正常な陣痛の管理

執筆者:Julie S. Moldenhauer, MD, Children's Hospital of Philadelphia
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 3月
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分娩は,子宮の律動的,不随意的,または医学的に誘発された一連の収縮から成り,子宮頸部の展退(菲薄化および短縮)と開大が引き起こされる。1996年,世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,正常な出産を以下のように定義した(1):

  • 分娩が自然に発来し,分娩の開始時にリスクが低く,陣痛および分娩を通じてリスクが低い状態である。

  • 妊娠37~42週の間に,頭位での自然分娩で児が生まれる。

  • 出産後,母親と新生児の状態が良好である。

分娩発来機序は未解明であるが,診察中に頸管を触診したり伸展したりすると子宮の収縮活動が高まるが,これは,下垂体後葉からのオキシトシン放出を刺激することによる可能性が最も高い。

合併症のない満期妊娠では,陣痛は通常,分娩予定日の前後2週間以内に始まる。初産婦では,分娩は平均12~18時間続く;経産婦の分娩はそれより短いことが多く,平均6~8時間である。

遷延分娩または分娩停止の管理には追加の対策が必要である(例,陣痛誘発または促進鉗子や吸引器による分娩帝王切開)。

分娩時の産科合併症に関する序論も参照のこと。)

総論の参考文献

  1. 1.Care in normal birth: A practical guide.Technical Working Group, World Health Organization. Birth 24(2):121-123, 1997.

出産の選択肢

出産のための環境設定は様々である。病院,出産センター,自宅での出産という選択肢がある。病院での出産には,陣痛や分娩中(例,常位胎盤早期剥離肩甲難産,緊急帝王切開の必要性,胎児または新生児のジストレスや異常),分娩後(例,分娩後異常出血)に母体および胎児に予期しない合併症が発生した場合に臨床スタッフが直ちに対応し,医療機器も直ちに使用できるという利点がある。

多くの妊婦にとって,パートナーまたは他の付き添い者(例,ドゥーラ,周産期を支援する専門家)が分娩に立ち会うことが助けになるため,奨励されるべきである。精神的な支援および励ましがあると不安感が軽減する。マタニティークラスでは,正常な分娩やモニタリング機器,起こりうる合併症に関する情報を提供し,親となる人に陣痛および分娩に向けた準備をさせることができる。

分娩の開始

分娩は通常,不規則で強さも様々な子宮収縮とともに始まり,子宮頸部が展退および開大し始める。分娩の進行に伴って,収縮の持続時間,強度,および頻度が増大する。ときに収縮が始まる前に卵膜が破綻することがある。

間もなく陣痛が始まるという初期の徴候として,産徴(頸管からの粘液分泌物の混じった少量の血液)がみられることがある。ただし産徴は,性交の結果として起こることもある。分娩が始まる72時間程度前に産徴が先行することがある。合併症を除外するために,妊娠中のいかなる性器出血も評価すべきである。産徴は,血液の量が非常に少なく,典型的には粘液がみられるため,通常は第3トリメスターの異常性器出血と鑑別できる。

典型的には,破水していると思われる場合や,収縮が少なくとも30秒続き,約6分またはそれより短い間隔で規則正しく1時間続いている場合,医療チームに連絡するか来院するよう妊婦に指示する。妊婦を評価し,陣痛が始まっているかどうか不明であれば,しばらく観察し,陣痛が始まっていなければ帰宅させる。

正常な分娩に関連しない症状,例えば持続性の(間欠的ではない)腹痛または背部痛や,多量の性器出血,血行動態不安定などは,常位胎盤早期剥離(胎盤の早期分離)を示唆しており,直ちに評価および管理が必要である。典型的には,第2トリメスターでのルーチンの出生前超音波検査により前置胎盤が除外される。しかしながら,胎盤の位置が不明であるか,直近の超音波検査で低い位置に胎盤が認められた場合は,指による内診は禁忌であり,できるだけ早く超音波検査を行うべきである。

分娩室への入室

分娩室への入室時には,バイタルサインを測定する。血算,血液型判定,抗体スクリーニングのため採血を行う。ルーチンの臨床検査が妊婦健診時に行われていなかった場合,行うべきである。この検査には,HIV,B型肝炎,および梅毒のスクリーニング,風疹および水痘免疫の検査,ならびにB群レンサ球菌感染の検査を含める。

胎児の心音の有無および心拍数を記録する。身体診察を行う。腹部診察では,レオポルド手技を用いて,胎児の大きさ,胎向,および先進部を推定する(の図を参照)。先進部または胎位が不明の場合は,超音波検査を行うことがある。

陣痛が有効なら,分娩中における嘔吐および誤嚥の可能性を回避するため,または全身麻酔を伴う緊急分娩が必要になる場合に備えて,妊婦には口からほとんどまたは何も与えるべきではない。一部の医療施設では,低リスクの妊婦にclear liquidの摂取を許可している。

外陰の剃毛および陰毛カットは不要であり,むしろ行うことにより創傷感染のリスクを増大させる。

手または前腕の静脈に,できれば大口径の留置静脈カテーテルを挿入し,乳酸リンゲル液の点滴静注を開始する。正常陣痛の6~10時間に,妊婦にこの輸液を500~1000mL投与すべきである。静注により,陣痛中の脱水とそれに続く血液濃縮が予防され,十分な循環血液量が維持される。このカテーテルは,薬剤や血液製剤の投与が必要となった場合の即時の経路にもなる。補液の事前投与は,硬膜外麻酔または脊髄くも膜下麻酔が計画されている場合に有益である。

レオポルド手技

(A)子宮底を触診し,胎児のどの部分が子宮底を占めているか確認する。(B)母体腹部の両側を触診し,胎児の脊椎側および四肢側を確認する。(C)恥骨結合上方の領域を触診し胎児の先進部の位置を決定し,胎児がどの程度下降しているかおよび胎児が嵌入しているかどうかを決定する。(D)片手で子宮底に圧をかけると同時に,もう片方の示指と母指で先進部を触診して胎位および嵌入を確認する。

最初の診察,胎児モニタリング,および臨床検査の後に合併症の懸念がある場合は,追加の検査またはモニタリングを行う。

早産期(37週未満)であり,子宮収縮または液体の漏出が認められる場合は,切迫早産または早期前期破水の評価を行い,それに応じて管理する。

子宮頸部の診察

痛みを伴う規則的な収縮がみられる場合は,子宮頸管の診察を行い,その開大を評価する。

前置胎盤の妊婦では,頸管の診察は重度の出血を引き起こす可能性があるため,行わない。出生前ケアの間に胎盤の位置が特定されていない場合は,内診の前に超音波検査を行うべきである。

子宮頸管の開大は,センチメートル単位で円の直径として記録する;10cmを全開大とみなす。

展退は0~100%の百分率で推定される。展退は子宮頸部の菲薄化だけでなく短縮も含むため,正常の,展退していない平均的な頸管長である3.5~4.0cmを参考に,センチメートル単位で記録する場合もある。

stationは,先進部が母体の両坐骨棘のレベルよりどれだけ上または下にあるかを,センチメートル単位で示す。両坐骨棘のレベルはstation 0に相当する。両坐骨棘より下のレベルは(+)として記録される;両坐骨棘より上のレベルは()として記録される。レベルはセンチメートル単位で記録する。

胎位,胎向および先進部を記録する。

  • 胎位とは,胎児の長軸と母体の長軸との関係を示す(縦位,斜位,横位)。

  • 胎向とは,先進部と母体の骨盤との関係(例,occiput left anterior,sacrum right posterior)を示す。

  • 先進部とは,頸管開口部に位置する胎児の部位(例,殿部,頭頂部,肩)を示す。

胎位,胎向,または先進部の異常は分娩時の合併症と関連する可能性がある。

破水

ときに,卵膜(羊膜および絨毛膜)が分娩開始前に破れ,頸管を通じて羊水が漏出する。陣痛開始以前の段階で起きた破水は,前期破水と呼ばれる。前期破水の生じた妊婦は,腟からの液体の噴出後,絶え間ない漏れを感じることがある(1)。

破水の可能性があるが,規則的で痛みを伴う収縮がない場合,破水を確認するためにまず無菌的腟鏡診を行う。感染リスクを抑えるため,陣痛が始まっているように見えるまで,または子宮頸管の開大の評価を必要とする他の適応がある場合(例,陣痛誘発を計画している)を除いて,頸管の指診は行わない。

羊水を他の液体(例,尿,腟分泌物,精液)と鑑別するために,ときにさらなる確認が必要となる。内診で,液体が頸管から漏出しているのが認められ,腟後壁に貯留があれば,破水と確認できる。胎便(ウグイス色の変色を起こしている)は,胎児のストレスの徴候の可能性があるため,認められる場合は注意すべきである。

貯留がみられない場合は,確認のために検査が必要になることがある。例えば,腟液のpHをニトラジン紙で検査すると,pH > 6.5で濃紺に変化する(羊水のpH:7.0~7.6);腟液に血液または精液が含まれる場合や,一部の感染症が存在する場合は,偽陽性となる可能性がある。後腟円蓋または頸管から分泌物の検体を採取し,スライドガラス上に置き,乾燥させ,シダ状結晶形成を顕微鏡で観察してもよい。シダ状結晶形成(羊水中の塩化ナトリウムのシュロの葉状の結晶化)により通常,破水が確認される。一部の施設では,破水を評価するための市販の検査が用いられている(2, 3)。

破水の確証がそれでも得られない場合,羊水過少(羊水の不足)を示す超音波検査により破水を示唆するさらなる証拠が得られる。まれに,羊水穿刺で色素を注入して破水を確認する;腟内またはタンポンに色素が検出されることにより破水が確認される。

満期(≥ 37週)で前期破水の女性の約80~90%,および早期前期破水(< 37週)の女性の約50%で,24時間以内に自然に陣痛が始まる;前期破水の生じた妊婦の90%超で,2週間以内に陣痛が始まる。満期で破水したが,陣痛が数時間以内に開始しない場合,母体および胎児の感染リスクを低下させるため,通常は陣痛を誘発する。早期前期破水が起こった場合(37週未満),破水から陣痛開始までの時間は在胎期間が短くなるにつれて長くなる。

破水に関する参考文献

  1. 1.Prelabor Rupture of Membranes: ACOG Practice Bulletin, Number 217. Obstet Gynecol 135(3):e80-e97, 2020.doi:10.1097/AOG.0000000000003700

  2. 2.Ramsauer B, Vidaeff AC, Hösli I, et al: The diagnosis of rupture of fetal membranes (ROM): a meta-analysis. J Perinat Med.2013;41(3):233-240.doi:10.1515/jpm-2012-0247

  3. 3.Thomasino T, Levi C, Draper M, Neubert AG.Diagnosing rupture of membranes using combination monoclonal/polyclonal immunologic protein detection. J Reprod Med.2013;58(5-6):187-194.

分娩の過程

分娩には3つの過程がある。

第1期

第1期は,陣痛開始から子宮口の全開大(約10cm)までであり,潜伏期および活動期の2つの期に分けられる。

潜伏期は,陣痛開始から活動期開始までを指す(1)。不規則な収縮が規則的かつより強くなり,苦痛は軽度から中等度で,頸管は展退して,4~6cmに開大し始める。潜伏期を正確に定義するのは困難で,持続時間は様々である。初産婦では,平均7.3~8.6時間(95パーセンタイル,17~21時間)である(2)。経産婦では,平均4.1~5.3時間(95パーセンタイル,12~14時間)である。

潜伏期遷延の標準的な定義はない。一般的に用いられる標準は,初産婦で20時間超,経産婦で14時間超であるが,一部の研究ではこれより短い持続時間も長い持続時間も報告されている(3)。

活動期は,子宮口の開大の加速によって定義される。規則的な収縮が子宮口が全開大するまで続く。

開大が6cmに達した後,子宮口の開大が初産婦で1.2cm/時未満,経産婦で1.5cm/時未満となった場合に,活動期遷延と診断される(4)。活動期の停止は,典型的には子宮口の開大に2~4時間変化がない場合と定義される。

分娩の進行を評価するため,潜伏期には必要に応じて,活動期には典型的には2~3時間毎に内診を行う。

立位および歩行により分娩第1期が1時間以上短縮し,帝王切開率が低下する(5)。

自然に破水しない場合,活動期中に人工破膜(人工的な卵膜破綻)をルーチンに行う医師もいる。結果として,分娩がより速やかに進行し,胎便で混濁した羊水が早期に検出される場合がある。この時期の人工破膜が,胎児の状態を確認する内測法による胎児モニタリングを可能にするなど特異的適応のために必要になることがある。HIV感染またはB型,C型肝炎の女性では,胎児がこれらの感染症に曝露しないよう人工破膜を避けるべきである。

分娩第1期では,母体の心拍数と血圧を頻回にモニタリングすべきであり,胎児の心拍数はモニタリング用電子機器により継続的に,または聴診によって間欠的にチェックすべきである(通常はポータブルのドプラ超音波診断装置を用いる)(胎児モニタリングを参照)。先進部が骨盤内へ下降するに従い,妊婦はいきみの衝動を感じ始める。しかしながら,子宮口が全開大となるまでは,頸管に裂傷や腫脹を引き起こさないよう,いきまないようにさせるべきである。

第2期

第2期は,子宮口の全開大から胎児娩出までの期間をいう。平均所要時間は初産婦で36~57分(95パーセンタイル,122~197分),経産婦で17~19分(95パーセンタイル,57~81分)である(2)。自然な娩出のためには,子宮収縮に加え,娩出を促進する妊婦のいきみが必要である。第2期では,妊婦に常に付き添い,胎児心音を連続的にまたは各収縮後に,チェックすべきである。収縮を触診により,または電子的にモニタリングする。

第2期では,潤滑剤を用いた会陰マッサージと温罨法により会陰が柔らかく,伸展しやすくなることがあり,これによって第3度および第4度会陰裂傷の発生率が低下しうる(6)。これらの手技は,助産師および分娩介助者により広く用いられている。

硬膜外麻酔なしの分娩において,第2期では,母親の姿勢は分娩時間や分娩様式,または母体や新生児の転帰に影響しない(7)。また,いきみの方法(自発的か指示を受けていきむか,遅らせるか直ちにいきむか)も,分娩様式,母体または新生児の転帰に影響しない。

第2期の停止は典型的には,初産婦で3時間以上,経産婦で2時間以上,児が娩出されない状態と定義される(8)。硬膜外麻酔の使用はいきみを遅らせ,第2期が1時間延長する可能性がある(9)。また,胎位異常(例,後方後頭位)のためにいきみ時間が長くなることもある。

第3期

第3期は,児の娩出後から胎盤の娩出までである。通常は数分で終了するが,最長で30分かかる場合もある。

分娩の過程に関する参考文献

  1. 1.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): Obstetrics Data Definitions

  2. 2.Kilpatrick SJ, Garrison E, Fairbrother E: Normal labor and delivery.In: Landon MB, Galan HL, Jauniaux E, et al, eds.Gabbe's Obstetrics: Normal and Problem Pregnancies.8th ed.Elsevier; 2021.eBook ISBN: 9780323613408

  3. 3.Tilden EL, Phillippi JC, Ahlberg M, et al: Describing latent phase duration and associated characteristics among 1281 low-risk women in spontaneous labor. Birth 46(4):592-601, 2019.doi:10.1111/birt.12428

  4. 4.Friedman EA, Cohen WR.The active phase of labor. Am J Obstet Gynecol.2023;228(5S):S1037-S1049.doi:10.1016/j.ajog.2021.12.269

  5. 5.Lawrence A, Lewis L, Hofmeyr GJ, Styles C: Maternal positions and mobility during first stage labour.Cochrane Database Syst Rev (8):CD003934, 2013.doi: 10.1002/14651858.CD003934.pub3

  6. 6.Aasheim V, et al: Perineal techniques during the second stage of labour for reducing perineal trauma.Cochrane Database Syst Rev 6:CD006672, 2017.doi: 10.1002/14651858.CD006672.pub3

  7. 7.Gupta JK, Sood A, Hofmeyr GJ, et al: Position in the second stage of labour for women without epidural anaesthesia.Cochrane Database Syst Rev 5:CD002006, 2017.doi: 10.1002/14651858.CD002006.pub4

  8. 8.Obstetric care consensus no. 1: safe prevention of the primary cesarean delivery. Obstet Gynecol.123(3):693-711, 2014.doi:10.1097/01.AOG.0000444441.04111.1d

  9. 9.Lemos A, Amorim MM, Dornelas de Andrade A, et al: Pushing/bearing down methods for the second stage of labour.Cochrane Database Syst Rev 3:CD009124, 2017.doi: 10.1002/14651858.CD009124.pub3

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