小児健診による健康指導

執筆者:Deborah M. Consolini, MD, Thomas Jefferson University Hospital
Reviewed ByAlicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
レビュー/改訂 2023年 5月 | 修正済み 2024年 11月
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小児健診の目的は以下の通りである:

  • 健康の促進

  • 定期予防接種および啓発による疾病予防

  • 疾病の早期発見と治療

  • 小児の情緒的および知的発達が最適化されるように親や養育者を指導すること

American Academy of Pediatric(AAP)は,健康上大きな問題のない小児や正常に成長・発達している小児を対象とする予防的健診のスケジュールを推奨している。

Periodicity scheduleとも呼ばれるBrightFutures/AAP Recommendations for Preventive Pediatric Health Care(2022)は,新生児から21歳の青年までを対象とする毎回の小児健診に推奨されるスクリーニングおよび評価項目をまとめたスケジュールである。Periodicity scheduleには推奨事項がチャート形式で示されていて,毎年更新されている。これらの特定の発達段階における健康増進介入に関する詳細については,Bright Futures: Guidelines for Health Supervision of Infants, Children, and Adolescents, 4th Edition(2017)を参照のこと。

発達遅滞,心理社会的問題,または慢性疾患がある小児は,予防的な健診の受診とは別にカウンセリングおよび治療のための受診をより頻回に必要とする。

医療提供者は身体診察に加えて,小児の運動機能,認知機能,および社会性の発達と親子間の相互作用も評価すべきである。これらの評価は以下の方法で行うことができる:

  • 小児と両親から徹底的な病歴聴取を行う

  • 直接的な観察を行う

  • ときに教師や小児のケア提供者など外部からの情報収集を行う

全ての小児を対象として,妥当性確認済みのスクリーニングツールを用いる発達スクリーニングを,生後9,18,30カ月時の定期小児健診で実施することが推奨されている(例,Ages and Stages Questionnaire,PEDS: Developmental Milestone)。生後18および24カ月時の定期小児健診では,自閉スペクトラム症の特異的スクリーニングを行うことが推奨されている。運動,認知,言語能力と社会性の発達評価に診察室で使用できる妥当性確認済みのスクリーニングツールが公開されている(例,Modified Checklist for Autism in Toddlers, Revised, with Follow-Up[M-CHAT-R/F])(1)。

身体診察およびスクリーニングはいずれも,乳幼児に対する予防的な健診において重要な要素である。体重など大部分のパラメータは全ての小児を対象とするが,1歳時と2歳時の鉛中毒のスクリーニングなど,選択された患児に適用されるものもある。

予備的ガイダンス(anticipatory guidance)も予防的な健診に重要である。保健指導には以下の事項が含まれる

  • 小児と親に関する情報を得る(質問票,問診,または評価から)

  • 親と協力して健康を促進する(治療上の協力関係を築く)

  • その子どもの発達で何を期待すべきか,どのように発達を促すことができるか(例,健康な生活習慣を確立する),健康な生活習慣の便益は何か,について親を教育する

さらに,高リスクの妊娠である場合(ハイリスク妊娠の概要を参照)や,親にとって初めての子どもである場合,または親がコンサルテーションを希望する場合には,小児科医によるプレネイタルビジット(出生前小児保健指導)が適切である。

総論の参考文献

  1. 1.Lipkin PH, Macias MM; Council on Children With Disabilities, Section on Developmental and Behavioral Pediatrics; et al: Promoting optimal development: Identifying infants and young children with developmental disorders through developmental surveillance and screening. Pediatrics 145(1):e20193449, 2020.doi: 10.1542/peds.2019-3449

身体診察

成長

身長(頭頂から踵まで)または身長(立てるようになったら)および体重は,受診のたびに必ず測定する。

頭囲は,生後36カ月まで受診のたびに必ず測定する。

パーセンタイル表示の成長曲線を使用して,小児の成長速度のモニタリングを行い,これらのパラメータにおける偏差を評価すべきである(乳児および小児の身体的成長を参照)。

成長パーセンタイルの計算ツール
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血圧

小児の高血圧も参照のこと。)

血圧は3歳から,適切なサイズのカフを用いてルーチンに測定すべきである。カフは上腕の少なくとも3分の2を覆うもので,ゴム嚢(カフの中で拡張するバッグ)は上腕囲の80~100%を覆うようにすべきである。基準に適合するカフがない場合は,大き目のカフを使用する方がよい。

小児の収縮期血圧と拡張期血圧は,90パーセンタイル値未満であれば正常とみなされる;各パーセンタイルの実際の値は性別,年齢,体格(身長パーセンタイルとして)により異なるため,公表された表を参照することが重要である(の50~95パーセンタイル値の血圧については以下の表を参照)。

収縮期および拡張期血圧の測定値が90パーセンタイル値以上かつ95パーセンタイル値未満である場合は,高値とみなされ,経過観察と高血圧の危険因子の評価を継続して行うべきである。測定値が一貫して95パーセンタイル値以上かつ95パーセンタイル値 + 12mmHg未満である場合は,ステージ1の高血圧とみなして,原因を特定すべきである。測定値が95パーセンタイル値 + 12mmHgまたは140/90以上(いずれかがこれ未満でもよい)である場合は,ステージ2の高血圧であり,専門医による評価を受けるべきである。

表&コラム
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眼,耳,口

最もよくみられる異常は,中耳の液体貯留(滲出性中耳炎)であり,鼓膜の外観の変化や(気密耳鏡検査での)気圧に応じた鼓膜の可動性の消失として顕在化する。聴力低下のスクリーニングを行うべきである。

健診のたびに眼部を評価すべきである。医師は以下の異常がないか確認すべきである:

眼瞼下垂や眼瞼の血管腫も視覚の妨げとなり,注意を要する。

在胎32週未満で出生した乳児には,未熟児網膜症の所見と屈折異常の発症(この年齢群の乳児でより頻度が高い)に関する眼科医の評価が必要である。

4歳時および5歳時に視覚スクリーニングが推奨される。小児が協力的であれば,3歳時にスクリーニングを行うことができる。3~5歳時の小児健診に加えて,生後12および24カ月時点でリスクを評価するため,機器を用いるスクリーニング(instrument-based screening)を行ってもよい。スネレン視標や新しい検査機器による視覚検査が可能である。絵よりもEチャートによる検査がよい;視力が20/30未満の場合,眼科医の診察を受けるべきである。

齲蝕の検出は重要であり,もし齲蝕がある場合は,たとえ乳歯しかない小児でも,歯科医師に紹介すべきである。

主な水の摂取源に含まれるフッ素が少ない場合は,フッ素の経口補充を生後6カ月から開始し,16歳になるまで毎日継続すべきである(の表を参照)。

歯が生えた全ての小児に対し,かかりつけの歯科医師との継続した診療関係(dental home)が確立するまで,プライマリケアにおいてフッ化物バニッシュの塗布を3~6カ月毎に行ってもよい。年齢に応じた適切な量のフッ素が含まれている歯磨剤を用いて歯を磨くことが推奨される。

全ての小児について,1歳までに歯科医師との継続した診療関係(dental home)を築くことが推奨される。

鵞口瘡は乳児ではよくある疾患であり,通常は免疫抑制の徴候ではない。

表&コラム

心臓

聴診を行って新たな雑音,心拍数の異常,または不整脈を同定する;良性の血流雑音は一般的であり,病的雑音と区別する必要がある(先天性心疾患の概要を参照)。

心拡大がないことをチェックするため,胸壁を触診して心尖拍動がないか確認する。

大腿動脈の拍動を触診する;拍動が減弱していて,上肢と下肢で血圧測定値に不一致がみられる場合は,大動脈縮窄症の可能性がある。

腹部

多くの腫瘤,特にウィルムス腫瘍神経芽腫が小児の成長期にのみ現れるため,受診のたびに触診を行う。

左下腹部にしばしば便が触知される。

脊椎および四肢

立てるようになった小児は,姿勢,肩先,肩甲骨の対称性,体幹の傾き,そして特に前屈時の傍脊柱の非対称性を観察することにより,脊柱側弯をスクリーニングすべきである。

歩行開始前の小児には,受診のたびに発育性股関節形成不全の評価を行うべきである。生後約4カ月まではBarlow法およびOrtolani法を用いる。その後は,脚長差,内転筋緊張度の差,外転または脚のしわの非対称性から形成不全が示唆される場合がある。

内旋歩行は,前足部の内転,脛骨捻転大腿捻転に起因する可能性がある。明らかな症例のみが治療および整形外科への紹介を要する。非対称性の歩行(1側は内旋,他側は外旋―風に吹かれた歩容[windswept appearance])は,一般に整形外科的評価を必要とする。

性器

最低でも,全ての年齢の小児および青年を対象とする年1回の包括的な身体診察に外性器の診察を組み込むべきである。

腟鏡診または双合診を含めた内診は,以下の場合を除き,大半の青年期女子で不要である:

  • 腟分泌物が遷延している

  • 下腹部痛(尿路および消化管の病因に関する評価で陰性となる場合)

  • 重度の月経困難症

  • 無月経(構造的異常が疑われる場合)

  • 異常性器出血

  • 子宮内避妊器具またはペッサリーに関する避妊カウンセリング

  • レイプまたは性的虐待が疑われる

  • 妊娠

子宮頸癌スクリーニングについては開始年齢がガイドライン間で一致をみておらず,平均的リスクの女性には21歳または25歳のいずれかが推奨されている(1, 2)。免疫抑制またはHIV感染症がある女性には,受動的な性行為の開始から2年以内または21歳になるまでに,子宮頸癌のスクリーニングを開始すべきである(3)。

尿検体や腟スワブ検体による性感染症(STI)検査が可能になっているため,無症状の患者でSTIを診断するために内診を行う必要はない。細菌性腟症カンジダ感染症など,STI以外の病態も腟スワブ検体の検査で診断可能である。

性的に活動的な全ての青年および若年成人は,性感染症のスクリーニングを毎年受けるべきである。

男児では,精巣および鼠径部の評価を受診のたびに行うべきであり,具体的には,乳児期および幼児期では停留精巣に,青年期後期では精巣腫瘤に,さらに全ての年齢で鼠径ヘルニアに注意すべきである。

青年期の男子には,腫瘤の有無を調べるための精巣の自己検診のやり方を指導すべきである。乳房自己検診については,単独での実施はスクリーニング方法として有益でないことが示されており,不必要な乳房生検の頻度増加につながる可能性もある。青年期の女子にはブレストアウェアネス(breast awareness)を指導することができ,自身の乳房の外観や感触の変化(例,腫瘤,肥厚,腫大)に気づいた場合には,医学的評価を受けるよう奨励すべきである。

性器に関する参考文献

  1. 1.U.S. Preventive Services Task Force: Final Recommendation Statement: Cervical Cancer: Screening.2018.Accessed April 3, 2023.

  2. 2.American Cancer Society: Guidelines for the Prevention and Early Detection of Cervical Cancer.2021.Accessed April 3, 2023.

  3. 3.Clinical Guidelines Program: Screening for Cervical Dysplasia and Cancer in Adults With HIV.2022.April 3, 2023.

予防

小児健診では毎回,予防目的のカウンセリングを行うが,そこでは幅広いトピックを扱い,例えば,乳児は仰向けで寝かせるよう勧めたり,外傷予防,栄養,および運動についてアドバイスしたり,暴力,銃器,および物質使用について話し合ったりする。

安全面

外傷予防に関する推奨内容は,年齢によって異なる。一部の例を以下に挙げる。

生後6カ月までの乳児:

  • 後向きチャイルドシートを使用する

  • 家庭での給湯温度の最高値を49℃未満に下げる

  • 転倒/転落を防止する

  • 睡眠時の注意事項を遵守する:仰向けで寝かせる,同じベッドで寝ない,固いマットレスを使用する,ベビーベッドにぬいぐるみ,枕,毛布を置かない

  • 誤嚥する恐れのある食物や物を避ける

生後6~12カ月の乳児:

  • 後向きチャイルドシートの使用を継続する

  • 仰向けで寝かせることを続ける

  • 歩行器を使用しない

  • 安全のために戸棚にラッチを付ける

  • おむつ替え台や階段からの転落を防止する

  • 浴槽の中にいるときや歩き始めの頃は注意深く監視する

1~4歳の小児:

  • 年齢と体重に合わせたチャイルドシートを使用する(乳幼児の場合,後向き・前向き両用チャイルドシートの後向き用の体重または身長制限を超えるまでは,後向きで使用すべきである;大半の後向き・前向き両用チャイルドシートでは,小児が2歳以上でも後向きで乗るための制限が定められている)

  • 搭乗者および歩行者として遭遇しうる自動車事故についての安全性を検討する

  • ブラインドの紐を結んでおく

  • 安全のためにキャップやラッチを使う

  • コンセントカバーを設置する

  • 転倒/転落を防止する

  • 家に拳銃を置かない

5歳以上の小児:

  • 1~4歳の小児に推奨される全ての項目:

  • 自転車用ヘルメットおよびスポーツ用防護具を使う

  • 安全に道路を横断する方法を指導する

  • 水泳中は注意深く監視し,ときにライフジャケットを使用させる

栄養面

カロリーの過剰摂取は,小児に広がる肥満の原因である。推奨されるカロリー摂取量は年齢によって異なる;2歳までの小児に対する推奨は乳児の栄養を参照のこと。

小児の成長に伴い,親は食事内容を健康的な範囲に留めさせつつ,摂取する食物の選択をある程度小児自身の裁量に委ねてもよい。小児は,頻繁な間食や,カロリー,塩分および糖分の高い食物の摂取を避けるよう指導されるべきである。炭酸飲料およびフルーツジュースの過剰摂取は,肥満の主な原因と考えられている。

運動面

運動不足もまた小児に広がる肥満の原因であり,肉体的,情緒的健康を維持する上で運動がもつ便益を親がよく理解し,確実に児に人生の早い時期からよい習慣を身につけさせるようにすべきである。乳児期および幼児期には,注意深い監視のもと安全な環境の中を歩き回り探検させるべきである。戸外での遊びは乳児期から推奨すべきである。

成長するにつれて,遊びはより複雑になっていき,しばしば学校で行うような公式の運動競技に発展する。親は常に安全面の問題を念頭に置き,スポーツマンシップや競争について健全な態度を促しつつ,よい見本を示しながら本格的な遊びもそうでない遊びも奨励すべきである。家族でスポーツや種々の活動に参加することにより,小児には運動の機会が与えられるとともに重要な心理的発達的効果がもたらされる。スポーツに参加する前に,小児のスクリーニングが推奨される。

スクリーンタイム(例,テレビ,ビデオゲーム,携帯電話やその他の携帯端末,教育目的以外のコンピュータの使用時間)は運動不足や肥満に直結するため,出生時からスクリーンタイムの制限を開始し,青年期を通して継続すべきである。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Bright Futures/American Academy of Pediatrics (AAP): Recommendations for Preventive Pediatric Health Care (2022): A resource providing links to the periodicity schedule, to the Bright Futures Guidelines (4th Edition), and to summary links of all updates to the schedule since 2017

  2. Bright Futures/AAP: Periodicity schedule chart: Recommendations for preventive pediatric health care for infants through 21 years of age (2022)

  3. Bright Futures: Guidelines for Health Supervision of Infants, Children, and Adolescents, 4th Edition

  4. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Recommended child and adolescent immunization schedule for ages 18 years or younger, United States, 2023

  5. Modified Checklist for Autism in Toddlers, Revised, with Follow-Up (M-CHAT-R/F)

  6. AAP: Media and children communication toolkit

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