リンパ球減少症

執筆者:David C. Dale, MD, University of Washington
Reviewed ByJerry L. Spivak, MD, MACP, Johns Hopkins University School of Medicine
レビュー/改訂 修正済み 2025年 2月
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リンパ球減少症とは,総リンパ球数が成人では1000/μL(1 × 109/L)未満,2歳未満の小児では3000/μL(3 × 109/L)未満となった状態である。続発症として,日和見感染症,悪性疾患および自己免疫疾患のリスク増加などがある。血算でリンパ球減少症が認められた場合は,続いて免疫不全症の有無を調べる検査およびリンパ球亜群の解析を,通常は全ての急性事象から回復した後に行うべきである。治療は基礎疾患に対して行う。

リンパ球は細胞性免疫の構成要素であり,T細胞,B細胞,およびナチュラルキラー(NK)細胞という種類があるが,いずれも末梢血中に認められ,リンパ球全体に占める割合は,T細胞が約75%,B細胞が20%,NK細胞が5%である。リンパ球が占める割合は,白血球総数のわずか20~40%であるため,白血球分画を含まない白血球数の測定では,リンパ球減少症が見逃される場合がある。

リンパ球数の正常値は,成人で1000~4800/μL(1 to 4.8 × 109/L),2歳未満の小児で3000~9500/μL(3 to 9.5 × 109/L)である。6歳での正常下限は1500/μL(1.5 × 109/L)である。正常値は検査室間で若干異なる場合がある。

血中T細胞の約65%はCD4陽性(ヘルパー)T細胞である。したがって,リンパ球減少症の大半の患者でT細胞の絶対数,特にCD4陽性T細胞数の減少が認められる。成人血液中のCD4陽性T細胞数は平均1100/μL(1.1 × 109/L)(範囲300~1300/μL[0.3~1.3 × 109/L])で,T細胞のもう1つの主要なサブグループであるCD8陽性(抑制性)T細胞数は平均600/μL(0.6 × 109/L)(範囲100~900/μL[0.1~0.9 × 109/L])である。

血液中のリンパ球はリンパ球プール全体のごく一部に過ぎず,リンパ球数は他のリンパ組織(例,リンパ節,脾臓)や非リンパ組織(例,肺,肝臓)におけるリンパ球の組成や数と必ずしも相関しないことに注意する必要がある。同様に,特定のリンパ球サブセット(例,CD8陽性,B細胞,NK細胞)の欠乏も見逃される可能性がある。

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リンパ球減少症の病因

リンパ球減少症では,以下の分類が可能である。

  • 後天性

  • 遺伝性

後天性リンパ球減少症

後天性リンパ球減少症は,他のいくつかの疾患に伴い発生することがある(リンパ球減少症の原因の表を参照)。

最も一般的な原因は以下のものである:

  • タンパク質-エネルギー低栄養

  • 感染症,特にウイルス性(例,HIV,COVID-19,EBV)

  • 自己免疫疾患

  • 悪性疾患

  • 細胞傷害性薬剤または免疫抑制薬

タンパク質-エネルギー低栄養は,世界で最も一般的な原因である。

リンパ球減少症は,多くのウイルスおよび細菌感染症,敗血症,コルチコステロイド治療,ならびにストレス反応によって引き起こされる場合,しばしば一過性である。

HIV感染症患者では,決まってリンパ球減少症がみられるが,これはHIVに感染したCD4陽性T細胞が破壊されることで生じる(1)。リンパ球減少症は,胸腺またはリンパ組織の構造破壊から生じるリンパ球産生障害を反映していることもある。HIVまたはその他のウイルスによる急性ウイルス血症では,ウイルスによる活動性感染症に起因するリンパ球の破壊の加速,脾臓もしくはリンパ節でのリンパ球の捕捉,または気道へのリンパ球の遊走がみられる場合がある。

COVID-19の患者でもリンパ球減少症が高頻度でみられる(患者の35~83%)(2)。COVID-19によるリンパ球減少症の原因は完全には解明されていないが,COVID-19の原因ウイルスはリンパ球に直接感染することができ,そこからサイトカインが関係したアポトーシスが生じる可能性が高い。リンパ球数の低値は,予後不良であることと,ICUでの治療が必要となる可能性とCOVID-19により死亡する可能性が高いことを示唆する。

リンパ腫サルコイドーシス,自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス関節リウマチ重症筋無力症など),および消化管疾患または収縮性心膜炎によって引き起こされるタンパク漏出性胃腸症に伴ってリンパ球減少症が発生する場合がある。

医原性のリンパ球減少症は,細胞傷害性薬剤による化学療法,放射線療法,または抗リンパ球グロブリン(またはリツキシマブなど他のリンパ球抗体)の投与によってもたらされる。ソラレンと紫外線A波照射を用いた乾癬の長期治療によりT細胞が破壊される場合がある。グルココルチコイド療法を長期継続すると,クッシング症候群でみられるようなリンパ球の破壊が誘導される可能性がある。

遺伝性リンパ球減少症

遺伝性リンパ球減少症(リンパ球減少症の原因の表を参照)は以下の疾患で生じることが最も多い:

遺伝性免疫不全疾患およびリンパ球産生障害を伴う疾患で発生することがある(3)。ほかにウィスコット-アルドリッチ症候群アデノシンデアミナーゼ欠損症プリンヌクレオチドホスホリラーゼ欠損症などの遺伝性疾患がT細胞破壊の亢進に関与する場合がある。WHIM(warts, hypogammaglobulinemia, infections, and myelokathexis)症候群は,異常白血球の遊走と骨髄内での成熟好中球の滞留により好中球減少症とリンパ球減少症が生じる,まれな遺伝性疾患である。この種の疾患の多くでは,抗体産生も不十分になる。

表&コラム
表&コラム

病因論に関する参考文献

  1. 1.Moir S, Chun TW, Fauci AS.Pathogenic mechanisms of HIV disease.Annu Rev Pathol.6:223-6248, 2011.doi: 10.1146/annurev-pathol-011110-130254

  2. 2.Mina A, van Besien K, Platanias LC.Hematological manifestations of COVID-19.Leuk Lymphoma.61(12):2790-2798, 2020.doi:10.1080/10428194.2020.1788017

  3. 3.Howley E, Golwala Z, Buckland M, et al.Impact of newborn screening for SCID on the management of congenital athymia.J Allergy Clin Immunol.153(1), 330–334, 2024.doi:10.1016/j.jaci.2023.08.031

リンパ球減少症の症状と徴候

リンパ球減少症は一般に症状を引き起こさない。しかし,以下のような関連疾患の所見がみられることがある:

  • 細胞性免疫不全を示す扁桃またはリンパ節の消失または退縮

  • 皮膚の異常(例,脱毛症,湿疹,膿皮症,毛細血管拡張,疣贅)

  • 血液疾患の所見(例,蒼白,点状出血,黄疸,口腔内潰瘍)

  • HIV感染またはホジキンリンパ腫が示唆される全身性リンパ節腫脹および脾腫

リンパ球減少症のある患者では,反復性感染症がみられたり,まれな微生物による感染症が発生したりする。Pneumocystis jiroveciiサイトメガロウイルス麻疹,および水痘肺炎は,多くの場合致死的である。リンパ球減少症は,発がんおよび自己免疫疾患の危険因子でもある。

リンパ球減少症の診断

  • 臨床的に疑われる場合(反復性感染症,またはまれな感染症)

  • 血算と白血球分画

  • フローサイトメトリーによるリンパ球亜群の測定および免疫グロブリン値(IgG,IgA,IgM)の測定

  • ときに全エクソーム配列決定

リンパ球減少症は,ウイルス,細菌,真菌,または寄生虫感染症を繰り返す患者で疑われるが,通常は血算で偶然発見される。P. jirovecii,サイトメガロウイルス,麻疹,または水痘肺炎でリンパ球減少症を伴う場合は,免疫不全が示唆される。

リンパ球減少症のある患者では,フローサイトメトリーでリンパ球亜群を測定する。抗体産生を評価するために免疫グロブリン濃度の測定も行うべきである。反復性感染症の既往がある患者では,最初のスクリーニング検査の結果が正常でも,免疫不全に関して徹底的な臨床検査を行うべきである。持続性のリンパ球減少症および低ガンマグロブリン血症がある新生児および乳児は,遺伝子検査の適応である。全エクソーム配列決定が役立つことがある。

リンパ球減少症の治療

  • 合併する感染症の治療

  • 基礎疾患の治療

  • ときに静注用または皮下注用免疫グロブリン製剤

  • 場合によっては造血幹細胞移植

後天性リンパ球減少症の場合,通常は根底にある要因の除去または基礎疾患の治療奏効により寛解する。慢性IgG欠乏症,リンパ球減少症,および反復性感染症が認められる患者であれば,静注または皮下注用免疫グロブリン製剤が適応となる。経口CXCR4拮抗薬であるマボリキサホル(mavorixafor)は,WHIM症候群の治療に効果的である。WHIM症候群の患者にマボリキサホル(mavorixafor)を投与した複数のランダム化試験において,好中球数およびリンパ球数が増加するとともに,プラセボ投与を受けた患者と比較して感染症および皮膚疣贅が減少したことが実証された。造血幹細胞移植は,先天性免疫不全症の全ての患者に検討可能で,治癒が期待できる(1, 2)。

このような患者への生ワクチンの接種は避ける(感染を引き起こすリスクがあるため)。不活化または組換えワクチンは安全であるが,その効力はリンパ球減少症の種類および重症度によって様々である。

治療に関する参考文献

  1. 1.Dale DC, Firkin F, Bolyard AA, et al.Results of a phase 2 trial of an oral CXCR4 antagonist, mavorixafor, for treatment of WHIM syndrome [published correction appears in Blood. 2023 Jun 29;141(26):3232. doi: 10.1182/blood.2023019759]. Blood.2020;136(26):2994-3003.doi:10.1182/blood.2020007197

  2. 2.Badolato R, Alsina L, Azar A, et al.A phase 3 randomized trial of mavorixafor, a CXCR4 antagonist, for WHIM syndrome. Blood.2024;144(1):35-45.doi:10.1182/blood.2023022658

要点

  • リンパ球減少症は大半が末期HIV感染症,COVID-19,または低栄養に起因するが,遺伝性のものや,様々な感染症,薬剤,または自己免疫疾患に起因するものもある。

  • ウイルス,細菌,真菌,または寄生虫による反復性感染症が生じる。

  • リンパ球亜群および免疫グロブリン濃度を測定すべきである。

  • 持続性のリンパ球減少症および低ガンマグロブリン血症がある新生児および乳児は,遺伝子検査の適応である。

  • 治療は,通常原因に対して行うが,ときに静注または皮下注用免疫グロブリン製剤のほか,先天性免疫不全症の患者では造血幹細胞移植が助けになることがある。

  • このような患者では生ワクチンの接種を避ける。

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