石綿肺

執筆者:Carrie A. Redlich, MD, MPH, Yale Occupational and Environmental Medicine Program Yale School of Medicine;
Efia S. James, MD, MPH, Bergen New Bridge Medical Center;Brian Linde, MD, MPH, Stanford University
Reviewed ByRichard K. Albert, MD, Department of Medicine, University of Colorado Denver - Anschutz Medical
レビュー/改訂 2023年 10月 | 修正済み 2023年 11月
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石綿肺はアスベストへの曝露により引き起こされる間質性肺線維症の1つの形態である。石綿肺は,進行性の労作時呼吸困難,乾性咳嗽,および疲労感を引き起こす可能性がある。診断は病歴および胸部X線またはCT所見に基づく。治療は支持療法による。

アスベスト関連疾患の概要および環境性および職業性肺疾患の概要も参照のこと。)

アスベストは天然に産出するケイ酸塩の1つのグループであり,その耐熱性および構造特性により,建設および造船の材料,自動車のブレーキ,ならびに一部の繊維製品に有用とされている。アスベストには大きく分けて,蛇紋石(クリソタイルを含む)と角閃石(アモサイト,クロシドライト,アンソフィライト,トレモライト,アクチノライトを含む)の2種類がある。

石綿肺はアスベストへの曝露により引き起こされる間質性肺疾患の1つの形態である。曝露から発症までの潜伏期間は通常20~40年である。石綿肺は,曝露の期間が長く,曝露の強度が高い患者では早期に現れる。

危険因子

アスベスト関連疾患の主な原因は依然として直接的な職業曝露である。先進国の大半では,アスベストの使用量は過去数十年で減少している。依然として古い建設資材や一部の製品からアスベストが検出されることがあり,今日における大半の職業曝露は,過去に使用が開始されたアスベスト含有製品の修理,改修,除去,保守の際に発生している。一般には,かつての職場での曝露は現在のものよりはるかに高度であった。

従来から曝露リスクが最も高いとされてきた職業としては,建設業者(断熱材取扱業者,配管工,大工,電気技師,屋根職人,石膏/プラスターボード業者),メンテナンス業者,造船所労働者および米海軍勤務者,ボイラーの製造業者および溶鉱炉労働者,自動車のブレーキ整備士,アスベストの採掘および加工に従事する労働者などがある。

石綿肺の病態生理

肺胞マクロファージが吸入された繊維を貪食する際,サイトカインおよび増殖因子を放出し,これらが炎症,酸化傷害,コラーゲン沈着を促進し,最終的に線維化をもたらす。アスベスト繊維は,肺組織に直接的にも毒性をもつ可能性がある。

疾患のリスクは,一般に曝露の期間および強度,ならびに吸入した繊維の種類,長さ,および太さに関係する(1)。

病態生理に関する参考文献

  1. 1.Solbes E, Harper RW.Biological responses to asbestos inhalation and pathogenesis of asbestos-related benign and malignant disease. J Investig Med 2018;66(4):721-727.doi:10.1136/jim-2017-000628

石綿肺の症状と徴候

最も一般的な臨床像は,緩徐進行性の労作時呼吸困難,乾性咳嗽,および疲労感である。

一般に,石綿肺は何年もかけて緩徐に進行し,曝露停止後も進行し続けることがある。

重症例では,末期線維症および右室不全(肺性心)を来すことがある。

石綿肺の診断

  • 胸部X線または望ましくは胸部高分解能CT

  • ときに気管支肺胞洗浄または肺生検

石綿肺の診断は,アスベスト(石綿)への曝露歴と胸部X線または高分解能CTの所見に基づく。病歴には,発症,持続,ならびに曝露の種類および強度を含めるべきである。

胸部X線では,線維化を示す両側性の線状網状陰影が,通常下葉の末梢にみられ,胸膜の変化を伴う場合と伴わない場合がある。胸部CTは胸膜の異常および実質病変を同定する上で感度が高く,典型的には肺線維症の通常型間質性肺炎パターンを示す。蜂巣肺が中下肺野に及ぶことがあり,より進行例であることを表している。

国際労働機関の基準(International Classification of Radiographs of Pneumoconioses)が,陰影の大きさ,形状,位置,および拡がりに基づいて塵肺症の有無と重症度を判定するために用いられている。石綿肺では網状陰影が下葉に優位にみられる。肺門部および縦隔のリンパ節腫脹および結節陰影はこの疾患の特徴ではなく,他の診断を示唆する。

肺機能検査では,拘束性パターン,肺拡散能(DLCO)の低下,および/または軽度の気流閉塞を認めることがある。このような所見は非特異的であるが,疾患の重症度を特徴づけるのに役立つ。

気管支肺胞洗浄または肺生検は,診断が不確かな場合に有用となる可能性がある。アスベスト繊維および/またはアスベスト小体の存在が証明されれば,診断の裏付けに役立つ可能性があるが,必ずしも必要ではない。

石綿肺の治療

  • 支持療法

特異的な治療法は存在しない。患者はさらなるアスベストへの曝露を回避すべきである。

管理は支持療法であり,適応があれば酸素投与を行い,呼吸器感染症は迅速に治療する。抗線維化薬および他の間質性肺疾患に用いられる免疫療法が効果的な場合がある。

肺機能障害のある患者では呼吸リハビリテーションが役立つことがある。

進行例は肺移植の対象となることもある。

石綿肺患者にはインフルエンザCOVID-19肺炎に対するワクチン接種が重要である。

石綿肺の予後

予後は様々であり,石綿肺は典型的には何年もかけて緩徐に進行する。患者の多くは症状が軽度であり予後良好であるが,一部の患者は進行性呼吸困難を発症し,また少数の患者は呼吸不全および右室不全を発症する。

石綿肺患者は肺癌(通常は非小細胞肺癌)のリスクが有意に高い。さらに,アスベストと喫煙は肺癌リスクに相乗的に影響を与える。形態を問わずアスベストの吸入は肺癌リスクの上昇と関連している。

石綿肺の予防

予防策としては,曝露回避,職場およびその他の環境からのアスベスト除去,禁煙などがある。喫煙とアスベスト曝露による肺癌の相乗的リスクを考慮すると,禁煙は極めて重要である。

石綿肺における肺癌スクリーニングに対する具体的な推奨はないが,一般集団に対する推奨に基づいて肺癌スクリーニングに適格となる患者は,年1回のスクリーニングを受けるべきである。

要点

  • アスベストの使用は減少しているが,発症までの潜伏期間が長い(20~40年)ため,石綿肺は依然として公衆衛生上の重要な懸念事項である。

  • 診断は,アスベストへの曝露歴および間質性肺疾患のX線所見に基づく。

  • 治療は主に支持療法であり,禁煙が重要である。

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