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炎症性腸疾患(IBD)の概要

執筆者:

Aaron E. Walfish

, MD, Mount Sinai Medical Center;


Rafael Antonio Ching Companioni

, MD, Digestive Diseases Center

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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炎症性腸疾患とは、腸に炎症が起き、しばしば腹痛と下痢が繰り返し起こる病気です。

炎症性腸疾患としては、主に以下の2種類の病気があります。

この2つの病気には多くの共通点があり、ときに判別が難しいことがあります。しかし2つの病気にはいくつかの違いがあります。例えば、クローン病は消化管のほぼすべての部分に起こりうるのに対し、潰瘍性大腸炎はほぼ常に大腸にしか起こりません。

炎症性腸疾患の原因は分かっていませんが、遺伝的素因をもつ人で正常な腸内細菌が異常な免疫反応の引き金になる可能性を示した科学的根拠があります。

炎症性腸疾患はあらゆる年齢でみられますが、通常は30歳未満で始まり、一般的には14~24歳で発症します。少数ですが、50~70歳で初めて発作が起きる人もいます。北欧系とアングロサクソン系の人に最もよくみられ、アシュケナージ系ユダヤ人では同じ地域に暮らす非ユダヤ系の白人と比較して2~4倍多くみられます。男女差はありません。炎症性腸疾患の患者の第1度近親者(母、父、姉妹、兄弟)では、炎症性腸疾患の発生リスクが4~20倍高くなります。家系内で遺伝する傾向は、クローン病の方が潰瘍性大腸炎よりはるかに強くみられます。

症状

炎症性腸疾患の症状は、侵されている腸の部位とクローン病または潰瘍性大腸炎の有無によって異なります。クローン病の人では通常、慢性の下痢と腹痛がみられます。潰瘍性大腸炎の人では通常、腹痛と血性下痢が間欠的に現れます。どちらの病気でも、下痢が長期間続いている患者では、体重減少や低栄養がみられることがあります。

炎症性腸疾患はときに、関節、眼、口、肝臓、胆嚢、皮膚など、別の部位に影響を及ぼすこともあります。また、腸の患部の領域にがんが発生するリスクも高まります。

診断

  • 便と血液の検査

  • 内視鏡検査と生検

炎症性腸疾患の診断を下すためには、まず炎症を引き起こしうる他の原因の可能性を否定する必要があります。例えば、寄生虫や細菌の感染症が炎症の原因となることがあります。このため、医師はいくつかの検査を行います。

さらに、淋菌感染症 淋菌感染症 淋菌感染症(淋疾、淋病)は淋菌 Neisseria gonorrhoeaeという細菌による性感染症で、尿道、子宮頸部、直腸、のどなどの粘膜や、眼の前部を覆う膜(結膜と角膜)を侵します。 通常は性的接触により感染します。 通常は、陰茎や腟から分泌物が生じたり、頻尿になったり、急に尿意を催したりします。... さらに読む 淋菌感染症 ヘルペスウイルス感染症 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症では、皮膚、口、唇(口唇ヘルペス)、眼、性器に、液体で満たされた、痛みのある小さな水疱が繰り返し発生します。 非常に感染力の強いウイルス感染症であり、潰瘍に直接触れたり、ときには潰瘍がない場合でも患部に触れることで感染します。 ヘルペスウイルスは口の中や性器に水疱や潰瘍を引き起こし、最初の感染時には、発... さらに読む 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 クラミジア感染症 クラミジア感染症とその他の感染症 クラミジア感染症には、クラミジア・トラコマチス Chlamydia trachomatisという細菌により生じる、尿道、子宮頸部、直腸の性感染症などがあります。これらの細菌は、白眼の部分を覆う膜(結膜)やのどにも感染します。ウレアプラズマ属 Ureaplasmaやマイコプラズマ属... さらに読む クラミジア感染症とその他の感染症 などの性感染症が直腸にないか調べる検査も行うことがあります。

医師は、過敏性腸症候群 過敏性腸症候群(IBS) 過敏性腸症候群(IBS)は消化管の病気で、腹痛と便秘または下痢を繰り返し引き起こします。 症状は様々ですが、下腹部痛、腹部膨満、ガス、便秘、下痢がよくみられます。 様々な物質や感情的要素が引き金となって過敏性腸症候群の症状が起こります。 通常は症状に基づいて診断が下されますが、他の病気ではないことを確認する検査が行われます。... さらに読む 虚血性大腸炎 虚血性大腸炎 虚血性大腸炎は、血流が絶たれたために起こる大腸の損傷です。 腹痛と血便がよくみられます。 通常はCT(コンピュータ断層撮影)検査が行われ、ときに大腸内視鏡検査が行われます。 大半の人は、静脈から水分を補給(輸液)しながら、絶食することで回復しますが、手術が必要な人もわずかにいます。... さらに読む 虚血性大腸炎 (50歳以上の人に多い)、吸収不良症候群 吸収不良の概要 吸収不良症候群とは、食べたものに含まれる栄養素が様々な理由により小腸で適切に吸収されない状態のことをいいます。 ある種の病気、感染症、手術でも吸収不良が起こることがあります。 吸収不良によって、下痢、体重減少、極度の悪臭がする大量の便がみられます。 診断は、典型的な症状と、便検査の結果、ときに小腸粘膜の生検結果に基づいて下されます。... さらに読む セリアック病 セリアック病 セリアック病は、小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症であり、小腸の粘膜に特徴的な変化を起こし、吸収不良が生じます。 タンパク質のグルテンの摂取後に、腸の粘膜に炎症が生じます。 症状としては、成人では下痢、低栄養、体重減少などがあります。 小児でみられる症状としては、腹部膨満、非常に強い悪臭がする大量の便、... さらに読む セリアック病 など)、女性ではある種の婦人科疾患など、似たような腹部の症状を引き起こす他の病気の可能性も考慮します。他の病気の可能性を否定するために、腹部のX線検査 X線検査 消化器系の問題の評価にはX線検査がよく使われます。標準的なX線検査では、特別な準備は何も必要ありません( 単純X線検査)。消化管に閉塞や麻痺がある場合や、腹腔内のガスの分布が異常な場合は、通常は標準的なX線検査で明らかになります。また、肝臓、腎臓、脾臓の腫大も標準的なX線検査で明らかになります。... さらに読む CT検査 CT検査とMRI検査 CT検査( CT(コンピュータ断層撮影)検査)とMRI検査( MRI(磁気共鳴画像)検査)は、腹部臓器の大きさや位置を調べるのに適しています。さらに、これらの検査では悪性腫瘍(がん)や良性腫瘍(がんではない腫瘍)もしばしば検出されます。血管の変化も検出できます。虫垂や憩室などの炎症も通常は明確に分かります。ときに、X線照射や手術のガイド役... さらに読む やMRI検査など、画像検査を行うこともあります。クローン病患者の腸の評価を行うためにビデオカプセル内視鏡検査 ビデオカプセル内視鏡検査 ビデオカプセル内視鏡検査とは、バッテリー駆動のカプセルを飲み込んで行う検査法です。このカプセルには1~2個の小さなカメラ、光源、送信器が搭載されています。腸の粘膜の画像が、ベルトや布製ポーチ内に設置した受信機に送信されます。何千もの画像が撮影されます。ビデオカプセル内視鏡検査は、消化管の隠れた出血や、内視鏡では評価が困難な領域である小腸の... さらに読む を行うことがあります。

治療

  • ときに手術

  • 食事とストレスの管理

炎症性腸疾患には根治的な治療法はありませんが、炎症を和らげて症状を軽減するには、アミノサリチル酸系、コルチコステロイド、免疫調節薬、生物製剤、抗菌薬など、多くの薬( クローン病による腸の炎症を軽減する薬 クローン病による腸の炎症を軽減する薬 クローン病は、炎症性腸疾患の一種で、一般的には小腸の下部、大腸、またはその両方に慢性炎症が生じますが、炎症は消化管のどの部分にも現れる可能性があります。 正確な原因は分かっていませんが、免疫システムが正常に機能していないことでクローン病が起こる可能性があります。 典型的な症状としては、慢性の下痢(血性となることもある)、けいれん性の腹痛、... さらに読む クローン病による腸の炎症を軽減する薬 潰瘍性大腸炎による腸の炎症を軽減する薬 潰瘍性大腸炎による腸の炎症を軽減する薬 潰瘍性大腸炎とは、大腸に炎症が起こり、潰瘍が形成される慢性炎症性腸疾患で、出血性の下痢や腹部のけいれん痛、発熱を伴う発作が起きます。潰瘍性大腸炎がない人と比べて、結腸がんの長期リスクが高まります。 この病気の正確な原因は分かっていません。 発作時の典型的な症状は、腹部のけいれん痛、便意の切迫、下痢(血性下痢が典型的)などです。... さらに読む )が役立ちます。

非常に重症の場合は、ときに手術が必要です。

食事とストレスの管理

ほとんどの患者とその家族は食事とストレスの管理に関心があります。厳格な炭水化物の摂取制限を伴うものなど、特定の食事が炎症性腸疾患の改善に役立ったと主張している人もいますが、食事療法の効果は臨床試験 臨床試験について参加者が知っておくべきこと 人々は医師に対して、効果のある治療法を選択し、効果のない治療は中止するように期待します。しかし、どの治療法が有効か見分けることは、医師や研究者にも困難であることが往々にしてあります。その判断を下すことが医学の役割の1つであり、具体的には、臨床試験において治療法の効果を検討することで達成されるのが通常です。... さらに読む では証明されていません。慢性疾患があることによるストレスに対処するために、ときに医師がストレス管理の手法を推奨することがあります。

健康維持

炎症性腸疾患によって、特定の感染症の発生リスクや、基礎疾患、栄養不良または免疫調節薬の使用に起因する病気の発症リスクが高まります。予防接種と診断検査とスクリーニングがリスクの低減に役立ちます。

インフルエンザワクチン インフルエンザワクチン インフルエンザウイルスワクチンはインフルエンザの予防に役立ちます。米国では、A型とB型の2種類のインフルエンザウイルスが定期的にインフルエンザの季節的流行を引き起こしています。どちらの種類にも、多くのウイルス株が存在します。インフルエンザの大流行を引き起こすウイルス株は毎年変わります。このため、毎年新しいワクチンが必要になります。それぞれ... さらに読む は、インフルエンザの予防のために毎年必要です。肺炎球菌ワクチン 肺炎球菌ワクチン 肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌 Streptococcus pneumoniae(肺炎双球菌)によって引き起こされる細菌感染症の予防に役立ちます。肺炎球菌感染症としては、耳の感染症、副鼻腔炎、肺炎、血流感染症、髄膜炎などがあります。 詳細については、CDCによる肺炎球菌結合型(PCV13)ワクチン説明書(Pneumococcal... さらに読む は、肺炎球菌 Streptococcus pneumoniaeによる細菌感染症の予防に役立ちます。生物製剤を使用していない50歳以上の人は、帯状疱疹ワクチン 帯状疱疹ワクチン 帯状疱疹ワクチンには2種類あります。新型の帯状疱疹ワクチンは、予防効果が高く、効果の持続期間も長いため、旧型の帯状疱疹ワクチンより好んで使用されます。 新型のワクチンには、ウイルスの感染性をもたない部分だけが含まれています(組換えワクチンと呼ばれます)。 旧型の帯状疱疹ワクチンには、弱毒化された生きたウイルスが含まれています。... さらに読む の接種を考慮するべきです(帯状疱疹の予防に役立てるため)。免疫調節薬の使用を開始する人と水痘ウイルスに曝露したことがない人は、免疫調節薬の開始前に水痘ワクチン 水痘ワクチン 水痘ワクチンは、水痘帯状疱疹ウイルスが引き起こす非常に伝染しやすい感染症である、水痘(水ぼうそう)の予防に役立ちます。水痘にかかると、皮膚に赤い発疹ができ、その後かゆみのある小さな水疱が生じます。場合によっては、脳、肺、心臓に感染し、重篤な病気や死亡の原因になることがあります。水痘が治った後もウイルスは体内に残ります。何年か後に再び活性化... さらに読む の接種を受ける必要があります(水痘の予防に役立てるため)。状況に応じて定期的な破傷風・ジフテリア 破傷風・ジフテリア混合ワクチン 破傷風・ジフテリア(Td)混合ワクチンは、細菌そのものではなく、破傷風菌とジフテリア菌が作る毒素から体を守るためのものです。これに百日ぜきを予防する成分を追加した混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日ぜき混合ワクチン)もあります。 一般的には、破傷風菌は傷口から体内に侵入し、増殖して毒素を作ります。この毒素により激しい筋肉のけいれんが起こ... さらに読む A型肝炎 A型肝炎ワクチン A型肝炎ワクチンはA型肝炎の予防に役立ちます。一般的に、A型肝炎はB型肝炎ほど重篤ではありません。A型肝炎は無症状の場合もよくありますが、発熱、吐き気、嘔吐、黄疸がみられることや、まれに重度の肝不全や死亡に至ることもあります。慢性肝炎にはなりません。 ワクチンの使用によって、感染者数が減少しました。... さらに読む B型肝炎 B型肝炎ワクチン B型肝炎ワクチンはB型肝炎とその合併症(慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん)の予防に役立ちます。一般に、B型肝炎はA型肝炎より重篤で、死に至ることもあります。症状は軽度のこともあれば、重度のこともあります。食欲減退、吐き気、疲労などがみられます。5~10%の患者ではB型肝炎が慢性化し、肝硬変や肝臓がんに進行することがあります。... さらに読む ヒトパピローマウイルス ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、HPVの中でも以下の病態を引き起こす可能性が非常に高い株による感染の予防に役立ちます。 女性の子宮頸がん、腟がん、外陰がん 男性の陰茎がん 男女を問わず、肛門がん、のどのがん、尖圭コンジローマ これらの病気はヒトパピローマウイルスによって引き起こされます。 さらに読む の各ワクチンの接種も受けるべきです。

免疫調節薬または生物製剤を使用しているかその計画がある炎症性腸疾患の人は、皮膚がんのスクリーニング 皮膚がんのスクリーニング 皮膚がんは最も多くみられるがんです。屋外で働く人、屋外でスポーツをする人、および日光浴の愛好者で特に多くみられます。皮膚の色の薄い人(色白の人)は、作られるメラニンの量が少ないため、ほとんどのタイプの皮膚がんが特に発生しやすい傾向があります。皮膚の一番外側の層(表皮)で保護機能を果たしているメラニンという色素には、紫外線から皮膚を保護する... さらに読む を毎年受け、日焼け止め 日焼け止め 日焼けは、強い紫外線を短時間で浴びた(急性曝露)結果として起こります。 紫外線を浴びすぎると、日焼けが生じます。 日焼け(サンバーン)が起こると、皮膚は赤くなって痛み、ときに水疱が現れたり、発熱や悪寒が生じたりすることもあります。 日光を浴びすぎないようにし、日焼け止めを塗ることで、日焼けを予防することができます。... さらに読む 日焼け止め を使用し、保護効果の高い衣類 衣類 日焼けは、強い紫外線を短時間で浴びた(急性曝露)結果として起こります。 紫外線を浴びすぎると、日焼けが生じます。 日焼け(サンバーン)が起こると、皮膚は赤くなって痛み、ときに水疱が現れたり、発熱や悪寒が生じたりすることもあります。 日光を浴びすぎないようにし、日焼け止めを塗ることで、日焼けを予防することができます。... さらに読む 衣類 を着用するべきです。

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