乳児および小児の発熱

執筆者:Deborah M. Consolini, MD, Thomas Jefferson University Hospital
レビュー/改訂 2022年 11月
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正常体温は,人によってまた1日を通しても異なる。正常体温は就学前の年齢の小児で最も高い。体温は午後にピークに達する傾向があり,生後約18~24カ月で最も高く,この月齢の正常かつ健康な小児では多くの場合38.3℃まで高くなることが複数の研究で示されている。しかし発熱とは,通常,38.0℃以上の深部体温(直腸温)と定義されている。

発熱の意義は最高体温ではなく臨床状況による;一部の軽度の疾患が高熱を引き起こす一方で,重篤な疾患の中には軽微な体温上昇しかもたらさないものがある。親の判断は発熱の恐怖のため正確ではないことが多いが,家庭で測定した体温の経過は外来で測定した体温と同じ価値があると考えるべきである。

成人における発熱も参照のこと。)

乳児および小児の発熱の病態生理

発熱は,サイトカイン(特にインターロイキン1[IL-1])という内因性発熱物質の放出に反応して起こる。サイトカインが視床下部によるプロスタグランジンの産生を刺激し,プロスタグランジンは体温のセットポイントを再調整し上昇させる。

発熱は感染との戦いで不可欠な役割を担っており,不快なものではあるが,他の点で健康な小児では治療を必要としない。体温を下げることにより長引きうる疾患があることが複数の研究により示唆されている。しかし発熱は,代謝速度および心肺系の負担を増大させる。そのため肺もしくは心臓の異常,または神経学的異常のある小児にとって発熱は有害となりうる。また,熱性痙攣が誘発されることもある(熱性痙攣は通常は良性であるが,親にとって非常な懸念事項であり,より重篤な疾患[例,髄膜炎]との鑑別も必要である)。

乳児および小児の発熱の病因

発熱の原因( see table 小児の発熱の一般的な原因)は,急性(14日未満)か急性反復性/周期性(無熱期をはさんで時折起こる発熱)か慢性(14日以上)かによって異なり,慢性の発熱は一般的には不明熱と呼ばれる。解熱薬に対する反応および体温の高さは,病因と直接の関係はない。

急性発熱

乳幼児での急性発熱の大半は感染症によって起こる。最も頻度が高いのは以下のものである:

  • ウイルス性の呼吸器または消化管感染症(全体で最も頻度の高い原因)

  • 特定の細菌感染症(中耳炎,肺炎,尿路感染症)

しかし,急性発熱の原因となりうる感染症は年齢によって異なる。新生児(生後28日未満の乳児)は,感染を局所にとどめられない場合が多いことから機能的な易感染状態と考えられるが,その結果として,周産期に感染する微生物によってよく引き起こされる重篤な侵襲性細菌感染症に対して高リスクの状態にある。新生児が周産期に感染する頻度が最も高い病原体はB群レンサ球菌,大腸菌[Escherichia coli](および他のグラム陰性腸内細菌),Listeria monocytogenes,および単純ヘルペスウイルスである。このような微生物によって,菌血症(単純ヘルペスではウイルス血症),肺炎,腎盂腎炎,髄膜炎,および/または敗血症が引き起こされる可能性がある。

診察で明らかな感染巣をみとめない発熱(熱源不明の発熱 fever without source:FWS)が生後1カ月~2歳の小児にみられた場合,その大半は自然に治癒するウイルス性疾患によるものである。ただし,そのような患者のうち少数(結合型ワクチン導入後の時代ではおそらく1%未満)は,重篤な感染症(例,細菌性髄膜炎)の経過の初期状態にある。そのため,FWSを有する患児においては潜在性菌血症(診察上,感染病巣の症状または徴候を認めない状態で血流に病原性細菌が存在する状態)の有無が主要な検討事項となる。潜在性菌血症の最も多い病原菌は,肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型である。いずれの病原菌もその予防接種が広く行われるようになったため,潜在性菌血症の頻度は非常に少なくなっている。

急性発熱の非感染性の原因としては,川崎病熱中症,毒物摂取(例,抗コリン作用を有する薬)などがある。予防接種の中には接種から24~48時間後(例,百日咳ワクチンまたは1~2週間後(例,麻疹ワクチン)に発熱を起こしうるものもある。典型的には,これらの発熱は数時間から1日持続する。患児にほかに異常がみられない場合は評価の必要はない。歯牙の萌出によって有意ないし持続する発熱が起こることはない。

急性反復性/周期熱

急性反復性/周期熱とは,体温が正常な期間と発熱のある期間が交互にみられるエピソードをさす( see table 小児の発熱の一般的な原因)。

慢性発熱

発熱が2週間以上毎日続き,最初に行った培養検査および他の検査によって診断が得られない場合は不明熱と考えられる。

可能性のある原因のカテゴリー( see table 小児の発熱の一般的な原因)として,局所性または全身性の感染症,結合組織疾患,およびがんが挙げられる。その他の具体的な原因には,炎症性腸疾患脱水を伴う尿崩症,および体温調節障害などがある。頻回の軽微なウイルス感染症が過剰診断されている可能性があることから,偽性不明熱の方が真の不明熱よりはるかに多い可能性が高い。小児では可能性のある原因は多数あるものの,真の不明熱はまれな疾患というよりは一般的な疾患のまれな症状の1つである可能性が高い;呼吸器感染症が感染症に関連する不明熱のほぼ半数を占める。

表&コラム
表&コラム

乳児および小児の発熱の評価

病歴

現病歴の聴取では,発熱の程度および持続期間,測定方法,および解熱薬(使用した場合)の用量および回数に注意すべきである。重篤な疾患を示唆する重要な合併症状には,食欲不振,易刺激性,嗜眠,および啼泣の変化(例,持続時間,性質)がある。原因を示唆している可能性がある合併症状としては,嘔吐,下痢(血液または粘液の存在など),咳嗽,呼吸困難,四肢または関節をかばう動作,尿の強い臭いまたは悪臭などがある。薬剤性の発熱の可能性があるか薬歴を調べるべきである。

感染の素因を同定する。新生児では,このような素因として未熟性,長時間の破水,母体の発熱,および出生前検査陽性(通常,B群レンサ球菌感染,サイトメガロウイルス感染,または性感染症を対象)などがある。全ての小児では素因として,感染症への最近の曝露(家族や介護者の感染症,学校や託児所での感染症など),医療器具の留置(例,カテーテル,脳室腹腔シャント),最近の手術,旅行および環境曝露(例,流行地域,ノミ,蚊,ネコ,家畜,または爬虫類),および既知の免疫不全または免疫不全の疑いなどがある。

システムレビュー(review of systems)では,鼻汁または鼻閉(ウイルス性上気道感染症),頭痛(副鼻腔炎,ライム病,髄膜炎),耳痛または不快な徴候を伴う夜間の中途覚醒(中耳炎),咳嗽または喘鳴(肺炎,細気管支炎),腹痛(肺炎,レンサ球菌による咽頭炎,胃腸炎,尿路感染症,腹腔内膿瘍),背部痛(腎盂腎炎),および関節の腫脹または発赤の既往(ライム病,骨髄炎)などの,可能性のある原因を示唆する症状に注意すべきである。反復感染の既往(免疫不全)または体重増加不良または体重減少などの慢性疾患を示唆する症状(結核,がん)を同定する。特定の症状が評価対象を非感染性の原因に向けるのに役立つ可能性があり,具体的には,動悸,発汗,耐暑性低下(heat intolerance)などの症状(甲状腺機能亢進症)や,反復性または周期性の症状(リウマチ性疾患,炎症性疾患,または遺伝性疾患)などが挙げられる。

既往歴の聴取では,過去の発熱または感染症,および感染の素因となる既知の疾患(例,先天性心疾患,鎌状赤血球貧血,がん,免疫不全)に注意すべきである。自己免疫疾患または他の遺伝性疾患の家族歴(例,家族性自律神経失調症,家族性地中海熱)も調べる。ワクチン接種歴を確認し,ワクチンにより予防可能な感染のリスクがある患児を同定する。

身体診察

体温および呼吸数の異常に注意しつつ,バイタルサインを評価する。重症感のある(ill-appearing)患児では,血圧も測定すべきである。正確に測定するため,乳児では体温を直腸で測定すべきである。咳嗽,頻呼吸,または努力呼吸を認めるあらゆる患児にはパルスオキシメトリーを行う。

患児の全体的な外観および診察に対する反応が重要である。発熱のある患児が非常に従順であるか,または元気がなく物事に関心を示さない場合は,非協力的な小児より注意が必要である。しかし,なだめることのできない,いらいらした患児もまた注意すべきである。発熱のある患児で重症感が強い場合には,特に体温が下がった時,大いに注意が必要であり,精密な評価および継続的な観察を要する。しかし,解熱薬投与後に楽になったように見える場合でも,常に良性の疾患であるとは限らない。

残りの身体診察を行い,原因疾患の徴候の有無を調べる( see table 発熱のある小児の診察)。

表&コラム
表&コラム

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見には特に注意が必要である:

  • 生後1カ月未満

  • 嗜眠,元気がない,または重症感(toxic appearance)

  • 呼吸窮迫

  • 点状出血または紫斑

  • なだめられない状態

所見の解釈

重篤な疾患が必ずしも高熱を起こすとは限らず,多くの発熱は自然に治癒するウイルス感染症によって起こるが,36カ月未満の小児での39℃以上の体温は重篤細菌感染症(serious bacterial infection)のリスクが高いことを示唆する。

他のバイタルサインも重要である。低血圧がある場合,循環血液量減少,敗血症,または心筋機能障害を考慮すべきである。低血圧のない頻脈は,発熱(正常より1℃上がる毎に10~20/分上昇)または循環血液量減少が原因である可能性がある。呼吸数増加は発熱に対する反応の1つであるか,原因が呼吸器であるか,または代謝性アシドーシスの呼吸性代償であることを示唆している場合がある。

急性発熱は,ほとんどの場合感染性であり,そのほとんどはウイルス性である。他の点では健康で重症感(toxic appearance)のない36カ月以上の小児では,病歴聴取および診察によって十分診断が可能である。典型的には,ウイルス性の呼吸器疾患(最近の疾患との接触,鼻汁,笛音,または咳嗽)または消化管疾患(疾患との接触,下痢,および嘔吐)が認められる。他の所見も特定の原因を示唆する( see table 発熱のある小児の診察)。

36カ月未満の乳幼児では,潜在性菌血症の可能性があることに加えて,重篤細菌感染症(serious bacterial infection)の新生児および幼若乳児では感染病巣の所見がみられないことが多いため,異なるアプローチが必要である。評価は年齢群によって異なる。広く受け入れられている分類は,新生児期( 28日),乳児期早期(1~3カ月),および乳児期後期から幼児期(3~36カ月)である。臨床所見にかかわらず,発熱のある新生児では即時の入院,および危険な感染症を除外するための検査が必要である。乳児期早期では,スクリーニング検査の結果およびフォローアップのため通院できるかどうかによって入院の必要性が決まる。

急性反復性/周期熱および慢性発熱(不明熱では,多数の可能性のある原因を疑う必要がある。しかし,特異的な所見は原因疾患を示唆することがある(例えば,アフタ性口内炎,咽頭炎,およびリンパ節炎[PFAPA症候群];鼻汁または鼻閉を伴う間欠的な頭痛[副鼻腔炎];体重減少,高リスク曝露(排菌感染者との濃厚な接触),および盗汗[結核];体重減少または体重増加不良,動悸,および発汗[甲状腺機能亢進症];体重減少,食欲不振,および盗汗[がん])。

検査

行うべき検査は年齢,患児の外観,発熱が急性慢性かによって異なる。

急性発熱の検査

急性発熱では,感染症の原因に対する検査を年齢に応じて行う。一般に36カ月未満の患児では,重症感がなく明らかな感染病巣(例,中耳炎)を認める場合でも,重篤細菌感染症(serious bacterial infection)(例,髄膜炎,敗血症/菌血症,尿路感染症)を除外するために精査が必要となる。この年齢群では,在宅管理の全ての小児で早期のフォローアップ(電話および/または外来受診)が重要である。

生後1カ月未満の発熱のある小児

生後1カ月未満の発熱のある患児全てに対し,目視法による白血球分画を含む白血球数の測定,血液培養,尿検査および尿培養(採尿バッグではなくカテーテルで採取),ならびに髄液の培養と病歴から示唆される適切なPCR検査(例,単純ヘルペスウイルス,エンテロウイルス)を含めた髄液の評価が必要である。リスク評価の補助として,炎症マーカー(C反応性タンパク[CRP],プロカルシトニン,またはその両方)を測定してもよい。呼吸器症状がみられる新生児では胸部X線を施行する。下痢がみられる新生児では,便検体を採取して培養またはPCR検査を依頼する。

新生児の場合は入院させ,新生児期に最も多い病原菌をカバーした経験的抗菌薬投与を静注にて行い(例,アンピシリンおよびゲンタマイシン,またはアンピシリンおよびセフォタキシム),血液,尿,および髄液の培養陰性により重篤細菌感染症(serious bacterial infection)が除外されるか具体的な診断が下されるまで抗菌薬を継続する。新生児に重症感がある(ill-appearing),皮膚粘膜に小水疱がある,母体に性器ヘルペスウイルス(HSV)感染歴がある,または痙攣発作,低体温,白血球減少,血小板減少,もしくはアラニンアミノトランスフェラーゼの上昇がみられる場合はアシクロビルも投与すべきである;髄液のHSV PCR検査結果が陰性かつ皮膚粘膜小水疱のHSV培養の結果(行った場合)が陰性であればアシクロビルを中止する。

生後1~3カ月の発熱のある小児

生後1~3カ月の発熱のある小児には別のアプローチが必要であるが,インフルエンザ菌(H. influenzae)b型と肺炎球菌(S. pneumoniae)に対する定期予防接種により,この年齢群で重篤細菌感染症(serious bacterial infection)に罹患する可能性のある小児の数が著しく減少したことで,過去数十年でそのアプローチには進歩がみられている。それでも,重篤細菌感染症は減少したものの根絶されてはいないため,医師は警戒を続けなければならない。したがって,無治療での経過観察や自宅での親による経過観察を選択する医師は,検査,入院,および治療を受ける小児と比べて,その小児のリスクが低いということに確信をもっていなければならない。

生後1~3カ月の年齢群の乳児は以下に基づいて鑑別される:

  • 体温

  • 臨床的な外観(重症感がある[ill-appearing]または健康そうに見える[well-appearing])

  • 臨床検査結果

発熱があり重症感(ill-appearing)がある乳児

生後1~3カ月で重症感がある(ill-appearing)(例,異常な啼泣,嗜眠,直腸温が38.5℃を超える)または重篤細菌感染症(serious bacterial infection)の危険因子(例,重大な先天異常,未熟性,医療技術への依存,ワクチン未接種)を有する乳児は入院させ,目視法による白血球分画を含む白血球数の測定,血液培養,尿検査および尿培養(採尿バッグではなくカテーテルにより採取),ならびに腰椎穿刺による髄液の評価(培養を含む)ともし可能であればPCRパネル検査を行うべきである。リスク評価の補助として,炎症マーカー(C反応性タンパク[CRP],プロカルシトニン,またはその両方)を測定してもよい。呼吸器症状がある場合は胸部X線および呼吸器系のPCRパネル検査を行うべきであり,下痢がある場合は便を培養または便PCR検査(enteric PCR stool test)に供する。このような乳児には,培養陰性により重篤細菌感染症(serious bacterial infection)が除外されるか,または具体的な診断が下されるまで,年齢に応じた抗菌薬の注射剤による経験的投与(例,セフトリアキソン)を行うべきである。

発熱があるが健康そうに見える(well-appearing)乳児

発熱はあるが健康そうに見える生後29~60日の乳児で,以下の全てを満たす場合は,重篤細菌感染症(serious bacterial infection)のリスクは低い:

  • 直腸温38.5℃以下

  • 白血球数正常(5,000~15,000/μL[5~15×109/L]かつ好中球数4000/μL以下[4×109/L]以下])

  • 炎症マーカー値正常(プロカルシトニンが0.5ng/mL[0.5μg/L]以下および/またはCRPが2mg/dL[20mg/L]以下)

  • 尿検査(および髄液検査と胸部X線も施行された場合は所見が)正常

血液培養および尿培養を行うべきである。上記の基準を満たす乳児では腰椎穿刺を延期する専門家もいるが,この年齢群で最低限必要な検査に関するガイドラインは,細菌学の変化と検査の進歩(例,炎症マーカー,迅速PCR検査による病原体の同定)に基づいて進化を続けている(1)。

さらに,発熱があるが健康そうに見えるこの年齢群の小児で,季節的に有病率が高い時期にRSウイルス(RSV),インフルエンザ,または他のウイルス感染症がPCR検査で確認されたが尿検査の結果が正常である場合,重篤細菌感染症(serious bacterial infection)のリスクは著しく低いようであり,そのため上記の推奨を変更してもよいと考えている専門家もおり,その場合,該当する乳児には血液検査や髄液検査が必ずしも必要とはならない可能性がある。

このような乳児は,24~36時間以内に電話または再診のいずれかにより確実にフォローアップが行える場合は外来で管理でき,その時に暫定的な培養結果を評価する。家庭の社会的事情から24~36時間以内のフォローアップが難しいと考えられる場合には,乳児を入院させて経過観察を行うべきである。帰宅させた場合でも,臨床状態のあらゆる増悪や発熱の悪化,血液培養陽性(汚染によるとは考えられないもの),または発熱の持続している乳児での尿培養陽性がみられた場合には,直ちに入院が必要であり,再度の培養結果により重篤細菌感染症(serious bacterial infection)が除外されるか具体的な診断が下されるまで,培養を繰り返し実施するとともに年齢特異的な経験的抗菌薬療法(例,セフトリアキソン)を施行する。

発熱はあるが健康そうに見える生後61~90日の乳児で重篤細菌感染症の危険因子がない場合には,尿検査の結果が出るまで血液および髄液検査を延期する専門家が多い。

健康そうに見える生後1~3カ月の乳児で検査を行う場合,結果が以下のいずれかに該当する乳児は入院させ,上述のような年齢に応じた抗菌薬の注射剤による経験的投与による治療を行うべきである:

  • 髄液細胞増多

  • 尿検査または胸部X線の異常

  • 末梢血白血球数が5,000/μL(5 × 109/L)以下または15,000/μL(15 × 109/L)以上

  • 好中球数が4000/μL(4 × 109/L)を超える

  • 炎症マーカーの異常値(プロカルシトニン > 0.5ng/mL[> 0.5μg/L]および/またはCRP > 2mg/dL[> 20mg/L])

経験的抗菌薬療法を施行する場合は腰椎穿刺による髄液検査を強く考慮すべきであり(すでに行われていない場合),生後29~60日の乳児では特に必要性が高い。

健康そうに見える生後1~3カ月の乳児で,尿検査で異常を認めたものの,それ以外は診察および臨床検査の結果が安心できるものであれば,24時間以内に綿密なフォローアップが確実に行える場合,在宅での抗菌薬投与により安全に管理できると考えている専門家もいる(1)。

生後3~36カ月の発熱のある小児

生後3~36カ月の発熱のある患児で,診察上明らかな感染病巣があり重症感がない場合は,その臨床診断に基づいて管理してもよい。重症感のあるこの年齢群の患児では,白血球数および血液培養,尿培養,ならびに髄膜炎が疑われる場合は髄液培養にて重篤細菌感染症(serious bacterial infection)の評価を十分に行うべきである。頻呼吸または白血球数20,000/μL(20 × 109/L)以上の場合は胸部X線検査を行うべきである。前述の患児にはこの年齢群で可能性の高い病原菌を標的とした抗菌薬療法(通常,セフトリアキソンを使用)を注射剤で行うべきであり(肺炎球菌[S. pneumoniae],黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus],髄膜炎菌[Neisseria meningitidis],インフルエンザ菌[H. influenzae]b型),培養結果を待たずに入院させるべきである。

この年齢群の健康そうに見える患児で,39℃を超える発熱があり,診察で感染病巣を同定できず(熱源不明の発熱),予防接種が完了していない場合は,潜在性菌血症のリスクが5%と高くなる(肺炎球菌およびインフルエンザ菌(H. influenzae)結合型ワクチンが使用されるようになる前のリスクと同等)。このような患児では,血算,白血球分画,血液培養,ならびに尿検査および尿培養を行うべきである。白血球数が20,000/μL(20 × 109/L)以上の場合,胸部X線検査を行うべきである。白血球数が15,000/μL(15 × 109/L)以上の場合は,血液培養および尿培養の結果を待たずに注射剤による抗菌薬療法を行うべきである。広域抗菌薬であり作用持続時間が長いため,セフトリアキソン(50mg/kg 筋注)が望ましい。注射剤で抗菌薬投与を受けた患児には,24時間以内に電話または再診によるフォローアップを行うべきであり,その時点で暫定的な培養結果を評価する。社会的事情から24時間以内のフォローアップが難しいと考えられる場合は入院させるべきである。抗菌薬治療を受けていない患児は,発熱( 38℃)のある状態が持続して48時間後も認められる場合には,また,それより早い時点でも状態が悪化するか新たな症状や徴候が出現した場合には,再評価のため来院させるべきである。

この年齢群の健康そうに見える小児では,39℃を超える熱源同定不能の発熱があっても,予防接種が完了している場合は,菌血症のリスクは0.5%未満である。この程度の低いリスクでは,大半の臨床検査および経験的抗菌薬療法は適応とならず,費用対効果もよくない。ただし,この年齢群の予防接種が完了している患児において,尿路感染症(UTI)が潜在的な感染病巣のこともあるため,24カ月未満の女児,6カ月未満の包皮切除を受けた男児,および12カ月未満の包皮切除を受けていない男児には,尿検査および尿培養(採尿バッグではなくカテーテルにより採取)を行い,UTIが認められた場合は適切に治療すべきである。これ以外の患児で予防接種が完了している場合は,UTIの症状や徴候がある,UTIの既往歴もしくは泌尿生殖器系の先天異常がある,または発熱が48時間以上続いている場合のみ尿検査を行う。

全例で養育者に対して,熱がさらに上がった場合,状態が悪化した場合,または新たな症状や徴候が発現した場合は直ちに再受診するよう指導する。

生後36カ月以上の発熱のある小児

生後36カ月以上の発熱のある小児では,病歴および診察に応じて検査を行う。この年齢群では,重篤な疾患に対する児の反応は臨床的に認識できるほど十分に発現することから(例,項部硬直は髄膜刺激の信頼性のある所見である),経験に基づく検査(例,白血球数スクリーニング,尿培養および血液培養)は適応とはならない。

急性反復性/周期熱

急性反復性/周期熱では,病歴および身体診察の所見に基づき可能性の高い原因に照準を当てた臨床検査および画像検査を行うべきである。約3~5週間隔の周期性の高熱があり,アフタ性潰瘍,咽頭炎,および/またはリンパ節炎を伴う幼児では,PFAPA症候群を考慮すべきである。エピソードとエピソードの間およびエピソード中であっても,患児は健康そうにみえる。診断には,6カ月に及ぶ典型的エピソード,エピソード中の咽頭培養陰性,および他の原因(例,特定のウイルス感染症)の除外が必要である。発熱,関節痛,皮膚病変,口腔内潰瘍,および下痢が発作的に現れる場合は,高IgD症候群(HIDS)を疑いIgDを定量すべきである。高IgD症候群(HIDS)の検査結果の特徴として,C反応性タンパク(CRP)の上昇と赤血球沈降速度(赤沈)の亢進や,IgD(およびしばしばIgA)の著しい上昇などがある。

家族性地中海熱(FMF),TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS),およびHIDSには遺伝子検査が利用可能である。

急性発熱の検査に関する参考文献

  1. 1.Pantell RH, Roberts KB, Adams WG, et al: Evaluation and management of well-appearing febrile infants 8 to 60 days old.Pediatrics 148(2):e2021052228, 2021.doi: 10.1542/peds.2021-052228

慢性発熱の検査

慢性発熱(不明熱)では,患児の年齢ならびに病歴および身体所見に基づいて,可能性の高い原因に照準を当てた臨床検査および画像検査を行うべきである。臨床検査の安易なオーダーは役立つ可能性は低く,また有害となりうる(すなわち,偽陽性の結果を確認するための不必要な検査による有害作用のため)。小児の外観に応じて評価のペースを決める。重症感がある(ill-appearing)場合はペースを早めるが,健康そうに見える場合は慎重に進めてもよい。

不明熱には全例,以下の検査を行う:

  • 目視法による白血球分画と血算

  • 赤血球沈降速度(赤沈)およびC反応性タンパク(CRP)

  • 血液培養

  • 尿検査および尿培養

  • 胸部X線

  • 血清電解質,血中尿素窒素(BUN),クレアチニン,アルブミン,および肝酵素

  • HIV血清学的検査

  • ツベルクリン反応検査またはインターフェロンγ遊離試験

これらの検査結果と病歴および身体所見とを併せることで,診断検査をさらに絞り込むことができる。

貧血は,マラリア,感染性心内膜炎,炎症性腸疾患,全身性エリテマトーデス,または結核の手がかりとなりうる。血小板増多は非特異的な急性期反応の1つである。総白血球数および白血球分画は一般にあまり参考にならないが,好中球数が10,000/μL(10 × 109/L)を超える場合は重篤細菌感染症(serious bacterial infection)のリスクがより高い。異型リンパ球が存在する場合はウイルス感染症の可能性が高い。未熟白血球がある場合はさらなる白血病の評価を行うべきである。好酸球増多は,寄生虫疾患,真菌疾患,腫瘍,アレルギー疾患,または免疫不全疾患の手がかりとなりうる。

赤沈およびCRPは非特異的な急性期反応物質で,炎症の一般的な指標である;赤沈亢進またはCRP上昇がみられる場合,発熱が虚偽である可能性は低くなる。赤沈またはCRPが正常の場合,評価のペースを遅くすることができる。しかし,不明熱の原因が非炎症性の場合には,赤沈またはCRPが正常である可能性がある( see table 不明熱の主な原因)。

不明熱全例に対し少なくとも1回は血液培養を行うべきであり,重篤細菌感染症(serious bacterial infection)の疑いが強い場合はより頻回に行うべきである。感染性心内膜炎の症状がある場合,血液培養を24時間中に3回実施すべきである。血液培養が陽性の場合,特に黄色ブドウ球菌(S. aureus)が陽性の場合は,潜在性の骨もしくは内臓の感染症,または心内膜炎を疑い,骨シンチグラフィーおよび/または心エコー検査を行うべきである。

小児の不明熱で最も頻度の高い原因はUTIであるため,尿検査および尿培養は重要である。不明熱の場合,肺の診察が正常の場合でも浸潤およびリンパ節腫脹を調べるため胸部X線を行うべきである。腎臓または肝臓への感染の有無を調べるため,血清電解質,BUN,クレアチニン,および肝酵素を測定する。急性HIV感染症(primary HIV infection)または結核は不明熱として発症するため,HIV血清学的検査およびツベルクリン反応検査(精製ツベルクリンを用いる)またはインターフェロンγ遊離試験を行う。

その他の検査については,所見に基づいて選択し施行する:

  • 便検査

  • 骨髄検査

  • 特定の感染に対する血清学的検査

  • 結合組織疾患および免疫不全疾患に対する検査

  • 画像検査

軟便または最近の旅行歴がある場合は,便培養または便中の虫卵および虫体検査が必要である。サルモネラ(Salmonella)腸炎がまれに,下痢を伴わない不明熱として発現することがある。

小児での骨髄検査は,がん(特に白血病)または他の血液疾患(例,血球貪食性の疾患)の診断に最も有用であり,そうでなければ説明のつかない肝脾腫,リンパ節腫脹または血球減少がある場合に必要となりうる。

症例によって血清学的検査が必要となる感染症には,エプスタイン-バー(EB)ウイルス感染症,サイトメガロウイルス感染症,トキソプラズマ症,バルトネラ症(ネコひっかき病),梅毒,および特定の真菌または寄生虫感染症などがあるが,これらには限定されない。

リウマチ性疾患の濃厚な家族歴がある5歳以上の小児では,抗核抗体(ANA)検査を行うべきである。ANA検査での陽性は,基礎疾患として結合組織疾患,特に全身性エリテマトーデスを示唆する。最初の評価結果が陰性の場合,免疫グロブリン(IgG,IgAおよびIgM)を定量すべきである。低値の場合,免疫不全が示唆される。慢性感染症または自己免疫疾患では高値となりうる。

副鼻腔,乳様突起,および消化管の画像検査はこれらの領域に関連する症状または徴候がある場合のみ最初に行うべきであるが,最初の検査の後,診断がつかないままの不明熱のある患児では必要となりうる。赤沈亢進またはCRP上昇,食欲不振,および体重減少がみられる患児,特に腹部症状(貧血の有無は問わない)の愁訴もある患児では,炎症性腸疾患を除外するための検査を施行すべきである。しかし,ほかに原因が見当たらず発熱が持続し,腰筋膿瘍やネコひっかき病などの疾患によって発熱が起こっている可能性がある患児の場合,最終的には消化管の画像検査を施行すべきである。超音波検査,CT,およびMRIは,腹部の評価に有用であり,膿瘍,腫瘍,およびリンパ節腫脹を検出できる。

中枢神経系の画像検査は,不明熱の小児の評価には一般に役立たない。しかしながら,持続する頭痛,神経学的徴候,または脳室腹腔シャント留置のある小児では,腰椎穿刺が必要な場合がある。

骨シンチグラフィーや標識白血球シンチグラフィーなどの他の画像検査は,ほかに原因が見当たらず発熱が持続する選択された患児において,これらの検査により検出されうる病巣が疑われる場合に役立つことがある。

細隙灯による眼科的診察は,一部の不明熱の患児で,ぶどう膜炎(例,若年性特発性関節炎でみられる)や白血病細胞浸潤を検索するのに有用である。

生検(例,リンパ節や肝生検)は,特定臓器への感染を示唆する所見がある小児に対してのみ行うべきである。

若年性特発性関節炎が疑われる場合を除き,抗炎症薬または抗菌薬による経験的治療を診断を目的として行うべきではない;若年性特発性関節炎が疑われる症例では,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の試験的投与が推奨される第1選択の治療法である。抗炎症薬または抗菌薬に対する反応は,感染性の原因と非感染性の原因との鑑別に有用ではない。また,抗菌薬によって培養結果が偽陰性となる可能性があり,重要な感染症(例,髄膜炎,傍髄膜感染症[parameningeal infection],心内膜炎,骨髄炎)の見逃しや診断の遅れにつながる。

乳児および小児の発熱の治療

治療は基礎疾患に対して行う。

他の点では健康な小児の発熱は,必ずしも治療が必要ではない。解熱薬で楽にすることはできるが,感染症の経過を変えることはない。実際には発熱は感染に対する炎症反応において不可欠な役割を担っており,患児が感染と戦う助けとなる。しかしながら,大半の医師は心肺疾患,神経疾患,または熱性痙攣の既往がある小児を対象に,不快感を軽減して生理学的ストレスを低減するために解熱薬を使用している。

一般に使用される解熱薬は以下の通りである:

  • アセトアミノフェン

  • イブプロフェン

イブプロフェンはプロスタグランジンの胃粘膜保護作用を低下させ,長期間使用すると胃炎につながる可能性があるため,アセトアミノフェンの方が好まれる傾向がある。疫学研究により,喘息の発症と母体および乳児のアセトアミノフェンおよびイブプロフェンの使用との間に関連がある可能性が示唆されている。これら2つの薬剤を比較したランダム化試験では,これらの薬剤の常用量の投与は既存の喘息の悪化につながらないことが示された(1)。しかしながら,これらの薬剤の妊娠中または幼児期における使用が喘息の発生リスクを上昇させるかどうかについては,依然として疑問が残る。使用する場合,アセトアミノフェンの用量は10~15mg/kg,4~6時間毎,経口,静注,または直腸内である。イブプロフェンの用量は10mg/kg,経口,6時間毎である。1度に1つの解熱薬を使用することが望ましい。高熱の治療に際し,この2つの薬剤を交互に投与する医師もいるが(例,午前6時,午後0時,午後6時にアセトアミノフェン,午前9時,午後3時,午後9時にイブプロフェン),このアプローチは介護者が混乱してうっかり推奨1日用量より過量に服用させてしまう可能性があるため推奨されない。インフルエンザおよび水痘などの特定のウイルス性疾患の場合,アスピリンはライ症候群のリスクを増大させるため,小児でのアスピリン使用は避けるべきである。

薬剤以外の発熱に対するアプローチには,患児を温浴させる,冷罨法を用いる,服を脱がせるなどがある。冷水浴は不快かつシバリングを誘発し逆に体温を上昇させるため,冷水浴を用いないよう介護者に注意すべきである。水温が患児の体温より少しでも低い限り,温浴により一時的な緩和が得られる。

避けるべき事柄

アルコールが皮膚から吸収され中毒を起こす恐れがあるため,イソプロピルアルコールで身体を拭くことは絶対に勧められない。無害なもの(例,靴下に玉ねぎやジャガイモを入れる)から不快なもの(例,コインマッサージ,カッピング)まで多数存在する民間療法も避けるべきである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Sheehan WJ, Mauger DT, Paul IM, et al: Acetaminophen versus ibuprofen in young children with mild persistent asthma.N Engl J Med 375(7):619–630, 2016.doi: 10.1056/NEJMoa1515990

要点

  • 大半の急性発熱はウイルス感染症によるものである。

  • 急性発熱の原因および評価は小児の年齢によって異なる;幼若乳児では,発熱は重篤かつ生命を脅かす疾患を示唆している可能性があり,注意深い評価を要する。

  • 熱源としての局所徴候なしに発熱している36カ月未満の小児(主として予防接種が完了していない小児)では,病原性細菌が血流中に存在し(潜在性菌血症),生命を脅かす恐れのある感染症の初期段階である可能性がある者が少ないながら実際に存在する。

  • 歯牙萌出によって有意な発熱が起こることはない。

  • 解熱薬が転帰を変えることはないが,患児を楽にすることはできる。

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