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喀血

執筆者:

Noah Lechtzin

, MD, MHS, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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呼吸器からせきとともに血が出ることを、喀血と呼びます。普通のたんに血がほんの少しすじ状に混ざることもあれば、血液のみが大量に出ることもあり、血液の量は様々です。喀血の原因によっては、発熱や呼吸困難など、その他の症状がみられることもあります。

原因

喀血すると誰でも驚きますが、ほとんどの場合、原因は重篤なものではありません。血がすじ状に混ざったたんは、上気道感染症やウイルス性気管支炎など、多くの軽い呼吸器感染症でよくみられます。ときには、鼻からの出血が原因となることもあり、その血液がのどに入り、せきとともに吐き出されます。そのような場合は、喀血とはみなされません。

一般的な原因

感染症が最も一般的な原因です( 喀血の主な原因と特徴)。成人では、次の疾患がせきの原因の70~90%を占めます。

小児では、次の原因が一般的です。

  • 下気道感染症

  • 異物を誤って吸い込む(誤嚥)

あまり一般的でない原因

肺がんが肺から発生した場合、40歳以上の喫煙者における喀血の重要な原因となります。しかし、体の別の部位に発生し、肺に広がったがんが喀血の原因であることはまれです。アスペルギルス Aspergillusによる真菌感染症(アスペルギルス症と呼ばれます)も、原因として認められることが増えていますが、がんほど一般的ではありません。結核も可能性のある原因です。

その他の原因には、肺の動脈に詰まった血栓(肺塞栓症)や、比較的まれですが肺の血管の炎症(血管炎)などがあり、後者の具体的な例としてグッドパスチャー症候群多発血管炎性肉芽腫症などの病気が挙げられます。

大量喀血

大量喀血とは、24時間以内におよそ600ミリリットル以上の血液を吐き出すことです。最も一般的な原因としては以下のものがあります。

危険因子

以下のような特定の状況では、重篤な病気によって喀血が引き起こされるリスクが高まります。

  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染(カポジ肉腫、結核、真菌感染症)

  • 免疫抑制薬と呼ばれる、免疫系を抑制する薬の使用(結核や真菌感染症)

  • 結核への曝露

  • 長期喫煙歴(がん)

  • 最近の床上安静または手術、がん、血栓の既往歴または家族歴、妊娠、 エストロゲンを成分に含む薬の使用、最近の長距離の移動(肺塞栓症

評価

以下では、医師の診察を受ける必要があるか、また受けた場合に何が行われるかについて説明しています。

警戒すべき徴候

喀血のある人に以下のような症状がみられる場合は、特に注意が必要です。

  • せきとともに大量の血が出る

  • 息切れ

  • 重大な失血を示す徴候(筋力低下、立ちくらみ、のどの渇き、発汗、心拍数の上昇)

  • 筋力低下または疲労

  • 気管切開している

受診のタイミング

警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに病院を受診する必要があります。警戒すべき徴候がなくても、重篤な病気の危険因子がある場合や、たんに血がすじ状に混ざる以上の出血がみられる場合は、1~2日以内に受診する必要があります。

たんに血がすじ状に混ざる程度(通常は上気道感染症によるもの)であれば、それほど急いで受診する必要はありません。医師に電話し、症状、病歴、その他の因子を医師に伝え、受診の必要があるかどうか、緊急性があるかどうかを尋ねてもよいでしょう。通常、数日程度の遅れは問題になりません。

医師が行うこと

医師はまず、症状と病歴について質問し、次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、原因と必要になる検査を推測することができます( 喀血の主な原因と特徴)。

医師は以下のことを質問します。

  • せきとともに血が出始めたのはいつか

  • せきはどのくらい続いているか

  • せきに特定の誘因(寒冷、運動、横になるなど)があるか

  • 血液の量はどのくらいか(すじがつく程度、ティースプーン1杯、コップ1杯など)

  • 発熱、体重減少、胸痛、または脚の痛みなど他の症状があるか

医師は、血液が本当に気道から出てきたものか(胃から吐き出されたものや鼻血がのどに垂れ落ちたものではないか)を判断します。

また、病歴(まだ分かっていなければ)や、原因に対する危険因子を尋ねます。頻繁に鼻血が出る、あざができやすい、または肝疾患がある場合、血液凝固障害が疑われます。医師は、患者が服用している薬剤の中に、凝固を妨げる薬(抗凝固薬)がないかを確認します。

身体診察では、バイタルサインを評価して発熱、心拍数や呼吸数の上昇がないかを確認し、血液中の酸素レベルが低下していないかを調べる検査を行います。心臓と肺の詳細な診察を行い、頸静脈怒張(首の静脈が膨れる徴候)がないかを視診により調べ、脚にむくみがないかを確認します。片脚のみが腫れていれば、血栓(深部静脈血栓症)が疑われます。両脚が腫れていれば、心不全が疑われます。また、腹部、皮膚、粘膜の診察も行われます。医師は診察中に、患者にせきをするよう指示します。せきとともに血が出れば、医師はその色や量を確認します。鼻や口の中に出血源がないかもチェックします。

病歴と診察から得られる手がかりは、医師が原因を判定するのに役立ちます。後鼻漏または鼻から出血している感覚があり、特にせきがない場合、せきとともに出た血は、鼻からのどの奥へ垂れ落ちたものである可能性があります。吐き気があり、黒、茶、またはコーヒーかすのような色のものを嘔吐した場合、通常、血は胃や腸から吐き出されたものであり、せきとともに出たものではありません。泡状のたん、鮮紅色の血、大量に血が出た場合などの窒息感は、通常、血が気管や肺から出たものであることを意味します(真性喀血と呼ばれます)。

せきが始まって間もない患者で、その他の点では健康であり、結核、真菌感染症、または肺塞栓症の危険因子がない場合、原因は通常、気管支炎などの急性呼吸器感染症です。喀血が心臓または肺の病気によるものである場合、その心臓や肺の病気は、ほとんどの場合すでに診断されているはずです。つまり、喀血が心臓または肺の病気の最初の症状になることは通常ありません。

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喀血の主な原因と特徴

原因

一般的な特徴*

検査

抗凝固薬の使用(肺塞栓症、脚の血栓、または心房細動の治療に用いたり、特定の心臓の手術の後、血栓のリスクを低下させるために用いたりする)

血栓を溶かす薬の使用(血栓溶解薬と呼ばれ、心臓発作または脳卒中の治療に用いられる)

ときに鼻や消化管など、他の部位からの出血(消化管からの出血は便中にみられる)

抗凝固薬または血栓溶解薬を投与されている人

ときに血液凝固障害の家族歴

血液検査により、血液凝固能を評価する

感染症を繰り返す人における、慢性のせきと粘液の産生

胸部の高分解能CT検査

ときに気管支鏡検査

気管支炎

急性:せきはたんを伴うこともあれば伴わないこともあり(湿性または乾性)、ときに上気道感染症の症状(鼻づまりなど)がみられる

慢性: 喫煙者または慢性閉塞性肺疾患がある人において、2年以上連続し、1年のうち3カ月以上、ほぼ毎日湿性のせきがみられる(訳注:慢性気管支炎について、日本では、日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドライン第2版に『Fletcherの定義に基づいて、「慢性の咳、痰が少なくとも年に3か月以上あり、それが少なくとも連続2年以上認められ、この症状が他の肺疾患や心疾患を原因としない」と定義されている』と記載されています。)

急性: 医師の診察

慢性:胸部X線検査

肺がどれぐらい機能しているかを評価する検査(肺機能検査

長引く特定の肺感染症(結核、真菌感染症、寄生虫感染症、または肺に病変をきたす梅毒

特定の感染症にさらされた人における、発熱、せき、寝汗、体重減少

しばしば、病気または薬剤による免疫系の機能低下(免疫抑制)

胸部X線検査

胸部CT検査

たん、または気管支鏡で肺から採取した液体の検査

かなり前に吸い込まれ、長い間気づかれなかった異物

上気道感染症の症状を伴わない慢性のせき(特に乳児や幼児)

ときに発熱

胸部X線検査

ときに気管支鏡検査

ピンク色で泡状のたん(ときに血がすじ状に混ざる)

横になったとき、または眠りについて1~2時間後に悪化する息切れ

聴診器で、肺の中に液体がたまっていることを示唆する音が聞こえる

通常、脚の腫れ(浮腫)

胸部X線検査

ときに血液検査を行い、心臓に負担がかかっているときに分泌される脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)という物質を測定する

ときに心エコー検査

発熱、通常は1週間以上持続する

せき、寝汗、食欲不振、体重減少

胸部X線検査

ときにCT検査または気管支鏡検査

寝汗や体重減少

通常、喫煙歴のある中年以降の人にみられる

胸部X線検査

CT検査

気管支鏡検査

発熱、けん怠感、たんを伴うせき、息切れ

深く息を吸ったときに突然生じる胸痛

聴診器で特定の異常な呼吸音が聞こえる

胸部X線検査

肺塞栓症(肺の動脈が血栓などにより突然詰まった病態)

突然鋭い胸痛が発生し、通常は息を吸うときに悪化する

息切れ

心拍数と呼吸数の増加

しばしば肺塞栓症の危険因子(がん、寝たきりの人などで体を動かせない状態が続く、脚の血栓、妊娠、経口避妊薬もしくはその他のエストロゲン製剤の使用、最近の手術もしくは入院、または肺塞栓症の家族歴など)がある

肺に特化した画像検査(CT血管造影や

換気血流[V/Q]シンチグラフィーなど)

疲労や体重減少

しばしば血尿

ときに息切れ

ときに脚の腫れ(浮腫)

腎臓の組織の生検

血液検査により、それぞれの病気に特徴的な抗体(抗糸球体基底膜抗体、抗好中球細胞質抗体)がないか確認する

*この欄には症状や診察の結果などが示されています。ここに示されている特徴は典型的なものですが、常に当てはまるわけではありません。

喀血がみられる人には、医師は常に胸部X線検査を行うとともに、指にセンサー(パルスオキシメーター)を取り付けて血液中の酸素レベルを測定します。

CT = コンピュータ断層撮影

検査

喀血がひどい場合や持続する場合、あるいは原因が明らかではない場合は、検査が必要です。せきとともに大量の血が出た場合、検査を行う前に治療を開始し、患者の状態を安定化させます。

胸部X線検査は常に行います。胸部X線検査で異常があったり、特定の病気の症状や危険因子がある場合は、CT(コンピュータ断層撮影)検査と気管支鏡検査を行います。気管支鏡検査では、内視鏡を気管や気管支へ挿入し、出血部位を特定します。ときに、血液が鼻や胃または腸からではなく、せきとともに出ていることを確かめるために、気管支鏡検査が必要になることがあります。

肺塞栓症の可能性があれば、医師は、血管を画像化するために造影剤を用いたCT検査(CT血管造影と呼ばれます)を行うか、放射性マーカーを用いた画像検査(肺血流シンチグラフィーと呼ばれます)を行います。その結果によっては、肺動脈造影という検査を行うこともあります。

40歳以上の喫煙者(または40歳未満でも、青年期からタバコを吸いはじめた人)が喀血した場合、たんにすじ状に血が混じる程度であっても、しばしば肺がんの検査が行われます。

ほとんどの患者で、血算と血液凝固能を評価する検査を行い、血液凝固の問題がないかを確認します。

検査を行っても、30~40%の人では喀血の原因が見つかりません。しかし、喀血がひどい場合は、通常原因が明らかになります。

治療

出血により血栓ができて気道がふさがれ、呼吸に支障をきたすことがあります。そのため、気道をきれいに保つためにはせきが重要であり、せき止め薬(鎮咳薬)で抑えるべきではありません。

喀血が軽い場合は、自然に止まったり、出血の原因となる病気(心不全や感染症など)の治療が成功すると止まったりすることがあります。

大きな血栓が太い気道をふさいでいる場合は、気管支鏡を用いてそのかたまりを取り除かねばならないこともあります。

まれに、喀血がひどかったり、自然に止まらない場合があります。そのような場合は、口や鼻から気管またはさらに下方の気道にチューブを挿入し、気道の開口性を保つ必要があります。

太い血管から出血している場合は、気管支動脈造影による塞栓術を用いて、出血している血管をふさぐこともあります。この手技を行う際は、X線を利用して位置を確認しながら、血管内にカテーテルを進め、化学物質、ゼラチンスポンジ、らせん状のワイヤーなどを挿入して血管をふさぎ、出血を止めます。大量の出血や持続する出血を止めるため、ときに気管支鏡や手術が必要になることがあり、また手術は、肺の病変部やがんを取り除くために行われることもあります。こうしたリスクの高い方法は、あくまでも最終的な手段です。

血液の凝固異常が原因で出血がみられる場合は、血漿、凝固因子、または血小板などの輸血が必要になることがあります。

要点

  • すじ状に血が混じったたんは、通常呼吸器感染症によるものであり、自然に止まるものであれば、心配する必要はありません。

  • 小児では、下気道感染症や異物の吸入が最も一般的な原因です。

  • 医師は、喀血とその他の出血、例えば口、鼻、またはのどから出たものや嘔吐に伴うものとを区別しなければなりません。

  • 喫煙者に血がすじ状に混じったたんがみられる場合、通常さらなる評価が必要です。

  • せきとともに大量の血が出た場合、検査を行う前に速やかに治療を開始して状態を安定させる必要があります。

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