熱性けいれん

執筆者:M. Cristina Victorio, MD, Akron Children's Hospital
レビュー/改訂 2021年 4月 | 修正済み 2022年 9月
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やさしくわかる病気事典

熱性けいれんは、約38°C以上の発熱によって誘発されるけいれん発作です。

  • 大半の熱性けいれんは無害で、軽微な感染症による発熱によって引き起こされます。

  • 頻度は低くなりますが、未診断の神経疾患の最初の徴候として熱性けいれんが発生する場合もあります。

  • ときに血液検査と腰椎穿刺を行って、けいれん発作を引き起こす重篤な病気がないかを調べることもあります。

  • 発作を止める薬が必要になるのは一般に、発作が5分以上持続していて、長時間のけいれん発作やてんかん重積状態のリスクを最小限に抑える場合に限られます。

  • ほとんどの場合、熱性けいれんを予防するための薬の服用は必要ありません。

けいれん発作は、脳全体や脳の一部の神経細胞に無秩序に起こる異常な放電によって引き起こされます。この異常な放電により、以下が引き起こされる可能性があります。

  • 全身けいれん

  • 不随意運動

  • 意識の変化

  • 異常感覚

全身けいれんとは、体の大部分の筋肉が不随意に荒々しくびくついたり硬化したりする現象です。

熱性けいれんは6カ月から5歳の小児の約2~5%に起こりますが、最も発症しやすい時期は生後12~18カ月です。発熱のある6歳以上の小児に起こるけいれん発作は、熱性けいれんとはみなされません。(小児のけいれん発作も参照のこと。)

熱性けいれんは家系内で多発することがあります。

ほとんどの熱性けいれんは持続時間が15分未満で、熱性けいれんを起こした小児の約3分の2では二度と再発しません。

知っていますか?

  • 熱性けいれんを発症した小児の大半は、再び熱性けいれんを起こすことはありません。

熱性けいれんには単純型と複雑型があります。

  • 単純型:全身のふるえ(全般発作と呼ばれます)が15分未満で治まるものをいい、通常、意識を失います。熱性けいれんの90%以上が単純型です。このタイプの熱性けいれんは、24時間以内に2回以上起こりません。

  • 複雑型:全身のふるえが15分以上続くもの(途中で停止時間をはさむ場合も含みます)、または体の片側だけがふるえるもの(部分発作または焦点発作と呼ばれます)、または24時間以内に発作が2回以上起こるものをいいます。複雑型熱性けいれんの小児は、わずかですが後年にけいれん性疾患を発症しやすくなります。

熱性けいれんを起こした後は、しばしば数分にわたり混乱ないし放心状態にあるように見えます。この混乱の持続(発作後期間)は数時間に及ぶこともあります。

通常、熱性けいれんは発熱を原因として生じます。ほとんどの場合、発熱の原因はウイルス性呼吸器感染症や耳の感染症などの軽症感染症です。このような場合の感染症とけいれん発作は無害です。熱性けいれんの定義の中で重要な点は、発熱とけいれん発作が、髄膜炎脳炎などの脳感染症によるものではないということです。

熱性けいれん重積状態

けいれん重積状態とは、長時間続く単回の発作が起こるか、比較的短い発作が何回か連続して起こり、発作と発作の間に意識が回復することがないものをいいます。約30分以上持続する熱性けいれんは、熱性けいれん重積状態とみなされます。けいれん重積状態の小児では、速やかに治療しなければ、脳や他の臓器に損傷が起きたり、呼吸不全に陥ったりするリスクがあります。

熱性けいれんの診断

  • 医師による評価

  • ときに腰椎穿刺、血液検査、または脳の画像検査

小児が脳の感染症にかかっているかどうかを親が判断することはできないため、発熱のみられる小児が初めてけいれんを起こしたり非常に具合が悪くなったりした場合には、直ちに小児を救急医療機関も連れて行って診察を受けさせるべきです。

医師は診察を行った後、その結果に応じてときに検査を行い、けいれん発作を引き起こす重篤な病気がないかを調べます。具体的には以下の検査があります。

  • 腰椎穿刺と脊髄の周囲から採取した体液(髄液)の分析を行うことで、髄膜炎や脳炎が起きていないか確認する

  • 血液検査を行って、グルコース(血糖値)、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、その他の物質の濃度を測定することで、代謝性疾患がないか確認する

  • 血液と尿の培養検査を行って、感染症がないか確認する

  • ときに、MRIまたはCT(MRIが利用できない場合)による脳画像診断が行われます。

  • 脳波検査は脳の異常な電気的活動を調べる検査で、特定の症状がある小児や、けいれん発作を繰り返す小児に対して行われることがあります。

熱性けいれんの予後(経過の見通し)

約3分の1の小児では熱性けいれんが再発しますが、通常は数回だけです。最初の熱性けいれんが1歳未満で起こった場合や、家族に熱性けいれんになったことのある人がいる場合は再発する傾向が高まります。

単純型熱性けいれんを起こした小児は、後年に発熱を伴わないけいれん性疾患(無熱性けいれん、てんかん)を発症するリスクがわずかに(約2%)高くなります。複雑型熱性けいれんになった小児または他の危険因子(発達の遅れやけいれん発作の家族歴など)がある小児では、リスクがさらに(最大10%)高まります。

熱性けいれんが非常に長く続いた小児では、後に無熱性けいれんの発生につながる脳の変化(MRI検査で特定できます)が残ることがあります。一部のケースでは、熱性けいれんが長く続くこと自体が無熱性けいれんが発生する可能性を高めているのか、それとも基礎にある何らかの要因によって長い熱性けいれんとその後の無熱性けいれんの両方が起こりやすくなっているのかは医師にも判断がつきません。

単純型熱性けいれんは、てんかんなどの神経学的異常の原因にはならないと考えられています。しかし、ときに未診断の神経疾患またはけいれん性疾患の最初の徴候として熱性けいれんが発生する場合もあります。ときに医師は、過去にそのような病気の徴候がなかったか調べるため、患児の既往歴を確認することがあります。その病気の他の徴候は、後になるまで現れないこともあります。いずれにしても、熱性けいれんが異常の原因になるとは考えられていません。

熱性けいれんの治療

  • 熱を下げるための薬

  • けいれん発作が5分以上続く場合は、けいれん発作を止めるための薬

通常、熱性けいれんが続くのは5分未満で、薬で熱を下げることのほかに治療は行いません。

医師は通常、熱性けいれんが5分以上続いている場合には、けいれん重積状態を予防するために、発作を終息させる薬を投与します。使用される薬としては、鎮静薬のロラゼパムや抗てんかん薬のフェノバルビタール、ホスフェニトインまたはレベチラセタムなどがあります。通常、これらの薬は静脈から投与します(静脈内投与)。薬剤を静脈内投与できない場合は、ジアゼパムのゲル製剤を直腸に塗布するか、ミダゾラムの液剤を鼻の中に注入すること(鼻腔内投与)もあります。ジアゼパムとミダゾラムは、けいれん発作を止める作用もあるロラゼパムに似た鎮静薬です。それらの薬を投与された小児や、長時間持続する熱性けいれんかけいれん重積状態がみられる小児は、呼吸や血圧に異常がないか、注意深くモニタリングします。

予防

子どもが熱性けいれんを起こしたことがある場合、親は発作の引き金になる高熱が出ていないか常に注意し、もしあれば治療する必要があります。ただし、熱性けいれんは多くの場合、発熱で体温が上がってすぐに、親が子どもの体調悪化に気づき、発熱を認識する前に発生します。

単純型熱性けいれんの発作を2~3回起こしただけの小児には、けいれん発作の再発を予防する薬(抗てんかん薬― see sidebar 小児のけいれん発作に対する薬剤の使用)を使用することは通常ありません。ただし、以下のいずれかに該当する小児には、抗てんかん薬を使用することがあります。

  • 複雑型熱性けいれんと神経学的な問題(脳性麻痺や脳画像検査での異常所見など)がみられる

  • てんかんの濃厚な家族歴があり、単純型または複雑型熱性けいれんが再発した

  • 熱性けいれん重積状態

  • 年4何を超える頻度で熱性けいれんを起こした

過去に長時間続く熱性けいれんを起こしたことがある小児で5分以上続くけいれん発作がみられた場合は、直腸から入れるジアゼパムのゲル製剤が処方されることがあります。この薬により自宅で治療することができます。

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