発熱は、体の自動体温調節機能(脳の 視床下部 内分泌腺 内分泌系は、ホルモンをつくって分泌することにより体の様々な機能の調節や制御を行う腺や器官の集まりです。ホルモンとは、体の他の部分の働きに影響を与える化学物質のことです。ホルモンはメッセンジャーとして働き、体のそれぞれの部位の活動を制御し、協調させます。 内分泌腺は、血流中にホルモンを直接放出します。... さらに読む にあります)が正常より高い温度に再設定されることで起こる体温の上昇であり、主に感染に対する反応によるものです。視床下部の体温設定値(セットポイント)の再設定によって引き起こされたものではない体温の上昇は、 高体温症 熱中症の概要 恒温動物である人間の体温は、外気温の変動にかかわらず、口腔温では37℃前後、直腸温では38℃前後に保たれています。体が正常に機能するためには、この体温を保つ必要があります。体温が上昇しすぎたり、逆に下がりすぎると、臓器に深刻な損傷が生じたり、死に至ることがあります。 体は熱を生産したり放散したりして、体温を調整します。... さらに読む と呼ばれます。
37℃前後が平熱とされますが、体温は1日を通じて変動します。早朝で最も低く、夕方に最も高くなって37.7℃前後まで上がることもあります。同様に発熱の場合も、一定の温度でとどまるわけではありません。毎日いったん高くなってから平熱に戻る、間欠熱(かんけつねつ)と呼ばれる状態や、体温は変動するけれど平熱には戻らない、弛張熱(しちょうねつ)と呼ばれる状態もあります。医師たちはもはや、特定の病気の診断において発熱時の体温の変動パターンをそれほど重要なものとは考えていません。
体温は体のいくつかの部位で測定できます。最も一般的な部位は口(口腔)と直腸です。その他の部位としては、耳や額のほか、あまり望ましくありませんが、わきの下などがあります。体温は一般的にはデジタル式体温計を用いて測定します。ガラス製の水銀体温計は壊れて水銀が漏れ、水銀に触ったりする危険性があるため、使用は勧められません。
口腔温は以下の場合に上昇しているとみなされます。
早朝に37℃を超えている。
早朝以降のどの時間帯でも38℃を超えている。
その人の毎日の正常な体温よりも高い。
直腸温と耳内温は口腔温より約0.6℃高いです。
皮膚温(額など)は口腔温より約0.6℃低いです。
「熱がある」という表現は、あいまいに使われることが多く、実際に体温を測っていなくても、熱っぽい、寒気がする、汗をよくかくなどの状態を指して用いられる場合もあります。
特定の人(例えば、高齢者や幼児、アルコール使用障害の患者)では発熱する能力が低下します。
(感染症の概要 感染症の概要 微生物とは、細菌やウイルスなど、ごく小さな生物のことです。微生物はどこにでも存在しています。その数は驚くほど多いものの、人間の体内に侵入して増殖し、病気を引き起こすのは、数千種類ある微生物のうちの比較的少数に限られています。 微生物の多くは皮膚の表面や口、上気道、腸、性器(特に腟[ちつ])内に、病気を起こすこともなく定着しています(... さらに読む 、 乳児と小児の発熱 乳児と小児の発熱 正常な体温は人によって異なります。また1日の中でも変動がみられ、一般的には午後に最も高くなります。就学前の小児では体温は高めであり、約1歳半~2歳で最も高い値を示します。このような違いはありますが、ほとんどの医師は、直腸体温計による測定で体温が約38℃以上になる場合を発熱と定義しています( 小児の体温の測り方を参照)。 たいていの場合、親は体温がどのくらい高いかについて心配しますが、発熱時の体温の高さは必ずしも原因の深刻さを表すものでは... さらに読む も参照のこと。)
発熱の影響
症状は主に、発熱そのものよりも、発熱の原因になっている病態によって生じます。
一般には、発熱は体に有害なのではないかと心配されがちですが、たいていの短期的な(急性の)感染症で起こる体温上昇は通常38~40℃の範囲であり、健康な成人であれば十分に耐えられます。ただし、発熱によって心拍数と呼吸数が増加することがあるため、心臓や肺の病気がある成人では、中等度の発熱でも若干の危険性があります。また、発熱は認知症の人の精神状態を悪化させることもあります。
極度の体温上昇(一般に41℃を超えるもの)は体に害を及ぼすことがあります。ここまで体温が上がると、ほとんどの臓器が異常をきたし、最終的には機能不全に至ります。このような極度の体温上昇は、非常に重度の感染症(敗血症 敗血症と敗血症性ショック 敗血症は、 菌血症やほかの感染症に対する重篤な全身性の反応に加えて、体の重要な臓器に機能不全が起きている状態です。敗血症性ショックは、敗血症のために生命を脅かすほどの血圧の低下( ショック)と臓器不全が起きている病態です。 通常、敗血症は特定の細菌に感染することで起こり、病院内での感染が多くみられます。 免疫系の機能低下、特定の慢性疾患、人工関節や人工心臓弁の使用、特定の心臓弁の異常といった特定の条件に当てはまると、リスクが高くなります... さらに読む 、 マラリア マラリア マラリアは、5種のマラリア原虫(Plasmodium)のいずれかによって引き起こされる赤血球の感染症です。マラリアは発熱、悪寒、発汗、全身のだるさ(けん怠感)のほか、ときに下痢、腹痛、呼吸窮迫、錯乱、けいれん発作を引き起こします。その他の所見としては、脾臓の腫大や貧血(感染した赤血球が破壊されるのが原因です)のほか、ときに心臓、脳、肺、または腎臓の損傷などがみられます。... さらに読む 、 髄膜炎 髄膜炎に関する序 髄膜炎とは、髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)の炎症です。 髄膜炎は細菌、ウイルス、または真菌、感染症以外の病気、薬剤などによって引き起こされます。 髄膜炎の症状には、発熱、頭痛、項部硬直(あごを胸につけるのが難しくなる症状)などがありますが、乳児では項部硬直がみられない場合もあり、非常に高齢の人や免疫系を抑... さらに読む )により生じることもありますが、より一般的には 熱射病 熱射病 熱射病は、体温が異常に上がり、多くの器官系に機能障害が起こる、生命を脅かす状態です。 ( 熱中症の概要も参照のこと。) 何時間も運動した若い運動選手や、暑い季節に冷房のない屋内で何日も過ごした高齢者などに起こることがあります。 体温は40℃を超え、脳の機能障害が起こります。 直ちに体を冷やす必要があります。 さらに読む や特定の薬剤が原因となって起こります。
成人の発熱の原因
発熱を引き起こす物質を発熱物質(パイロジェン)と呼びます。発熱物質は体内、体外のどちらでも作られます。微生物や微生物が作る物質(毒素など)は、体外で作られる発熱物質の例です。通常、体内でできる発熱物質は単球やマクロファージ(どちらも白血球の一種)によって作られます。体外から入ってきた発熱物質は、体を刺激して体内の発熱物質の放出を促すか、 体温を制御している脳の部位 発熱 に直接作用することで発熱を引き起こします。
感染症だけが発熱の原因というわけではありません。発熱はほかにも、炎症や薬に対する反応、 アレルギー反応 アレルギー反応の概要 アレルギー反応(過敏反応)とは、通常は無害な物質に対して免疫系が異常な反応をすることを指します。 アレルギー反応は通常、くしゃみ、涙目、眼のかゆみ、鼻水、皮膚のかゆみ、発疹を引き起こします。 アナフィラキシー反応と呼ばれる一部のアレルギー反応は生命を脅かします。 症状からアレルギーが疑われ、アレルギー反応の引き金になった物質の特定には皮膚... さらに読む 、 自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む (体内で自分自身の組織を攻撃する異常な抗体が作られる病気)、見つかっていないがん(特に 白血病 白血病の概要 白血病は、白血球または成熟して白血球になる細胞のがんです。 白血球は骨髄の幹細胞から成長した細胞です。ときには成長がうまくいかずに、染色体の一部の並びが変化してしまうことがあります。こうして異常となった染色体により正常な細胞分裂の制御が失われ、この染色体異常がある細胞が無制限に増殖するようになったり、細胞がアポトーシス(不要になった細胞が... さらに読む 、 リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です... さらに読む 、または 腎臓がん 腎臓がん 腎臓に発生する腫瘍のうち、充実性の腫瘍(内部が組織で詰まっているもの)の大半ががんであるのに対して、内部に液体だけが詰まった腫瘍(嚢胞[のうほう])は多くが良性の(がんではない)腫瘍です。腎臓がんの大半は腎細胞がんと呼ばれるものです。 ウィルムス腫瘍と呼ばれる別の種類の腎臓がんもあり、これは主に小児でみられます。 腎臓がんでは、血尿やわき腹(側腹部)の痛み、発熱などがみられます。... さらに読む )などの結果として生じることもあります。
発熱は多くの病気によって引き起こされますが、それらは以下のように大別されます。
感染性(最も一般的)
腫瘍性(がん)
炎症性
発熱が4日以内に治まった成人では、感染が原因である可能性が非常に高いといえます。感染以外の原因がある場合は、より長く発熱が続く、あるいは再発する可能性が高くなります。
多くのがんは発熱を引き起こします。
発熱を引き起こす炎症性疾患には関節や結合組織、血管の病気が含まれ、例えば 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチは炎症性関節炎の1つで、関節(普通は手足の関節を含む)が炎症を起こし、その結果、関節に腫れと痛みが生じ、しばしば関節が破壊されます。 免疫の働きによって、関節と結合組織に損傷が生じます。 関節(典型的には腕や脚の小さな関節)が痛くなり、起床時やしばらく動かずにいた後に、60分以上持続するこわばりがみられます。 発熱、筋力低下、他の臓器の損傷が起こることもあります。... さらに読む 、 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは、関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ 炎症性の自己免疫結合組織疾患です。 関節、神経系、血液、皮膚、腎臓、消化管、肺、その他の組織や臓器に問題が発生します。 診断を下すため、血液検査のほか、ときにその他の検査を行います。 全身性エリテマトーデスの全患者でヒドロキシクロロキンが必要であり、損傷を引き起こし続けている全身性エリテマトーデス(活動性の全身性エリテマトーデス)の患者には、コルチコステロイドな... さらに読む 、 巨細胞性動脈炎 巨細胞性動脈炎 巨細胞性動脈炎は、頭部、頸部、上半身にある大型動脈や中型動脈に慢性の炎症が起きる病気です。典型的に侵されるのは側頭動脈であり、この血管はこめかみを通り、頭皮の一部、あごの筋肉、視神経に血液を供給しています。 原因は不明です。 主に、ズキズキする激しい頭痛、髪をとかしたときの頭皮の痛み、ものをかむときに顔の筋肉の痛みがみられます。 治療しないと、失明することがあります。 症状と身体診察の結果からこの病気が疑われますが、診断を確定するには側... さらに読む などがあります。
がんや炎症性疾患がある人に短期間の(急性の)発熱が単独でみられた場合は、高い確率で感染性の原因が存在しています。健康な人では、急性の発熱が慢性疾患の最初の徴候であることはあまりありません。
薬も発熱の原因になります。例えば、ベータラクタム系抗菌薬(ペニシリン ペニシリン系 ペニシリン系は、ベータラクタム系 抗菌薬(ベータラクタム環と呼ばれる化学構造をもつ抗菌薬)のサブクラスです。 カルバペネム系、 セファロスポリン系、および モノバクタム系もベータラクタム系の抗菌薬です。 ペニシリン系薬剤は、 グラム陽性細菌による感染症( レンサ球菌感染症など)と一部の グラム陰性細菌による感染症( 髄膜炎菌感染症など)の治療に使用されます。 ペニシリン系薬剤としては以下のものがあります。... さらに読む など)やサルファ剤は発熱を誘発します。極度の体温上昇を引き起こしかねない薬剤には、特定の違法薬物(コカイン コカイン コカインは、植物のコカの葉から作られる、依存性のある中枢刺激薬です。 コカインは、強い覚醒作用があり、人々に多幸感をもたらし、自分たちには力があると感じさせる強い刺激物です。 大量に摂取すると、 心臓発作や 脳卒中など、生命を脅かす重篤な病態を引き起こす可能性があります。 診断は尿検査により確定します。 ロラゼパムなどの鎮静薬を静脈内投与すると多くの症状が軽減します。 さらに読む 、 アンフェタミン類 アンフェタミン類 アンフェタミン類は、特定の病状の治療に使用される中枢刺激薬ですが、乱用されることもあります。 アンフェタミン類には覚醒作用があり、身体機能を高め、高揚感や幸福感をもたらします。 アンフェタミン類には食欲を抑える作用があるため、体重を減らす目的で不適切にアンフェタミン類を使用する人もいます。 過剰摂取により異常な興奮、せん妄、生命を脅かすほどの体温上昇、 心臓発作や 脳卒中が起こることがあります。... さらに読む 、 フェンシクリジン ケタミンおよびフェンシクリジン(PCP) ケタミンとフェンシクリジンは化学的に類似した薬剤であり、麻酔に使用しますが、ときに娯楽目的で使用されることがあります。 ケタミンは粉末や液剤で入手可能です。粉末は鼻から吸引したり、経口で摂取したりします。液剤は、静脈内、筋肉内、または皮膚の下に注射します。 フェンシクリジン(PCP、エンジェルダスト)の使用法で最も多いのは、パセリ、ミントの葉、喫煙用タバコ、 マリファナなどの植物にふりかけてから煙を吸う方法です(「ウェット」や「フライ」... さらに読む など)、 麻酔薬 麻酔薬 痛み止め(鎮痛薬)は、痛みの治療に使用される主な薬剤です。医師が痛み止めを選択する際には、痛みの種類および持続期間と、それぞれの痛み止めで予想されるベネフィットとリスクを考慮します。ほとんどの痛み止めは侵害受容性疼痛(損傷による痛み)に対しては効果がありますが、 神経障害性疼痛(神経、脊髄、脳の損傷や機能障害による痛み)に対してはあまり効果がありません。多くのタイプの痛み(特に... さらに読む 、 抗精神病薬 抗精神病薬 統合失調症は、現実とのつながりの喪失(精神病症状)、幻覚(通常は幻聴)、妄想(誤った強い思い込み)、異常な思考や行動、感情表現の減少、意欲の低下、精神機能(認知機能)の低下、日常生活(仕事、対人関係、身の回りの管理など)の問題を特徴とする精神障害です。 統合失調症については、その原因もメカニズムも分かっていません。 症状は様々で、奇異な行動、とりとめのない支離滅裂な発言、感情鈍麻、寡黙、集中力や記憶力の低下など、多岐にわたります。... さらに読む などがあります。
最も一般的な原因
感染症は、ほぼすべてが発熱の原因になります。ただし、全体的に、感染性の原因としては次のものがよくみられます。
上気道と下気道の感染症
消化管の感染症
気道と消化管に起こる急性の感染症は、ほとんどがウイルス性です。
危険因子
特定の条件に該当する(危険因子がある)人は発熱を起こしやすくなります。具体的な要因としては以下のものがあります。
健康状態
年齢
特定の職業
特定の医療処置や薬の投与を受けている
病原体への曝露(例えば、流行地への旅行や感染した人、動物、または昆虫との接触など)
成人の発熱の評価
通常は、簡単な病歴聴取、身体診察、ときには胸部X線検査や尿検査などの簡単な検査を行うことで、医師は感染の有無を判断することができます。しかし、発熱の原因がなかなか分からない場合もあります。
医師は急性の発熱を起こしている人を最初に診察するときに、次の2点を重視します。
頭痛やせきなどの他の症状を把握する:これらの症状は考えられる原因の絞り込みに役立ちます。
重篤な病気や慢性疾患がないか確認する:急性のウイルス感染症の多くは自然に治り、また、明確な診断(何のウイルスが感染症を起こしているのか正確に判断すること)が困難です。重篤な病気や慢性疾患がある人では、検査を限定することで、高価なわりに実りがない多くの不要な検査を避けることができます。
警戒すべき徴候
急性の発熱がみられる人では、次のような特定の徴候や特徴に注意します。
錯乱など、精神状態の変化
頭痛や項部硬直
皮膚の下で起きた出血(皮下出血)を反映する、皮膚の平らで小さな赤紫色の斑点(点状出血)
低血圧
心拍数や呼吸数の増加
息切れ(呼吸困難)
40℃を超える、または35℃を下回る体温
マラリアなどの重篤な感染症が多発(流行)している地域への最近の旅行歴
免疫の働きを抑える薬(免疫抑制薬)の最近の使用
受診のタイミング
こうした警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。そのような人は一般的に直ちに検査を受けるべきで、しばしば入院が必要になります。
警戒すべき徴候がない人で、発熱が24~48時間続く場合は、医師に電話してください。その人の年齢や他の症状、すでに分かっている病気を考慮して、医師は診察を受けに来院するよう伝えたり、自宅での療養を勧めたりします。他の症状の有無にかかわらず、発熱が3~4日以上続く場合は、一般的には医師の診察を受けるのがよいでしょう。
医師が行うこと
医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、発熱の原因と必要になる検査を推測することができます。
医師は最初に、現在や過去の症状や病歴、使用中の薬、輸血の既往、感染の可能性、最近の旅行歴、ワクチン接種歴のほか、最近の入院、手術、または医療処置の有無を尋ねます。発熱のパターンはあまり診断の参考になりません。しかし、例外的にマラリアでは、2日毎または3日毎に発熱を繰り返すという特徴がみられます。ただし、医師がマラリアの可能性を検討するのは、患者がマラリアの流行地域に旅行した場合だけです。
最近の旅行歴は、発熱の原因を割り出す手がかりになることがあります。感染症の中には特定の地方でしか発生しないものがあるからです。例えば、コクシジオイデス症(真菌感染症の1つ)は、ほぼ米国南西部でしかみられない病気です。
最近の曝露も重要です。例えば精肉工場の労働者は、一般の人より高い確率でブルセラ症(家畜との接触を介して広がる細菌感染症)にかかります。その他の例としては、安全でない水や食物(無殺菌の牛乳や乳製品、生または加熱調理が不十分な肉、魚、貝など)、虫刺され(蚊など)、マダニの刺咬、無防備な性行為、仕事中または娯楽中の曝露(狩猟、ハイキング、ウォータースポーツなど)が挙げられます。
痛みは発熱の原因を探る重要な手がかりの1つであるため、医師は耳、頭部、頸部、歯、のど、胸部、腹部、側腹部(わき腹)、直腸、筋肉、関節に痛みがないか尋ねます。
発熱の原因を特定するために役立つほかの症状には、鼻づまりや鼻水、せき、下痢、泌尿器症状(頻尿、尿意切迫、排尿時の痛み)などがあります。リンパ節の腫れや発疹があるかどうか(さらには、その外観、出現した場所、他の症状との時間的な関連性)という情報も、医師が原因を特定する際の参考になります。繰り返す発熱、寝汗、または体重の減少がみられる人は、結核や心内膜炎(心臓の内側を覆っている膜と通常は心臓弁に発生する感染症)といった慢性の感染症を患っていることがあります。
医師は次の点についても質問します。
感染症の患者と接触したかどうか
感染症にかかりやすくなる病気はないか:例えば、HIV感染症、糖尿病、がん、臓器移植、鎌状赤血球症、ペースメーカー、心臓弁膜症(特に人工弁を使用している場合)など
感染症以外で発熱が起きやすい病気はないか:例えば、全身性エリテマトーデス、痛風、サルコイドーシス、甲状腺機能亢進症(甲状腺の活動が過剰になった状態)、がんなど
感染症にかかりやすくなる薬剤を使用していないか:例えば、がんの化学療法薬、コルチコステロイド、その他の免疫系抑制薬など
違法薬物の注射を行っていないか
身体診察では、まず発熱の確認を行います。体温の測定法としては、直腸温を測る方法が最も正確ですが、口腔温または耳内温を測定することも多くあります。前額部深部温は直腸温ほど正確ではありませんが、COVID-19のパンデミックのため、医師は発熱のスクリーニングのために前額部深部温を測定することがあります。腋窩温は最も不正確で、発熱の確認に用いられることはまれです。次に医師は患者の全身をくまなく診察し、感染源や病気の証拠を探します。
検査
検査が必要かどうかは、病歴と医師による身体診察の結果によって決まります。
急性の発熱がみられるものの、漠然とした全身症状(全身の不調や痛みなど)以外に異常がみつからない人は、治療を受けなくても自然に治るウイルス感染症を起こしていると考えられます。したがって、こうした人に検査は通常必要ありません。ただし、COVID-19の感染が拡大している地域にいる人や、特定の病気を媒介する動物や昆虫(媒介生物)に接触した人(例えばマダニに咬まれた人)、マラリアなど特定の病気が多く発生している地域を最近訪れた人は例外で、検査が必要です。
発熱以外は健康でも、診察で特定の病気を示唆する結果がみつかった場合は、検査が必要になることもあります。医師は診察の結果に基づいて必要な検査を選択します。例えば、頭痛と項部硬直がみられる人には、腰椎穿刺を行い、髄膜炎を起こしていないか調べます。せきをしていて肺うっ血が認められる人には、胸部X線検査を行い、肺炎の有無を調べます。COVID-19やインフルエンザなどの特定の呼吸器の病気に対しては、数分または数時間で結果が得られる迅速分子生物学的検査があります。一部の迅速検査は、綿棒で採取したサンプルを用いて自宅または診療所で行うことができます。感染症の具体的な原因を特定するための他の迅速検査では、血液サンプルを検査室に送る必要があります。
感染のリスクが高い人や重篤に見える人、そして高齢者は、たとえ特定の病気を疑わせる所見がなくても、しばしば検査が必要です。そうした患者に対して用いられることがある検査には、次のようなものがあります。
血算(様々な白血球の数と割合などを測定)
尿と血液の培養検査
胸部X線検査
尿検査
白血球数の増加は、通常は感染があることを意味します。様々な白血球の割合(白血球分画)をみると、さらに詳しい状況が分かります。例えば、好中球が増加している場合は、比較的最近の細菌感染症が疑われます。好酸球が増加している場合は、条虫や回虫といった寄生虫に感染している可能性があります。血液、尿などの体液を検査に出して微生物の培養を行うこともあります。さらに、血液中の特定の微生物に対する抗体を調べる検査も用いられます。
不明熱(FUO)
不明熱は以下のような場合に診断されることがあります。
数週間にわたり38.3℃以上の発熱がみられる。
広範な検査で原因を特定できない 。
このような場合、原因として考えられるのは、まれな慢性感染症(結核 結核 結核は、空気感染する細菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。結核は肺を侵しますが、ほぼすべての臓器に影響が及ぼす可能性があります。 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。... さらに読む 、 心臓の細菌感染症 感染性心内膜炎 感染性心内膜炎は、心臓の内側を覆っている組織(心内膜)に生じる感染症で、通常は心臓弁にも感染が及びます。 感染性心内膜炎は、血流に入った細菌が損傷のある心臓弁に到達して、そこに付着することで発生します。 急性細菌性心内膜炎では通常、高熱、頻脈(心拍数の上昇)、疲労、そして広範囲にわたる急激な心臓弁の損傷が突然もたらされます。... さらに読む 、 HIV感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む 、 サイトメガロウイルス サイトメガロウイルス(CMV)感染症 サイトメガロウイルス感染症はよくみられるヘルペスウイルス感染症で、症状が出ないものから、発熱と疲労感が出るもの(伝染性単核球症に似たもの)、また、眼や脳、その他の内臓を侵す重い症状が生じるものまで、症状は多岐にわたります。 この ウイルスは、体の分泌物と接触(性的接触とそれ以外の接触の両方)することで感染します。 ほとんどの人では何の症状もみられませんが、気分が悪くなって熱が出る場合もあり、免疫機能が低下している人が感染すると、失明など... さらに読む 、 エプスタイン-バーウイルス 伝染性単核球症 エプスタイン-バーウイルスは、伝染性単核球症をはじめ、いくつかの病気を引き起こします。 この ウイルスはキスを介して広がります。 症状は様々ですが、最も多いのは極度の疲労感、発熱、のどの痛み、リンパ節の腫れです。 血液検査を行って診断を確定します。 アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は発熱と痛みを和らげます。 さらに読む など)、あるいは結合組織疾患(全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは、関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ 炎症性の自己免疫結合組織疾患です。 関節、神経系、血液、皮膚、腎臓、消化管、肺、その他の組織や臓器に問題が発生します。 診断を下すため、血液検査のほか、ときにその他の検査を行います。 全身性エリテマトーデスの全患者でヒドロキシクロロキンが必要であり、損傷を引き起こし続けている全身性エリテマトーデス(活動性の全身性エリテマトーデス)の患者には、コルチコステロイドな... さらに読む や 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチは炎症性関節炎の1つで、関節(普通は手足の関節を含む)が炎症を起こし、その結果、関節に腫れと痛みが生じ、しばしば関節が破壊されます。 免疫の働きによって、関節と結合組織に損傷が生じます。 関節(典型的には腕や脚の小さな関節)が痛くなり、起床時やしばらく動かずにいた後に、60分以上持続するこわばりがみられます。 発熱、筋力低下、他の臓器の損傷が起こることもあります。... さらに読む など)やがん(リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です... さらに読む 、 卵巣がん 卵巣がん、卵管がん、および腹膜がん 卵巣がんは、卵巣のがんです。卵巣と子宮をつなぐ管に発生する卵管がんおよび腹部の内側を覆う組織のがんである腹膜がんと関連があります。これらのがんは、通常、進行した段階で診断されます。 卵巣がんは、範囲が広がるまで症状がみられないことがあります。 卵巣がんの疑いがある場合は、血液検査、超音波検査、MRI検査、CT検査などを行います。 通常は、左右の卵巣および卵管と子宮を切除します。... さらに読む 、 白血病 白血病の概要 白血病は、白血球または成熟して白血球になる細胞のがんです。 白血球は骨髄の幹細胞から成長した細胞です。ときには成長がうまくいかずに、染色体の一部の並びが変化してしまうことがあります。こうして異常となった染色体により正常な細胞分裂の制御が失われ、この染色体異常がある細胞が無制限に増殖するようになったり、細胞がアポトーシス(不要になった細胞が... さらに読む など)といった感染症以外の病気です。その他の原因として、薬物反応、血栓(深部静脈血栓症 深部静脈血栓症 深部静脈血栓症は、深部静脈に血栓(血液のかたまり)が形成される病気で、通常は脚で発生します。 血栓は、静脈の損傷や血液の凝固を引き起こす病気により形成される場合や、何らかの原因で心臓に戻る血流が遅くなることで形成される場合があります。 血栓によって、脚や腕の腫れが生じることがあります。 血栓が剥がれて血流に乗り、肺に到達すると、 肺塞栓症を引き起こします。 深部静脈血栓症を発見するために、ドプラ超音波検査や血液検査を行います。 さらに読む )、臓器組織の炎症(サルコイドーシス サルコイドーシス サルコイドーシスとは、体の多くの器官に炎症細胞の異常な集積(肉芽腫[にくげしゅ])がみられる病気です。 サルコイドーシスは、一般に20~40歳で発生し、欧州系の人やアフリカ系アメリカ人に最も多くみられます。 多くの器官が侵される可能性がありますが、肺に最もよくみられます。 典型的な症状はせきや呼吸困難ですが、侵される器官に応じて様々な症状... さらに読む )、 炎症性腸疾患 炎症性腸疾患(IBD)の概要 炎症性腸疾患とは、腸に炎症が起き、しばしば腹痛と下痢が繰り返し起こる病気です。 炎症性腸疾患としては、主に以下の2種類の病気があります。 クローン病 潰瘍性大腸炎 この2つの病気には多くの共通点があり、ときに判別が難しいことがあります。しかし2つの病気にはいくつかの違いがあります。例えば、クローン病は消化管のほぼすべての部分に起こりうるの... さらに読む などがあります。高齢者の不明熱の最も一般的な原因は 巨細胞性動脈炎 巨細胞性動脈炎 巨細胞性動脈炎は、頭部、頸部、上半身にある大型動脈や中型動脈に慢性の炎症が起きる病気です。典型的に侵されるのは側頭動脈であり、この血管はこめかみを通り、頭皮の一部、あごの筋肉、視神経に血液を供給しています。 原因は不明です。 主に、ズキズキする激しい頭痛、髪をとかしたときの頭皮の痛み、ものをかむときに顔の筋肉の痛みがみられます。 治療しないと、失明することがあります。 症状と身体診察の結果からこの病気が疑われますが、診断を確定するには側... さらに読む 、 リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です... さらに読む 、膿瘍、 結核 結核 結核は、空気感染する細菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。結核は肺を侵しますが、ほぼすべての臓器に影響が及ぼす可能性があります。 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。... さらに読む です。
通常は血液検査(血算、血液培養検査、 肝機能検査 肝臓の血液検査 肝臓の検査は血液検査として行われますが、これは肝疾患の有無をスクリーニングし(例えば、献血された血液に 肝炎があるかを調べる)、肝疾患の重症度や進行度と治療に対する反応を評価するための検査のうち、体への負担が少ない方法の代表例です。 臨床検査は、一般的に以下の目的に有効です。 肝臓の炎症、損傷、機能障害の検出... さらに読む など)および結合組織の病気がないかを調べる検査が行われます。他の検査として、胸部X線検査、尿検査、尿培養検査などが行われる場合もあります。
不快感がある部位を中心に、 超音波検査 超音波検査 超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を用いて内臓などの組織の画像を描出する検査です。プローブと呼ばれる装置で電流を音波に変換し、この音波を体の組織に向けて発信すると、音波は体内の構造で跳ね返ってプローブに戻ります。これは再度、電気信号に変換されます。コンピュータが、この電気信号のパターンをさらに画像に変換してモニター上に表示するとともに、コンピュータ上のデジタル画像として記録します。X線は使用しないため、超音波検査で放射線にさらされ... さらに読む 、 CT検査 CT検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む 、または MRI検査 MRI検査 MRI検査は、強い磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強い磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置の中で発生するような強い磁場の中に... さらに読む を行うことで、診断に役立つ情報が得られます。 核医学検査 核医学検査 核医学検査では、放射性核種を用いて画像を描出します。放射性核種とは放射線を出す元素のことで、エネルギーを放射線の形で放出することで、安定した状態になろうとする原子です。放射性核種の多くは高いエネルギーをガンマ線(人の手によらない、自然環境で発生するX線)または粒子( PET検査で使用される陽電子など)の形で放出します。( 放射線障害と 画像検査の概要も参照のこと。) 放射性核種は、甲状腺などの特定の臓器の病気を治療するのにも使用されます... さらに読む (放射性物質でマーキングした白血球を静脈内に注入して行う検査)または PET検査 PET検査 PET(陽電子放出断層撮影)検査は 核医学検査の一種です。放射性核種とは放射線を出す元素のことで、エネルギーを放射線の形で放出することで、安定した状態になろうとする原子です。放射性核種の多くは高いエネルギーの光子をガンマ線の形で放出しますが、PET検査では陽電子と呼ばれる粒子を放出する放射性核種を使用します。 PET検査では、体内で使用(代謝)されるグルコース(ブドウ糖)や酸素などの物質を... さらに読む を用いて感染や炎症の部位を特定することもあります。
これらの検査で陰性と判定された場合は、肝臓、骨髄、または感染が疑われる他の部位から生検用の組織サンプルを採取する必要があるかもしれません。そのサンプルに対して、顕微鏡での観察、培養、そして分析が行われます。
不明熱の治療は、発熱の原因になっている病気が判明している場合、その治療に重点が置かれます。医師は体温を下げる薬を投与することがあります(発熱の治療 治療 発熱は、体の自動体温調節機能(脳の 視床下部にあります)が正常より高い温度に再設定されることで起こる体温の上昇であり、主に感染に対する反応によるものです。視床下部の体温設定値(セットポイント)の再設定によって引き起こされたものではない体温の上昇は、 高体温症と呼ばれます。 37℃前後が平熱とされますが、体温は1日を通じて変動します。早朝で最も低く、夕方に最も高くなって37.7℃前後まで上がることもあります。同様に発熱の場合も、一定の温度... さらに読む を参照)。
成人の発熱の治療
発熱の最もよい治療法は、原因に対する治療です。
発熱は体を感染から守る上で有益な反応であり、また発熱自体は(41℃を超えなければ)危険なものではないことから、一律に治療すべきかどうかは議論の分かれるところです。ただし、高熱の患者では、一般に熱を下げることで具合はかなりよくなります。加えて、心臓や肺の病気がある人や認知症の人には危険な合併症のリスクも考えられるため、そうした人に発熱がみられる場合は治療が必要です。
体温を下げるための薬を解熱薬といいます。
最も効果的で広く使用されている解熱薬は、アセトアミノフェンと非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)で、NSAIDにはアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなどがあります。これらの薬は、容器に表示されている指示に従って服用します。
かぜやインフルエンザの市販薬の多くはアセトアミノフェンを含んでいるため、アセトアミノフェンとこうした市販薬を同時に使用しないよう注意が必要です。
他の冷却手段(ぬるま湯を霧吹きでかけて冷やす、冷感ブランケットを使用するなど)は、体温が41.1℃以上になった場合にのみ必要になります。アルコールを染みこませたスポンジは、皮膚からアルコールが吸収されて有害な影響が生じる可能性があるため、使用しないようにします。
血液感染を起こしている、またはバイタルサインに異常(血圧低下、脈拍と呼吸数の増加など)がみられる場合には、入院措置がとられます。
高齢者での重要事項:発熱
高齢者では、若い人と同じように体が反応するとは限らず、発熱に対する対応が難しい場合があります。例えば、加齢に伴い体力が低下している高齢者では、感染症が起きても発熱がみられる可能性は比較的低くなります。感染により体温が上昇したとしても、一般的に発熱とみなされる温度まで上がらない場合や、発熱の程度が病気の重症度と釣り合わない場合もあります。痛みなどの他の症状も同様で、はっきり現れない場合があります。また、 肺炎 院内肺炎 院内肺炎は、入院患者に発生する肺の感染症で、通常は入院から約2日以上経過してから発生します。 入院中の患者では、多くの細菌やウイルスに加えて、真菌も肺炎の原因となる可能性があります。 肺炎で最もよくみられる症状は、たんがからんだせきですが、胸痛、悪寒、発熱、息切れなどもよくみられます。 診断は、症状と、胸部のX線検査またはCT検査に基づいて下されます。 肺炎の原因である可能性が最も高い微生物に応じて、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬が使用... さらに読む や 尿路感染症 尿路感染症(UTI)の概要 健康な人では、膀胱の中にある尿は無菌(細菌などの感染性の微生物が存在しない状態)です。尿が膀胱から体外へと排出されるまでの通路(尿道)にも、感染症を引き起こす細菌はほとんど存在していません。しかし、尿路のどの部分にも感染が起こる可能性はあり、尿路で発生した感染症は尿路感染症(UTI)と呼ばれています。... さらに読む の初期には、精神状態の変化や日常動作の不調くらいしか徴候がみられないことも多くあります。
一方、高齢者に発熱がみられる場合には、若い成人に発熱がみられた場合と比べて、重篤な細菌感染症が起きている可能性が高くなります。若い成人と同じく、その場合の原因は呼吸器または尿路の感染症であるのが一般的です。高齢者では、皮膚・軟部組織感染症も原因としてよくみられます。高齢者では、 インフルエンザ インフルエンザ (流感) インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる肺と気道の ウイルス感染症です。感染すると、発熱、鼻水、のどの痛み、せき、頭痛、筋肉痛、全身のだるさ(けん怠感)が生じます。 ウイルスは、感染者のせきやくしゃみで飛散した飛沫を吸い込んだり、感染者の鼻の分泌物に直接触れたりすることで感染します。 まず悪寒が生じ、続いて発熱、筋肉痛、頭痛、のどの痛み、せき、鼻水、全身のだるさが生じます。... さらに読む や COVID-19 COVID-19 新型コロナウイルス感染症、すなわちCOVID-19(コビット・ナインティーン)は、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)と命名されたコロナウイルスの一種によって引き起こされ、重症化する可能性がある急性呼吸器疾患です。 COVID-19の症状はかなり多彩です。 COVID-19の診断には2種類の検査法が用いられます。... さらに読む 、 RSウイルス RSウイルス感染症とヒトメタニューモウイルス感染症 RSウイルスおよびヒトメタニューモウイルスの感染は、上気道感染症と、ときに下気道感染症を引き起こします。 RSウイルスは、乳幼児における呼吸器感染症の非常に一般的な原因です。 ヒトメタニューモウイルスはRSウイルスと似ていますが、別のウイルスです。 典型的な症状としては、鼻水、発熱、せき、喘鳴などがあり、重症になると呼吸窮迫もみられます。 診断は、症状と、これらのウイルス感染症が発生しやすい時期であるかどうかに基づいて下されます。 さらに読む のような呼吸器ウイルス感染症の重篤な症状が現れる可能性が高くなります。
高齢者の発熱の診断は若い成人と同様に行いますが、高齢者には通常、尿検査(培養検査を含む)と胸部X線検査が勧められます。また血液サンプルを採取し、培養検査を行って血液感染(菌血症 菌血症 菌血症とは、血流の中に細菌が存在する状態のことです。 菌血症は、日常的な行為(激しい歯磨きなど)、歯科的または医学的処置、もしくは感染症( 肺炎や 尿路感染症)が原因で起きることがあります。 人工関節や人工心臓弁を使用している人や心臓弁に異常がある人では、菌血症が長引くリスクや菌血症で症状が生じるリスクが高まります。 菌血症では通常、症状はみられませんが、ときに特定の組織や臓器の中で細菌が増殖して、重篤な感染症を引き起こすことがあります... さらに読む )の有無を判定します。
要点
健康な人にみられる発熱の大半は、呼吸器または消化管で起きたウイルス感染によるものです。
医師は通常、簡単な病歴聴取、身体診察、ときには数種類の簡単な検査を行って感染症を特定し、その結果や特定の症状から、他の検査が必要かどうかを判断します。
長期間の発熱がある場合、医師はその原因として基礎的な慢性疾患(特に免疫系に異常が生じる病気)を疑います。
通常、アセトアミノフェンやNSAIDを服用すれば、熱が下がり、苦しさが和らぎます(ただし多くの人にとって不可欠な治療というわけではありません)。
高齢者の感染症では発熱が起きにくく、他の症状も現れにくい傾向があります。