頭頸部腫瘍の概要

執筆者:Bradley A. Schiff, MD, Montefiore Medical Center, The University Hospital of Albert Einstein College of Medicine
Reviewed ByLawrence R. Lustig, MD, Columbia University Medical Center and New York Presbyterian Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2024年 9月
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頭頸部がんは,米国では毎年70,000人以上に発生している(1)。

頭頸部がんの最も頻度が高い部位は以下の通りである:

  • 喉頭(声門上,声門,および声門下を含む)

  • 口腔(舌,口底,硬口蓋,頬粘膜,および歯槽堤)

  • 中咽頭(咽頭側壁,咽頭後壁,舌根,扁桃,および軟口蓋)

比較的頻度が低い部位としては,上咽頭鼻腔および副鼻腔下咽頭唾液腺などがある。

その他の部位の頭頸部腫瘍は以下の通りである:

頭頸部がんの発生率は年齢とともに増加する。大半の患者は50~70歳であるが,より若年の患者における発生率が増加しており,ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に起因するがん(主に中咽頭癌)と関連する。頭頸部がんは女性より男性に多くみられ,少なくとも理由の一部として,男性喫煙者が女性喫煙者より多い状況が続いており,男性の方がHPVの経口感染の頻度が高いことが挙げられる。

総論の参考文献

  1. 1.Siegel RL, Giaquinto AN, Jemal A.Cancer statistics, 2024 [published correction appears in CA Cancer J Clin. 2024 Mar-Apr;74(2):203. doi: 10.3322/caac.21830]. CA Cancer J Clin 2024;74(1):12-49.doi:10.3322/caac.21820

頭頸部腫瘍の病因

大多数の頭頸部がん患者は,飲酒歴,喫煙歴,またはその両方を有する。長期に及ぶ多量の喫煙と飲酒がある人は,扁平上皮癌の発生リスクがほぼ40倍高い。ほかに疑われる原因として,無煙タバコの使用,日光への曝露,過去の頭頸部へのX線,特定のウイルス感染症,不適合な歯科装置,慢性カンジダ症,不良な口腔衛生などがある。アジアの一部地域では,口腔癌が他の地域より多くみられるが,これはbetel quid(ビンロウの種を原料とする混合物で,パーンとも呼ばれる)を噛む習慣が原因である可能性がある。日光への長期曝露およびタバコ製品の使用は,下唇の扁平上皮癌の主要な原因である。

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染は頭頸部扁平上皮癌(特に中咽頭癌)と関連する。HPV関連がんの増加により中咽頭癌の発生率は全体として増加しているが,そうでなければ過去数十年間にわたる喫煙の減少により中咽頭癌発生率の低下が見込まれていたであろう。ウイルスを介した腫瘍発生の機序は,タバコ関連の経路とは異なると考えられる。

エプスタイン-バーウイルス上咽頭癌の発生機序で役割を果たしており,特定の血清エプスタイン-バーウイルスタンパク質測定が再発のバイオマーカーになりうる。

頭頸部腫瘍の症状と徴候

頭頸部がんの臨床像は,腫瘍の部位および範囲に大きく依存する。頭頸部がんの一般的な初期症状としては以下のものが挙げられる:

  • 無症状の頸部腫瘤

  • 疼痛を伴う粘膜潰瘍

  • 視認可能な粘膜病変(例,白板症,紅板症)

  • 嗄声

  • 嚥下困難

続いて起こる症状は腫瘍の部位と範囲に依存し,具体的には以下のものが挙げられる:

  • 疼痛

  • 錯感覚

  • 神経麻痺

  • 開口障害

  • 口臭

耳痛はしばしば見逃される症状であり,通常は原発腫瘍の関連痛である。障害された摂食および嚥下痛による体重減少もよくみられる。

頭頸部腫瘍の診断

  • 病歴聴取および身体診察

  • 生検

  • 病変範囲を評価するための画像検査および内視鏡検査

症状が出現する前の早期にがんを発見する最良の方法は,ルーチンの身体診察(徹底的な口腔診査を含む)がである。

咽頭痛や嗄声,耳痛など,説明のつかない頭頸部症状が2~3週間を超えて持続する場合は,耳鼻咽喉科医に紹介すべきであり,そこでは典型的には軟性喉頭鏡検査で喉頭および咽頭の評価が行われる。

通常,確定診断には生検が必要である。頸部腫瘤に対しては穿刺吸引細胞診を用いる;これは忍容性が良好で,正確であり,開放生検と異なり,将来の治療選択肢に影響を及ぼさない。口腔病変は,切開生検またはブラシ生検で評価する。上咽頭,中咽頭,または喉頭の病変は内視鏡下に生検する。

原発腫瘍の範囲,隣接構造への浸潤,および頸部リンパ節転移の評価に役立てるため,画像検査(CT,MRI,またはPET/CT)を行う。

頭頸部腫瘍の病期分類

頭頸部がんは,原発腫瘍の大きさおよび部位(T),頸部リンパ節への転移の数および大きさ(N),ならびに遠隔転移の有無(M)に従って病期分類される(1)。中咽頭癌では,HPVの感染状況も考慮に入れる。病期診断には通常,CT,MRI,またはその両方のほか,しばしばPETによる画像検査が必要である。

臨床病期分類(cTNM)は,手術前に行われた身体診察および検査の結果に基づく。病理学的病期分類(pTNM)は,原発腫瘍の病理学的特徴および手術時に発見された転移陽性リンパ節の数に基づく。

頸部リンパ節転移癌では,節外進展は「N」カテゴリーに組み込まれている。節外進展の臨床診断は,身体診察時に肉眼的な節外進展の所見を認めるとともに,画像検査でその所見を確認することに基づいて行う。病理学的な節外進展は,リンパ節内の腫瘍がリンパ節被膜を越えて周囲の結合組織内へと進展している組織学的所見を認める場合(関連する間質反応の有無は問わない)と定義されている。

病期分類に関する参考文献

  1. 1. Amin MB, Edge S, Greene F, Byrd DR, et al: American Joint Committee on Cancer (AJCC) Cancer Staging Manual, 8th edition.New York, Springer, 2017; AJCC Cancer Staging Form Supplement, 2018.

頭頸部腫瘍の治療

  • 手術,放射線療法,またはその両方

  • ときに化学療法

頭頸部がんの主な治療は手術および放射線である。これらの治療法は単独または併用で施行でき,さらに化学療法を併用する場合もある。部位にかかわらず,多くの腫瘍は手術および放射線療法に対して同程度に反応し,患者の希望または部位特異的な合併症など他の因子により治療が選択できる。

しかし,特定の部位では一方の治療法の優位性が明らかである。例えば,口腔を侵す早期がんに対しては,放射線療法は下顎骨の放射線性骨壊死を引き起こす可能性があるため,手術の方が優れる。内視鏡下手術がしばしば選択されるが,選択された頭頸部がんでは,治癒率が開放手術や放射線療法と同程度以上であり,合併症の発生率は有意に低い。喉頭手術には内視鏡的アプローチが最も多く用いられ,通常は切除にはレーザーを使用する。内視鏡的アプローチは一部の鼻副鼻腔腫瘍の治療にも用いられる。

放射線療法を一次治療に選択した場合,原発部位およびときに両側の頸部リンパ節に照射する。リンパ管の治療は,放射線によるか手術によるかにかかわらず,原発部位,組織学的基準,およびリンパ節転移のリスクにより決まる。早期病変には,多くの場合,リンパ節の治療を必要としないが,一方,より進行した病変には必要である。リンパ管が豊富な頭頸部の部位(例,中咽頭,声門上)では通常,腫瘍の病期にかかわらず,リンパ節照射を必要とするが,一方,リンパ管がより少ない部位(例,喉頭)では,通常,早期がんに対してはリンパ節照射を必要としない。強度変調放射線療法(IMRT)では,非常に特異的領域位に放射線を照射し,腫瘍制御を損なうことなく有害作用を減少させる可能性がある。

進行がん(III期およびIV期)では集学的治療を必要とする場合が多く,化学療法,放射線療法,および手術の組合せを組み入れる。骨または軟骨浸潤は,原発部位および通常は所属リンパ節(リンパ節転移のリスクが高いため)の外科的切除を必要とする。原発部位を外科的に治療する場合,複数のリンパ節転移または被膜外進展など高リスク所見があれば,所属リンパ節への術後照射を行う。照射された組織は治癒しにくいため,通常,術後照射が術前照射より望ましい。

頸部に対するアジュバント放射線療法に化学療法を追加すると,がんの領域制御と生存率が改善する。しかし,このアプローチは嚥下困難の増強および骨髄抑制などの有意な有害作用を引き起こすため,化学療法を加えるという判断は慎重に考慮すべきである。

骨浸潤を伴わない進行した扁平上皮癌は,しばしば化学療法と放射線療法の併用で治療する。臓器温存として推奨されるが,化学療法と放射線療法の併用は急性毒性(特に重度の嚥下困難)の発生率を2倍にする。化学療法の続発症に耐えられず,かつ全身麻酔のリスクが高すぎる,衰弱した進行例に対して,放射線が単独で用いられる場合がある。

化学療法が治癒を目指した一次治療として使用されることはほとんどない。一次治療としての化学療法は,バーキットリンパ腫など化学療法に感受性の高い腫瘍,または広範囲の転移がある患者(例,肝臓または肺への転移)に対して行う。いくつかの薬剤(シスプラチン,フルオロウラシル,ブレオマイシン,およびメトトレキサート)は,他の方法で治療できない患者において,疼痛緩和をもたらし,腫瘍を小さくする。反応は初めは良好なことがあるが,持続性はなく,ほぼ常に再発する。一部の患者には従来の化学療法薬の代わりに,セツキシマブなどの分子標的薬が使用できる(1)。

頭頸部がんの治療は非常に複雑であるため,集学的治療計画が必要不可欠である。理想的には,最良の治療についてコンセンサスが得られるように,放射線科医および病理医を併せた全ての治療分野のメンバーから成る腫瘍委員会が,それぞれの患者について検討すべきである。治療が決定された後は,耳鼻咽喉科および再建外科医,放射線腫瘍医および腫瘍内科医,言語聴覚士,歯科医師,ならびに栄養士を含むチームによる調整が最善である。

遊離組織(皮弁)移植により,以前は多大な合併症を引き起こしていた手技が行われた後の患者の生活の質を,欠損部の機能的および審美的な再建で大きく改善できるようになったため,形成再建外科医は重要な役割を担っている。再建に用いられる一般的なドナー部として,腓骨(下顎骨再建に用いられることが多い),橈側前腕(舌および口底再建に用いられることが多い),前外側大腿(喉頭または咽頭再建に用いられることが多い)などがある。

腫瘍再発の治療

治療後の再発腫瘍の管理は複雑であり,合併症の可能性がある。治療後の原発部位における,浮腫または疼痛を伴う触知可能な腫瘤または潰瘍病変は,残存腫瘍を強く示唆する。そのような患者では(薄層)CTまたはMRIが必要となる。

外科的治療後の局所再発に対しては,全ての瘢痕面および再建皮弁を残存している腫瘍とともに切除する。放射線療法,化学療法,またはその両方が行われるが,有効性は限定的である。放射線療法後に再発を起こした患者では,手術による治療が最良である。しかし,一部の患者では追加放射線療法が有益な場合もあるが,このアプローチは有害作用のリスクが高く,注意深く行うべきである。プラチナベースの化学療法に抵抗性となった再発例または転移例に対しては,免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブおよびニボルマブが使用可能であるが,初期の結果は有望であるものの,これらの治療薬を実診療に組み込むためのベストプラクティスはまだ明らかにされていない。

症状のコントロール

疼痛は頭頸部がん患者においてよくみられる症状であり,十分に対処する必要がある。緩和手術,放射線療法,または化学療法により,一時的に疼痛を緩和できる可能性がある。疼痛のコントロールには段階的アプローチによる疼痛管理が極めて重要である(2)。重度の疼痛は,疼痛および緩和ケア専門医と連携して管理するのが最善である。

疼痛,摂食困難,分泌物による窒息,および他の問題のため,十分な対症療法が必須である。そのようなケアに関する患者の事前指示書は,早期に明確にすべきである。

治療の有害作用

全てのがん治療には合併症の可能性と予想される続発症がある。多くの治療が同程度の治癒率であるため,治療法の選択は,主に実際のまたは認識されている続発症の相違に基づいている。

手術が最も合併症を引き起こすと一般的に考えられているが,多くの術式は,容貌または機能を大きく損なうことなく施行できる。プロテーゼ,移植,区域有茎皮弁,および複合遊離皮弁(complex free flap)などの複雑な再建の術式および技術により,機能および容貌はほぼ正常にまで回復可能であることが多い。

化学療法の毒性作用としては,倦怠感,重度の悪心および嘔吐,粘膜炎,一時的な脱毛,胃腸炎,造血および免疫抑制,感染などがある。

頭頸部がんに対する放射線療法にはいくつかの有害作用がある。約40Gyの線量では,照射領域内の全ての唾液腺の機能が永久的に破壊され,その結果として口腔乾燥症を来し,それにより齲蝕のリスクが著明に増大する。正常組織への放射線曝露を最小限に抑える照射法(例,強度変調放射線療法)により,耳下腺への毒性線量を最小限に抑えるか完全になくすことが可能である。

さらに,60Gyを超える線量では骨への血液供給が(特に下顎骨で)障害され,放射線性骨壊死が起きる可能性がある(放射線療法も参照)。この状態では,抜歯窩が崩壊し,骨および軟部組織が脱落する。したがって,歯石除去,充填,および抜歯などの必要な歯科治療は全て放射線療法前に行うべきである。修復不能である不良な状態の歯は全て抜歯すべきである。高気圧酸素治療で抜歯後の放射線性骨壊死を予防できるかどうかは不明である。

放射線療法は,口腔粘膜炎および被覆皮膚の皮膚炎(皮膚線維化を来すことがある)も引き起こす可能性がある。しばしば味覚の喪失(味覚脱失)および嗅覚の障害(異嗅症)が生じるが,通常は一過性である。

治療に関する参考文献

  1. 1.Bonner JA, Harari PM, Giralt J, et al.Radiotherapy plus cetuximab for locoregionally advanced head and neck cancer: 5-year survival data from a phase 3 randomised trial, and relation between cetuximab-induced rash and survival [published correction appears in Lancet Oncol. 2010 Jan;11(1):14]. Lancet Oncol 2010;11(1):21-28.doi:10.1016/S1470-2045(09)70311-0

  2. 2.WHO Guidelines for the Pharmacological and Radiotherapeutic Management of Cancer Pain in Adults and Adolescents.Geneva: World Health Organization; 2018.

頭頸部腫瘍の予後

頭頸部がんの予後は,腫瘍の大きさ,原発部位,病因,および所属リンパ節転移または遠隔転移の有無に応じて大きく異なる。一般に,診断が早期であり,治療が時宜を得て適切であれば,予後は良好である。

頭頸部がんは,まず局所浸潤し,その後頸部所属リンパ節に転移する。所属リンパ節転移は,腫瘍の大きさ,範囲,および進行の速さと部分的に関連し,全生存率をほぼ半分に低下させる。遠隔転移(肺が最も多い)はその後に発生する傾向がある(通常は進行した病期の患者で)。遠隔転移は生存率を大きく低下させ,ほぼ常に治癒不能である。

筋肉,骨,または軟骨への浸潤を伴う局所進行(T因子に基づく進行)も,治癒率を有意に低下させる。疼痛,麻痺,またはしびれで証明される神経周囲浸潤は,侵襲性が非常に高い腫瘍を示唆し,リンパ節転移に関連し,神経周囲浸潤のない同様の病変よりも予後が不良である。

生存率は原発部位および病因により大きく異なる。I期の喉頭癌は,他の部位に比べ,生存率が非常に優れている。HPVによる中咽頭癌は,タバコまたはアルコールにより生じた中咽頭の腫瘍に比べ,予後が有意に良好である。HPV陽性中咽頭癌とHPV陰性中咽頭癌とで予後が異なるため,全ての中咽頭腫瘍についてルーチンにHPV検査を行うべきである。

頭頸部腫瘍の予防

危険因子を取り除くことが非常に重要であり,全ての患者はタバコ使用をやめ,飲酒を制限すべきである。危険因子を取り除くことは,がん治療を受けた患者の再発予防にも役立つ。

HPVワクチンは,中咽頭癌を引き起こす一部のHPV株を標的としており,そのため現在推奨されている予防接種が中咽頭癌の発生を減少させるのではないかと期待されている。

下唇癌はサンスクリーン剤の使用および禁煙によって予防しうる。頭頸部がんの多くは診断時にはかなり進行している(III期またはIV期)ため,罹患率および死亡率の低下に最も有望な戦略は,ルーチンの入念な口腔の診察である。

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