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精神症状がみられる患者の医学的評価

執筆者:

Caroline Carney

, MD, MSc, Magellan Healthcare

最終査読/改訂年月 2012年 12月
本ページのリソース

精神症状がみられる患者の医学的評価では,以下の3つを同定するようにする:

  • 精神障害に類似する身体疾患

  • 精神障害と併発する身体疾患

  • 精神障害またはその治療によって引き起こされる身体疾患

多くの身体疾患が特定の精神障害に類似する症状を引き起こす( 身体疾患による主な精神症状を参照のこと)。さらに,特定の精神症候群に類似することはないが,気分や活力の変化をもたらす身体疾患もある。

多くの薬剤が精神症状を引き起こし,その頻度が最も高い原因薬剤のクラスは以下の通りである:

  • 中枢神経系作用薬(例,抗てんかん薬,抗うつ薬,抗精神病薬,催眠鎮静薬,刺激薬)

  • 抗コリン薬(例,抗ヒスタミン薬)

  • コルチコステロイド

その他多くの治療薬および薬物クラスにも関連が示唆されており,その中には通常では考慮されない可能性があるクラスも含まれている(例,抗菌薬,降圧薬)。乱用薬物,特にアルコール,アンフェタミン類,コカイン,幻覚剤,およびフェンシクリジン(PCP)もまた,特に過剰摂取の場合に,しばしば精神症状を引き起こす。アルコール,バルビツール酸系薬剤,またはベンゾジアゼピン系薬剤からの離脱は,身体的な離脱症状に加えて,精神症状(例,不安)を引き起こすことがある。

精神障害のある患者は,精神症状を新たに出現させたり,悪化させたりする身体疾患(例,髄膜炎,糖尿病性ケトアシドーシス)を発症することもある。このため医師は,既知の精神障害を伴う患者にみられる精神症状を全てその疾患によるものと類推してはならない。精神症状について考えられる身体的原因に積極的に対応することが必要になる場合があり,精神病または認知症のために自身の身体的な健康状態を説明できない患者では,これが特に重要である。

ときに,精神医学的ケアを求めて受診する患者が,その精神症状の原因ではないが,それでも評価および治療を必要とする未診断の身体疾患を有していることがある。そのような疾患は,精神障害とは関係ない場合(例,高血圧,狭心症)もあれば,精神障害(例,慢性精神病による無気力が原因の低栄養)またはその治療(例,リチウムによる甲状腺機能低下症,非定型抗精神病薬の投与に続発する高脂血症)によって生じる場合もある。

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身体疾患による主な精神症状

精神症状

身体疾患*

錯乱,せん妄,見当識障害

脳動脈炎(全身性エリテマトーデス[SLE]によるものも含む)

中枢神経系感染症(例,脳炎,髄膜炎,トキソプラズマ症)

複雑部分発作

脱水

薬物の過剰摂取(処方薬の過量投与を含む)

電解質異常

発熱

低血糖

低体温症

甲状腺機能低下症

低酸素症

肝不全

腫瘤病変(例,腫瘍,血腫)

腎不全

敗血症

甲状腺疾患

血管梗塞

ビタミン欠乏症

認知障害,行動面の不安定性

アルツハイマー型認知症および他の認知症

HIV/AIDS

ライム病

腫瘤病変

多発性硬化症

神経梅毒

パーキンソン病

硬膜下血腫

SLE

甲状腺疾患

血管梗塞

ビタミン欠乏症

妄想

多発性硬化症

複数物質の乱用(polysubstance abuse)

痙攣性疾患

うつ病

脳腫瘍

癌治療(インターフェロンを含む)

クッシング症候群

認知症

糖尿病

甲状腺機能低下症

多発性硬化症

サルコイドーシス

睡眠時無呼吸症候群

多幸症,躁病

脳腫瘍

多発性硬化症

複数物質の乱用(polysubstance abuse)

幻覚

脳炎

腫瘤病変

片頭痛

複数物質の乱用(polysubstance abuse)

痙攣性疾患

不眠症

概日リズム障害

呼吸困難または低酸素症

胃食道逆流症(GERD)

甲状腺機能亢進症

周期性四肢運動障害またはレストレスレッグス症候群

疼痛症候群

易怒性

鎮痛薬の離脱症状

多発性硬化症

ビタミンB12欠乏症

記憶障害

アルコール乱用

甲状腺機能低下症

多発性硬化症

ビタミン欠乏症

気分症状

HIV/AIDS

甲状腺機能低下症

多発性硬化症

脳卒中

物質乱用

人格変化

腫瘤病変

多発性硬化症

痙攣性疾患

SLE

精神病(例,幻覚)

脳腫瘍

認知症

電解質異常

片頭痛

多発性硬化症

複数物質の乱用(polysubstance abuse)

サルコイドーシス

感覚消失

SLE

梅毒

*これらに加えて,多くの薬剤および毒素も精神症状を引き起こすことがある。

評価

以下に該当する症状がみられる患者には,病歴聴取および身体診察のほか,しばしば脳画像検査や臨床検査による,医学的評価が必要である:

  • 新規発症の精神症状(すなわち,同様の症状の既往がない)

  • 質的に異なる症状または予期しない症状(すなわち,既知の精神障害または安定した精神障害を有する患者の場合)

  • 予期しない年齢で始まった精神症状

目標は,具体的な精神医学的診断を下すことではなく,基礎にある身体疾患および随伴する身体疾患を診断することにある。

病歴

現病歴の聴取では,症状の性質および発症,特に発症が突然であったか緩徐であったか,および症状が考えられる誘因(例,外傷,薬剤または乱用物質の開始または中止)の後に生じたか否かに注意すべきである。医師は,過去に同様の症状のエピソードがあったか否か,精神障害の診断および治療を受けたことがあるか否か,もしあるなら,薬剤の服用を中止したか否かを尋ねるべきである。

系統的症状把握(review of systems)では,可能性のある原因を示唆する症状を探索する:

  • 嘔吐,下痢,または両方:脱水,電解質障害

  • 動悸:甲状腺機能亢進症,離脱を含む薬物の作用

  • 多尿および多飲:糖尿病

  • 振戦:パーキンソン病,離脱症候群

  • 歩行または発話困難:多発性硬化症,パーキンソン病,脳卒中

  • 頭痛:中枢神経系の感染症,複雑性の片頭痛,出血,腫瘤病変

  • 発熱,咳嗽,排尿困難,嘔吐,または下痢:全身性感染症

  • 体重減少:感染症,癌,炎症性腸疾患,甲状腺機能亢進症

  • 錯感覚および脱力:ビタミン欠乏症,脳卒中,脱髄疾患

  • 再燃と寛解を繰り返す神経症状:多発性硬化症,血管炎

既往歴の聴取では,精神症状を引き起こす可能性のある既知の慢性身体疾患(例,甲状腺疾患,肝疾患,腎疾患;糖尿病;HIV感染症)を確認すべきである。あらゆる処方薬およびOTC薬を調査し,アルコールまたは違法薬物の使用(量および期間)について患者に尋ねるべきである。身体疾患(特に甲状腺疾患および多発性硬化症)の家族歴を評価する。感染の危険因子(例,無防備な性行為,注射針の共用,最近の入院,グループ施設での居住)に注意する。

身体診察

バイタルサインを測定し,特に発熱,頻呼吸,高血圧,および頻脈がないか検討する。精神状態(特に錯乱または不注意の徴候)について評価する( 精神医学的診察)。全身の身体診察を行うが,感染症の徴候(例,髄膜症,肺うっ血,側腹部の圧痛),神経学的診察(歩行検査や脱力など),および頭蓋内圧亢進の徴候を発見するための眼底検査(例,乳頭浮腫,静脈拍動の消失)に焦点を置く。肝疾患の徴候(例,黄疸,腹水,くも状血管腫)に注意すべきである。皮膚を注意深く視診して,自傷行為による創傷または他の外傷の所見(例,皮下出血)がないか調べる。

所見の解釈

病歴聴取および身体診察から得られた所見は,考えられる原因を解釈し,検査および治療の方針を決定するのに役立つ。

錯乱および不注意(環境に対する認識の明瞭度が低下した状態— せん妄),特に突然の発症,変動,またはこの両方に該当する場合は,身体疾患の存在が示唆される。ただし,この逆は真ではない(すなわち,認識が清明であることは原因が精神障害であることの根拠とはならない)。身体的原因を示唆する他の所見としては以下のものがある:

  • バイタルサインの異常(例,発熱,頻脈,頻呼吸)

  • 髄膜刺激徴候

  • 神経学的診察で認められた異常(失語を含む)

  • 歩行,平衡感覚,またはその両方の障害

  • 失禁

具体的な原因の推定に役立つ所見もあり,特に症候が新たに出現した場合または長期間維持されていたベースラインから変化した場合に顕著である。散瞳(特に皮膚の紅潮,ほてり,および乾燥を伴う場合)は抗コリン薬の作用を示唆する。瞳孔収縮はオピオイド薬の作用または橋出血を示唆する。回旋性眼振または垂直性眼振はPCP中毒を示唆し,水平性眼振はフェニトイン中毒を伴うことが多い。要領を得ない話し方または発話不能は脳病変(例,脳卒中)を示唆する。再燃と寛解を繰り返す神経症状が先行するという病歴は,特に様々な神経が侵されていると思われる場合,多発性硬化症または血管炎を示唆する。靴下手袋型の錯感覚は,チアミンまたはビタミンB12欠乏症を示唆している場合がある。幻覚のある患者では,命令幻聴または患者の行動に言及する声がおそらく精神障害を反映していることを除いて,幻覚の種類は特に診断の役に立たない。

重大な外傷から間もなく,または新たな薬剤の開始後に始まった症状は,それらのイベントが原因である可能性がある。薬物またはアルコールの乱用は,精神症状の原因であることもあれば,そうではないこともある;精神障害患者の約40~50%には物質乱用もみられる(重複診断)。

検査

典型的には以下の検査を行うべきである:

  • パルスオキシメトリー

  • 指先採血による血糖検査

  • 治療薬濃度の測定

  • 尿中薬物スクリーニング

  • 血中アルコール濃度

  • 血算

  • 尿検査

精神障害が既知の患者において,その典型症状が増悪し,身体的愁訴がなく,認識が正常で,かつ身体診察での所見(バイタルサイン,パルスオキシメトリー,指先採血による血糖検査など)が正常である場合には,一般的にさらなる臨床検査は不要である。その他の患者の大半では以下を行うべきである:

  • HIV検査

多くの医師は以下も測定している:

  • 血清電解質(カルシウムおよびマグネシウムを含む),BUN,およびクレアチニン

  • 赤沈またはC反応性タンパク

電解質および腎機能検査が診断に有用なことがあり,その後の薬物治療のための情報(例,腎機能不全のある患者での調節を要する薬剤)を得るのに役立つこともある。

その他の検査は,一般に特異的所見に基づいて行われる:

  • 頭部CT:精神症状の新規発症がみられた患者,またはせん妄,頭痛,最近の外傷歴,もしくは局所的な神経学的所見(例,四肢の脱力)がみられる患者

  • 腰椎穿刺 ( 腰椎穿刺) :髄膜刺激徴候を認める患者,または頭部CT所見が正常であるが発熱,頭痛,もしくはせん妄がみられる患者

  • 甲状腺機能検査:リチウムを服用している患者,甲状腺疾患の症状または徴候のある患者,および40歳を超えて精神症状の新規発症がみられた患者(特に女性または甲状腺疾患の家族歴のある患者)

  • 胸部X線:低酸素飽和度,発熱,湿性咳嗽,または喀血がみられる患者

  • 血液培養:発熱がある重篤な状態の患者

  • 肝機能検査:肝疾患の症状もしくは徴候がみられる患者,アルコールもしくは薬物の乱用歴がある患者,または病歴が得られない患者

比較的頻度は低いが,所見からSLE,梅毒,脱髄疾患,ライム病,またはビタミンB12もしくはチアミン欠乏症の検査の必要性が示唆される場合があり,特に認知症の徴候を示す患者でその傾向が強い。

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