破傷風・ジフテリア(Td)混合ワクチンは、細菌感染症である破傷風やジフテリアを予防します。これらの感染症を引き起こす細菌は、重篤な健康問題を引き起こす可能性のある毒素と呼ばれる有害な物質を産生します。
破傷風菌は通常、傷口から体内に入り、増殖して毒素を産生し始めます。この毒素により激しい筋肉のけいれんが起こり、死に至ることもあります。このため、予防接種が特に重要になります。
ジフテリアにかかると、通常はのどと口内粘膜に炎症が生じます。また、ジフテリアの原因菌は毒素を放出し、心臓、腎臓、神経系を侵すことがあります。定期予防接種を利用できるようになる前は、ジフテリアは小児の最も主要な死亡原因の1つでした。
(免疫化の基礎知識も参照)
ワクチンの種類
破傷風・ジフテリアワクチンの用量および推奨事項
Tdワクチンは筋肉内に注射します。
このワクチンを接種すべき人
ジフテリア・破傷風・百日ぜき(DTaP)混合ワクチンは小児期の定期予防接種に組み込まれています。DTaPは通常、生後2ヵ月、4ヵ月、6ヵ月、15~18ヵ月、4~6歳で計5回接種します(CDC:出生から6歳までに推奨される予防接種、米国、2025年版[Recommended Immunizations for Birth Through 6 Years Old, United States, 2025]を参照)。この混合ワクチンは、注射で5回接種します(生後2ヵ月、4ヵ月、6ヵ月、12~18ヵ月、4~6歳)。
小児期のDTaPワクチン接種を完了した後、11~12歳でTdapワクチンの追加接種を1回行います。百日ぜきに対する免疫は低下していくため、これまで追加接種を受けていなかった17歳の人は接種を受けるべきです。
TdまたはTdapワクチンは、11~12歳でTdapの追加接種を行った後、10年ごとに1回の追加接種を受けます。
破傷風は創傷や皮膚を傷つける怪我から感染するため、Tdapワクチンを接種したことはあるが、前回の接種から5年以上が経過している人が傷を負った場合、破傷風の発症を防ぐためにTdまたはTdapワクチンの接種を1回行うことがあります。Tdapワクチンの接種を受けておらず、傷を負った8歳以上の人にはTdapワクチンが投与されます。
このワクチンを接種すべきでない人
前回Tdワクチンを接種後、またはこのワクチンのいずれかの成分に対して、生命を脅かす重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー反応など)を起こしたことがある人は、このワクチンを接種するべきではありません。
さらに、以下のいずれかの問題がある人は、Tdワクチンwo接種すべきではありません。
破傷風ワクチンの接種から6週間以内にギラン・バレー症候群を発症した人
以前の破傷風またはジフテリアの予防接種後の重度の痛みや腫れ
一時的な病気がある場合、通常ワクチンは病気が消散してから投与します。
他の特定の病気がワクチン接種を受けるべきかどうかや接種時期に影響を及ぼすことがあります(CDC:これらのワクチンを接種すべきでない人[Who Should NOT Get Vaccinated With These Vaccines?])
破傷風・ジフテリアワクチンの副作用
重い副反応はまれですが、重篤なアレルギー反応、肩の強い痛み、筋力低下が起こることがあります。
軽度の副作用には以下のものがあります。
注射部位のヒリヒリとした痛み、深部の痛み、および発赤
発熱
疲労感
頭痛
嘔吐、吐き気、下痢、または腹痛
破傷風ワクチンの接種から6週間以内にギラン・バレー症候群を発症した場合は、担当医に予定されているワクチン接種を受けるべきかについて相談するべきです。
副作用の詳細については、添付文書を参照してください。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。
米国疾病予防管理センター(CDC):Td(破傷風・ジフテリア)ワクチン情報提供文書(Td [Tetanus, Diphtheria] vaccine information statement)
欧州疾病予防管理センター(ECDC):ジフテリア:推奨される予防接種(Recommended vaccinations)
ECDC:破傷風:推奨される予防接種(Recommended vaccinations)
