産褥の管理

執筆者:Julie S. Moldenhauer, MD, Children's Hospital of Philadelphia
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2024年 4月 | 修正済み 2024年 7月
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産褥期(分娩後6週間)に発現する臨床症状は一般に,妊娠中の生理的変化が元に戻ることを示している(分娩後の正常な変化の表を参照)。分娩後に褥婦が医療機関を受診する際には,妊娠に関連しない問題とともに,このような変化についても考慮すべきである。

最も頻度が高い合併症は以下のものである:

分娩後の生理的変化

臨床的パラメータ

分娩後24時間は,脈拍数が減少し始め,体温はわずかに上昇することがある。

3~4日間は腟分泌物に多量の血液が混じる(赤色悪露);その後,淡褐色(褐色悪露)となり,次の10~12日後には黄味を帯びた白になる(白色悪露)。

分娩の約1~2週間後,胎盤付着部から痂皮が剥離し出血する;出血は通常,自然に治まる。総失血量は約250mLである。外陰にナプキンをあててもよい;感染を回避するために,大半の医師はタンポンを使用しないよう助言している。大量出血または遷延する出血(後期分娩後異常出血)が懸念される場合は,褥婦に医師に連絡するよう伝えるべきである。これらの症状は感染または胎盤遺残の徴候であることがあり,評価すべきである。

子宮復古が徐々に生じる;5~7日後には,硬くなって圧痛はなくなり,子宮底が恥骨結合と臍とのほぼ中間に達する。2週後までに腹部からは触知できなくなり,典型的には4~6週間で妊娠前の大きさに戻る。分娩後初めの数日間は,子宮復古の際の収縮に疼痛(後陣痛)を伴う場合があり,鎮痛薬が必要になることがある。

検査パラメータ

1週目に,尿量が一時的に増加し,妊娠により増加した血漿量が排泄されるにつれて,さらに希釈される。尿が悪露によって汚染されることがあるため,尿検査結果の解釈には注意しなければならない。

血液量が再分布するためヘマトクリット値は変動することがあるが,失血量が正常範囲内である場合は,妊娠前の水準にとどまる傾向にある。分娩時に白血球数が増加するため,分娩後24時間に著しい白血球増多(最大20,000~30,000/μL)が生じる;白血球数は1週間以内に正常値に戻る。血漿フィブリノーゲン値および赤血球沈降速度(赤沈)値は,分娩後1週間は高値のままである。

表&コラム
表&コラム

ルーチンの産褥の管理

褥婦と新生児は分娩後24~48時間以内に退院させてよい。産科施設の中には,全身麻酔が行われず合併症がない場合は分娩後6時間程度で退院させるところもある。

重篤な問題はまれであるが,24~48時間以内の家庭訪問,来院,または電話は合併症のスクリーニングに役立つ。ルーチンの産後健診は合併症のない経腟分娩後の女性では通常3~8週間後に予定される。帝王切開または他の合併症が発生した場合,フォローアップがそれより早く予定されることがある(1)。

会陰のケア

分娩に合併症が伴わなかった場合,シャワーおよび入浴を許可してもよいが,腟洗浄は厳禁である(洗浄は妊娠にかかわらず全ての女性に推奨されない)。外陰は前から後ろへ拭くようにする。シャワーボトルなどを用いて会陰に温水をかけることが助けになると感じる褥婦もいる。

分娩直後には,会陰切開部や縫合した裂傷部位の疼痛および浮腫の軽減に,アイスパックを用いるのがよい;ときに疼痛を緩和するためにリドカインクリームまたはスプレーを用いてもよい。

その後は1日に数回坐浴を行うとよい。

帝王切開後の創傷ケア

帝王切開後は,標準的な創傷ケアとモニタリングを行うべきである。

典型的には,術後1~2日以内に包帯を除去する。ドレッシング除去後はシャワー浴が可能となるが,通常は創傷が完全に治癒するまで入浴を控えるよう助言する。創傷の閉鎖に外科用ステープルが用いられ,かつ皮膚切開が横切開であった場合は,4~6日後にステープルを除去できる。創傷感染症の徴候(紅斑,硬結,膿性分泌物,発熱)または創離開の徴候(創が開く,漿液血性の分泌物)がある場合は,医師に連絡するよう助言すべきである。

疼痛管理

非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が会陰の不快感および子宮の痙攣痛の両方に効果的である(2)。アセトアミノフェンを使用することもできる。アセトアミノフェンおよびイブプロフェンは,通常の推奨用量で使用すれば授乳中でも安全であると考えられている。

帝王切開または重大な会陰裂傷の修復後に,NSAIDまたはアセトアミノフェンを投与することがある。アセトアミノフェンの静脈内投与によりオピオイドの必要性が低下する(3)。一部の女性は不快感の軽減のためにオピオイドを必要とする;最小有効量を用いるべきである。

疼痛が顕著に悪化する場合,合併症(外陰血腫や帝王切開後の合併症など)について評価すべきである。

膀胱および腸管の機能

尿の貯留および膀胱の過度の拡張は可能であれば避ける。急激な利尿が,特にオキシトシンの中止後に起こることがある。排尿を促し,モニタリングを行って,無症状である膀胱の過剰充満を予防すべきである。分娩中の陰部神経の損傷により膀胱の機能障害が生じる可能性があり,ときに尿意を感じなくなることがある。恥骨上部正中線上に触知可能な腫瘤がある場合や,子宮底が臍より上の高い位置にある場合,膀胱の過度の拡張が示唆される。過度の拡張が生じていれば導尿を行い,早急に不快感を軽減し,長期に及ぶ排尿機能障害を予防する必要がある。過度の拡張が再発する場合はカテーテルの留置または間欠的な使用が必要になることがある。分娩後の尿閉は通常1~14日以内に消失する。

褥婦には退院までに排便してみるよう促すべきであるが,早期の退院の場合にはこの推奨は現実的でないことが多い。多くの褥婦で分娩後に便秘がみられ,特に帝王切開を受けた場合や疼痛緩和のためにオピオイドが必要な場合にその傾向が強い。3日以内に排便が起こらなければ,緩下薬(例,オオバコ,ジオクチルソジウムスルホサクシネート,ビサコジル)を与えてもよい。便秘を避けることで痔を予防でき,既存の痔(坐浴でも治療可能)の症状の緩和にも役立つ。直腸または肛門括約筋を含む広範囲の会陰裂傷修復を行った女性には,便秘とその結果いきみが必要となる(修復部位に負担がかかる)のを予防するために,便軟化剤(例,ジオクチルソジウムスルホサクシネート)を投与すべきである。

区域(脊髄や硬膜外)または全身麻酔により排便や自然排尿が遅れることがあり,これは一部には歩行開始が遅れることによる。

食事および運動

分娩後24時間が過ぎると回復は急速に進む。分娩後は,褥婦が望めば,速やかに普通食を与えてもよい。できるだけ早期に歩行するよう奨励する。

運動の推奨は,分娩様式,合併症,会陰裂傷または会陰切開,および他の疾患の有無により個別化される。通常,運動は分娩による不快感が治まれば開始でき,典型的には経腟分娩の褥婦で1日以内,帝王切開の褥婦ではそれより遅れる(典型的には6週間以降)(4)。骨盤底筋体操(ケーゲル体操)が役立つかどうかは不明であるが,患者が準備でき次第これらの運動を始めることができる。

乳房緊満

授乳初期には,母乳の蓄積によって,痛みを伴う乳房緊満が起こることがある。

母乳哺育を予定している女性には,乳汁産生が乳児の必要量と合致するまで以下を行うことが推奨される:

  • 一時的な圧軽減のため,温かいシャワーを浴びながら母乳を手で搾る,または授乳の合間に搾乳器を使う(しかしながら,そうすることで乳汁分泌が刺激されるため必要時のみ行うべきである)

  • 定期的に授乳する

  • 快適かつ補助的な授乳用のブラジャーを終日着用する

母乳哺育を予定していない女性には,以下が推奨される:

  • 乳房へのしっかりとした締め付け(例,ぴったりフィットしたブラジャーの着用),冷罨法,および必要に応じた鎮痛薬投与により,乳汁分泌が抑制されている間の一過性症状をコントロールする

  • 乳汁分泌を抑制するために乳房をしっかり支持圧迫する(重力によって催乳反射が刺激され,乳汁分泌が促進されることを防ぐ)

  • 乳汁分泌を増加させる乳頭刺激および用手搾乳を避ける

薬剤による乳汁分泌の抑制は米国では推奨されていないが,多くの国でそのような薬剤が使用されている(5)。

乳腺炎を発症した褥婦では,発熱と乳房症状(紅斑,硬結,圧痛,疼痛,腫脹,触れた際の熱感など)がみられる。乳腺炎は授乳開始時に頻繁に起こる乳頭の痛みやひび割れとは異なる。

性行為

経腟分娩後の性行為は,裂傷または会陰切開の修復部位が治癒し,かつ希望があり快適であれば再開してよい。帝王切開後の性行為は手術創が治癒するまで延期すべきである。

避妊

一部のデータでは,少なくとも分娩から6カ月,望ましくは18カ月妊娠を遅らせることで以降の産科転帰が改善することが示唆されている(6)。

男性と性行為をする女性は,妊娠の可能性を最小限にするために,性行為を再開する前に避妊を開始すべきである。授乳していない女性であれば,排卵は通常は分娩後約4~6週,初めの月経の2週間前に起こる。しかしながら,排卵はそれより早く起こることもあり,分娩後2週間という早期に妊娠した例もある。授乳している女性では,排卵と月経の再開が通常は分娩後6カ月近くまで遅れる傾向があるが,授乳していない女性と同じくらい早くに排卵と月経が再開する(そして妊娠する)ケースも少数ある。

女性は様々な避妊法の選択肢から,特定のリスクと有益性に基づいて選ぶべきである。

授乳の状況は避妊法の選択に影響する。授乳している女性には,非ホルモン性の方法が通常望ましい;ホルモン性の方法の中では,乳汁産生に影響を及ぼさない点から,プロゲスチンのみを含有する経口避妊薬,酢酸メドロキシプロゲステロンデポ剤の注射,およびプロゲスチンのインプラントが望ましい。エストロゲン-プロゲスチン避妊薬は乳汁産生を阻害する可能性があり,母乳産生が十分確立されるまで使用を控えるべきである。混合型エストロゲン-プロゲスチン腟内リングは授乳していない場合,分娩後4週間から使用可能である。

ペッサリーは,6~8週目に子宮復古が完了した後にのみ装着すべきである;それまではコンドームおよび殺精子剤を用いるべきである。

子宮内避妊器具は,胎盤娩出後すぐに留置してもよいが,分娩後4~6週時点で留置すると排出のリスクが最小限に抑えられる。

妊孕性の維持を希望しない女性は卵管不妊手術を選択することがある(7)。卵管不妊手術は分娩後直ちに,帝王切開時,または産褥期が終わってからでも行うことができる。この手技は永久的かつ不可逆的と考えられている。卵管を切除すること(卵管切除術)は卵巣がんのリスク低下と関連しているため,卵管不妊手術を受ける患者には卵管切除術を勧めるべきである(8)。

ルーチンの産褥の管理に関する参考文献

  1. 1.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): ACOG Committee Opinion No. 736: Optimizing Postpartum Care. Obstet Gynecol.2018;131(5):e140-e150.Reaffirmed 2021.doi:10.1097/AOG.0000000000002633

  2. 2.Pharmacologic Stepwise Multimodal Approach for Postpartum Pain Management: ACOG Clinical Consensus No. 1. Obstet Gynecol.2021;138(3):507-517.doi:10.1097/AOG.0000000000004517

  3. 3.Altenau B, Crisp CC, Devaiah CG, Lambers DS: Randomized controlled trial of intravenous acetaminophen for postcesarean delivery pain control.Am J Obstet Gynecol 217 (3):362.e1–362.e6, 2017.doi: 10.1016/j.ajog.2017.04.030

  4. 4.Syed H, Slayman T, DuChene Thoma K: ACOG Committee Opinion No. 804: Physical Activity and Exercise During Pregnancy and the Postpartum Period. Obstet Gynecol.2021;137(2):375-376.Reaffirmed 2023.doi:10.1097/AOG.0000000000004266

  5. 5.Drugs and Lactation Database (LactMed®) [Internet]. Bethesda (MD): National Institute of Child Health and Human Development; 2006-.Cabergoline.[Updated 2023 Nov 15]. 

  6. 6.Hutcheon JA, Moskosky S, Ananth CV, et al: Good practices for the design, analysis, and interpretation of observational studies on birth spacing and perinatal health outcomes [published correction appears in Paediatr Perinat Epidemiol. 2020 May;34(3):376]. Paediatr Perinat Epidemiol.2019;33(1):O15-O24.doi:10.1111/ppe.12512

  7. 7.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): ACOG Committee Opinion, Number 827: Access to Postpartum Sterilization. Obstet Gynecol.2021;137(6):e169-e176.doi:10.1097/AOG.0000000000004381

  8. 8.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): ACOG Committee Opinion No. 774: Opportunistic Salpingectomy as a Strategy for Epithelial Ovarian Cancer Prevention. Obstet Gynecol.2019;133(4):e279-e284.Reaffirmed 2020.doi:10.1097/AOG.0000000000003164

分娩後の予防的ケア

分娩後は,退院前または外来受診時のいずれにおいても,新生児の感染を予防するため,またはその後の妊娠における合併症を回避するために,特定の予防策が必要である。産後健診は,適応があればルーチンの予防接種の機会にもなりうる。

Rh感作の予防

褥婦がRh陰性でRh陽性児を出産したが,感作されていない場合,分娩後72時間以内にRho(D)免疫グロブリン(300μg,筋注)を投与して同種免疫を予防する

予防接種

以下の場合,分娩後に予防接種を行う:

  • 予防接種が推奨されていたが,妊娠中に接種しなかった。

  • 予防接種を受けていない,または予防接種が不十分であるか免疫を獲得できていない(例,一連の予防接種を完了していない,過去に予防接種を受けたにもかかわらず血清反応陰性である)状態であり,かつその予防接種が妊娠中は禁忌である。

各妊娠の27~36週の間に破傷風・ジフテリア・無細胞百日咳(Tdap)ワクチンを接種することが推奨される;Tdapワクチンは母体の免疫応答および新生児への抗体の受動的移行を促進するのに役立つ。Tdapワクチンの接種を受けたことがない女性(現在の妊娠中にも過去の妊娠中にも受けておらず,青年としても成人としても受けていない)には,授乳の状況にかかわらず,病院または出産センターからの退院前にTdapワクチン接種を行うべきである。新生児との接触が予想される家族が,過去にTdapの接種を受けていない場合には,新生児と接触する2週間前までに百日咳の予防接種としてTdapの接種を受けるべきである(1)。

2023年8月,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)は,妊娠32~36週の妊婦におけるRSウイルス(RSV)ワクチンの使用を承認し,妊娠32週未満での使用は控えるよう警告した(2)。現在のところ,妊娠中にRSVワクチンの接種を受けなかった女性に対し,分娩後に接種することを推奨する勧告はない。

麻疹・ムンプス(流行性耳下腺炎)・風疹混合(MMR)ワクチンおよび水痘ワクチンは弱毒生ワクチンであり,妊娠中に接種してはならない。麻疹,風疹,または水痘の抗体に対する血清反応陰性の褥婦には,分娩後(通常は退院当日)に予防接種を行うべきである。

また,分娩後退院までの間または外来受診の際には褥婦に対して,全ての褥婦に必要となる,または特定の感染症の危険因子に基づき特定の褥婦に推奨されるルーチンの予防接種(例,インフルエンザ,COVID-19,B型肝炎,ヒトパピローマウイルス)を受ける機会も提供する。

(See also Vaccines During Pregnancy,Guidelines for Vaccinating Pregnant Women, and CDC: COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding.)

分娩後の予防的ケアに関する参考文献

  1. 1.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): Committee Opinion No. 718: Update on Immunization and Pregnancy: Tetanus, Diphtheria, and Pertussis Vaccination. Obstet Gynecol.2017;130(3):e153-e157.Reaffirmed 2022.doi:10.1097/AOG.0000000000002301

  2. 2.U.S. Food and Drug Administration (FDA): FDA Approves First Vaccine for Pregnant Individuals to Prevent RSV in Infants.FDA News Release, August 21, 2023.

分娩後の合併症

感染のリスク,出血および過剰な疼痛を最小限にする必要がある。典型的には分娩第3期の後,少なくとも1~2時間は厳重に観察し,区域麻酔または全身麻酔を分娩中に使用した場合または妊娠もしくは分娩の合併症が認められた場合には数時間長く観察する。

出血

娩出直後の分娩後異常出血

出血を最小限にすることが第一優先であり,具体策としては以下のものがある:

  • 子宮マッサージ

  • 通常はオキシトシンの非経口(parenteral)投与

  • ときにメチルエルゴメトリン,ミソプロストール,またはトラネキサム酸

通常,分娩第3期後の1時間,子宮を収縮させ,過度の出血を予防するため,腹部の上から定期的に子宮底をマッサージする。

胎盤分離後,オキシトシン(10単位,筋注)や希釈オキシトシン輸液(静注液1000mLに10~20単位,125~200mL/時で1~2時間)により通常は子宮収縮が確保され,失血は減少する(1)。

重度の出血が続く場合は,バイタルサインをモニタリングし,輸液および酸素投与により循環補助を行う。血算および凝固検査を行う。必要であれば血液製剤を投与する。播種性血管内凝固症候群がないか患者をモニタリングすべきである。発熱がある場合,適切であれば抗菌薬を投与する。

経腟分娩後は,子宮の内診を行い,卵膜または胎盤断片の残留がないか確認する。帝王切開後は,手術合併症を考慮する。

薬剤を用いたさらなる管理として,メチルエルゴメトリン,ミソプロストール,またはトラネキサム酸を用いてもよい。薬剤でコントロールできない出血に対しては,出血を減少させるための手技(例,子宮内バルーンまたはパッキング,B-Lynch縫合[子宮下部を圧迫する],内腸骨動脈結紮)を行うことがある。子宮摘出術は最後の手段として行う。

(さらなる情報については分娩後異常出血を参照のこと。)

後期分娩後異常出血

分娩から数日または数週間後に分娩後異常出血が起こることがある。後期分娩後異常出血は,受胎の遺残物,感染,または凝固障害によって引き起こされることがある。褥婦には,医療専門職に連絡するタイミングや救急診療部を受診するタイミングについて教育すべきである。一般的な指針では,1~2時間毎にナプキンやタンポンを取り替えなければならないほど出血が多かったり,大きい(2.5cm超)凝血塊が排出されたり,失神したりする場合は,医療機関を受診すべきであるとされている。

著明な後期分娩後異常出血がみられる場合は,分娩様式および妊娠または分娩中の合併症を含め,最近の妊娠歴を確認する。全体的な妊娠・分娩歴および病歴(特に出血性疾患の危険因子について)も確認する。

娩出直後の分娩後異常出血と同様に患者を評価し,循環補助を行う。後期分娩後異常出血に対しては,子宮内用手検索は行われない。骨盤内超音波検査により,外科的な子宮内容除去術,子宮収縮薬,または抗菌薬を必要とする受胎の遺残物が明らかになることがある。

高血圧疾患

分娩後に妊娠高血圧腎症を発症する可能性がある。徴候および症状は妊娠中の妊娠高血圧腎症(新規発症の高血圧)に類似しており,原因不明の新たなタンパク尿および/または末端臓器損傷の徴候もしくは症状(例,血小板減少,肝機能障害,腎機能不全,肺水腫,頭痛,視覚症状)を合併している。分娩後にこれらの症状がみられる場合は,医療専門職に連絡するよう,カウンセリングを行って説明すべきである。

評価は妊娠中に行うものと同様であり,血圧モニタリングおよび臨床検査などを行う。

重症の妊娠高血圧腎症の基準を満たす症例では,患者を入院させ,痙攣を予防するために24時間にわたって硫酸マグネシウムの静注による治療を行う。

感染症

分娩後に発熱または感染症のその他の症状もしくは徴候がみられた患者には,速やかに評価および治療を行うべきである。退院前にカウンセリングを行って,どのように感染症の症状を認識し,いつ医療機関を受診すべきかについて説明すべきである。

分娩後感染としては以下のものがある:

子宮内膜炎乳腺炎,および分娩後の腎盂腎炎については別の箇所で詳細に考察されている。

腹部切開の創傷感染が,帝王切開または産後の卵管不妊手術の後に発生することがある。会陰の修復部位に感染が起こることもある。重症例では,感染により蜂窩織炎膿瘍,または壊死性筋膜炎が生じることがある。

血栓塞栓性疾患

血栓塞栓性疾患深部静脈血栓症[DVT]または肺塞栓症[PE])は母体死亡の主な原因の1つである。

妊娠に関連する大半の血栓塞栓症は分娩後に発生し,これは分娩中の血管傷害に起因する(2)。血栓塞栓性疾患の発生リスクは,分娩後約6週間にわたって増大する。帝王切開もリスクを増大させる。分娩後の患者に対して,血栓塞栓症の徴候および症状がないかモニタリングし,またカウンセリングを行って,どのようにしてこれらの徴候を認識し,いつ医療機関を受診するかについて説明すべきである。

脊髄幹麻酔後の頭痛(脊髄性の頭痛)

一部の患者では,脊髄くも膜下麻酔または硬膜外麻酔中の硬膜穿刺による髄液漏出が原因で頭痛(脊髄性の頭痛または硬膜穿刺後頭痛と呼ばれる)が生じる。頭痛は体位性であり,他の病因(例,妊娠高血圧腎症)と鑑別すべきである。

脊髄幹麻酔による頭痛は通常1~2週間後に自然に消失し,安静とNSAIDまたはアセトアミノフェンにより管理することがある;カフェインの経口摂取が消失に役立つことを示唆するデータもある(3)。頭痛が重度の場合は,硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)で治療することがある(4)。

会陰修復の合併症

会陰裂傷または会陰切開後の会陰修復で以下の合併症が発生することがある:

  • 血腫

  • 創傷感染症

  • 創離開

  • 慢性疼痛

経腟分娩後に会陰,外陰,または腟の血腫が発生することがある。これらの合併症は,典型的には増強する疼痛を伴う腫瘤として現れる。増大傾向のない血腫は,アイスパックと観察により保存的に管理する。血腫が増大している場合,または後腹膜出血が疑われる場合は,外科的介入が必要である。

会陰修復部位は離開したり感染を起こしたりすることがある。そのような症例では,感染症および肛門括約筋の損傷がないか評価を行う。管理には,抗菌薬,デブリドマン,再縫合,および/または二次治癒のために創傷を開放しておくことなどがある。

一部の女性では会陰修復部位に慢性疼痛または性交痛が生じる。骨盤底筋体操による管理が第1選択である。運動が効果的でない場合は,慢性疼痛および骨盤底再建術の経験が豊富なウロギネコロジー専門医または他の婦人科医に紹介すべきである。

精神疾患

一過性の抑うつ症状(産後ブルー)は,分娩後の1週間に非常に多くみられる。症状(例,気分変動,易刺激性,不安,集中困難,不眠症,涙もろさ)は典型的には軽度で,通常は分娩後7~10日で消失する。

医師は分娩前後の抑うつ症状について女性に尋ねるべきで,新たに母親になったことへの正常な反応(例,疲労感,集中困難)に類似する場合がある抑うつの症状に注意すべきである。また抑うつ症状が2週間を超えて持続する場合や日常生活の妨げになる場合,または自殺や他殺念慮がある場合には連絡を取るよう女性に助言すべきである。このような症例では,産後うつ病または他の精神疾患が存在する可能性がある。包括的な産後健診の際には全ての女性に対し,妥当性が確認されたツールを用いて,産後の気分症および不安症のスクリーニングを行うべきである(5)。

幻覚,妄想,または精神症的行動のある患者では,産後精神症について評価するべきである。産後に精神症症状がみられる女性は,入院が必要な場合があり,その場合には乳児とともに過ごせるような監督下の病室が望ましい。抗うつ薬とともに,抗精神病薬が必要となりうる。

産後うつ病の既往を含めた既存の精神疾患が産褥期に再発または悪化する可能性が高いため,罹患している女性は厳密にモニタリングすべきである。

分娩後の合併症に関する参考文献

  1. 1.Committee on Practice Bulletins-Obstetrics.Practice Bulletin No. 183: Postpartum Hemorrhage. Obstet Gynecol.2017;130(4):e168-e186.doi:10.1097/AOG.0000000000002351

  2. 2. American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): ACOG Committee on Practice Bulletins—Obstetrics.ACOG Practice Bulletin No. 196: Thromboembolism in Pregnancy [published correction appears in Obstet Gynecol. 2018 Oct;132(4):1068]. Obstet Gynecol.2018;132(1):e1-e17.doi:10.1097/AOG.0000000000002706

  3. 3.Ona XB, Osorio D, Cosp XB: Drug therapy for treating post-dural puncture headache.Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jul 15;2015(7):CD007887. doi: 10.1002/14651858.CD007887.pub3.

  4. 4.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): Headaches in Pregnancy and Postpartum: ACOG Clinical Practice Guideline No. 3 [published correction appears in Obstet Gynecol. 2022 Aug 1;140(2):344]. Obstet Gynecol.2022;139(5):944-972.doi:10.1097/AOG.0000000000004766

  5. 5.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): Screening and Diagnosis of Mental Health Conditions During Pregnancy and Postpartum: ACOG Clinical Practice Guideline No. 4. Obstet Gynecol.2023;141(6):1232-1261.doi:10.1097/AOG.0000000000005200

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