せん妄

執筆者:Juebin Huang, MD, PhD, Department of Neurology, University of Mississippi Medical Center
Reviewed ByMichael C. Levin, MD, College of Medicine, University of Saskatchewan
レビュー/改訂 修正済み 2025年 2月
v1036334_ja
意見 同じトピックページ はこちら

せん妄とは,注意,認知,および意識が急性かつ一過性に障害される病態であり,通常は可逆的で,障害の程度に変動がみられる。原因としては,ほぼ全ての医学的状態(特に患者が病院などのストレスの多い環境にいる場合)や薬物曝露などがある。診断は臨床的に行い,臨床検査と画像検査が原因の同定に役立つことがある。治療は原因の是正と支持療法である。

せん妄および認知症の概要も参照のこと。)

せん妄はあらゆる年齢で起こりうるが,高齢者でより多くみられる。入院する高齢患者(65歳以上)の10%以上にせん妄があり(1),15~50%は入院期間中いずれかの時点でせん妄を経験し,特に術後患者とICU患者で頻度が高い。せん妄は介護施設の入居者でもよくみられる。より若年者がせん妄を発症した場合,通常は薬物(医薬品またはレクリエーショナルドラッグ)の使用または生命を脅かす全身性疾患が原因である。

せん妄はときに急性錯乱状態と呼ばれることがあり,中毒性・代謝性脳症でも類似の状態になることがある。

せん妄と認知症は明確に異なる認知障害であるが,ときに鑑別が困難である。これらの鑑別には以下に示す特異的な特徴が役立つ(せん妄と認知症の相違点の表を参照)。

  • せん妄は主に注意に影響を及ぼし,典型的には急性疾患または薬物中毒(ときに生命を脅かす)によって引き起こされ,可逆的であることが多い。

  • 認知症は主に記憶に影響を及ぼし,典型的には脳の解剖学的変化によって生じ,発症がより緩徐で,一般に不可逆的である。

認知症の患者はしばしばせん妄を起こし,この状態は認知症に合併したせん妄(delirium superimposed on dementia:DSD)と呼ばれる。DSDは入院中の認知症患者の最大49%に発生する可能性がある(2)。また,せん妄のある患者も認知症の発生リスクが高い。

総論の参考文献

  1. 1.Inouye SK, Westendorp RG, Saczynski JS: Delirium in elderly people. Lancet 383(9920):911–922, 2014.doi:10.1016/S0140-6736(13)60688-1

  2. 2.Fong TG, Inouye SK: The inter-relationship between delirium and dementia: The importance of delirium prevention.Nat Rev Neurol 18 (10):579–596, 2022.doi: 10.1038/s41582-022-00698-7

せん妄の病因

せん妄の最も一般的な原因は以下のものである:

  • 薬剤,特に抗コリン薬およびオピオイドまたはその他の薬剤および精神作用を有する物質

  • 脱水

  • 感染症

ほかにも複数の病態がせん妄を引き起こしうる(せん妄の原因の表を参照)。一部の症例では,原因を同定することができない。

素因としては,脳疾患(例,認知症脳卒中パーキンソン病),高齢,感覚障害(例,視覚または聴覚障害),アルコール中毒,複数の併存疾患などがある。

誘因としては,薬剤の使用(特に3剤以上の薬剤を新しく開始した場合),感染症(例,尿路感染症,ウイルス性疾患),脱水,ショック,低酸素症,貧血,不動状態,低栄養,膀胱カテーテルの使用(尿閉の有無は問わない),入院,疼痛,睡眠不足,夜間の感覚刺激の減少,精神的ストレスなどがある。未診断の肝不全または腎不全があると,それにより代謝が障害され,それまで忍容性良好であった薬剤のクリアランスが低下することで,せん妄が生じることがある。最近の麻酔への曝露もリスクを増大させるが,曝露が長期化した場合や手術中に抗コリン薬が投与された場合には,特にリスクが高まる。術後には,疼痛の存在とオピオイド鎮痛薬の使用がせん妄の発生に寄与することがある。

ICUの高齢患者は,せん妄(ICU症候群)のリスクが特に高い。非痙攣性てんかん重積状態は,ICU患者における精神状態の変化の原因として検討すべき病態の1つであるが,過小認識されている。

表&コラム
表&コラム

せん妄の病態生理

機序は完全には解明されていないが,以下の関与が考えられる:

  • 脳内の酸化的代謝の可逆的障害

  • 複数の神経伝達物質の異常,特にコリン作用の不足

  • C反応性タンパク(CRP),インターロイキン1βおよび6,腫瘍壊死因子αなどの炎症マーカーの産生木

いかなる種類のストレスも,交感神経の緊張を高め,副交感神経の緊張を抑制し,コリン作動性機能を障害することによって,せん妄の一因となる。高齢者は特にコリン作動性伝達の低下に敏感であるため,せん妄のリスクが増加する。

原因を問わず,大脳半球と視床および脳幹網様体賦活系による覚醒機序が阻害される。

せん妄の症状と徴候

せん妄には主に以下の特徴がある:

  • 注意の集中,維持,または転換の困難(不注意)

患者の意識レベルは変動し,時間,ときには場所や人に対する見当識が障害される。患者は幻覚,妄想,およびパラノイアを有することがある。日々の出来事や日常のルーチン活動についての混乱がよくみられ,パーソナリティおよび感情の変化もよくみられる。思考の統合不全がみられ,発語はしばしば乱れ,著明な不明瞭言語,早口,造語,失語症的な間違いがみられたり,支離滅裂となる。

症状は数分から数時間かけて変動し,日中は比較的軽く,夜間に悪化しうる。

せん妄のその他の症状として,不適切な行動や恐怖などがみられることもある。患者は易刺激性,興奮,多動,および過覚醒を示すこともあれば,逆に静かで,内向的,かつ嗜眠傾向になることもある。せん妄のある超高齢者は,寡黙で引きこもりになる傾向があり,この変化がうつ病と誤診される可能性がある。興奮と引きこもりの状態を交互に繰り返す患者もいる。

通常は,睡眠や食事のパターンがひどく乱れる。

多くの認知機能の障害のために,洞察力に乏しく,判断力が低下する。

せん妄の診断

  • 精神医学的診察

  • せん妄を確定するための標準の診断基準

  • 徹底的な病歴聴取

  • 原因を特定するための対象を絞った身体診察と選択的な検査

せん妄(特に高齢患者)はしばしば見逃される。記憶または注意に障害がみられる高齢患者では,全例でせん妄(および認知症)を考慮すべきである。

精神医学的診察

認知障害の徴候がみられる患者には,正式な精神医学的診察を行う必要がある。

まず,注意の評価を行う。単純な検査としては,3つの物の名称を即時に繰り返す検査,数唱記憶(7桁の数字を順唱,5桁の数字を逆唱する能力),曜日を順唱および逆唱する検査などがある。注意を向けられない状態(指示やその他の情報を記銘しない)は,短期記憶の障害(情報を記銘するがすぐに忘れる)と鑑別する必要がある。情報を記銘できない患者にさらなる認知機能検査を行っても無意味である。

初期評価後には,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,5th Edition, Text Revision(DSM-5-TR)(1)やConfusion Assessment Method(CAM)(2)で規定されているものなど,標準的な診断基準を適用することができる。

DSM-5-TRの基準を用いてせん妄の診断を下すには,以下の特徴が必要である:

  • 注意力の障害(例,言われていることに対する集中または理解の困難)および認識力の障害(すなわち,環境に対する見当識の低下)

  • 障害が短期間(数時間から数日)の内に発生し,日内変動する傾向がある

  • 認知機能の急性の変化(例,記憶,言語,知覚,思考の障害)

以上に加えて,病歴,身体診察,および/または臨床検査から,障害の原因が病気,物質(薬物または毒素など),または物質離脱であることを示唆する証拠が得られなければならない。

CAMでは以下の診断基準が使用される:

  • 意識レベルの変化(例,過覚醒,嗜眠,昏迷,昏睡)または思考の統合不全(例,とりとめのない会話,的外れな会話,非論理的な観念の流れ)

病歴

病歴聴取は家族,介護者,および友人の面接による。これにより,患者の精神状態の変化が最近のものであるかどうか,既存の認知症と異なるかどうかを判断できる(せん妄と認知症の相違点の表を参照)。病歴は精神疾患とせん妄の鑑別に役立つ。精神疾患では,せん妄の場合と異なり,不注意や意識状態の変動がみられることはほとんどなく,また精神疾患の発症はほぼ常に亜急性である。

日没現象(夕方の行動の悪化)は,施設入居者の認知症患者でよくみられ,せん妄と鑑別が難しいことがあり,症状の新たな悪化は,そうでないと証明されるまではせん妄と考えるべきである。

病歴にはアルコール,レクリエーショナルドラッグ,違法薬物,栄養補助食品(例,ハーブ製品),OTC医薬品,および処方薬の使用歴も含めるべきであり,特に,抗コリン作用または他の中枢神経系作用を有する薬物,ならびに投薬の追加,中止,または用量変更(過量投与を含む)に重点を置く。

身体診察

診察では(特に患者が十分に協力的でない場合)以下に焦点を当てるべきである:

  • バイタルサイン

  • 脱水状態

  • 潜在的な感染巣

  • 皮膚および頭頸部

  • 神経学的診察

以下のように,特異的所見から原因が示唆されることがある:

  • 発熱,髄膜症,またはKernigおよびブルジンスキー徴候は,中枢神経系感染症を示唆する。

  • 振戦とミオクローヌスは,尿毒症,肝不全,薬物中毒,薬物毒性,または特定の電解質障害(例,低カルシウム血症,低マグネシウム血症)を示唆する。

  • 眼筋麻痺と運動失調はウェルニッケ脳症を示唆する。

  • 局所的な神経学的異常(例,脳神経麻痺,運動または感覚障害)または乳頭浮腫は,中枢神経系の器質的異常を示唆する。

  • 頭皮または顔面の裂創,皮下出血,腫脹,および頭部外傷のその他の徴候は,外傷性脳損傷を示唆する。

検査

通常,以下の検査を行う:

  • 頭部CTまたはMRI

  • 疑われる感染症の検査(例,血算,血液培養,胸部X線,尿検査)

  • 低酸素症の評価(パルスオキシメトリーまたは動脈血ガス)

  • 電解質,血中尿素窒素(BUN),クレアチニン,血漿血糖値,毒性が疑われるあらゆる薬物の血中濃度

  • 尿中薬物スクリーニング

診断が不明確であれば,さらなる検査として,肝機能検査,血清カルシウム値,血清アルブミン値,甲状腺刺激ホルモン(TSH),ビタミンB12,赤血球沈降速度(赤沈)および/またはC反応性タンパク(CRP),抗核抗体(ANA)の測定,梅毒検査(例,迅速血漿レアギン[RPR]試験,VDRL[Venereal Disease Research Laboratory]試験)などを行うことがある。

それでも診断が明確にならない場合は,髄液検査(特に,髄膜炎,脳炎,またはくも膜下出血を否定するため),血清アンモニア値の測定,および重金属の検査などを行うこともある。

非痙攣性てんかん発作(てんかん重積状態を含む)が疑われる場合(筋肉の微妙なひきつり,自動症,および困惑状態と眠気が交互にみられるパターンから示唆される),脳波検査によるモニタリングを行うべきである。

診断に関する参考文献

  1. 1.Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th edition, Text Revision (DSM-5-TR).American Psychiatric Association Publishing, Washington, DC, 2022.pp 672-674

  2. 2.Inouye SK, van Dyck CH, Alessi CA, Balkin S, Siegal AP, Horwitz RI: Clarifying confusion: the confusion assessment method.A new method for detection of delirium. Ann Intern Med 113(12):941–948, 1990.doi:10.7326/0003-4819-113-12-941

せん妄の治療

  • 基礎疾患の治療と増悪因子の除去

  • 支持療法

  • 興奮の管理

せん妄は原因の是正(例,感染症の治療,脱水に対する輸液および電解質投与)と増悪因子の除去(例,薬剤の中止)によって消失することがある。栄養欠乏症(例,チアミンまたはビタミンB12)は是正すべきであり,十分な栄養補給と水分投与を行うべきである。

詳細な管理上の考慮事項は,患者集団と臨床状況(例,ICUケア,高齢者の術後ケア)によって変わってくる(1, 2)。

興奮の管理

一般的な対策

静かで落ち着いた明るい外部環境を確保し,見当識の視覚的な手がかりとなるもの(例,カレンダー,時計,家族の写真)を置くべきである。病院のスタッフや家族による頻繁な見当識の強化と励ましも役立つ。感覚障害は最小限に抑えるべきである(例,補聴器の電池交換,眼鏡や補聴器が必要な患者にはその使用の奨励)。

集学的な治療アプローチ(医師,理学療法士,作業療法士,看護師,およびソーシャルワーカーが関与する)をとり,移動能力および関節可動域の改善,疼痛および不快感の治療,皮膚損傷の予防,失禁の改善,ならびに誤嚥リスクの最小化を目的とした対策を講じるべきである。

患者の興奮によって,患者本人,介護者,または医療関係者の安寧が脅かされることがある。投薬レジメンを単純化することと,静脈ライン,膀胱カテーテル,および身体的拘束(特に長期ケアの場合)を極力回避することは,興奮の増悪を予防し,受傷リスクを低減するのに役立つ可能性がある。しかし,特定の状況では,患者が自身や他者に危害を加えるのを防ぐため,身体的拘束が必要になることもある。拘束具は,その使い方の訓練を受けたスタッフが取り付け,受傷しないよう少なくとも2時間毎に取り外し,可及的速やかに使用を中止すべきである。病院雇用の補助者(付添い人)によって常時観察させることも,拘束具の必要性を回避するのに役立つ。

せん妄の性質を家族に説明することで,家族も対処が容易になる。せん妄は通常は可逆的であるが,認知障害の改善には急性期疾患の回復からしばしば数週から数カ月を要すると伝えるべきである。

薬剤

重度の興奮の治療に抗精神病薬がときに使用されるが,ルーチンの使用は推奨されない。この種の薬剤では基礎にある問題が是正されず,せん妄を長期化または増悪させる可能性がある。

必要に応じた低用量のハロペリドール投与で興奮や精神症症状を軽減できることがあるが,ときに高用量を要することもある。

第2世代(非定型)抗精神病薬(例,リスペリドン,オランザピン,クエチアピン)は,錐体外路系の有害作用が少ないため,高齢患者に対して望ましい場合があるが,長期使用では体重増加などの有害作用が生じる可能性がある。この種の薬剤は典型的には経口投与され,注射剤としては投与されない。

アルコールまたはベンゾジアゼピン系薬剤からの離脱に起因するせん妄に対しては,静注用のベンゾジアゼピン系薬剤が選択すべき薬剤である。作用の発現が抗精神病薬より速やかである(注射剤の投与から5分後)。ただし,錯乱および鎮静を悪化させることがあるため,これ以外の原因のせん妄に対する治療では,ベンゾジアゼピン系薬剤の使用は避けるべきである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Barr J, Fraser GL, Puntillo K, et al: Clinical practice guidelines for the management of pain, agitation, and delirium in adult patients in the intensive care unit. Crit Care Med 41(1):263–306, 2013.doi:10.1097/CCM.0b013e3182783b72

  2. 2.American Geriatrics Society Expert Panel on Postoperative Delirium in Older Adults: American Geriatrics Society abstracted clinical practice guideline for postoperative delirium in older adults [reaffirmed 2021]. J Am Geriatr Soc 63(1):142–150, 2015.doi:10.1111/jgs.13281

せん妄の予後

せん妄があって入院した患者と入院中にせん妄を来した患者では,合併症発生率および死亡率がより高く,せん妄のある入院患者の30~50%が1年以内に死亡する(1)。このように割合が高いのは,患者が高齢でほかに重篤な疾患を有する傾向があることも一因であると考えられる。

特定の病態(例,低血糖,薬物またはアルコール中毒,感染症,医原性因子,薬物毒性,電解質異常)を原因とするせん妄は,典型的には治療により速やかに消失する。しかしながら,特に高齢者をはじめとして,回復が緩慢になる場合もあり(数日から数週間ないし数カ月にもなる),入院期間の長期化,合併症のリスクと重症度の上昇,医療費の増大,長期の身体障害などにつながることもある。一部の患者はせん妄から完全に回復しない。せん妄の発症後2年間は,認知機能および生活機能の低下,施設への入所,ならびに死亡に至るリスクが高くなる。あるメタアナリシスによると,手術患者および非手術患者におけるせん妄は,せん妄エピソード後3カ月以上持続する認知障害と有意に関連している(2)。

予後に関する参考文献

  1. 1.McCusker J, Cole M, Dendukuri N, Han L, Belzile E: The course of delirium in older medical inpatients: a prospective study. J Gen Intern Med 18(9):696–704, 2003.doi:10.1046/j.1525-1497.2003.20602.x

  2. 2.Goldberg TE, Chen C, Wang Y, et al: Association of delirium with long-term cognitive decline: A meta-analysis [published correction appears in JAMA Neurol 2020 Nov 1;77(11):1452. doi: 10.1001/jamaneurol.2020.3284].JAMA Neurol 77 (11):1373–1381, 2020.doi:10.1001/jamaneurol.2020.2273

せん妄の予防

せん妄は入院患者の予後を大きく悪化させるため,予防を重視すべきである。病院スタッフを訓練して,患者の見当識,移動能力,および認知機能を維持し,睡眠,十分な栄養と水分の補給,ならびに十分な疼痛緩和を確保するための対策を講じられるようにしておくべきである(特に高齢患者の場合)。家族にもこれらの方策への協力を求めるべきである。

可能であれば薬剤の数と用量を減らすべきである。

せん妄に関する老年医学的重要事項

せん妄は高齢者でより頻度が高い。高齢患者の約15~50%が入院中のいずれかの時点でせん妄を経験する。ICUの高齢患者では,せん妄のリスクが特に高い(ICU症候群)。

ストレスは,いかなる種類のものであれ,コリン作動性機能を障害し,その結果せん妄の一因となる。高齢者は特にコリン作動性伝達の低下に敏感であるため,せん妄のリスクが増加する。抗コリン薬がその一因となることもある。

高齢者では,せん妄が別の(ときに重篤な)疾患の最初の徴候であることも多い。

高齢者におけるせん妄の原因としては,比較的軽度の病態が挙げられることが多い:

加齢に伴う特定の変化により,高齢者はせん妄を発症しやすくなる:

  • 薬物(特に鎮静薬,抗コリン薬,抗ヒスタミン薬)への感受性の増大

  • 脳内の変化(例,萎縮,アセチルコリン濃度の低下)

  • せん妄のリスクを高める病態(例,脳卒中,認知症,パーキンソン病,その他の神経変性疾患,ポリファーマシー,脱水,低栄養,不動状態)の存在

せん妄の最も明らかな症状は錯乱であるが,高齢者では認識しにくい可能性がある。比較的若年のせん妄患者は興奮状態を呈することがあるが,超高齢者は寡黙で引きこもりになる傾向があり,この変化がうつ病と誤診される可能性がある。そのような症例では,せん妄の認識はさらに難しくなる。

高齢者では,記憶障害や不注意もせん妄の初発症状となりうる。高齢者では,認知症を有する可能性がせん妄を有する可能性より高いため,せん妄がしばしば見逃される。記憶または注意に障害がみられる高齢患者では,全例でせん妄を考慮すべきである。

精神疾患による精神症症状が高齢期に始まることはまれである。高齢者が精神症症状を発症した場合,通常はせん妄または認知症が示唆される。

感染症の高齢患者では,せん妄が初発症状となることがある。

高齢者では,せん妄は比較的長く続く傾向があり,回復が緩慢になる場合もあり(数日から数週間ないし数カ月にもなる),入院期間の長期化,合併症のリスクと重症度の上昇,医療費の増大,長期の身体障害などにつながることもある。一部の患者はせん妄から完全に回復しない。

パール&ピットフォール

  • 記憶または注意の障害がみられる全ての高齢患者で,せん妄を考慮する。

多面的な対策を講じられる集学的チームで対応することにより,せん妄のある高齢の入院患者にとってのベネフィットを至適化することができ,医原性合併症(例,低栄養,脱水,褥瘡)を予防することもできる。それらの合併症は,高齢患者では深刻な結果をもたらす可能性がある。

要点

  • せん妄は高齢の入院患者でよくみられ,その原因としては薬剤,脱水,および感染(例,尿路感染症)が多いが,ほかにも多くの原因がある。

  • 行動に変化がみられる高齢患者では,特に記憶または注意の障害もみられる場合,せん妄を考慮する。

  • 家族,介護者,および友人からの病歴聴取と精神医学的診察は,せん妄を認識するための鍵である。

  • せん妄を引き起こす,神経学的・全身的原因および誘因がないか,せん妄の患者を徹底的に評価する。

  • 患者の薬歴を徹底的に確認し,せん妄に寄与する可能性のある薬剤は中止する。

  • せん妄のある入院患者の約30~50%は1年以内に死亡する。

  • せん妄の原因を治療し,支持療法を行うとともに,一般的な対策と,ときに必要に応じた薬剤の使用によって興奮を管理する。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
iOS ANDROID
iOS ANDROID
iOS ANDROID