タンパク質-エネルギー低栄養

執筆者:John E. Morley, MB, BCh, Saint Louis University School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 7月
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以前はタンパク質-エネルギー栄養障害と呼ばれたタンパク質-エネルギー低栄養(PEU)は,全ての多量栄養素の欠乏によるエネルギー欠乏である。一般的に多くの微量栄養素の欠乏もみられる。PEUには,突然かつ完全なもの(飢餓),または徐々に進行するものがある。重症度は,治療を必要としない欠乏から明らかな消耗(浮腫,脱毛,および皮膚萎縮を伴う),さらに飢餓状態まで様々である。複数の器官系が障害されることが多い。診断では通常,血清アルブミンを含む臨床検査を行う。治療は,静注液により体液および電解質不足を解消し,その後可能であれば経口で,徐々に栄養素を補給する。

低栄養の概要も参照のこと。)

十分な食料源を有する国では,施設に入所している高齢者(ただし,疑われないことが多い),ならびに食欲を減退させる疾患,または栄養素の消化,吸収,もしくは代謝を障害する疾患の患者にPEUがよくみられる。食料不安の割合が高い国では,カロリーまたはタンパク質の摂取が不十分な小児にPEUが生じる。

PEUの分類と病因

PEUは軽度,中等度,または重度に分類される。分類は,国際標準を用いて実際の体重の体長または身長に基づく予想値に対する割合を算出することで決定される(正常90~110%;軽度85~90%;中等度75~85%;重度75%未満)。

PEUには以下の形態がありうる:

  • 原発性:栄養素の摂取不足によって起こる

  • 二次性:栄養素の利用を妨げる疾患または薬物に起因する

原発性PEU

世界的に,原発性PEUは大半が栄養素を摂取できない小児および高齢者に起こるが,高齢者ではうつ病が一般的な原因である。PEUは絶食または神経性やせ症に起因することもある。小児虐待または高齢者虐待が原因となることもある。

小児では,慢性の原発性PEUには,よくみられる2つの型がある:

  • マラスムス

  • クワシオルコル

この型は,エネルギー源の非タンパク質とタンパク質のバランスによって決まる。飢餓は,急性で重症の原発性PEUである。

マラスムス(乾性型PEUとも呼ばれる)は,体重減少ならびに脂肪および筋肉の減少を引き起こす。食料不安の割合が高い国では,マラスムスは小児に最もよくみられるPEUの型である。

クワシオルコル(湿性型,腫脹型,または浮腫型とも呼ばれる)は,授乳を早めに切り上げた後のリスクであり,典型的には年少の同胞が生まれて年長児を離乳させた際に起こる。そのため,クワシオルコルに罹患する小児は,マラスムスに罹患する小児よりも年長である傾向がある。また,すでにPEUを来している小児で,急性疾患(しばしば胃腸炎または他の感染症[おそらくサイトカインの放出に続発する])に起因してクワシオルコルが生じることもある。エネルギーよりもタンパク質が不足している食事は,マラスムスよりもクワシオルコルを引き起こす可能性が高い。クワシオルコルはマラスムスよりも頻度が低く,アフリカの村落,カリブ地方,太平洋諸島など特定の地域に限局する傾向がある。このような地域では,主食(例,ヤムイモ,キャッサバ,サツマイモ,グリーンバナナ)にタンパク質が少なく,炭水化物が多い。クワシオルコルでは,細胞膜が漏出を来し,血管内液およびタンパク質の血管外漏出が引き起こされ,末梢浮腫が生じる。

マラスムスおよびクワシオルコルの両方で,細胞性免疫が障害され,感染に対する感受性が増大する。細菌感染症(例,肺炎胃腸炎中耳炎尿路感染症敗血症)がよくみられる。感染の結果サイトカインが放出され,それにより食欲不振が生じ,筋萎縮が悪化し,血清アルブミン値が著しく低下する。

飢餓は,栄養素の完全な欠乏状態である。ときに食物が手に入る場合に起こるが(絶食または神経性やせ症など),通常は食物が手に入らないために起こる(例,飢饉または遭難時)。

二次性PEU

この型は以下に起因することが最も多い:

  • 消化管機能を侵す疾患:そのような疾患には,栄養素の消化を阻害するもの(例,膵機能不全),吸収を阻害するもの(例,腸炎,腸疾患),またはリンパ管輸送を阻害するもの(例,後腹膜線維症,Milroy病)がある。

  • 消耗性疾患:消耗性疾患(例,AIDSがんCOPD)および腎不全では,異化作用によりサイトカインの過剰が生じ,食欲不振および悪液質(筋および脂肪の消耗)を介して低栄養を来す。末期心不全は,重度の低栄養である心臓悪液質を引き起こす可能性があり,死亡率が特に高い。心臓悪液質の寄与因子には,受動性肝臓うっ血(passive hepatic congestion)(食欲不振を引き起こす),腸管の浮腫(吸収を障害する),および進行例では嫌気性代謝による酸素必要量の増大などがある。消耗性疾患は食欲を減退させる,または栄養素の代謝を障害することがある。

  • 代謝要求を増大させる状態:そのような状態には,感染症甲状腺機能亢進症褐色細胞腫,その他の内分泌疾患,熱傷,外傷,手術,およびその他の重篤な疾患などがある。

PEUの病態生理

PEUの最初にみられる代謝の反応は,代謝率の低下である。エネルギーを供給するため,身体はまず脂肪組織を分解する。しかし,その後,脂肪組織が枯渇すると,身体はエネルギーのためにタンパク質を利用し,負の窒素バランスを来すことがある。内臓器官および筋肉が分解され,その重量が減少する。臓器重量は肝臓および腸管の減少量が最も多く,心臓および腎臓では中程度で,神経系の減少量が最も少ない。

PEUの症状と徴候

中等度のPEUの症状は,全身に現れる場合と特定の器官系に現れる場合とがある。無関心と易怒性がよくみられる。患者は体力が衰え,作業能力が低下する。認知障害およびときに意識障害が起きる。一時的な乳糖欠乏症および無酸症が生じる。下痢がよくみられ,腸管の二糖類分解酵素(特にラクターゼ)の欠乏によって増悪することがある。性腺組織は萎縮する。PEUにより,女性は無月経となり,男女ともに性欲が喪失することがある。

いずれの型のPEUでも,脂肪および筋肉の消耗がよくみられる。30~40日間絶食した成人ボランティアでは,体重減少が著明であった(当初の体重の25%)。飢餓状態がさらに長引けば,体重減少は成人で50%,小児ではそれ以上に達する可能性がある。

成人では,悪液質は,正常であれば蓄積脂肪が目立つ部位で最も顕著である。筋肉が縮み,骨が突出する。皮膚は薄くなり,乾燥し,弾力性を失い,蒼白で冷たくなる。毛髪はぱさつき,抜けやすく,薄くなる。創傷治癒が障害される。高齢患者では,股関節骨折および褥瘡のリスクが増大する。

急性または慢性で重度のPEUでは,心臓の大きさと心拍出量が減少して,脈拍が遅くなり,血圧が低下する。呼吸数および肺活量が減少する。体温が低下し,ときに死亡の一因となる。浮腫,貧血,黄疸,および点状出血が生じることがある。肝不全,腎不全,または心不全が起こることがある。

乳児のマラスムスは,空腹,体重減少,発育遅滞,および皮下脂肪と筋肉の消耗を引き起こす。肋骨および顔面骨が浮き出て見える。たるんだ薄い皮膚がひだ状に垂れる。

クワシオルコルは,血清アルブミンの減少による末梢浮腫および眼窩周囲の浮腫を特徴とする。腹筋が弱まり,腸管が拡張し,肝臓が腫大し,腹水が生じるため,腹部が突出する。皮膚は乾燥して薄く,しわができる;色素沈着および亀裂がみられることがあり,その後,色素脱失が生じ,もろくなり,萎縮する。様々な部位の皮膚が,それぞれ異なる時期に罹患することがある。毛が薄くなり,赤褐色または灰色になることがある。頭髪は抜けやすく,最終的には希薄になるが,睫毛が過剰に伸びることがある。低栄養と十分な栄養のエピソードを交互に繰り返すと,毛髪が「縞模様の旗」のような際立った外観となることがある。罹患した小児は,無関心であるが抱くと苛立つようになることがある。

完全な飢餓は8~12週間で致死的となる。したがって,PEUの特定の症状は出現する時間がない。

PEUの診断

  • 診断は通常は病歴に基づく

  • 重症度の判定を目的として:BMI(body mass index),血清アルブミン,総リンパ球数,CD4陽性細胞数,血清トランスフェリン

  • 合併症および予後の診断を目的として:血算,電解質,血中尿素窒素,グルコース,カルシウム,マグネシウム,リン

食事の摂取が著しく不十分であれば,病歴に基づいてPEUを診断できる。摂取が不十分になった原因を特定する必要がある(特に小児の場合)。小児および青年では,小児虐待および神経性やせ症を考慮すべきである。

身体診察には,身長と体重の測定,体脂肪分布の視診,および除脂肪体重に関する身体測定を含めることがある。BMI(body mass index = 体重[kg]/身長[m]2)を算出して,重症度を判定する。通常,所見により診断を確定できる。

医学計算ツール(学習用)

食事歴によりカロリー摂取が不十分であることが明確に示されない場合,臨床検査が必要となる。血漿アルブミン,総リンパ球数,CD4陽性Tリンパ球,トランスフェリン,および皮膚の抗原に対する反応の測定は,PEUの重症度を判定するために(タンパク質-エネルギー低栄養の重症度を評価するために一般的に用いられる測定値の表を参照),または境界例で診断を確定するために役立つことがある。他の検査結果が異常を示すことも多い(例,ホルモン,ビタミン,脂質,コレステロール,プレアルブミン,インスリン様成長因子1,フィブロネクチンおよびレチノール結合タンパク質の値の低下)。筋萎縮の程度を評価するために,尿中クレアチンおよびメチルヒスチジンの値が利用できる。タンパク質の異化が遅延するため,尿中尿素の濃度も低下する。これらの所見が治療に影響を及ぼすことはまれである。

表&コラム
表&コラム

二次性PEUが疑われる例の原因を同定するには,臨床検査が必要である。低栄養の原因が不明である場合,C反応性タンパク(CRP)または可溶性インターロイキン2受容体を測定すべきである;これらの測定値は,サイトカインが過剰かどうかの判定に役立つことがある。甲状腺機能検査も行うことがある。

他の臨床検査には,治療を必要とする可能性がある関連した異常を検出できるものがある。血清電解質,血中尿素窒素,およびグルコースのほか,ときにカルシウム,マグネシウム,およびリンの濃度を測定すべきである。血糖,電解質(特にカリウム,ときにナトリウム),リン,カルシウム,およびマグネシウムの濃度は通常低い。腎不全がない限り,血中尿素窒素は低いことが多い。代謝性アシドーシスが存在することがある。通常は血算を行う;正球性貧血(通常はタンパク質欠乏による)または小球性貧血(鉄欠乏症の併発による)が通常認められる。

下痢が重度であるか,治療で解消されない場合は,便培養を行い寄生虫の虫卵および虫体がないか確認すべきである。PEU患者は感染症に対して反応が弱いことがあるため,ときに尿検査,尿培養,血液培養,ツベルクリン検査,および胸部X線を用いて不顕性感染を診断する。

PEUの予後

小児

小児では,死亡率は5~40%まで様々である。軽度PEUの患児および集中治療を受ける患児では,死亡率が低い。治療開始から数日以内の死亡は通常,電解質不足,敗血症,低体温症,または心不全によるものである。意識障害,黄疸,点状出血,低ナトリウム血症,および持続性の下痢は予後不良の徴候である。無関心,浮腫,および食欲不振の解消は好ましい徴候である。クワシオルコルではマラスムスよりも回復が早い。

小児におけるPEUの長期的な影響は,十分に立証されていない。一部の小児では慢性の吸収不良および膵機能不全が発生する。非常に年少の小児では,軽度の知的障害が発生して少なくとも就学年齢まで持続することがある。PEUの罹病期間,重症度,および発症年齢によっては,永続的な認知障害が起こる可能性がある。

成人

成人では,PEUにより合併症が発生し,死に至ることがある(例,介護施設の高齢患者では,進行性の体重減少は死亡率を上昇させる)。高齢患者では,PEUにより,手術,感染症,または他の疾患に起因する合併症および死亡のリスクが増大する。

臓器不全を来す場合を除き,治療は一様に奏効する。

PEUの治療

  • 通常は経口摂食

  • 場合によっては乳糖の回避(例,持続性の下痢が乳糖不耐症を示唆する場合)

  • 支持療法(例,環境の変化,食事の介助,食欲促進剤)

  • 小児では,摂食を24~48時間遅らせる

世界的に,最も重要なPEUの予防策は,貧困を減らし,栄養に関する教育および公衆衛生対策を改善することである。

短期間の飢餓を含め,軽度または中等度のPEUは,バランスのとれた食事(経口摂取が望ましい)を提供することによって治療できる。固形食を十分摂取できない場合は,流動食の経口栄養補助食品(通常は乳糖を含まないもの)を使用できる。飢餓があると,消化管で細菌がパイエル板の中に移動する可能性が高くなり,その結果,感染性の下痢が生じやすくなるため,下痢により経口栄養が困難になることが多い。下痢が続く場合(乳糖不耐症を示唆)は,乳糖不耐症の人でもヨーグルトには耐えられるため,牛乳ではなくヨーグルトベースの人工乳を与える。総合ビタミン剤も投与すべきである。

重度のPEUまたは長期にわたる飢餓状態には,管理食による病院での治療が必要である。最優先すべきことは,体液異常および電解質異常の是正および感染症の治療である。最近の研究では,小児では抗菌薬の予防投与が有益となる可能性があることが示唆されている。次に優先することは,経口で,または必要であれば(例,嚥下が困難な場合)栄養チューブ,経鼻胃管(通常),または胃瘻チューブ(経腸栄養)を介して多量栄養素を補給することである。吸収不良が重度の場合は,静脈栄養の適応となる。

体重の増加とともに明らかになることがある特定の欠乏症を是正するために,他の治療法が必要になることがある。欠乏を避けるためには,完全に回復するまで,1日当たりの推奨量の約2倍の微量栄養素を摂取すべきである。

小児

PEUの小児では基礎疾患を治療すべきである。

下痢がある小児には,その悪化を回避するため,摂食を24~48時間遅らせることがあるが,その間は経口補水または輸液による水分補給が必要である。摂食回数を多くするが(1日6~12回),限られた腸管の吸収能力を超えないよう,少量(100mL未満)に限る。第1週には,通常は栄養補助食品を加えたミルクベースの人工乳を次第に量を増やしながら与え,1週間後には,全合計量175kcal/kgとタンパク質4g/kgを与えることができる。市販の総合ビタミン剤を用いて,1日当たりの推奨量の2倍の微量栄養素を与えるべきである。4週間後には,人工乳を全乳にタラの肝油を加えたものおよび固形食(卵,果物,肉,酵母など)に切り替えられる。

多量栄養素のエネルギー配分は,タンパク質を約16%,脂肪を50%,炭水化物を34%とすべきである。一例として,脱脂粉乳(110g),ショ糖(100g),植物油(70g),および水(900mL)の組合せがある。ほかにも多くの人工乳(例,新鮮な全乳[全脂]にトウモロコシ油およびマルトデキストリンを加えたもの)を使用できる。人工乳に用いる粉乳は水で希釈する。

通常,人工乳とともにサプリメントを与えるべきである:

  • マグネシウム0.4mEq/kg/日を7日間筋注する。

  • 1日当たりの推奨量の2倍のビタミンB群を最初の3日間,通常はビタミンA,リン,亜鉛,マンガン,銅,ヨウ素,フッ素,モリブデン,およびセレンとともに,静注で投与する。

  • PEUの小児は経口では鉄を吸収しにくいため,経口または筋注による鉄補充が必要になることがある。

栄養所要量について親を指導する。

成人

基礎疾患を治療すべきである。例えば,AIDSまたはがんによってサイトカイン産生が過剰となる場合は,酢酸メゲストロールまたはメドロキシプロゲステロンにより食物摂取が改善することがある。しかし,これらの薬剤は男性でテストステロンを劇的に低下させるため(筋量低下を引き起こす可能性がある),テストステロンを補充すべきである。これらの薬剤は副腎皮質機能低下症を引き起こすことがあるため,使用は短期間(3カ月未満)のみにすべきである。

原因が明らかでない食欲不振の患者または食欲不振により生活の質が損なわれる末期患者には,大麻抽出物のドロナビノールなどの食欲促進剤を投与すべきである。タンパク質同化ステロイド(例,テストステロンエナント酸エステル,ナンドロロン)または成長ホルモンが,腎不全による悪液質の患者や高齢患者に有益となることがある(例,除脂肪体重を増加させるか,機能を改善することによる)。

成人のPEUの是正は,一般に小児と同様であり,摂食を少量に限ることが多い。しかし,大半の成人では摂食を遅らせる必要はない。経口摂食用の市販の人工乳を使用できる。日々の栄養供給は60kcal/kg,タンパク質1.2~2g/kgの割合で与えるべきである。固形食とともに経口の液体サプリメントを用いる場合は,食事の際に食べる量が減少しないよう,サプリメントは少なくとも食事の1時間前に与えるべきである。

施設に入所している高齢のPEU患者の治療では,複合的な介入が必要である:

  • 環境調整(例,食堂をより魅力的な場所にする)

  • 食事介助

  • 食事の変化(例,風味調味料や間食としてのカロリーサプリメントの使用)

  • うつ病および他の基礎疾患の治療

  • 食欲促進剤,タンパク質同化ステロイド,またはその両方の使用

重度の嚥下困難患者には胃瘻経管栄養の長期利用が必須である;認知症患者での使用には議論がある。味のよくない治療食(例,低塩食,糖尿病食,低コレステロール食)は食物摂取量を減らし重度のPEUを引き起こすことがあるため,施設入所患者にはこのような治療食を避けることを支持するエビデンスが増えている。

機能制限がある患者では,家庭への配食および食事介助が鍵となる。

治療の合併症

PEUの治療により,体液過剰,電解質欠乏,高血糖,不整脈,および下痢などの合併症(refeeding syndrome)が起こることがある。下痢は通常軽度であり解消するが,重度のPEU患者の下痢は,ときに重度の脱水または死亡の原因となる。下痢の原因(例,エリキシル経管栄養に用いられるソルビトール,患者が抗菌薬の投与を受けている場合のClostridioides difficile)は,是正可能なことがある。成人では,カロリー過剰による浸透圧性下痢はまれであり,他の原因が除外されたときに限り考慮すべきである。

PEUは心および腎機能を障害するため,水分過剰により血管内容量が過剰になることがある。治療により細胞外のカリウムおよびマグネシウムが減少する。カリウムまたはマグネシウムの減少は不整脈を引き起こすことがある。治療中に炭水化物の代謝が起こると,インスリンの分泌が促進され,細胞内にリンが送り込まれる。低リン血症は,筋力低下,錯感覚,痙攣発作,昏睡,および不整脈を引き起こすことがある。静脈栄養中はリン濃度が急速に変化しうるため,濃度を定期的に測定すべきである。

治療中,内因性インスリンが無効になり,高血糖につながることがある。脱水および高浸透圧を来すことがある。QT延長によって引き起こされると思われる,致死的な心室性不整脈が発生することがある。

要点

  • PEUは,原発性(すなわち,栄養素の摂取量の低下によって引き起こされる)のこともあれば,消化管疾患,消耗性疾患,または代謝要求を増大させる状態に続発することもある。

  • 重度のPEUでは,体脂肪および最終的には内臓組織が喪失し,免疫が障害され,臓器機能が緩慢になり,ときに多臓器不全を来す。

  • 重症度を判定するためにBMI(body mass index),血清アルブミン,総リンパ球数,CD4陽性細胞数,および血清トランスフェリンを測定する。

  • 合併症および予後を診断するために,血算,電解質,血中尿素窒素,グルコース,カルシウム,マグネシウム,およびリンを測定する。

  • 軽度のPEUに対しては,バランスのとれた食事を推奨し,ときに乳糖を含む食品を避けるよう促す。

  • 重度のPEUに対しては,患者を入院させて,管理食を与え,体液および電解質異常を是正し,感染症を治療する;頻度の高い治療合併症(refeeding syndrome)としては,体液過剰,電解質異常,高血糖,不整脈,下痢などがある。

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