早期に低下し,続いて過剰なリン,酸,およびカリウムの排泄能が低下する。腎不全が進行すると(糸球体濾過量[GFR] 15mL/min/1.73m2以下),尿を効果的に希釈・濃縮する能力が失われ,そのため通常は尿浸透圧が血漿浸透圧(275~295mOsm/kg)に近い約300~320mOsm/kgの範囲で一定となり,尿量が水分摂取量の変化を確実に反映しなくなる。

クレアチニンと尿素

クレアチニンおよび尿素の血漿中濃度(糸球体濾過に高度に依存)は,GFRが低下するにつれて双曲線的に上昇する。これらの変化は早期にはごく軽微である。GFRが15mL/min/1.73m2(正常値は90mL/min/1.73m2以上)未満まで低下すると,クレアチニンおよび尿素の濃度が高くなり,通常は全身症状を伴うようになる(尿毒症)。尿素およびクレアチニンは,尿毒症症状に対する重大な寄与因子ではなく,尿毒症症状を引き起こす他の多くの物質(十分に解明されていないものもある)に対するマーカーである。

ナトリウムと水

GFRが低下しても,尿中のナトリウム排泄率の上昇と口渇に対する正常な反応によって,ナトリウムと水のバランスは良好に維持される。したがって,血漿ナトリウム濃度は典型的には正常となり,食事からの塩分または水分の摂取量が極めて制限されているか過剰でない限り,循環血液量増加はまれである。ナトリウムと水の過剰により 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 を来すことがあり,特に心予備能が低下した患者で可能性が高くなる。

カリウム

分泌が主に遠位ネフロンでの分泌を介して制御されている物質(例,カリウム)では,通常は腎臓の適応により,腎不全が進行するまで,または食事によるカリウム摂取量が過剰になるまで,血漿中濃度が正常に維持される。腎不全がそれほど進行していない患者では, カリウム保持性利尿薬 利尿薬 いくつかのクラスの薬剤が高血圧の初期治療およびその後の管理に効果的である: アドレナリン修飾薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) β遮断薬 さらに読む アンジオテンシン変換酵素阻害薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 いくつかのクラスの薬剤が高血圧の初期治療およびその後の管理に効果的である: アドレナリン修飾薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) β遮断薬 さらに読む β遮断薬 β遮断薬 いくつかのクラスの薬剤が高血圧の初期治療およびその後の管理に効果的である: アドレナリン修飾薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) β遮断薬 さらに読む 非オピオイド鎮痛薬 非オピオイドおよびオピオイド鎮痛薬が疼痛治療に主に用いられる薬剤である。抗うつ薬,抗てんかん薬,その他の中枢神経系作用薬も慢性疼痛や神経障害性疼痛に使用されており,一部の病態に対しては第1選択の治療となっている。脊髄幹輸注(neuraxial infusion),神経刺激,注射療法,および神経ブロックは特定の患者に役立つ可能性がある。認知... さらに読む ,シクロスポリン,タクロリムス,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,ペンタミジン,または アンジオテンシンII受容体拮抗薬 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) いくつかのクラスの薬剤が高血圧の初期治療およびその後の管理に効果的である: アドレナリン修飾薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) β遮断薬 さらに読む により,血漿カリウム濃度が上昇することがある。

カルシウムとリン

カルシウム,リン,副甲状腺ホルモン(PTH),および ビタミンD代謝 ビタミンD欠乏症および依存症 日光への曝露が不十分であると,ビタミンD欠乏症が起こりやすくなる。欠乏症により,骨石灰化が障害され,小児ではくる病,成人では骨軟化症が引き起こされ,また骨粗鬆症の一因となる可能性がある。診断では,血清25(OH)D(D2およびD3)の測定を行う。治療としては通常,ビタミンDを経口投与し,必要に応じてカルシウムおよびリンを補給する。しばしば... さらに読む の異常のほか,腎性骨異栄養症が起こる可能性もある。腎臓でのカルシトリオール(活性型ビタミンDであるホルモンの1,25(OH)2D)の産生低下は 低カルシウム血症 低カルシウム血症 低カルシウム血症とは,血漿タンパク質濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること,または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。原因には,副甲状腺機能低下症,ビタミンD欠乏症,および腎疾患がある。症状としては,錯感覚,テタニーの... さらに読む に寄与する。腎臓でリン排泄が低下する結果, 高リン血症 高リン血症 高リン血症とは,血清リン濃度が4.5mg/dL(1.46mmol/L)を上回った状態である。原因には,慢性腎臓病,副甲状腺機能低下症,代謝性または呼吸性のアシドーシスがある。臨床的特徴は随伴する低カルシウム血症によるものと考えられ,テタニーが含まれる。診断は血清リン濃度の測定による。治療には,リンの摂取制限,および炭酸カルシウムなどのリン... さらに読む を来す。続発性副甲状腺機能亢進症はよくみられ,腎不全患者でカルシウムまたはリン濃度に異常がみられる前に発症することもある。このため,中等度のCKD患者のPTHのモニタリングは,高リン血症の発生前でも推奨されている。

腎性骨異栄養症(副甲状腺機能亢進症,カルシトリオール欠乏症,血清リン値上昇,血清カルシウム低値または正常によってもたらされる骨石灰化の異常)は通常,副甲状腺機能亢進症性骨疾患(線維性骨炎)に起因する骨代謝回転亢進の形態をとるが,無形成骨症(副甲状腺機能抑制の増強を伴う)または骨軟化症に起因する骨代謝回転の低下も関与しうる。カルシトリオール欠乏症は,骨減少症または骨軟化症の原因となる可能性がある。

pHと重炭酸塩

貧血

中等度のCLDと進行したCKD(ステージ3以上)では貧血が特徴的である。CKDの貧血は正色素性正球性であり,Hctは20~30%である(多発性嚢胞腎 常染色体優性多発性嚢胞腎 (ADPKD) 多発性嚢胞腎(PKD)は腎嚢胞を形成する遺伝性疾患で,両腎の段階的な腫大をもたらし,ときには腎不全に進行する。ほぼ全種類が家族性の遺伝子変異に起因する。症状と徴候は,側腹部痛,腹痛,血尿,高血圧などである。診断はCTまたは超音波検査による。治療は,腎不全に至る前は対症療法,腎不全発生後は透析または移植である。... さらに読む 常染色体優性多発性嚢胞腎 (ADPKD) 患者では35~40%)。通常は機能腎の重量低下に起因するエリスロポエチン産生の不足が原因である( Professional.see page 赤血球産生低下の概要 赤血球産生低下の概要 貧血(赤血球数,ヘモグロビン量,またはヘマトクリットの減少)は, 赤血球産生(赤血球造血)の低下,赤血球崩壊の増加,失血,またはこれらの因子の組合せの結果として生じることがある。( 貧血患者へのアプローチも参照のこと。) 赤血球産生低下による貧血(hypoproliferative... さらに読む )。その他の原因としては, 鉄欠乏症 鉄(Fe)はヘモグロビン,ミオグロビン,および体内の多数の酵素の成分である。主に動物性食品に含まれるヘム鉄は,平均的な食事中の鉄分の85%超を占める非ヘム鉄(例,植物および穀物に含まれる)よりもはるかに吸収がよい。しかし,非ヘム鉄は,動物性タンパク質およびビタミンCと一緒に摂取すると吸収が増大する。... さらに読む 葉酸 葉酸欠乏症 葉酸欠乏症はよくみられる。不十分な摂取,吸収不良,または様々な薬物の使用の結果生じることがある。欠乏症は巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏症によるものと鑑別できない)を引き起こす。母体に葉酸欠乏症があると,神経管の先天異常のリスクが高まる。確定診断には臨床検査が必要である。好中球の過分葉の測定は,高感度であり容易に利用できる。通常は葉酸の... さらに読む ,および ビタミンB12 ビタミンB12欠乏症 食事によるビタミンB12欠乏症は通常,不十分な吸収に起因するが,ビタミンサプリメントを摂らない完全菜食主義者に欠乏症が生じることがある。欠乏症により,巨赤芽球性貧血,脊髄および脳の白質への障害,ならびに末梢神経障害が起こる。診断は通常,血清ビタミンB12値の測定によって行う。シリング試験が病因の特定に役立つ。治療はビタミンB12の経口また... さらに読む の欠乏などがある。

CKDの症状と徴候

腎予備能が軽度に低下した患者は症状を示さない。軽度から中等度の腎機能不全がみられる患者でさえ,血中尿素窒素(BUN)およびクレアチニン値の上昇があっても,症状は認められないことがある。夜間頻尿がしばしば認められ,これは主に尿を濃縮できないことに起因する。倦怠感,疲労,食欲不振,および集中力の低下は,尿毒症の最初の臨床像となることが多い。

より重度の腎疾患(例,推算糸球体濾過量[eGFR]15mL/min/1.73m2未満)では,神経筋症状がみられる場合があり,具体的には粗大な筋攣縮, 感覚性および運動性の末梢神経障害 末梢神経障害 末梢神経障害は,単一または複数の末梢神経(神経系のうち神経根および神経叢より遠位にある部分)の機能障害である。数多くの症候群が含まれ,様々な程度の感覚障害,疼痛,筋力低下および筋萎縮,深部腱反射低下,ならびに血管運動神経症状が単独で,または複数組み合わさって現れるのが特徴である。最初の分類は病歴および身体診察に基づいて行う。筋電図検査およ... さらに読む ,筋痙攣,反射亢進, レストレスレッグス症候群 周期性四肢運動障害(PLMD)およびレストレスレッグス症候群(RLS) 周期性四肢運動障害(PLMD)とレストレスレッグス症候群(RLS)は,下肢または上肢の異常運動,またRLSでは通常,下肢または上肢の感覚異常を特徴とし,それらにより睡眠が妨害されることがある。 ( 睡眠障害または覚醒障害を有する患者へのアプローチも参照のこと。) PLMDおよびRLSは中高年により多くみられ,RLS患者の80%以上がPLM... さらに読む ,痙攣発作(通常は高血圧性または代謝性脳症の結果)などがある。

食欲不振,悪心,嘔吐,体重減少,口内炎,および口腔内の不快な味は,ほぼ一様にみられる。皮膚が黄褐色を呈する場合がある。ときに,汗からの尿素が皮膚上で結晶化することがある(尿素霜)。そう痒は特に不快となることがある。低栄養によって生じる全身的な組織の消耗は,慢性尿毒症の顕著な特徴である。

進行したCKDでは, 心膜炎 心膜炎 心膜炎とは心膜の炎症であり,しばしば心嚢液貯留を伴う。心膜炎は,多くの疾患(例,感染症,心筋梗塞,外傷,腫瘍,代謝性疾患)によって引き起こされるが,特発性のことも多い。症状としては胸痛や胸部圧迫感などがあり,しばしば深呼吸により悪化する。心タンポナーデまたは収縮性心膜炎が発生した場合には,心拍出量が大きく低下することがある。診断は症状,心... さらに読む 心膜炎 や消化管の潰瘍および出血が生じることがある。進行したCKD患者の80%以上で高血圧がみられ,通常は循環血液量増加と関連している。 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 高血圧 または 冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血, 狭心症, 急性冠症候群( 不安定狭心症, 心筋梗塞), 心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の... さらに読む 冠動脈疾患の概要 に起因する心不全と腎臓でのナトリウム・水貯留により,就下性の浮腫(dependent edema)や呼吸困難が生じる場合がある。

CKDの診断

  • 電解質,血中尿素窒素(BUN),クレアチニン,リン,カルシウム,血算

  • 尿検査(尿沈渣検査を含む)

  • 尿タンパクの定量(24時間蓄尿での尿タンパク量または随時尿でのタンパク質対クレアチニン比)

  • 超音波検査

  • ときに腎生検

慢性腎臓病(CKD)は通常,血清クレアチニン値が上昇した際に初めて疑われる。最初の段階では,腎不全が急性,慢性,慢性と急性の併発か(すなわち,CKD患者に腎機能をさらに障害する急性疾患が発生している場合)を判定する(急性腎障害の慢性腎臓病との鑑別 急性腎障害の慢性腎臓病との鑑別 急性腎障害の慢性腎臓病との鑑別 の表を参照)。腎不全の原因も特定する。ときに腎不全の罹病期間の特定が原因の特定に有用となる場合がある一方,ときに期間より原因を同定することの方が容易で,原因の特定が期間の特定に有用となる場合もある。

検査には尿検査(尿沈渣,電解質,尿素窒素,クレアチニン,リン,カルシウム,血算を含む)などがある。ときに,原因を特定するために特異的な血清学的検査が必要となる。 急性腎障害 急性腎障害(AKI) 急性腎障害は,数日間から数週間で腎機能が急速に低下する病態であり,これにより,尿量減少の有無にかかわらず,血中に窒素化合物が蓄積する(高窒素血症)。原因は重度の外傷,疾患,または手術による腎臓の灌流低下である場合が多いが,ときに急速進行性の内因性の腎疾患に起因する場合もある。症状としては,食欲不振,悪心,嘔吐などがある。無治療の場合,痙攣... さらに読む CKD 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 慢性腎臓病 の鑑別に最も有用な情報は,クレアチニン高値または尿検査異常の病歴である。尿検査の所見は基礎疾患の性質によるが,幅広円柱(白血球3個分の直径よりも広い),または特に蝋様円柱(高度の屈折性を示す)は,原因を問わず腎不全が進行すると,しばしば顕著に認められる。

腎超音波検査は通常, 閉塞性尿路疾患 閉塞性尿路疾患 閉塞性尿路疾患は,構造的または機能的異常により正常な尿流が妨げられる病態であり,ときに腎機能障害(閉塞性腎症)につながることもある。症状としては,慢性閉塞では出現する可能性がより低いが,T11からT12までの皮膚分節に放散する疼痛や排尿異常(例,排尿困難,無尿,夜間頻尿,多尿)などが出現することがある。診断は閉塞のレベルに応じて,膀胱カテ... さらに読む の評価や,腎臓の大きさに基づく急性腎障害とCKDの鑑別に役立つ。一部の病態以外では(慢性腎臓病の主な原因 慢性腎臓病の主要な原因 慢性腎臓病の主要な原因 の表を参照),CKD患者の腎は小さく萎縮し(通常長さ10cm未満),皮質は薄く高エコーである。腎機能が末期腎臓病での機能に近い数値に達すると,正確な診断はますます困難になる。確定診断の方法は 腎生検 腎生検 尿路の生検は,訓練を受けた専門医(腎臓専門医,泌尿器科医,またはIVR専門医)が行う必要がある。 診断を目的とする生検の適応としては,原因不明の 腎炎または ネフローゼ症候群や 急性腎障害などがある。ときに,治療効果の判定を目的として生検が施行されることもある。相対的禁忌には,出血性素因やコントロール不良の... さらに読む であるが,超音波検査で腎臓の萎縮および線維化が示唆される場合は推奨されず,処置による高いリスクが低い診断率を上回る。

慢性腎臓病の病期

CKDのステージ分類はその重症度を定量化する1つの方法である。CKDはこれまで5ステージに分類されている。

  • ステージ1:GFR正常(90mL/min/1.73m2以上)かつ,持続性アルブミン尿または既知の構造的もしくは遺伝性腎疾患

  • ステージ2:GFR 60~89mL/min/1.73m2

  • ステージ3a:GFR 45~59mL/min/1.73m2

  • ステージ3b:GFR 30~44mL/min/1.73m2

  • ステージ4:GFR 15~29mL/min/1.73m2

  • ステージ5:GFR 15mL/min/1.73m2未満

CKDにおけるGFR(mL/min/1.73m2)は次のCKD-EPI(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)のクレアチニン式で算出できる(1 診断に関する参考文献 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 診断に関する参考文献 ):141 ×(血清クレアチニン)-1.209× 0.993 age。患者が女性の場合は得られた数値に1.018を乗じ,アフリカ系アメリカ人の場合は1.159を乗じる。女性のアフリカ系アメリカ人の場合は1.018 × 1.159(1.1799)を乗じる。その代わりとして,血清および尿中クレアチニンの測定値を用いる式による蓄尿(ほとんどの場合24時間)によるクレアチニンクリアランスからGFRを推定することも可能である;この式はGFRを10~20%大きく見積もる傾向がある。これは,血清クレアチニンの評価が正確ではない可能性がある場合(例,あまり動かない患者,極めて肥満した患者,極めてやせた患者)に用いられる。血清シスタチンCは内因性GFRの代替マーカーであり,血清クレアチニン値に影響を及ぼす腎以外の因子(例,筋肉量が極めて多いまたは少ない,外因性クレアチン摂取,切断または神経筋疾患,高タンパク食または専ら植物由来の食事)を有する患者において確認検査として用いられる。GFRはCKD-EPIのシスタチンC式を用いて計算される (2) 診断に関する参考文献 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 診断に関する参考文献

CKD-EPI式は,MDRD(Modification of Diet in Renal Disease)式やCockcroft-Gault式よりも正確であり,特にGFR値がほぼ正常な患者での精度が高い。CKD-EPI式は他の計算式と比較して,慢性腎臓病の偽陽性となることが少なく,予後の予測にも優れている。

診断に関する参考文献

予後

慢性腎臓病(CKD)の進行は,大部分の症例でタンパク尿の程度によって予測される。ネフローゼレベルのタンパク尿(尿タンパク > 3g/24時間または尿タンパク/クレアチニン比 > 3)がみられる患者は通常,予後不良であり,腎不全への進行も速い。基礎疾患が活動性でない場合でさえも進行しうる。尿タンパクが1.5g/24時間未満の患者は,進行が生じたとしても通常はるかに緩徐である。 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 高血圧 アシドーシス 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳... さらに読む 副甲状腺機能亢進症 低カルシウム血症 低カルシウム血症とは,血漿タンパク質濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること,または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。原因には,副甲状腺機能低下症,ビタミンD欠乏症,および腎疾患がある。症状としては,錯感覚,テタニーの... さらに読む もより急速な進行と関連する。

治療

  • 基礎疾患のコントロール

  • ときにタンパク質,リン,およびカリウムの摂取制限

  • ビタミンDサプリメント

  • 貧血の治療

  • 関与している併存症の治療(例,心不全,糖尿病,腎結石症,前立腺肥大症)

  • 必要に応じた全ての薬剤の用量調節

  • 重度の糸球体濾過量(GFR)低下に対して,医学的介入により症候が十分に管理されない場合は透析

  • 炭酸水素ナトリウム値を正常範囲である23~29mmol/Lに維持

基礎疾患および寄与因子をコントロールする必要がある。特に,糖尿病性腎症患者における高血糖と全ての患者における高血圧をコントロールすることにより,GFRの低下をかなり遅らせることが可能である。

高血圧については,一部のガイドラインでは<140/90mmHgの目標血圧が提唱され,American Heart Associationでは130/80が推奨されており,また依然として約110~130/<80mmHgを推奨する研究者もいる。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は,ほとんどの原因の慢性腎臓病(CKD)患者,特にタンパク尿を呈する患者でGFR値の低下率を軽減する。ACE阻害薬およびARBの各単剤と比較して両剤の併用により, タンパク尿 タンパク尿 タンパク尿とは,尿中にタンパク質(通常はアルブミン)が認められることである。タンパク質濃度が高くなると,尿は泡沫状を呈する。多くの腎疾患では,タンパク尿は他の尿異常(例, 血尿)を伴って発生する。無症候性タンパク尿(isolated proteinuria)とは,他に症状および尿異常を伴わないタンパク尿である。... さらに読む は大きく低下するものの,合併症の発生率が上昇し,腎機能の低下を遅らせることができないことを示唆するエビデンスが増えている。

運動制限は必要ないが,通常は疲労と倦怠感により患者の運動能は制限される。

そう痒は,血清リン値が上昇している場合には,リンの摂取制限とリン吸着剤が奏効することがある。

栄養

腎疾患における厳格なタンパク質制限については議論がある。しかしながら,eGFRが60mL/min/1.73m2未満で ネフローゼ症候群 ネフローゼ症候群の概要 ネフローゼ症候群では,糸球体疾患が原因で尿タンパク排泄量が3g/日を超え,これに浮腫および低アルブミン血症が伴う。小児でより多くみられ,原発性および続発性いずれの原因もある。診断は随時尿検体の尿タンパク/クレアチニン比測定または24時間蓄尿での尿タンパクの測定により,原因は病歴,身体診察,血清学的検査,腎生検に基づき診断される。予後および... さらに読む のない患者における中等度のタンパク質制限(0.8g/kg/日)は安全であり,大半の患者が容易に耐容できる。一部の専門家は,糖尿病の患者とGFRが25mL/min/1.73m2未満で糖尿病がない患者に対して0.6g/kg/日を推奨している。尿毒症症状の多くは,タンパク質の異化と尿素の産生が減少すれば著明に軽減する。また,CKDの進行が遅くなることもある。エネルギー所要量を満たし,ケトーシスを予防するため,十分な炭水化物と脂肪を摂取させる。0.8g/kg/日未満の食事制限を処方されている患者は,栄養士が綿密なフォローアップを行うべきである。

食事制限により必要なビタミン摂取量が不足することがあるので,患者は水溶性ビタミンを含む総合ビタミン剤を摂取すべきである。ビタミンAおよびEの投与は不要である。ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)またはD3(コレカルシフェロール)は,ルーチンには投与されず,25-OHビタミンDおよびPTHの血中濃度に基づいて使用される。

脂質異常症 脂質異常症 脂質異常症とは,血漿コレステロール,トリグリセリド(TG)値,もしくはその両方が高値であること,またはHDLコレステロールが低値であることであり, 動脈硬化発生に寄与する。原因には原発性(遺伝性)と二次性とがある。診断は,総コレステロール,TG,および各リポタンパク質の血漿中濃度測定による。治療は食習慣の変更,運動,および脂... さらに読む 脂質異常症 に対処すべきである。食習慣の改善は,高トリグリセリド血症に対して役立つ場合がある。スタチン系薬剤は高コレステロール血症に効果的である。フィブリン酸誘導体(クロフィブラート,ゲムフィブロジル)は,CKD患者の横紋筋融解症のリスクを,特にスタチン系薬剤と併用した場合に上昇させる可能性があるが,それに対してエゼチミブ(コレステロール吸収を低下させる)は比較的安全であると考えられる。高コレステロール血症の是正は,CKD患者で増大する心血管疾患のリスクを減少させることを目的とする (1) 治療に関する参考文献 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 治療に関する参考文献

ミネラルおよび骨疾患

KDIGOによる2017年版の診療ガイドライン(1 治療に関する参考文献 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 治療に関する参考文献 )に基づき,カルシウム,リン,PTH,25-OHビタミンDの血清中濃度とアルカリホスファターゼ活性をCKDのステージ3aからモニタリングすることが推奨される。モニタリングの頻度は,CKDの重症度,上記異常の程度,および治療的介入の頻度によって異なる。骨生検は腎性骨異栄養症の病型を決定する最も確定的な評価である。

  • リンの摂取制限

  • リン吸着剤

eGFRが60mL/min/1.73m2未満の患者では,典型的には食事による摂取量を0.8~1g/日とするリン制限で十分に血清リン濃度を正常化できる。心血管リスクとの関連が報告されている高リン血症を十分にコントロールするために,リン吸着剤(カルシウム含有または非含有)の追加が必要になることがある。 高カルシウム血症 高カルシウム血症 高カルシウム血症とは,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。主な原因には副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒,がんなどがある。臨床的特徴としては多尿,便秘,筋力低下,錯乱,昏睡などがある。診断は,イオン化カル... さらに読む がある患者,無形成骨症が疑われる患者,および画像検査で血管石灰化の所見がみられた患者では,カルシウム非含有の吸着剤が望ましい。カルシウム含有の吸着剤を処方する場合,eGFRが60mL/min/1.73m2未満の患者では,食事および薬剤から摂取するカルシウム量の合計が2000mg/日を超えてはならない。

透析 腎代替療法の概要 腎代替療法(RRT)は, 腎不全患者において内分泌機能以外の腎機能を代替する治療法であり,ときに特定の中毒にも用いられる。RRTの方法としては, 持続的血液濾過および血液透析, 間欠的血液透析, 腹膜透析などがある。いずれの方法でも,透過膜を介した透析および濾過によって溶質を交換し,血液から水分を除去する。... さらに読む を受けていないステージ3a~5のCKD患者におけるPTHの至適な値は不明である。しかしながら,高リン血症およびビタミンD欠乏症の治療にもかかわらず,PTH濃度が進行性に上昇しているか著明に(使用したアッセイの正常上限の9倍を超えて)上昇した場合には,活性型ビタミンDアナログ(例,カルシトリオール)が推奨される。典型的な開始量はカルシトリオール0.25μg,経口,週3回であり,PTH濃度をアッセイでの正常上限の2~9倍に維持できるよう用量を調節する。PTH濃度の正常値への補正は,無形成骨症を誘発するリスクがあるため,行わない。

水分と電解質

水分摂取制限は,血清ナトリウム濃度が135mmol/L未満であるか,心不全または重度の浮腫がある場合にのみ必要とされる。

eGFRが60mL/m/1.73m2未満で, 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 高血圧 体液量過剰 体液量過剰 体液量の過剰は通常,細胞外液の増加を指す。細胞外液の増加は,典型的には,心不全,腎不全,ネフローゼ症候群,肝硬変でみられる。腎臓でのナトリウム保持は,体内総ナトリウム量の増加につながる。この増加により,様々な程度の体液量過剰が生じる。体液量過剰の患者では(体内総ナトリウム量が増加しているにもかかわらず),血清中ナトリウム濃度は高値,低値,... さらに読む ,または タンパク尿 タンパク尿 タンパク尿とは,尿中にタンパク質(通常はアルブミン)が認められることである。タンパク質濃度が高くなると,尿は泡沫状を呈する。多くの腎疾患では,タンパク尿は他の尿異常(例, 血尿)を伴って発生する。無症候性タンパク尿(isolated proteinuria)とは,他に症状および尿異常を伴わないタンパク尿である。... さらに読む がみられるCKD患者には,2g/日未満のナトリウム摂取制限が推奨される。

カリウム摂取制限は,血清中濃度,eGFR,食習慣,およびカリウム値を高める薬剤(例,ACE,ARB,またはカリウム保持性利尿薬)の使用に基づき個別化される。一般的に,カリウム摂取制限はeGFRが30mL/min/1.73 m2を超える場合は不要である。軽度から中等度の 高カリウム血症 高カリウム血症 高カリウム血症とは,血清カリウム濃度が5.5mEq/L(5.5mmol/L)を上回ることであり,通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。通常,カリウム摂取の増加,腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤,および急性腎障害または慢性腎臓病など,いくつかの寄与因子が同時に存在する。高カリウム血症は,... さらに読む (5.1~6mmol/L)の治療には,食事制限(代用塩の回避など),代謝性アシドーシスの是正,ならびにカリウムを低下させる利尿薬と陽イオン交換樹脂の使用が必要である。 重度の高カリウム血症 中等度から重度の高カリウム血症 高カリウム血症とは,血清カリウム濃度が5.5mEq/L(5.5mmol/L)を上回ることであり,通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。通常,カリウム摂取の増加,腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤,および急性腎障害または慢性腎臓病など,いくつかの寄与因子が同時に存在する。高カリウム血症は,... さらに読む (6mmol/L超)には 緊急治療 救急治療 急性腎障害は,数日間から数週間で腎機能が急速に低下する病態であり,これにより,尿量減少の有無にかかわらず,血中に窒素化合物が蓄積する(高窒素血症)。原因は重度の外傷,疾患,または手術による腎臓の灌流低下である場合が多いが,ときに急速進行性の内因性の腎疾患に起因する場合もある。症状としては,食欲不振,悪心,嘔吐などがある。無治療の場合,痙攣... さらに読む が必要である。

代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳... さらに読む は,血清重炭酸濃度を正常値(23~29mmol/L)にし,筋萎縮,骨量減少,およびCKDの進行を軽減または遅らせることを目的に治療すべきである。アシドーシスは,炭酸水素ナトリウムやアルカリ性食品(主に果物および野菜)など,経口摂取するアルカリ源によって是正できる。炭酸水素ナトリウムを1~2g,経口,1日2回で投与し,重炭酸濃度が約23mmol/Lに達するか,ナトリウム過剰の所見により治療継続が困難となるまで,用量を漸増する。アルカリ性食品を使用する場合は,果物および野菜にはカリウムが含まれるため,血清カリウム値をモニタリングする。

貧血および凝固障害

貧血 慢性疾患に伴う貧血 慢性疾患に伴う貧血は,複数の因子が関与する貧血である。診断のためには一般的に,感染症,自己免疫疾患,腎疾患,悪性腫瘍などの,慢性炎症性疾患が存在する必要がある。小球性または正球性貧血,および網状赤血球数低値を特徴とする。血清鉄とトランスフェリンの測定値は典型的には低値から正常値となるが,血清フェリチン値は正常値または高値となる場合がある。... さらに読む は,中等度のCKDと進行したCKD(ステージ3以上)でよくみられる合併症であり,10g/dL未満の場合は遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(例,エポエチン アルファ)などの赤血球造血刺激因子製剤(ESA)で治療する。 脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中とは,神経脱落症状を引き起こす突然の局所的な脳血流遮断が生じる多様な疾患群である。脳卒中には以下の種類がある: 虚血性(80%):典型的には血栓または塞栓によって生じる 出血性(20%):血管の破裂によって生じる(例, くも膜下出血, 脳内出血) 明らかな急性脳梗塞の所見(MRIの拡散強調画像に基づく)を伴わない一過性(典型的には1... さらに読む 脳卒中の概要 血栓症 血栓性疾患の概要 健常者では,凝固を促進する力と凝固を阻止する力および線維素を溶解する力との間で 恒常性が保たれている。多くの遺伝的因子,後天的因子,および環境因子により,凝固の方向にバランスが傾き,病的な血栓が静脈(例, 深部静脈血栓症[DVT]),動脈(例, 心筋梗塞, 虚血性脳卒中),または心腔内に形成されることがある。血栓は,形成された部位で血流閉... さらに読む ,死亡など,心血管系合併症のリスクがあるため,この種の薬剤はヘモグロビン値を10~11g/dLに保つ上で必要な最低限の用量で使用する。

赤血球産生が促進され,鉄の利用量が高まるため,鉄貯蔵の補充が必要になり,しばしば非経口鉄剤が必要となる。鉄濃度,鉄結合能,およびフェリチン濃度を綿密に観察すべきである。目標トランスフェリン飽和度(TSAT,血清鉄値を総鉄結合能で除したものに100%を乗じて算出)は20%超とするべきである。透析を受けていない患者の目標フェリチン値は100ng/mL超である。輸血は,貧血が重症(Hb8g/dL未満)または症状をもたらさない限り行うべきではない。

CKD患者の出血傾向が治療を必要とすることはまれである。クリオプレシピテート,赤血球輸血,デスモプレシン0.3~0.4μg/kg(最高20μg)を含有する等張食塩水20mLの静注(20~30分かけて投与),または結合型エストロゲンの投与(2.5~5mg,経口,1日1回)が必要に応じて有用となる。これらの治療の効果は12~48時間持続し,結合型エストロゲンの効果は数日間持続することがある。

心不全

症候性心不全は以下により治療する:

フロセミドなどのループ利尿薬は,たとえ腎機能が著明に低下した場合でも通常は効果的であるが,高用量が必要になる場合がある。左室機能が低下している場合は, ACE阻害薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 いくつかのクラスの薬剤が高血圧の初期治療およびその後の管理に効果的である: アドレナリン修飾薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) β遮断薬 さらに読む (または ARB アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) いくつかのクラスの薬剤が高血圧の初期治療およびその後の管理に効果的である: アドレナリン修飾薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) β遮断薬 さらに読む )と β遮断薬 β遮断薬 いくつかのクラスの薬剤が高血圧の初期治療およびその後の管理に効果的である: アドレナリン修飾薬 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) β遮断薬 さらに読む (カルベジロールまたはメトプロロール)を使用すべきである。心不全が進行した患者には,アルドステロン拮抗薬が推奨される。ジゴキシンを追加してもよいが,用量は腎機能の程度に基づいて減量しなければならない。

中等度または重度の 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 高血圧 は,心機能および腎機能に対する有害な影響を防ぐため,治療すべきである。ナトリウム摂取制限(1.5g/日)に反応しない患者には,利尿薬を投与すべきである。ループ利尿薬(例,フロセミド80~240mg,経口,1日2回)は,高血圧または浮腫がコントロールされない場合,サイアザイド系利尿薬(例,クロルタリドン12.5~100mg,経口,1日1回,ヒドロクロロチアジド25~100mg,経口,1日1回~2回分割投与,メトラゾン2.5~20mg,経口,1日1回)と併用してもよい。腎不全の場合でも,サイアザイド系利尿薬とループ利尿薬の併用は極めて強力であり,過剰利尿を避けるため慎重に用いなければならない。

ときに心不全をコントロールするため透析が必要になることがある。細胞外液の減量によっても血圧がコントロールされない場合は,通常の降圧薬を追加する。このような治療により高窒素血症が増強することがあるが,これが心不全および/または高血圧を十分にコントロールする上で必要になる場合がある。

薬物

腎不全患者では,薬物の腎排泄がしばしば障害されている。用量の調整が必要となる一般的な薬剤としては,ペニシリン系,セファロスポリン系,アミノグリコシド系,フルオロキノロン系,バンコマイシン,ジゴキシンなどがある。 血液透析 血液透析 血液透析では,患者の血液をポンプで血液透析器に送り込むが,透析器は中空糸でできた細管の束またはサンドイッチ状に平行に挟んだ半透膜シートで構成される2つの液体コンパートメントを有する。いずれの構造においても,第1のコンパートメントの血液は半透膜の片側に沿ってポンプで送られ,膜を隔てた他方では電解質輸液(透析液)が別個のコンパートメントで血液... さらに読む は一部の薬剤の血清中濃度を低下させるため,透析後に補充すべきである。これらの極めて脆弱な患者に薬剤を処方する前に,腎不全患者への薬剤投与に関する基準を参照することが強く推奨される (2-4) 治療に関する参考文献 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む 治療に関する参考文献

大半の専門家は,CKD患者ではNSAIDの使用を控えるよう推奨しており,その理由はNSAIDにより腎機能の悪化,高血圧の増悪,および電解質異常の誘発が生じうるためである。

一部の薬物は,eGFRが60mL/min/1.73m2未満の慢性腎臓病患者では完全に使用を控えるべきである。具体的にはニトロフラントインやフェナゾピリジンなどがある。MRIの造影剤であるガドリニウムは,一部の患者で 腎性全身性線維症 造影剤反応 造影剤反応 との関連が報告されており,患者の推算GFR値が30mL/min/1.73m2未満の場合はリスクが特に高いため,そのような患者では可能な限りガドリニウムの使用を控えるべきである。

透析

透析は通常,以下のいずれかが生じた時点で開始される:

  • 尿毒症症状(例,食欲不振,悪心,嘔吐,体重減少,心膜炎,胸膜炎)

  • 薬剤と生活習慣の是正では体液過剰,高カリウム血症,またはアシドーシスのコントロールが困難

これらの状態は,典型的には推算GFR値が糖尿病のない患者で10mL/min以下,糖尿病患者で15mL/min以下まで低下した場合に発生するため,推算GFR値がこれらの値に近い患者は,上記の徴候および症状を早期に検出できるよう,綿密にモニタリングすべきである。透析は予測が最善であり,それにより準備を整えることができ,血液透析カテーテルの緊急挿入を回避できる。このような準備は通常,CKDステージ4の早期から中期の段階から開始し,そうすることで患者の教育,透析の種類の選択,および 動静脈瘻 動静脈瘻 動静脈瘻とは,動脈と静脈の間に異常な交通が生じた状態である。 動静脈瘻は,先天性(通常は比較的細い血管が侵される)のものと,外傷(例,銃創または刺傷)または動脈瘤による隣接静脈の侵食の結果として形成される後天性のものがある。 血液透析を必要とする末期腎臓病患者では,手術で動静脈瘻を作製し,透析に用いるバスキュラーアクセスとする。... さらに読む の作製または 腹膜透析カテーテル アクセス 腹膜透析では,腹膜を自然の透過性の膜として用い,これを介して水分と溶質を平衡化することができる。 血液透析と比較して,腹膜透析には以下の特徴がある: 生理学的にストレスが少ない バスキュラーアクセスが不要である 自宅で実施できる 患者にとっての柔軟性がはるかに高い さらに読む の留置のための時間を確保することができる。(透析の準備については, Professional.see page 血液透析 血液透析 血液透析では,患者の血液をポンプで血液透析器に送り込むが,透析器は中空糸でできた細管の束またはサンドイッチ状に平行に挟んだ半透膜シートで構成される2つの液体コンパートメントを有する。いずれの構造においても,第1のコンパートメントの血液は半透膜の片側に沿ってポンプで送られ,膜を隔てた他方では電解質輸液(透析液)が別個のコンパートメントで血液... さらに読む 。)

パール&ピットフォール

  • CKDステージ4の早期から中期で透析導入,腎移植,または緩和ケアの準備を開始して,患者教育と治療法の選択,加えて関連するあらゆる準備処置に十分な時間を確保できるようにする。

移植

生体腎ドナーがいる場合は,たとえ透析開始前でも,早期に腎移植を施行することで,より良好な長期予後が得られる。移植適応はあるが生体腎ドナーがいない患者は,米国の多くの地域で待機期間が数年を超える可能性があるため,地域の移植センターの待機リストに早期に登録すべきである。

治療に関する参考文献

要点

  • 米国における慢性腎臓病(CKD)の一般的な原因は,糖尿病性腎症(最も一般的),高血圧性腎硬化症,糸球体症,およびメタボリックシンドロームである。

  • CKDによる影響としては,低カルシウム血症,高リン血症,代謝性アシドーシス,貧血,続発性副甲状腺機能亢進症,腎性骨異栄養症などがある。

  • 急性腎障害からCKDの鑑別は,病歴,臨床所見,ルーチンの臨床検査,超音波検査に基づく。

  • 基礎疾患(例,糖尿病)および血圧値(通常はACE阻害薬またはARBによる)をコントロールする。

  • ビタミンDサプリメントおよび/または炭酸水素ナトリウムを投与し,必要に応じてカリウムおよびリンの摂取を制限する。

  • 心不全,貧血,その他の合併症を治療する。

  • 進行したCKD患者には治療選択肢(透析,腎移植,または緩和ケア)について早期に患者教育を行い,計画に十分な時間を確保できるようにする。

  • eGFRの低下が重度の患者には,薬剤と生活習慣の是正で症候が十分にコントロールできない場合,透析を開始する。

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