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喀血

執筆者:

Noah Lechtzin

, MD, MHS, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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呼吸器からせきとともに血が出ることを、喀血と呼びます。普通のたんに血がほんの少しすじ状に混ざることもあれば、血液のみが大量に出ることもあり、血液の量は様々です。喀血の原因によっては、発熱や呼吸困難など、その他の症状がみられることもあります。

原因

喀血すると誰でも驚きますが、ほとんどの場合、原因は重篤なものではありません。血がすじ状に混ざったたんは、上気道感染症やウイルス性気管支炎など、多くの軽い呼吸器感染症でよくみられます。ときには、鼻からの出血が原因となることもあり、その血液がのどに入り、せきとともに吐き出されます。そのような場合は、喀血とはみなされません。

一般的な原因

小児では、次の原因が一般的です。

  • 下気道感染症

  • 異物を誤って吸い込む(誤嚥)

あまり一般的でない原因

肺がん 肺がん 肺がんの最も一般的な原因は喫煙です。 よくみられる症状は、持続性のせき、または、性状が変化する慢性的なせきです。 肺がんの大部分は胸部X線検査で発見できますが、他の画像検査や生検をさらに行う必要があります。 肺がんの治療には、手術、化学療法、分子標的療法、放射線療法のいずれも用いられます。 (肺の腫瘍の概要も参照のこと。) さらに読む 肺がん が肺から発生した場合、40歳以上の喫煙者における喀血の重要な原因となります。しかし、体の別の部位に発生し、肺に広がったがんが喀血の原因であることはまれです。アスペルギルス Aspergillusによる真菌感染症(アスペルギルス症 アスペルギルス症 アスペルギルス症は、アスペルギルス属 Aspergillusの真菌によって引き起こされる通常は肺の感染症です。 肺や副鼻腔内に、菌糸、血液のかたまり、白血球が絡まった球状のかたまりが形成されます。 症状が出ない人もいますが、せきに血が混じったり、発熱、胸痛、呼吸困難が生じる人もいます。 真菌が肝臓や腎臓に広がると、それらの臓器の機能が低下することがあります。 診断のためには通常はX線検査かCT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、可能であ... さらに読む アスペルギルス症 と呼ばれます)も、原因として認められることが増えていますが、がんほど一般的ではありません。結核 結核 結核は、空気感染する細菌である結核菌 Mycobacterium tuberculosisによって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。通常は肺が侵されます。 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。 最もよくみられる症状はせきですが、発熱や寝汗、体重減少、体調不良を感じることもあります。... さらに読む 結核 も可能性のある原因です。

その他の原因には、肺の動脈に詰まった血栓(肺塞栓症 肺塞栓症 肺塞栓症は、血液のかたまり(血栓)や、まれに他の固形物が血液の流れに乗って肺の動脈(肺動脈)に運ばれ、そこをふさいでしまう(塞栓)病気です。 肺塞栓症は、一般に血栓によって発生しますが、別の物質が塞栓を形成して動脈をふさぐこともあります。 肺塞栓症の症状は様々ですが、一般に息切れなどがみられます。... さらに読む )や、比較的まれですが肺の血管の炎症(血管炎)などがあり、後者の具体的な例としてグッドパスチャー症候群 グッドパスチャー症候群 グッドパスチャー症候群は、まれな自己免疫疾患であり、肺の中での出血と進行性の腎不全が起こります。 一般に、息切れや喀血がみられます。 診断を下すには、血液や尿の検査と胸部X線検査が必要です。 コルチコステロイド、シクロホスファミド(化学療法の薬剤)、血漿交換などを用いて、肺や腎臓の永続的な損傷を防ぐようにします。 免疫系の重要な機能に、感染に対する防御があります。免疫系は、感染から体を守るために、微生物を自己に対する異物と認識し、その微... さらに読む 多発血管炎性肉芽腫症 多発血管炎性肉芽腫症 多発血管炎性肉芽腫症(以前はウェゲナー肉芽腫症として知られていた)はしばしば、鼻、副鼻腔、のど、肺、または腎臓の、小型や中型の血管や組織の炎症から始まります。 原因は不明です。 通常、この病気は、鼻出血、かさぶたによる鼻づまり、副鼻腔炎、声がれ、耳の痛み、中耳にたまる体液、眼の充血と痛み、呼気性喘鳴、せきで始まります。 その他の臓器が侵されることもあり、ときには腎不全などの重篤な合併症が起こります。... さらに読む 多発血管炎性肉芽腫症 などの病気が挙げられます。

大量喀血

大量喀血とは、24時間以内におよそ600ミリリットル以上の血液を吐き出すことです。最も一般的な原因としては以下のものがあります。

危険因子

以下のような特定の状況では、重篤な病気によって喀血が引き起こされるリスクが高まります。

評価

以下では、医師の診察を受ける必要があるか、また受けた場合に何が行われるかについて説明しています。

警戒すべき徴候

喀血のある人に以下のような症状がみられる場合は、特に注意が必要です。

  • せきとともに大量の血が出る

  • 息切れ

  • 重大な失血を示す徴候(筋力低下、立ちくらみ、のどの渇き、発汗、心拍数の上昇)

  • 筋力低下または疲労

  • 気管切開している

受診のタイミング

警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに病院を受診する必要があります。警戒すべき徴候がなくても、重篤な病気の危険因子がある場合や、たんに血がすじ状に混ざる以上の出血がみられる場合は、1~2日以内に受診する必要があります。

たんに血がすじ状に混ざる程度(通常は上気道感染症によるもの)であれば、それほど急いで受診する必要はありません。医師に電話し、症状、病歴、その他の因子を医師に伝え、受診の必要があるかどうか、緊急性があるかどうかを尋ねてもよいでしょう。通常、数日程度の遅れは問題になりません。

医師が行うこと

医師は以下のことを質問します。

  • せきとともに血が出始めたのはいつか

  • せきはどのくらい続いているか

  • せきに特定の誘因(寒冷、運動、横になるなど)があるか

  • 血液の量はどのくらいか(すじがつく程度、ティースプーン1杯、コップ1杯など)

  • 発熱、体重減少、胸痛、または脚の痛みなど他の症状があるか

医師は、血液が本当に気道から出てきたものか(胃から吐き出されたものや鼻血がのどに垂れ落ちたものではないか)を判断します。

また、病歴(まだ分かっていなければ)や、原因に対する危険因子を尋ねます。頻繁に鼻血が出る、あざができやすい、または肝疾患がある場合、血液凝固障害が疑われます。医師は、患者が服用している薬剤の中に、凝固を妨げる薬(抗凝固薬)がないかを確認します。

身体診察では、バイタルサインを評価して発熱、心拍数や呼吸数の上昇がないかを確認し、血液中の酸素レベルが低下していないかを調べる検査を行います。心臓と肺の詳細な診察を行い、頸静脈怒張(首の静脈が膨れる徴候)がないかを視診により調べ、脚にむくみがないかを確認します。片脚のみが腫れていれば、血栓(深部静脈血栓症)が疑われます。両脚が腫れていれば、心不全が疑われます。また、腹部、皮膚、粘膜の診察も行われます。医師は診察中に、患者にせきをするよう指示します。せきとともに血が出れば、医師はその色や量を確認します。鼻や口の中に出血源がないかもチェックします。

病歴と診察から得られる手がかりは、医師が原因を判定するのに役立ちます。後鼻漏または鼻から出血している感覚があり、特にせきがない場合、せきとともに出た血は、鼻からのどの奥へ垂れ落ちたものである可能性があります。吐き気があり、黒、茶、またはコーヒーかすのような色のものを嘔吐した場合、通常、血は胃や腸から吐き出されたものであり、せきとともに出たものではありません。泡状のたん、鮮紅色の血、大量に血が出た場合などの窒息感は、通常、血が気管や肺から出たものであることを意味します(真性喀血と呼ばれます)。

せきが始まって間もない患者で、その他の点では健康であり、結核、真菌感染症、または肺塞栓症の危険因子がない場合、原因は通常、気管支炎などの急性呼吸器感染症です。喀血が心臓または肺の病気によるものである場合、その心臓や肺の病気は、ほとんどの場合すでに診断されているはずです。つまり、喀血が心臓または肺の病気の最初の症状になることは通常ありません。

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検査

喀血がひどい場合や持続する場合、あるいは原因が明らかではない場合は、検査が必要です。せきとともに大量の血が出た場合、検査を行う前に治療を開始し、患者の状態を安定化させます。

胸部X線検査 胸部の画像検査 胸部の画像検査には、X線検査、CT検査、MRI検査、肺シンチグラフィー、超音波検査、陽電子放出断層撮影(PET)検査などがあります。胸部X線検査は、ほぼ必ず行われます。診断を下す上でさらに詳細な情報が必要な場合は、その他の画像検査が行われます。 (肺疾患に関する病歴聴取と身体診察および呼吸器系も参照のこと。) 通常の胸部X線検査は、後ろから前方向に撮影されます。また、側面からの撮影も一般的に行われています。胸部X線検査では心臓や主要な血... さらに読む 胸部の画像検査 は常に行います。胸部X線検査で異常があったり、特定の病気の症状や危険因子がある場合は、CT(コンピュータ断層撮影)検査と気管支鏡検査を行います。気管支鏡検査では、内視鏡を気管や気管支へ挿入し、出血部位を特定します。ときに、血液が鼻や胃または腸からではなく、せきとともに出ていることを確かめるために、気管支鏡検査が必要になることがあります。

40歳以上の喫煙者(または40歳未満でも、青年期からタバコを吸いはじめた人)が喀血した場合、たんにすじ状に血が混じる程度であっても、しばしば肺がんの検査が行われます。

ほとんどの患者で、血算と血液凝固能を評価する検査を行い、血液凝固の問題がないかを確認します。

検査を行っても、30~40%の人では喀血の原因が見つかりません。しかし、喀血がひどい場合は、通常原因が明らかになります。

治療

出血により血栓ができて気道がふさがれ、呼吸に支障をきたすことがあります。そのため、気道をきれいに保つためにはせきが重要であり、せき止め薬(鎮咳薬)で抑えるべきではありません。

喀血が軽い場合は、自然に止まったり、出血の原因となる病気(心不全や感染症など)の治療が成功すると止まったりすることがあります。

大きな血栓が太い気道をふさいでいる場合は、気管支鏡を用いてそのかたまりを取り除かねばならないこともあります。

まれに、喀血がひどかったり、自然に止まらない場合があります。そのような場合は、口や鼻から気管またはさらに下方の気道にチューブを挿入し、気道の開口性を保つ必要があります。

太い血管から出血している場合は、気管支動脈造影による塞栓術を用いて、出血している血管をふさぐこともあります。この手技を行う際は、X線を利用して位置を確認しながら、血管内にカテーテルを進め、化学物質、ゼラチンスポンジ、らせん状のワイヤーなどを挿入して血管をふさぎ、出血を止めます。大量の出血や持続する出血を止めるため、ときに気管支鏡や手術が必要になることがあり、また手術は、肺の病変部やがんを取り除くために行われることもあります。こうしたリスクの高い方法は、あくまでも最終的な手段です。

血液の凝固異常が原因で出血がみられる場合は、血漿、凝固因子、または血小板などの輸血が必要になることがあります。

要点

  • すじ状に血が混じったたんは、通常呼吸器感染症によるものであり、自然に止まるものであれば、心配する必要はありません。

  • 小児では、下気道感染症や異物の吸入が最も一般的な原因です。

  • 医師は、喀血とその他の出血、例えば口、鼻、またはのどから出たものや嘔吐に伴うものとを区別しなければなりません。

  • 喫煙者に血がすじ状に混じったたんがみられる場合、通常さらなる評価が必要です。

  • せきとともに大量の血が出た場合、検査を行う前に速やかに治療を開始して状態を安定させる必要があります。

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