一過性尿失禁の原因

原因

備考

消化管疾患

宿便

機序には,膀胱または尿道の機械的障害が関与している場合がある。

通常は切迫性または溢流性尿失禁を呈し,典型的には便失禁を伴う。

泌尿器疾患

萎縮性尿道炎

萎縮性腟炎

尿道および腟の上皮および粘膜下組織の菲薄化によって局所に刺激感が生じることがあり,また尿道の抵抗,長さ,最大閉鎖圧の減少が粘膜による封鎖の消失を伴って生じる可能性がある。

これらの障害の特徴は通常は尿意切迫,ときとして排尿痛を伴う排尿困難である。

尿路結石

異物

膀胱の刺激は攣縮を誘発する。

尿路感染症

症候性のUTIのみが尿失禁を引き起こす。

排尿困難および尿意切迫によって患者は排尿前にトイレに到着できないことがある。

神経精神医学的疾患

せん妄

うつ病

精神症

尿意の認識または排尿能力が損なわれている。

移動能力の制限

筋力低下

外傷

身体的拘束の実施

トイレに行くのが困難になる。

全身性疾患

様々な疾患(例,尿崩症糖尿病)に起因する過剰な尿量

頻尿,尿意切迫,および夜間頻尿が生じることがある。

薬物

アルコール

アルコールには利尿作用があるほか,鎮静,せん妄,不動につながる可能性があり,その結果として機能性尿失禁が起こりうる。

カフェイン(例,コーヒー,紅茶,コーラ,一部のその他の清涼飲料,ココア,チョコレート,エナジードリンク)

尿産生量と排出量が増加し,多尿頻尿,尿意切迫,夜間頻尿が起こる。

αアドレナリン拮抗薬(例,アルフゾシン,ドキサゾシン,プラゾシン,タムスロシン,テラゾシン)

女性の膀胱頸部の筋肉または男性の前立腺平滑筋が弛緩し,ときには腹圧性尿失禁が起こることがある。

抗コリン薬(例,抗ヒスタミン薬,抗精神病薬,ベンツトロピン,三環系抗うつ薬)

膀胱の収縮力が障害される可能性があり,ときに尿閉および溢流性尿失禁を起こす。

これらの薬剤は,せん妄便秘,および宿便も引き起こす可能性がある。

カルシウム拮抗薬(例,ジルチアゼム,ニフェジピン,ベラパミル)

排尿筋の収縮力が減少し,ときに尿閉,溢流性尿失禁,末梢浮腫による夜間頻尿,便秘,および宿便が生じる。

利尿薬(例,ブメタニド,フロセミド,[サイアザイド系利尿薬は除く])

尿産生量と排出量が増加し,多尿頻尿,尿意切迫,夜間頻尿が起こる。

ホルモン療法(全身性エストロゲン/プロゲスチン療法)

尿道周囲の結合組織のコラーゲンが分解するため,効果的な尿道閉鎖が消失する。

ミソプロストール

ミソプロストールは尿道を弛緩させるため,腹圧性尿失禁を引き起こす可能性がある。

オピオイド

オピオイドは尿閉便秘宿便,鎮静,せん妄を引き起こす。

向精神薬(例,抗精神病薬,ベンゾジアゼピン系薬剤,催眠鎮静薬,三環系抗うつ薬)

尿意の認識が鈍化し,器用さと移動能力が低下する。

これらの薬物はせん妄を誘発しうる。

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