周産期貧血

執筆者:Andrew W. Walter, MS, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
Reviewed ByAlicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2024年 11月
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出生時に診断される血液疾患の中で最も頻度の高いものは,貧血および赤血球増多症である。貧血とは,赤血球量またはヘモグロビンの減少であり,通常ヘモグロビンまたはヘマトクリットが年齢別平均値から2SD(標準偏差)以上低下した状態と定義される。ヘモグロビンまたはヘマトクリットがカットオフ値より高値であっても組織の酸素需要量を十分に満たさない場合,相対的貧血が存在すると考える専門家もいる。(出生前および周産期における赤血球産生の変化については周産期の生理で考察されている。貧血の評価も参照のこと。)

新生児が成熟するに従ってヘモグロビンもヘマトクリットも急速に変化するため,正常下限値にも変化が生じる(週齢別のヘモグロビン値とヘマトクリット値の表を参照)。在胎期間,採血部位(毛細血管vs静脈),臍帯結紮前の胎盤に対する新生児の位置(胎盤より低ければ血液は新生児側に流入し,胎盤より高ければ血液は新生児側から流出する),および臍帯結紮のタイミング(遅らせるほど新生児に多くの血液が流入する)などの変数も,結果に影響を与える(1)。

表&コラム
表&コラム

総論の参考文献

  1. 1.Marrs L, Niermeyer S.Toward greater nuance in delayed cord clamping. Curr Opin Pediatr.2022;34(2):170–177, 2022.doi:10.1097/MOP.0000000000001117

周産期貧血の病因

新生児の貧血の原因:

  • 生理的過程

  • 失血

  • 赤血球産生低下

  • 赤血球破壊の増加(溶血)

生理的貧血

生理的貧血が新生児期の貧血の最も一般的な原因である。正期産児および早期産児では,正常の生理学的過程として,出生後の想定される時期に,正球性正色素性貧血が生じることがしばしばある。一般に生理的貧血には,広範な評価および治療は必要ではない。

正期産児では,出生後の正常な呼吸に伴って起こる酸素化の増大が組織の酸素レベルに突然の上昇を引き起こし,エリスロポエチン産生および赤血球産生に対するネガティブフィードバックをもたらす。この赤血球産生の低下が,新生児の赤血球の短い寿命(成人の120日に対して90日)とともに,生後2~3カ月にわたるヘモグロビン濃度の低下を引き起こす。典型的なヘモグロビンの最低値(Hb nadir)は9~11g/dL(90~110g/L)であり,これは生理的最低値(physiologic nadir)と呼ばれる。

Hbは,その後数週間変動なく安定した状態を保ち,生後4~6カ月頃に新たなエリスロポエチン刺激によって徐々に増加する。同時に,主たるヘモグロビンがヘモグロビンFからヘモグロビンAへと徐々に切り替わっていき,それにより発育中の胎児への酸素運搬が改善する。

生理的貧血は早期産児でより顕著であり,正期産児に比べ早期に発生し最低値も低い。本病態は未熟児貧血とも呼ばれる。正期産児での貧血と同様の機序によって,生後4~12週に早期産児に貧血が生じる。エリスロポエチンの産生低下,赤血球寿命の短縮(35~50日),急速な成長,および頻回の採血が,早期産児でHbの低下速度がより速く,最低値が低い(8~10g/dL[80~100g/L])一因となっている。

未熟児貧血は在胎32週未満で出生した乳児に最もよく発生する。ほぼ全ての急性疾患の乳児および超早産児(28週未満)は,最初の入院中に赤血球輸血を必要とする重度の貧血を発症する。

失血

出生前,周産期,または出生後の出血によって,貧血が生じることがある。新生児では全体の循環血液量が少ないため(1, 2),15~20mL程度の急性失血でも貧血を来すことがある。慢性的な失血の場合は生理的な代償が可能であり,概して急性失血よりも臨床的に安定している。

出生前の出血は以下によって起こる可能性がある:

  • 胎児母体間出血

  • 双胎間輸血

  • 臍帯形成異常

  • 胎盤異常

  • 診断的処置

胎児母体間出血は通常自然に起こるが,母体外傷,羊水穿刺,外回転術や,まれに胎盤腫瘍の結果として生じることもある。これは妊娠の約50%に生じるが,ほとんどの場合は喪失する血液量は極めて少なく(約2mL),30mL以上と定義される“大量”失血が起こるのは,妊娠1000例につき3例である。

双胎間輸血とは双胎間の不均等な血液分配であり,一卵性の一絨毛膜双胎妊娠の13~33%に生じる。重大な双胎間輸血が生じた場合,供血児が有意な貧血状態になり心不全を発症する一方,受血児は赤血球増多となり過粘稠度症候群を発症する。

臍帯異常には,臍帯卵膜付着,前置血管,または腹部もしくは胎盤の付着があり,出血の機序は(これはしばしば大量,急速で,生命を脅かすものである)臍帯血管の剪断または断裂による。

産科出血の原因となる胎盤異常としては,常位胎盤早期剥離前置胎盤の2つが最もよくみられる。これらの異常は母体出血の原因となるが,胎盤表面積の減少や母体の貧血から胎児または新生児貧血を来す可能性がある。

出血を引き起こす可能性のある診断手技として,羊水穿刺絨毛採取臍帯血採取などがある。

周産期の出血は以下により起こる可能性がある:

  • 急産

  • 新生児または胎盤の外傷

  • 凝固障害

急産(すなわち短時間で進行する自然娩出)では,臍帯断裂によって出血が起こることがある。

ときに分娩中に新生児または胎盤の外傷(例,帝王切開中の胎盤切開,分娩外傷)が生じることがあり,出血につながる可能性がある。吸引または鉗子分娩などの処置による頭血腫は通常,比較的無害であるが,帽状腱膜下の出血は急速に軟部組織内に広がり,貧血,低血圧,ショックおよび死に至る相当量の血液が失われる場合がある。頭蓋内出血のある新生児では,貧血やときに血行動態障害を起こすほど大量の血液が頭蓋内に移行することがある(全身に対して頭部の占める割合が小さい年長児では状況が異なり,頭蓋縫合が融合しているために頭蓋拡張が起こらず,そのため頭蓋内への出血量が制限され,その一方で頭蓋内圧が上昇することにより,通常は止血に至る)。頻度は大幅に減少するが,分娩中の肝臓,脾臓,または副腎の破裂によっても内部出血が生じることがある。くも膜下出血硬膜下出血に加えて,早期産児で最もよくみられる脳室内出血も,ヘマトクリットの有意な低下につながることがある。

新生児出血性疾患ビタミンK欠乏症も参照)とは,正常分娩後数日以内に起こる出血であり,ビタミンK依存性凝固因子(第II,第VII,第IX,第X因子)の一過性の生理的欠乏によるものである。これらの凝固因子は胎盤移行が少なく,ビタミンKは腸内細菌によって合成されるため,最初は無菌状態の新生児の腸管ではほとんど産生されない。ビタミンK欠乏性出血には3つの型がある:

  • 早発型(Early:生後24時間)

  • 古典型(Classic:生後1週間)

  • 遅発型(Late:生後2~12週)

早発型は,母体側のビタミンKを阻害する薬剤(例,ある種の抗てんかん薬;イソニアジドリファンピシンワルファリン;母体での長期にわたる広域抗菌薬の使用,これにより腸内細菌の定着が抑制される)使用により起こる。

出生後の0.5~1mgのビタミンK筋注により凝固因子が急速に活性化され,新生児出血性疾患が予防される(3)。

古典型は出生後にビタミンK製剤の投与を受けていない新生児で起こる。遅発型は,出生後ビタミンK製剤の投与を受けていない母乳のみで栄養されている新生児のみに起こる。

生後数日間生じる出血のその他の原因として,他の凝固障害(例,血友病),敗血症による播種性血管内凝固症候群(DIC),または血管奇形が考えられる。

早産児や新生児合併症のある乳児は,頻回の血液検査のための採血を通じて,かなりの量の血液を失うことがある(4)。

赤血球産生低下

赤血球産生低下

  • 先天性

  • 後天性

先天性の異常は極めてまれであるが,最も多くみられるのは以下のものである:

  • ダイアモンド-ブラックファン貧血

  • ファンコニ貧血

ダイアモンド-ブラックファン貧血は,骨髄における赤血球前駆細胞の欠如,大球性赤血球,および末梢血における網状赤血球の欠如を認めるが,他の造血系統に異常を認めないことを特徴とし,平均赤血球容積(MCV)が高値の極めて特徴的な大赤血球症をしばしば呈する。これは,しばしば(常にではないが),小頭症口蓋裂眼形成異常,母指変形,および翼状頸を含む先天異常の症候群の一部である。罹患新生児の最大25%が出生時に貧血を呈し,約10%の児が低出生体重である。ダイアモンド-ブラックファン貧血は,幹細胞の分化異常により引き起こされる一種のリボソーム病(ribosomopathy)と考えられている。

ファンコニ貧血は,全造血細胞系の進行性破壊により大赤血球症および網状赤血球減少症を伴う骨髄不全症候群を引き起こす,骨髄前駆細胞の常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患である。通常は新生児期を終えてから診断される。損傷DNAの修復や細胞を傷害するフリーラジカルの除去を妨げる遺伝子異常が原因である。

先天性の貧血が生じるその他の病態として,ミトコンドリア障害のために不応性の鉄芽球性貧血,汎血球減少,ならびに肝,腎,膵の様々な機能不全ないし臓器不全が生じるまれな多臓器疾患であるピアソン症候群や,無効または異常な赤血球造血に起因した慢性貧血(典型的には大球性)と赤血球異常による溶血が生じる先天性赤血球形成異常性貧血などがある。

遺伝によらない異常が出生の前後に生じる可能性もある。なかには,出生前に発生することで最も重大な影響を及ぼす非遺伝性の異常(例,特定の感染症)も存在する。最も一般的な原因は以下のものである:

  • 感染症

  • 栄養の欠乏

赤血球産生を障害する可能性がある感染症としては,マラリア風疹梅毒HIVサイトメガロウイルスアデノウイルス先天性パルボウイルスB19,ヒトヘルペスウイルス-6,細菌性敗血症などがある。

栄養欠乏症としての葉酸や,まれにビタミンEビタミンB12の欠乏を原因として生後数カ月で貧血が起こることがあるが,出生時からみられることは通常ない。最も頻度が高い栄養障害である鉄欠乏症の発生率は,医療などの資源が少ない国で高く,これは食物の不足と母乳栄養単独での育児が長期間続くことが原因である。鉄欠乏症は,母親が鉄不足の新生児および輸血を受けたことがなく,鉄が添加されていない人工乳を摂取する早産児に多くみられ,早産児では十分な補充がない場合,生後第10~14週までに鉄貯蔵が枯渇する。

溶血

溶血は以下により起こる可能性がある:

  • 免疫性疾患

  • 赤血球膜異常症

  • 酵素欠乏症

  • 異常ヘモグロビン症

  • 感染症

いずれも高ビリルビン血症を引き起こす可能性があり,それにより黄疸が生じ,無治療では核黄疸を来すこともある。

免疫介在性の溶血は,母体の赤血球抗原と異なる表面抗原(最もよくみられるのはRhおよびABO血液抗原であるが,Kell,Duffyなど他の抗原も少数みられる)を有する胎児の赤血球が母体循環に入ることにより,胎児赤血球に対するIgG抗体の産生が刺激されることで生じると考えられる。

最も一般的には,Rh(D抗原)陰性の母親が過去のRh陽性胎児の妊娠中に胎児から母体への血液移行によりD抗原に感作される。その後にRh陽性胎児を妊娠することで,その妊娠で母親が胎児血液に再曝露した際に記憶免疫応答(anamnestic IgG response)が誘導され,それにより胎児・新生児溶血性疾患が引き起こされる可能性がある。比較的まれではあるが,妊娠早期の胎児母体間輸血がIgG反応を刺激することがあり,その妊娠に影響を及ぼす。

子宮内での溶血は胎児水腫または胎児が死に至るほど重症となる場合がある。出生後には,母体IgGの残存(半減期およそ28日)による二次的な溶血が続くことで,有意な貧血および高ビリルビン血症が生じる可能性がある。

感作を予防するための抗RhD抗体の予防的使用が普及したことで,Rh陰性女性のリスクのある新生児が溶血性疾患を発生する頻度は約1/1000のみとなっている(5)。

パール&ピットフォール

  • まれではあるが,妊娠早期の胎児母体間輸血がIgG反応を刺激することがあり,その妊娠中に溶血が引き起こされる。

ABO血液型不適合も同様の機序により溶血を起こす。母親は食物や腸内細菌叢に存在するA抗原およびB抗原と相同の抗原に感作される(そのため,感作に過去の妊娠を必要としない)。母親の血液型によっては,これらの外因性抗原が母体のIgM反応を誘発する。この反応は母親がB型の場合は抗A,母親がA型の場合は抗B,母親がO型の場合は両方である。これらのIgM抗体は胎盤を通過しない。しかしながら,不適合の胎児血液が母体循環に入ると,anamnestic IgG responseが起こり,それらのIgG型抗Aまたは抗B抗体は大量に胎盤を通過できるため,胎児の溶血を引き起こす。

ABO血液型不適合では通常,IgG抗体の産生が起こる前に最初のIgM抗体が母体循環から胎児血球を少なくとも一部を排除し,胎児の赤血球膜上のABO抗原はRh抗原より少ないため,Rh不適合と比べて重症度は低くなる。Rh抗原による溶血とは異なり,溶血のある新生児では直接抗グロブリン試験(DAT[クームス試験])が陰性となることがある。

赤血球膜異常症は赤血球の形状および変形能を変化させ,脆弱性を高めるため,赤血球の早期破壊および/または循環からの早期除去の原因となる。最もよくみられる異常は遺伝性球状赤血球症および遺伝性楕円赤血球症である。

溶血を引き起こす酵素欠損症として,グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠乏症とピルビン酸キナーゼ欠損症が最もよくみられる。

G6PD欠乏症はX連鎖疾患である。アフリカ系の人々で最も多くみられ(6),アフリカ系アメリカ人男性の10%以上に発生する(7, 8)。地中海沿岸出身の人々(例,イタリア人,ギリシャ人,アラブ人,またはセファルディ系ユダヤ人の祖先をもつ人々)とアジア系の人々では発生頻度が比較的低い。

G6PD欠乏症には多くの亜型があり,軽度のものもあれば,重度のものもある。最も頻度が高いのはIII型であり,重症度は中等度である。G6PD欠乏症はマラリアの予防につながると考えられており,マラリア流行地域ではアレル頻度が8%と推定されている。米国では,一部の州で新生児にG6PD欠乏症のスクリーニング(DNA検査または酵素活性測定による)が行われている。

ピルビン酸キナーゼ欠損症は欧州人集団,および米国ではペンシルベニア・ドイツ人【訳注:17世紀から18世紀にかけてドイツ語圏からアメリカ合衆国に移住した人々の子孫,いわゆるペンシルベニア・ダッチ】により多くみられる常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患である。ピルビン酸キナーゼ欠損症はまれであり,白人2万人中約1人に発生する;この疾患に対するルーチンのスクリーニングは米国では行われていない。

異常ヘモグロビン症は,グロビン鎖の欠損および構造異常が原因である。出生時,新生児のヘモグロビンの55~90%は胎児ヘモグロビン(Hb F)であり,これは2つのαグロビン鎖および2つのγグロビン鎖から構成されている(α2γ2)。出生後,γ鎖の産生が減少し(2~4歳までに2%未満まで),成人型ヘモグロビン(Hb A, α2β2)が優勢になるまでβ鎖の産生が増大する。

αサラセミアはαグロビン鎖の産生が低下する遺伝性疾患で,貧血を引き起こす異常ヘモグロビン症のうち最も多くみられる。βサラセミアは遺伝性のβ鎖産生低下である。本来βグロビンは出生時には低値であるため,βサラセミアおよびβグロビン鎖の構造異常(例,Hb S[鎌状赤血球症],Hb C)は出生時には臨床的に明らかではなく,生後3~4カ月目に胎児ヘモグロビンが十分低い水準に低下し,β鎖に病的変異がある(鎌状赤血球症の場合)またはβ鎖の割合が低下している(βサラセミアの場合)のいずれかである成人ヘモグロビンに置換されるまで症状は現れない。

特定の細菌,ウイルス,真菌,および原虫(特にマラリア)による子宮内感染も溶血性貧血を誘発することがある(9)。マラリアでは,マラリア原虫(Plasmodium)が赤血球に侵入して寄生し,最終的に赤血球を破裂させる。寄生された赤血球の免疫による破壊と寄生されていない細胞の過剰除去が起こる。関連する骨髄の赤血球形成異常によって,代償性の赤血球産生が不十分になる。血管内溶血,血管外の食作用,および赤血球形成異常の結果,貧血が起こりうる。

病因論に関する参考文献

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周産期貧血の症状と徴候

周産期貧血の症状および徴候は原因にかかわらずほぼ同様であるが,重症度および貧血発症の速度によって様々である。新生児は概して蒼白を呈し,貧血が重症であれば頻呼吸,頻脈,ときに血流雑音が認められ,急性失血がある場合は低血圧を呈する。溶血には黄疸を伴うことがある。

周産期貧血の評価

病歴

病歴の聴取では,母体因子(例,Rh[D抗原]陰性,出血性素因,遺伝性赤血球疾患,栄養欠乏,薬剤),新生児貧血の原因となりうる遺伝性疾患の家族歴(例,αサラセミア,酵素欠損,赤血球膜異常症,赤芽球癆),産科的因子(例,感染,性器出血,産科的介入,分娩様式,失血,臍帯の処置および外観,胎盤の病理,胎児ジストレス,胎児の数)に焦点を合わせるべきである。

母体側の非特異的因子からさらなる手掛かりが得られる場合がある。両親に貧血の病歴がないか調べるべきである。脾臓摘出は溶血,赤血球膜異常症,または自己免疫性溶血の病歴の可能性を示唆し,胆嚢摘出は溶血による胆石の病歴を示すことがある。

重要な新生児側の因子としては,出生時の在胎期間,発症日齢,性別,家系(特定の遺伝性貧血の危険因子として)などがある。

身体診察

頻脈および低血圧は急性かつ重大な失血を示唆する。

黄疸は,全身性(Rh型もしくはABO血液型不適合またはG6PD欠乏症による)または限局性(頭血腫などの内部に封じられた血液の破壊による)の溶血を示唆する。

肝脾腫は溶血,先天性感染,または心不全を示唆する。

血腫,斑状出血(皮下出血斑),または点状出血は出血性素因または外傷を示唆する。

先天異常は骨髄不全症候群を示唆している場合がある。

検査

出生前に超音波検査で中大脳動脈の収縮期最大血流速度の上昇または胎児水腫(体の2カ所以上の部位[例,胸膜,腹膜,心膜]における異常かつ過剰な液貯留)が示されれば貧血が疑われ,また,心拡大,肝腫大,および脾腫が存在する場合もある。

出生後に貧血が疑われる場合は血算を行い,ヘモグロビン値およびヘマトクリット値が低ければ,追加検査に以下を含めるべきである:

  • 網状赤血球数

  • 末梢血塗抹検査

貧血が急性の場合,緊急の介入が必要になることがある。

網状赤血球数が低値の場合(ヘモグロビンおよびヘマトクリットが低い場合,正常では上昇する),貧血は後天性または先天性骨髄機能障害によるものである可能性があり,以下により骨髄抑制の原因を評価すべきである:

  • 先天性感染(風疹,梅毒,HIV,サイトメガロウイルス,アデノウイルス,パルボウイルス,ヒトヘルペスウイルス6型)の抗体価またはPCR検査

  • 葉酸およびビタミンB12レベル

  • 鉄およびレベル

これらの検査で貧血の原因が同定されない場合は,骨髄生検,赤血球産生の先天性障害検出のための遺伝学的検査,またはその両方が必要なこともある。

網状赤血球数が高値または正常である場合(骨髄の適切な反応を反映している),貧血は失血または溶血によるものである可能性がある。明らかな失血がない場合,または末梢血塗抹標本で溶血の徴候が認められるか血清ビリルビンが高値(溶血とともに起こる)の場合,直接抗グロブリン試験(DAT[クームス試験])を行うべきである。

直接抗グロブリン試験が陽性の場合,貧血はRh,ABOまたはこれ以外の血液型不適合に伴う二次的なものである可能性が高い。DATは,Rh不適合では常に陽性である一方で,ABO血液型不適合では陰性のことがあるが,これは赤血球膜上のABO抗原がRh抗原よりも少ないためである。ABO血液型不適合による溶血が現にあってもDATは陰性になることがある;ただし,そのような患児では末梢血塗抹標本で微小球状赤血球を認めるはずであり,間接抗グロブリン試験(間接クームス試験)は通常陽性となる(なぜなら,この試験は血漿中の抗ABO抗体を同定するものであり,これは成人赤血球[成人赤血球には十分に識別可能なABO抗原が存在する]の存在下では陽性反応を示すためである)。

直接抗グロブリン試験が陰性の場合,赤血球の平均赤血球容積(MCV)が役立つことがあるが,通常は胎児の赤血球は成人の赤血球より大きいため,新生児のMCVを解釈するのは困難なことがある。ただし,顕著に低いMCVは,αサラセミアまたは(頻度は下がるが)慢性子宮内失血による鉄欠乏を示唆する;これらは赤血球分布幅(RDW)により鑑別できることがあり,RDWはサラセミアでは正常であるが鉄欠乏では上昇する場合が多い。MCVが正常または高値の場合は,末梢血塗抹標本が,膜異常症,微小血管症,播種性血管内凝固症候群,ビタミンE欠乏症,または異常ヘモグロビン症と一致する赤血球の形態異常を示すことがある。遺伝性球状赤血球症の患児では,しばしば平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)が上昇する。塗抹標本が正常であれば,失血,酵素欠損症,感染症を考慮し,胎児母体間出血の検査など,適切な検査を行うべきである。

胎児母体間出血は,母体血中の胎児赤血球を検査することによって診断できる。Kleihauer-Betkeの酸溶出法が最も頻繁に用いられる試験であるが,これ以外の試験には,蛍光抗体法,分別または混合凝集試験がある。Kleihauer-Betke法においては,pH3.5のクエン酸-リン酸緩衝液によって成人の赤血球からヘモグロビンが溶出されるが,胎児の赤血球からは溶出しない;このため,胎児赤血球はエオジンで染色されて光学顕微鏡で観察可能であるのに対して,成人赤血球は赤血球ゴーストとなって現れる。母親に異常ヘモグロビン症がある場合,Kleihauer-Betke法は有用ではない。

周産期貧血の治療

周産期貧血の治療の必要性は,貧血の程度と随伴する病態により異なる。一部の患児には濃厚赤血球の輸血または交換輸血が必要である。軽度の貧血がある以外は健康な正期産児および早期産児では一般に特異的治療を必要としない;治療は基礎疾患に照準を定めて行う。

輸血

輸血は重症貧血の治療に指示される。貧血による症状がある場合,または組織の酸素供給の減少が疑われる場合,輸血を考慮すべきである。輸血の決定は,症状,患児の日齢,および疾病の程度に基づいて行うべきである。ヘマトクリット低値でも無症状である患児もいれば比較的高値でも症状がある患児もいるため,ヘマトクリット単独を輸血の決定要因とすべきではない。

輸血タイミングに関する指針は様々であるが,一般に認められている組合せは生後4カ月未満の乳児における輸血閾値の表に記載されている。

表&コラム
表&コラム

生後4カ月以内で,初回の輸血前に(それまでに実施されていなければ)ABO型およびRh型の両方を判定し,赤血球不規則抗体の有無を検出するために母体血および胎児血のスクリーニングを行うべきである。可能であれば母体検体で抗体スクリーニングを行い,さらに乳児赤血球のDATを行うべきである。

新生児輸血に用いる赤血球は,母体および新生児の両方の血液型で,ABOおよびD適合性が確認されなければならず,さらに間接抗グロブリン試験による交差適合試験で母体または新生児の血漿中に存在する臨床的意義のある赤血球抗体との適合性が確認されなければならない。たとえ輸血前のDATが陰性であっても,母体と新生児の両方でABO適合性が確認された輸血用血液製剤を使用しなければならない。典型的には,新生児への追加輸血および交換輸血の大半にO型D陰性の赤血球が使用される。血液型に適合した赤血球を使用する場合は(待機的な大量輸血で最もよくみられる),母体および新生児の両方の血液型で,ABOおよびD適合性が確認されなければならない。乳児に対して待機的に大量輸血を行う場合,O型D陰性赤血球の使用を最小限に抑えるため,可能であれば同一血液型の輸血用血液製剤を使用すべきである(1)。

新生児ではまれにしか赤血球抗体が産生されないため,輸血の必要性が持続する場合,繰り返しの抗体スクリーニングは通常,生後4カ月目までは必要ない。

輸血に使用する濃厚赤血球は,濾過(白血球除去)および放射線照射を行い,10~20mL/kgの一定分量で投与し,1人の供血者に由来するものとすべきである(同一の血液単位からの連続輸血により,受血者の曝露と輸血合併症が最小化される)。超早産児にはサイトメガロウイルス陰性供血者の血液を考慮すべきである。

交換輸血

交換輸血は,新生児の血液を一定分量で順次除去した上で濃厚赤血球を輸血するもので,血清ビリルビン高値の溶血性貧血の一部,心不全を伴う重症貧血の一部,および循環血液量が正常な慢性失血が適応となる。この処置は血漿中の抗体価およびビリルビン濃度を低下させ,体液過剰を最小限にする。

1回量の交換輸血(在胎期間に応じて80~100mL/kg)では新生児の赤血球の約75%が除去され,2回量の交換輸血(160~200mL/kg)では最大85~90%の赤血球と最大50%の血中ビリルビンが除去される(1)。

重篤な有害作用(例,血小板減少症;壊死性腸炎;低血糖;低カルシウム血症;ショック,肺水腫,またはその両方[体液バランスの変化が原因])がよくみられるため,この処置は経験豊富なスタッフによって施行されるべきである。交換輸血の開始時期に関する一般的指針は様々であり,エビデンスに基づくものではない。

その他の治療法

遺伝子組換えヒトエリスロポエチンは,生後2週間における輸血の必要性を減少させることが示されていないこともあり,ルーチンには推奨されない。

鉄投与は失血例(例,出血性素因,消化管出血,頻回の採血による)に対して行う。経口鉄剤が望ましい。非経口鉄剤はまれにアナフィラキシーを引き起こすことがある。American Academy of Pediatrics(AAP)は,母乳栄養児には生後4カ月から生後約6カ月で鉄分を含む固形食を導入するまで,鉄剤のシロップ(鉄元素1mg/kg/日)を連日与えることを推奨している(2)。

比較的まれな原因による貧血の治療は疾患特異的である(例,ダイアモンド-ブラックファン貧血にはコルチコステロイド,B12欠乏症にはビタミンB12)。

治療に関する参考文献

  1. 1.New HV, Berryman J, Bolton-Maggs PH, et al: Guidelines on transfusion for fetuses, neonates and older children. Br J Haematol 175(5):784–828, 2016.doi: 10.1111/bjh.14233

  2. 2.Baker RD, Greer FR, Committee on Nutrition American Academy of Pediatrics: Clinical report—Diagnosis and prevention of iron deficiency and iron-deficiency anemia in infants and young children (0–3 years of age).Pediatrics 126(5):1040–1050, 2010.doi: 10.1542/peds.2010-2576

要点

  • 貧血とは,赤血球量またはヘモグロビンの減少であり,新生児では通常ヘモグロビンまたはヘマトクリットが年齢別平均値から2SD(標準偏差)以上低下した状態と定義される。

  • 新生児における貧血の原因としては,生理的過程,失血,赤血球産生の低下,および赤血球崩壊の増加がある。

  • 生理的貧血は新生児期における貧血の最も一般的な原因であり,一般には広範な評価および治療は必要ではない。

  • 貧血のある新生児は概して蒼白を呈し,貧血が重症であれば頻呼吸,頻脈,ときに血流雑音が認められる。

  • 治療の必要性は,貧血の程度と随伴する病態により異なる。

  • 軽度の貧血がある以外は健康な正期産児および早期産児では一般に特異的治療を必要としない;治療は基礎疾患に照準を定めて行う。

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