黄色ブドウ球菌感染症

(ブドウ球菌感染症)

執筆者:Larry M. Bush, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;
Maria T. Vazquez-Pertejo, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center
Reviewed ByBrenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2025年 9月 | 修正済み 2025年 10月
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やさしくわかる病気事典

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は多くの一般的なブドウ球菌の中でも最も危険な菌種です。これらのグラム陽性の球状細菌(球菌)(図「」を参照)は、しばしば皮膚感染症を引き起こしますが、肺炎、心臓弁感染症、骨感染症を引き起こすことがあり、一部の抗菌薬による治療に対して耐性を示す場合があります。

  • これらの細菌は、感染者と直接接触したり、汚染された物を使用したり、くしゃみやせきによって飛散した飛沫を吸入することで感染します。

  • 皮膚の感染症が一般的ですが、血流を介して広がり、離れた器官に感染することもあります。

  • 皮膚の感染症では、感染部位に水疱、膿瘍、発赤と腫れがみられます。

  • 診断は、皮膚の外観や、感染部位のサンプル中から特定された細菌に基づいて下されます。

  • 感染を起こした菌株に効果的な抗菌薬を考慮して、薬を選択します。

  • 手を十分に洗うことで感染の拡大を予防できます。

細菌の概要も参照のこと。)

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は健康な成人の約32%の鼻腔に存在し(通常は一時的に)、約20%の皮膚に存在しています。入院患者や病院で働く人では、この割合がさらに高くなります。

細菌は汚染された物体(ジムの器具、電話、ドアノブ、テレビのリモコンやエレベーターのボタンなど)に直接触れたり、それほど多くはないものの、くしゃみやせきの飛沫を吸入したりすることで広がります。

その細菌をもっているものの、症状は何も現れない人はキャリア(保菌者)と呼ばれます。キャリアであっても、手で鼻に触れることで鼻から体の他の部位に細菌を移動させることで感染症を発症することがあります。入院している人や病院で働いている人は、キャリアである可能性が高くなります。

ブドウ球菌感染症の種類

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染症は、軽度のものから生命を脅かすものまでと幅があります。

最も一般的なブドウ球菌感染症には以下があります。

  • 皮膚感染症(しばしば膿瘍を引き起こす)

ただし、細菌が血流に入り(菌血症と呼ばれる病態)、体内のほぼあらゆる部位に広がることがあり、特に心臓弁(心内膜炎)と骨(骨髄炎)に感染する傾向があります。

この細菌は、人工心臓弁、人工関節、心臓のペースメーカー、皮膚から血管に挿入されたカテーテルなどの医療器具に蓄積する傾向もあります。

特定のブドウ球菌感染症は、以下のような状況で発生しやすくなります。

  • 血流感染症: 静脈にカテーテルが挿入され、長期間留置された場合

  • 心内膜炎: 違法薬物を注射している場合、人工心臓弁が移植されている場合、または静脈に挿入されたカテーテルに感染した場合

  • 骨髄炎: 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が血液や付近の軟部組織から骨へ感染した場合(糖尿病による足の潰瘍や褥瘡[床ずれ]ができているときなど)

  • 肺感染症(肺炎): インフルエンザ(特に多い)や血液感染を起こしている場合、ステロイド(グルココルチコイドまたはコルチコステロイドと呼ばれることもあります)や免疫抑制薬(免疫機能を抑える薬剤)を使用している場合、もしくは気管挿管と人工呼吸器での管理が必要で入院している場合(院内肺炎と呼ばれる

黄色ブドウ球菌の毒素

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)には多くの種類(菌株)があります。菌株によっては毒素を作るものもあり、ブドウ球菌食中毒毒素性ショック症候群、または熱傷様皮膚症候群を引き起こします。

毒素性ショック症候群は、いくつかのレンサ球菌が産生する毒素によって引き起こされることもあります 毒素性ショック症候群は、発熱、発疹、危険な低血圧症と複数の臓器不全を含む、進行が速い一連の重篤な症状を指します。

ブドウ球菌感染症の危険因子

ブドウ球菌感染症にかかるリスクは、以下の特定の条件によって高まります。

抗菌薬に対する耐性

多くの菌株は抗菌薬に対する耐性を獲得しています。キャリアに抗菌薬を使用すると、抗菌薬に対する耐性のない菌株が死滅し、耐性菌が生き残ります。これらの細菌が増殖し、感染症を引き起こした場合は、治療がより難しくなります。

原因菌が耐性をもっているかどうかや、どの抗菌薬に対する耐性を獲得しているかは、感染した場所によって異なり、病院などの医療施設内で感染した場合と、それ以外の場所(市中)で感染した場合とで区別します。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )(MRSA)

病院では多数の抗菌薬が使用されるために、たいていの場合、病院スタッフは耐性菌のキャリアとなります。医療施設で感染(院内感染と呼ばれます)が起こった場合、その細菌は通常、ほぼすべてのペニシリン系抗菌薬(ベータラクタム系抗菌薬)など、複数の抗菌薬に対する耐性をもっています。ほぼすべてのベータラクタム系抗菌薬に耐性のある菌株は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)と呼ばれます。メチシリンはペニシリン系抗菌薬の一種です。

MRSA株の中には、軽度の膿瘍や皮膚感染症などの、医療施設の外で感染する(市中感染症)ものもあります。

知っていますか?

  • ブドウ球菌感染症では、原因菌の多くが抗菌薬に対する耐性をもっているため、治療が困難な場合があります。

ブドウ球菌感染症の症状

皮膚感染症が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によって生じた場合、以下のものなどがみられます。

  • 毛包炎は最も軽度のものです。毛の根元(毛包)が感染し、わずかな痛みを伴う小さな吹き出物が毛の根元にできます。

  • 膿痂疹(のうかしん)では、浅い水疱がつぶれて周りに黄色いかさぶたができ、かゆみや痛みがみられます。

  • 膿瘍(おでき、せつ)は、皮膚の下にできる膿のかたまりで、熱をもち、痛みを伴います。

  • 蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、皮膚と皮膚直下組織の感染症です。蜂窩織炎は広がって、痛みと発赤が生じます。

  • 中毒性表皮壊死融解症と新生児でみられる熱傷様皮膚症候群は、重篤な感染症です。どちらも広い範囲で皮膚がむけます。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による皮膚感染症の例
せつ(おでき)

この写真しゃしんのせつ(おでき)は、れて圧痛あっつうがあり、内部ないぶにはうみがたまっています。

この写真しゃしんのせつ(おでき)は、れて圧痛あっつうがあり、内部ないぶにはうみがたまっています。

Photo provided by Thomas Habif, MD.

まゆしたしょうじたせつ

この女性じょせいでは、まゆした炎症えんしょうこしたあかいせつがみられます。

この女性じょせいでは、まゆした炎症えんしょうこしたあかいせつがみられます。

DermPics/SCIENCE PHOTO LIBRARY

膿痂疹のうかしん(のうかしん)

膿痂疹のうかしんでは、水疱すいほう複数ふくすうあつまってあらわし、それらがやぶれてハチミツのようないろの痂かわ形成けいせいされます。

膿痂疹のうかしんでは、水疱すいほう複数ふくすうあつまってあらわし、それらがやぶれてハチミツのようないろの痂かわ形成けいせいされます。

Image courtesy of Thomas Habif, MD.

小児しょうに膿痂疹のうかしん

この膿痂疹のうかしん小児しょうに写真しゃしんでは、黄色きいろいかさぶたをともなった皮膚ひふのただれがみられます。

この膿痂疹のうかしん小児しょうに写真しゃしんでは、黄色きいろいかさぶたをともなった皮膚ひふのただれがみられます。

DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

ブドウ球菌の皮膚感染症は、いずれも感染力が非常に強い病気です。

乳房の感染症乳腺炎)は、蜂窩織炎と膿瘍を伴うことがあり、出産の1~4週間後にみられる場合があります。乳頭周辺が赤くなり、痛みます。膿瘍から、しばしば母乳へと多数の細菌が排出されます。この細菌は授乳を受けている乳児に感染することがあります。

肺炎では、高熱、息切れ、血の混じったたんを伴うせきがみられます。肺に膿瘍が発生することもあります。膿瘍は大きくなって、肺を覆う膜を侵し、ときに膿を蓄積させます(その状態を膿胸といいます)。これらの症状によって、呼吸はより困難になります。

血流感染は、重度の熱傷を負った患者の主な死因です。典型的な症状は長引く高熱で、ときにショックを起こします。

心内膜炎では、すぐに心臓弁に障害が起きて心不全に陥り(同時に呼吸が苦しくなり)、死に至ることがあります。

骨髄炎は、悪寒、発熱、骨の痛みといった症状を引き起こします。感染している骨の上にある皮膚や軟部組織が赤くなって腫れ、近くの関節に体液がたまります。

ブドウ球菌感染症の診断

  • 皮膚の感染症には、医師による評価

  • その他の感染症には、血液や感染した体液の培養検査

皮膚のブドウ球菌感染症は通常、外観に基づいて診断が下されます。

他の部位の感染症では、血液や感染部位の体液のサンプルを検査室に送り、そこで細菌を増殖させて種類を特定する検査(培養検査)が行われる場合もあります。分析結果によって診断を確定し、そのブドウ球菌に有効な抗菌薬を特定します(感受性試験と呼ばれます)。

骨髄炎が疑われる場合には、X線検査、CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィー、またはこれらの併用が行われます。これらの検査によって、損傷部位とその重症度を調べることができます。

骨生検により、検査用のサンプルが採取されます。サンプルは針で採取されることもありますが、手術中に採取されることもあります。

ブドウ球菌感染症の治療

  • 抗菌薬

  • ときに感染が起きた骨や異物を除去する手術

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による感染症は抗菌薬で治療します。原因菌が抗菌薬に対する耐性をもつかどうかを調べ、耐性があればどの抗菌薬に対するものかを調べます。

病院内で発生した感染症は、MRSAに効果的な抗菌薬を用いて治療します。具体的には、バンコマイシン、リネゾリド、テジゾリド、キヌプリスチンとダルホプリスチンの配合剤、セフタロリン、テラバンシン、ダプトマイシン、その他の抗菌薬などを使用します。原因菌の検査結果が出た時点で、その菌株にメチシリンに対する感受性があり、ペニシリンアレルギーがないことが明らかな場合は、ナフシリンやオキサシリンなどのメチシリンに近い薬を使用します。感染症の重症度によっては、抗菌薬を何週間も使用します。

MRSAの感染は医療施設の外でも起こりえます(市中感染)。通常、MRSAの市中感染の場合、病院内でのMRSA感染に使用される薬に加えて、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンといった他の抗菌薬に対しても菌が感受性を示します。

毛包炎などのMRSAによる軽度の皮膚感染症は通常、バシトラシン、フラジオマイシン、ポリミキシンB(処方なしでも入手可能)を含有する軟膏や、ムピロシン軟膏(処方が必要)で治療します。軟膏を塗る以上の治療が必要な場合は、MRSAに効果的な抗菌薬を経口や静脈内注射で投与します。どの抗菌薬を使用するかは、感染症の重症度と感受性試験の結果に基づいて決定します。

感染が骨や体内の異物(心臓のペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、人工血管グラフトなど)に及んだ際には、リファンピシンやその他の抗菌薬が治療に使用する抗菌薬のリストに加えられる場合もあります。通常、感染症を治癒させるために、感染が生じた骨や異物を手術で摘出する必要があります。

膿瘍があれば、通常は排膿を行います。

ブドウ球菌感染症の予防

常日頃から、石けんと水道水で十分に手洗いをするか、アルコール系の消毒液を塗布することで細菌が広がるのを予防できます。

鼻からブドウ球菌を取り除くために鼻孔の内側に抗菌薬のムピロシンを塗布することを勧める医師もいます。しかしながら、ムピロシンの過度の使用はムピロシンに対する耐性獲得につながるために、この抗菌薬は感染の可能性が高い場合にのみ使用することが推奨されます。たとえば、特定の手術前あるいは皮膚感染症が拡がっている住居の住人に対して投与します。

ブドウ球菌のキャリアが特定の種類の手術を受ける必要がある場合、しばしば手術前に抗菌薬が投与されます。

皮膚のブドウ球菌感染症の患者は、食べものを扱ってはいけません。

一部の医療施設では、入院時に決まってMRSAに対するスクリーニング検査を行ないます。特定の手術を受ける予定の患者など、MRSAに感染するリスクが高い人にのみスクリーニングを行っている施設もあります。スクリーニングでは、綿棒を使って鼻から採取したサンプルを検査します。MRSA株が検出された人は、菌の拡散を防ぐために隔離されます。

その他のブドウ球菌による感染症

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)はコアグラーゼという酵素を作ります。他のブドウ球菌の菌株はこの酵素を作らないため、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌と呼ばれます。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌は健康な人の皮膚に常在しています。

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌のもつ危険性は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)よりも低くなりますが、病院で発生した場合などでは重篤な感染症を引き起こすことがあります。皮膚から血管へ挿入したカテーテルや埋め込み型の医療器具(ペースメーカ、人工心臓弁、人工関節)への感染が起こる場合があります。

これらの細菌はたいていの場合、多くの種類の抗菌薬に対して耐性をもっているため、多くの耐性菌に対して効果があるバンコマイシンが使用され、ときにリファンピシンも併用されます。医療器具に感染が生じている場合は、取り外す必要が生じることがよくあります。

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