RSウイルス(RSV)感染症およびヒトメタニューモウイルス感染症

執筆者:Rajeev Bhatia, MD, Phoenix Children's Hospital
Reviewed ByAlicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
レビュー/改訂 2024年 3月 | 修正済み 2025年 1月
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RSウイルス感染症とヒトメタニューモウイルス感染症は,特に乳幼児において,季節性の下気道疾患を引き起こす。無症状または軽症の場合もあれば,重症となることもあり,細気管支炎や肺炎が含まれる。診断は臨床的に行うのが通常であるが,臨床検査による診断も可能である。治療は主に支持療法である。ニルセビマブによる受動免疫は,生後8カ月未満の全ての乳児と生後8~19カ月の高リスクの小児を適応とするが,ニルセビマブが使用できない場合は,特定の条件を満たす高リスクの乳児に対してパリビズマブによる予防が適応となる。

RSウイルス(RSV)

RSVは,ニューモウイルスに分類されるRNAウイルスである。サブグループAおよびBが同定されている。

RSVは低月齢乳児に生じる下気道疾患の最も一般的な原因であり,米国では5歳未満の小児において毎年58,000~80,000件以上の入院の原因となっている(1)。

RSVは普遍的に存在し,ほぼ全ての小児が4歳までに感染する(2)。典型的には温帯地方で毎年,冬季または早春にアウトブレイクが発生している。しかしながら,COVID-19パンデミックの発生中に,RSVやその他の呼吸器系ウイルスの循環パターンに乱れが生じた(3)。

RSVに対する免疫応答は再感染の予防につながらないため,全曝露者における発病率は約40%となっている。それでも,RSVに対する抗体は疾患の重症度を低下させる。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)

hMPVは類似するが別のウイルスである。

hMPVの季節的な疫学的性質はRSVのそれと同様のようであるが,感染および疾患の発生率はかなり低いとみられている。

総論の参考文献

  1. 1.Centers for Disease Control and Prevention (CDC): RSV Surveillance and Research.Accessed December 11, 2023.

  2. 2.Committee on Infectious Diseases, American Academy of Pediatrics, Kimberlin DW, Barnett ED, Lynfield R, Sawyer MHRed Book: 2021–2024 Report of the Committee on Infectious Diseases, ed.32, pp.628–636, 2021.doi: 10.1542/9781610025782

  3. 3.Olsen SJ, Winn AK, Budd AP, et al: Changes in influenza and other respiratory virus activity during the COVID-19 pandemic–United States, 2020-2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 70(29):1013–1019, 2021.doi: 10.15585/mmwr.mm7029a1

RSVおよびhMPV感染症の症状と徴候

RSVとhMPVは類似した疾患を引き起こす。最も認識しやすい臨床症候群は細気管支炎肺炎である。

これらの疾患は典型的には上気道症状と発熱で始まり,その後数日かけて呼吸困難,咳嗽,喘鳴,胸部聴診上の断続性ラ音へと進行する。生後6カ月未満の乳児では無呼吸がRSVの初期症状となりうる。

健康な成人および児童では,通常は軽症に経過し,不顕性のこともあれば,発熱を欠く感冒症状のみを呈することもある。しかしながら,以下の患者では重度の疾患が発生することがある:

  • 生後6カ月未満の患者,高齢患者,または易感染状態の患者

  • 基礎疾患として心肺疾患または神経筋疾患を有する患者

RSVおよびhMPV感染症の診断

  • 特徴的な症状および徴候,特に通常の流行時期または既知のアウトブレイク発生時

  • ときに,迅速抗原検査,逆転写PCR(RT-PCR)法,またはウイルス培養(いずれも鼻腔洗浄液または鼻腔拭い液)

RSV流行期に細気管支炎または肺炎を起こした乳幼児では,RSV感染が(可能性は低いがhMPV感染も)疑われる。抗ウイルス治療は典型例では推奨されないため,患者管理を目的とした特異的な臨床検査診断は不要である。しかしながら,臨床検査により診断を下せば,同じウイルスに感染した小児を隔離することが可能になるため,院内感染の制御が用意に可能性がある。

小児ではRSVおよび他の呼吸器系ウイルスを高感度に検出する迅速抗原検査が利用でき,検体には鼻腔洗浄液または拭い液が使用される。これらの検査は成人では感度が低くなる。ウイルス培養を行ってもよい。RT-PCRなどの分子生物学的な診断法は,感度が高く,一般に単一または複数ウイルスを対象とした測定法が利用できる。

RSVおよびhMPV感染症の治療

  • 支持療法

RSVおよびhMPV感染症の治療は支持療法であり,必要に応じて酸素および水分補給を行う(細気管支炎の治療を参照)。

コルチコステロイドおよび気管支拡張薬は一般にあまり助けにならず,推奨されていない。

抗菌薬については,発熱があり,胸部X線上で肺炎所見が認められ,かつ臨床的に細菌の同時感染が疑われる患者のみに使用される。

ニルセビマブおよびパリビズマブ(抗RSVモノクローナル抗体)は治療には効果的でない。

ネブライザーで投与するリバビリンは,RSVに対して活性を有する抗ウイルス薬であるが,その効力は限定的であり,医療従事者に対する毒性の可能性があることから,重度の易感染状態にある患者の感染例を除き,推奨されない(1)。

治療に関する参考文献

  1. 1.Beaird OE, Freifeld A, Ison MG, et al: Current practices for treatment of respiratory syncytial virus and other non-influenza respiratory viruses in high-risk patient populations: A survey of institutions in the Midwestern Respiratory Virus Collaborative. Transpl Infect Dis 18(2):210-215, 2016.doi: 10.1111/tid.12510

RSVおよびhMPV感染症の予防

接触感染予防策(例,手洗い,手袋,隔離)が重要である(特に病院内)。

米国では,乳幼児においてRSV感染症予防に用いられる2種類のモノクローナル抗体が使用可能である。ニルセビマブが望ましいが,供給が制限されているため一部の乳児では使用できない可能性がある;使用できない場合,適格な高リスクの乳児および小児にはパリビズマブを投与すべきである。(米国疾病予防管理センター[Centers for Disease Control and Prevention:CDC]供給制限下でのニルセビマブ使用に関する暫定推奨を参照のこと。)RSウイルスワクチンが妊娠中に接種された場合,大半の乳児にはニルセビマブは不要である。

ニルセビマブは作用期間の長いモノクローナル抗体であり,以下の乳幼児におけるRSV感染症の予防に推奨される(1, 2, 3, 4):

  • RSV流行期に出生したか,流行期に初めて入ろうとしている生後8カ月未満の全ての乳児

  • 重度のRSV感染症のリスクが高く,2度目のRSV流行期に入った生後8~19カ月の小児

健康な新生児(すなわち,重症RSV感染症のリスクが高くない新生児)にはニルセビマブを2回以上投与してはならない。典型的には,この投与は乳児が経験する最初のRSV流行期に行う。RSV流行期の終盤に出生した生後8カ月未満の乳児には,最初の流行期にニルセビマブの投与を受けなかった場合,2回目のRSV流行期にニルセビマブの投与を行うべきである。

ニルセビマブを2回投与するのは,高リスクの基準を満たす小児に限定すべきである(最初のRSV流行期に1回,2回目のRSV流行期に1回)。CDCの供給制限下でのニルセビマブ使用に関する暫定推奨を参照のこと。ニルセビマブを投与する小児には,同じRSV流行期にパリビズマブを投与すべきではない。

生後8~19カ月の高リスクの小児には以下が含まれる:

  • 未熟性による慢性肺疾患を有しており,2回目のRSV流行期が始まる前の6カ月間に医学的支援を必要とした小児

  • 重度の易感染状態にある小児

  • 嚢胞性線維症を有しており,重度の肺疾患があるか,身長に対する体重の比が10パーセンタイル未満である小児

  • アメリカンインディアンまたはアラスカ先住民の小児

適応のある小児には,RSV流行期(米国本土の大半では通常10月から翌年3月末まで)の少し前にニルセビマブを投与すべきである。流行期の開始時に投与を受けなかった乳児には,流行期中の任意の時点で1回投与することができる。

ニルセビマブは新生児が退院する前に,他の小児ワクチンと同時に投与することができる。

パリビズマブは,同じくモノクローナル抗体であり,高リスク乳児においてRSV感染症による入院頻度を低下させる(5, 6)。ニルセビマブが使用できない状況でのみ使用すべきである。

パリビズマブの費用対効果は,以下の特徴がみられる患者を含めた,入院リスクの高い乳児でのみ高くなる:

  • 在胎29週未満で出生し,RSV流行期の開始時点で1歳未満の乳児

  • 未熟性による慢性肺疾患(在胎32週0日未満相当の時点で出生後28日間以上にわたり酸素療法を必要としている場合)を有する1歳未満の乳児

  • 生後2年目に未熟性による慢性肺疾患がみられ,かつRSV流行期の6カ月間にコルチコステロイドまたは利尿薬の長期投与による治療を受けたか,継続的な酸素療法が必要な状態にある乳児

  • 血行動態に有意な影響を及ぼす先天性心疾患を有する1歳未満の乳児

以下の場合にはパリビズマブによる予防を考慮してもよい:

  • 上気道の効果的な排出能を障害する肺の解剖学的異常または神経筋疾患を有する1歳未満の乳児

  • 著明な易感染状態にある生後24カ月未満の小児

パリビズマブの初回投与は通常のRSV流行期前に行う。その後はRSV流行期の間,1カ月間隔で投与する(通常は合計5回となる)。RSVの流行期が長引いている場合や流行期間にRSVが顕著に流行している場合は,追加投与が推奨されることがある。(American Academy of Pediatrics[米国小児科学会]が再確認したRSVによる入院リスクが高い乳児および幼児に対するパリビズマブ予防投与に関する2014年更新版ガイダンスも参照のこと。)

パリビズマブの初回投与を受けた乳児には,可能であれば,計5回にわたる一連のパリビズマブ投与を完了する前にニルセビマブを1回投与すべきである。

高齢者および妊婦に使用可能なRSVワクチンに関する情報については,RSウイルス(RSV)ワクチンを参照のこと。現在使用可能なRSVワクチンの1つ(Pfizer社)は,米国本土の大半の地域で9月から1月までの期間中に妊娠32~36週となる妊婦が適応とされている。母体,小児,および成人を対象とするいくつかのRSVワクチンが臨床開発の段階にある。

予防に関する参考文献

  1. 1. Hammitt LL, Dagan R, Yuan Y, et alNirsevimab for Prevention of RSV in Healthy Late-Preterm and Term Infants. N Engl J Med 386(9):837-846, 2022.doi: 10.1056/NEJMoa2110275

  2. 2. Griffin MP, Yuan Y, Takas T, et al: Single-Dose Nirsevimab for Prevention of RSV in Preterm Infants. N Engl J Med 383(5):415-425, 2020.doi: 10.1056/NEJMoa1913556

  3. 3. Simões EAF, Madhi SA, Muller WJ, et al: Efficacy of nirsevimab against respiratory syncytial virus lower respiratory tract infections in preterm and term infants, and pharmacokinetic extrapolation to infants with congenital heart disease and chronic lung disease: A pooled analysis of randomised controlled trials. Lancet Child Adolesc Health 7(3):180-189, 2023.doi: 10.1016/S2352-4642(22)00321-2

  4. 4.Jones JM, Fleming-Dutra KE, Prill MM, et al: Use of nirsevimab for the prevention of respiratory syncytial virus disease among infants and young children: recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices–United States, 2023. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 72(34):920-925, 2023.doi: 10.15585/mmwr.mm7234a4

  5. 5. Garegnani L, Styrmisdóttir L, Roson Rodriguez P, et alPalivizumab for preventing severe respiratory syncytial virus (RSV) infection in children. Cochrane Database Syst Rev 11(11):CD013757, 2021.doi: 10.1002/14651858.CD013757.pub2

  6. 6. The IMpact-RSV Study GroupPalivizumab, a humanized respiratory syncytial virus monoclonal antibody, reduces hospitalization from respiratory syncytial virus infection in high-risk infants. Pediatrics 102(3):531–537, 1998.

要点

  • RSウイルス(RSV)とヒトメタニューモウイルスは,通常は細気管支炎の症候群を引き起こすが,肺炎が起きる場合もある。

  • 診断は臨床的に行うのが通常であるが,迅速抗原検査や分子生物学的測定法(例,逆転写PCR法)などの検査が利用できる。

  • 支持療法を行う;コルチコステロイド,気管支拡張薬,ニルセビマブ,およびパリビズマブの使用は推奨されない。

  • ネブライザーによるリバビリンの吸入は,RSV感染症に対して有用となる可能性があるが,医療従事者に対する毒性の懸念があり,重度の易感染状態にある患者に限定して使用される。

  • RSV流行期前に,該当する全ての小児にニルセビマブを投与する;ニルセビマブが入手できない場合は,特定の高リスク乳児にパリビズマブを投与する。

より詳細な情報

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