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免疫不全症が疑われる患者へのアプローチ

執筆者:

James Fernandez

, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2016年 8月
本ページのリソース

免疫不全疾患の概要も参照のこと。)

免疫不全症には以下の種類がある:

  • 原発性:遺伝性で,典型的には乳児期または小児期に現れる

  • 続発性:後天性

続発性免疫不全症には多くの原因があるが,大抵の免疫不全症は,以下のうち1つまたは複数のものに由来する:

  • 全身性疾患(例,糖尿病,低栄養,HIV感染症)

  • 免疫抑制療法(例,細胞傷害性薬剤による化学療法,移植前の骨髄破壊的処置,放射線療法)

  • 長期にわたる重篤な疾病(特に重症[critically ill]患者,高齢患者,および/または入院患者)

原発性免疫不全症は,以下の免疫系の主な構成要素の欠乏,欠失,または欠陥によって分類される:

免疫不全症は,典型的には反復性感染症として現れる。しかし,小児でより可能性の高い反復性感染症の原因は,保育所または学校で感染症に繰り返し曝露されることであり(乳児および小児は,正常でも最多で年に10回の呼吸器感染症に罹患する可能性がある),小児および成人でより可能性の高い原因は,抗菌薬による治療期間が不十分であること,耐性菌,および感染の素因となる他の疾患(例,先天性心疾患,アレルギー性鼻炎,尿管または尿道狭窄,線毛不動症候群,喘息,嚢胞性線維症,重度の皮膚炎)である。

反復性感染症が以下に該当する場合,免疫不全症を疑うべきである:

  • 重度である

  • 合併症がある

  • 複数の部位にみられる

  • 治療抵抗性である

  • まれな微生物を原因とする

  • 家系員にみられる

免疫不全症による初期の感染症は,典型的には上気道および下気道の感染症(例,副鼻腔炎,気管支炎,肺炎)ならびに胃腸炎であるが,重篤細菌感染症(例,髄膜炎,敗血症)である場合もある。

慢性的な下痢および発育不良がみられる乳児または幼児でも免疫不全症を疑うべきであり,まれなウイルス(例,アデノウイルス)または真菌(例,Cryptosporidium属)によって下痢が引き起こされている場合は,特にこの診断の可能性が高い。その他の徴候には,皮膚病変(例,湿疹,疣贅,膿瘍,膿皮症,脱毛症),口腔または食道カンジダ症,口腔内潰瘍,および歯周炎などがある。

比較的頻度の低い症状としては,単純ヘルペスウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルスによる重度のウイルス感染症や中枢神経系障害(例,慢性脳炎,発育遅延,痙攣性疾患)などがある。抗菌薬を頻繁に使用すると,一般的な症状と徴候の多くを隠してしまうことがある。特に感染症および自己免疫疾患(例,溶血性貧血,血小板減少症)に罹患している患者では,免疫不全症を考慮すべきである。

評価

病歴および身体診察は有用であるが,免疫機能検査により補完しなければならない。出生前検査は多くの疾患について利用でき,免疫不全症の家族歴があり,家系員に変異が確認されていれば適応となる。

病歴

医師は,感染症の危険因子,または続発性免疫不全症の症状の病歴および/またはその危険因子がないかを判定すべきである。家族歴が非常に重要である。

反復性感染症が始まった年齢は重要である。

  • 通常は生後6~9カ月間にわたり母親からの移行抗体によって防御されるため,6カ月未満の発症ではT細胞の異常が示唆される。

  • 生後6~12カ月での発症では,B細胞およびT細胞の両方の異常またはB細胞の異常が示唆される場合があり,これらは母体からの移行抗体が消失するころ(生後約6カ月)に明らかとなる。

  • 生後12カ月よりかなり後の発症では,B細胞の異常または続発性免疫不全症が通常示唆される。

一般に,小児で発症年齢が低いほど免疫不全症が重度である。多くの場合,他の特定の原発性免疫不全症(例,分類不能型免疫不全症[CVID])は,成人期まで発現しない。

特定の感染症が特定の免疫不全疾患を示唆する場合がある( 患者の病歴から得られる免疫不全症の種類に対する手がかり);ただし,1つの疾患に特異的な感染症はなく,多くの場合には頻度の高い特定の感染症(例,呼吸器のウイルスまたは細菌感染症)が発生する。

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患者の病歴から得られる免疫不全症の種類に対する手がかり

所見

免疫不全症

反復性の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)およびインフルエンザ菌( Haemophilus influenzae)による感染症

Ig,C2,またはIRAK-4の欠損

反復性のGiardia intestinalis (lamblia)による感染症

抗体欠損症候群

自己免疫疾患(例,SLE,悪性貧血)の家系内集積

ニューモシスチス(Pneumocystis)感染症,クリプトスポリジウム症,またはトキソプラズマ症

T細胞疾患またはときにIg欠損症

ウイルス,真菌,または抗酸菌(日和見)感染症

T細胞疾患

弱毒生ワクチン(例,水痘,ポリオ,BCG)に起因する臨床症状を伴う感染症

T細胞疾患

輸血による移植片対宿主病

T細胞疾患

ブドウ球菌感染症,グラム陰性菌(例,Serratia属またはKlebsiella属)による感染症,または真菌感染症(例,アスペルギルス症)

皮膚感染症

好中球の異常またはIg欠損症

再発性歯肉炎

好中球の異常

反復性のナイセリア感染症

反復性の敗血症

特定の補体欠損症,脾機能低下症,またはIgG欠損症

小児期の死亡についての家族歴,または母方の叔父が患者と同様の感染症に罹患した家族歴

Ig = 免疫グロブリン;IRAK = IL-1R関連キナーゼ。

身体診察

免疫不全症の患者では,慢性的に疾患がみられることも,みられないこともある。斑状発疹,小水疱,膿皮症,湿疹,点状出血,脱毛症,または毛細血管拡張が明らかになることがある。

X連鎖無ガンマグロブリン血症,X連鎖高IgM症候群重症複合免疫不全症(SCID),および他のT細胞免疫不全症では,反復性感染症の病歴があるにもかかわらず,頸部リンパ節,アデノイド組織,および扁桃組織が典型的には非常に小さいか消失している。他の特定の免疫不全症(例,慢性肉芽腫症)では,頭頸部のリンパ節が肥大して化膿性を示すことがある。

鼓膜に瘢痕または穿孔がみられることがある。外鼻孔に痂皮形成がみられることがあり,これは膿性鼻汁を示唆する。慢性咳嗽や断続性ラ音がよくみられ,特にCVIDの成人で多い。

CVIDまたは慢性肉芽腫症の患者では,肝臓および脾臓が肥大することが多い。筋肉量および殿部の脂肪沈着が減少する。

乳児では,慢性的な下痢のために肛門周囲の皮膚がただれることがある。神経学的診察によって,発達遅滞または運動失調が発見されることがある。

他の特徴的な所見により,暫定的に臨床診断が示唆される ( 一部の原発性免疫不全症に特徴的な臨床所見)。

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一部の原発性免疫不全症に特徴的な臨床所見

年齢群

所見*

疾患

生後6カ月未満

下痢,発育不良

生命を脅かす感染症(例,肺炎,敗血症,髄膜炎)

斑状丘疹状皮疹,脾腫

重症複合免疫不全症で,移植片対宿主病(例,経胎盤的に移動したT細胞によって起こる)を伴う場合

低カルシウム血症性テタニー,先天性心疾患,耳介低位を伴う異常顔貌,発達遅滞

反復性の化膿性感染症,敗血症

C3欠損症

眼皮膚白皮症,神経学的変化,リンパ節腫脹

チアノーゼ,先天性心疾患,正中線に位置する肝臓

先天性無脾症

臍帯脱落遅延,白血球増多症,歯周炎,創傷治癒不良

膿瘍,リンパ節腫脹,上顎洞閉塞,肺炎,骨髄炎

皮膚,肺,関節,および内臓の反復性のブドウ球菌性膿瘍;気嚢腫;顔貌粗造;そう痒性皮膚炎

慢性歯肉炎,再発性アフタ性潰瘍および皮膚感染,重度の好中球減少症

重症先天性好中球減少症

消化管出血(例,血性下痢),湿疹

生後6カ月から5歳まで

経口ポリオ予防接種後の麻痺

重度かつ進行性の伝染性単核球症

持続性の口腔カンジダ症,爪異栄養症,内分泌疾患(例,副甲状腺機能低下症,アジソン病)

5歳以上(成人を含む)

運動失調,反復性の副鼻腔肺感染症,神経機能の低下,毛細血管拡張

反復性のナイセリア(Neisseria)髄膜炎

C5,C6,C7,またはC8欠損症

反復性の副鼻腔肺感染,吸収不良,脾腫,自己免疫疾患,消化管の結節性リンパ組織過形成,ジアルジア症,リンパ性間質性肺炎,気管支拡張症

慢性エコーウイルス脳炎を伴う進行性の皮膚筋炎

X連鎖無ガンマグロブリン血症

*感染症に加えて。

Adapted from Stiehm, ER, Conley ME: Immunodeficiency diseases: General considerations, in Immunodeficiency Disease in Infants and Children, ed 4, edited by ER Stiehm. Philadelphia, WB Saunders Company, 1996, p. 212.

初回検査

特定の続発性免疫不全症が臨床的に疑われる場合は,当該疾患(例,糖尿病,HIV感染症,嚢胞性線維症,原発性線毛機能不全症)に焦点を合わせた検査を行うべきである。

免疫不全症の診断を確定する検査が必要である ( 免疫不全症の初回および追加臨床検査)。初回スクリーニング検査には以下を含めるべきである:

  • 目視法による白血球分画と血算

  • 免疫グロブリン(Ig)の定量

  • 抗体価

  • 遅延型過敏反応に対する皮膚テスト

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免疫不全症の初回および追加臨床検査

種類

初回検査

追加検査

IgG,IgM,IgA,およびIgEの濃度

同種血球凝集素価

ワクチン抗原(例,インフルエンザ菌[Haemophilus influenzae]b型,破傷風,ジフテリア,結合型または非結合型肺炎球菌,および髄膜炎菌抗原)に対する抗体反応

フローサイトメトリーおよびB細胞に対するモノクローナル抗体を用いたB細胞の表現型および数

フローサイトメトリーによるCD40およびCD40リガンドの検出

BTKおよびNEMOをコードする遺伝子における変異の評価

汗試験

リンパ球数

遅延型過敏症の皮膚テスト(例,Candidaを用いる)

HIV検査

乳児のみ胸部X線撮影で胸腺の大きさ測定

フローサイトメトリーならびにT細胞およびそのサブセットに対するモノクローナル抗体を用いたT細胞の表現型および数

マイトジェンに対するT細胞増殖反応

TREC試験(SCIDまたは他の疾患のためにT細胞が異常またはT細胞数が少ない乳児を特定する遺伝学的検査)

食細胞の数および形態

ジヒドロローダミン 123(DHR)またはニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を用いたフローサイトメトリーによる活性酸素産生能測定

フローサイトメトリーによるCD18およびCD15の検出

好中球走化性

C3の濃度

C4の濃度

CH50活性(古典経路の総活性を検出)およびAH50活性(補体の副経路の総活性を検出)

C1インヒビターの濃度および機能

特定成分の検査

BTK = ブルトン型チロシンキナーゼ; C = 補体;CH = 溶血性補体;NEMO = NF-κB essential modulator;SCID = 重症複合免疫不全症;TREC = T細胞受容体切除サークル。

結果が正常であれば,免疫不全症(特にIg欠損症)を除外できる。結果が異常であれば,具体的な異常を同定するために,専門の検査機関でさらに検査が必要である。慢性感染症が客観的に証明された場合は,初回検査および特異的検査を同時に実施してもよい。免疫不全症がまだ進展している可能性が疑われる場合は,確定診断を行う前に,経時的なモニタリングとともに,検査を繰り返す必要が生じることがある。

血算により,特定の疾患に特徴的な1種類以上の血球(例,白血球,血小板)において,以下に挙げるような異常を検出できる:

  • 好中球減少症(好中球数が1200/μL未満)は,先天性の場合も周期性の場合もあり,再生不良性貧血で起こることもある。

  • 循環リンパ球の70%がT細胞であるため,リンパ球減少症(リンパ球数が出生時に2000/μL未満,生後9カ月で4500/μL未満,これより年長の小児または成人で1000/μL未満)があれば,T細胞疾患が示唆される。

  • 白血球増多症のうち感染症の消失後も持続するものは,白血球接着不全症で起こることがある。

  • 血小板減少症は,男子乳児の場合,Wiskott-Aldrich症候群を示唆する。

  • 貧血は,慢性疾患による貧血または自己免疫性溶血性貧血を示唆する場合があり,CVIDおよび他の免疫不全症で起こることがある。

しかし,多くの異常は,感染症,薬物使用,または他の要因による一過性の症状である;そのため,異常を確認して経過観察すべきである。

血液塗抹標本でハウエル-ジョリー小体および他の異常な赤血球形態を調べるべきであり,それにより原発性無脾症または脾機能障害が示唆される。顆粒球に形態学的異常(例,Chédiak-Higashi症候群における巨大顆粒)がみられることがある。

血清中Ig濃度を定量的に測定する。IgG,IgM,またはIgAの血清中濃度が低いと,抗体欠損が示唆されるが,同年齢層の対照群と比較しなければならない。IgG濃度が200mg/dL未満であれば,通常著しい抗体欠損を示すが,このような低値がタンパク漏出性胃腸症またはネフローゼ症候群でみられることもある。

IgM抗体は,同種血球凝集素価(抗A,抗B)を測定することによって評価できる。生後6カ月未満の乳児および血液型がAB型の人を除く全ての患者は,1:8以上(抗A)または1:4以上(抗B)の力価の自然抗体を有する。特定の疾患(例,Wiskott-Aldrich症候群,IgG2完全欠損症)では,A型およびB型血液に対する抗体ならびに一部の細菌多糖体に対する抗体が選択的に欠損している。

IgG抗体価は,予防接種を受ける患者でワクチン抗原(インフルエンザ菌[Haemophilus influenzae]b型,破傷風,ジフテリア,結合型または非結合型肺炎球菌,および髄膜炎菌の各抗原)を接種する前後の抗体価を測定することによって算定できる;接種後2~3週間での抗体価上昇が2倍未満であれば,Ig値にかかわらず抗体欠損が示唆される。自然抗体(例,抗ストレプトリジンO抗体,異好抗体)を測定することもある。

皮膚テストで,免疫能が正常な成人,乳児,および小児のほとんどは,皮内に注射した0.1mLのCandida albicans抽出物(乳児に対しては1:100に希釈,より年長の小児および成人に対しては1:1000に希釈)に反応する。24,48,および72時間後の5mmを超える紅斑および硬結として定義した陽性反応が認められた場合は,T細胞疾患が除外される。 Candida属真菌に曝露したことのない患者では,反応がみられないとしても,免疫不全症が確定するわけではない。

胸部X線撮影は,一部の乳児で有用なことがある;胸腺陰影がみられなければT細胞疾患が示唆され,特に胸腺を萎縮させうる感染症または他のストレスが発生する前にX線撮影を施行した場合は,この疾患の可能性が高い。咽頭X線側面像で,アデノイド組織の欠如が判明することがある。

追加検査

臨床所見または初回検査で,免疫細胞または補体機能の具体的な障害が示唆された場合,他の検査が適応となる。

患者に反復性感染症およびリンパ球減少症が認められた場合,リンパ球欠損を確認するために,フローサイトメトリーならびにT細胞,B細胞,およびナチュラルキラー(NK)細胞に対するモノクローナル抗体を用いたリンパ球の表現型検査が適応となる。

細胞性免疫不全が疑われる場合,T細胞受容体切除サークル(TREC)検査を行ってT細胞数が少ない乳児を確認できる。T細胞数が少ないまたは欠如していることが検査で明らかになった場合,in vitroでのマイトジェン刺激試験を行ってT細胞機能を評価する。MHC抗原の欠損が疑われる場合,血清学的(遺伝子ではなく)HLAタイピングが適応となる。全ての新生児に対してTREC検査によるスクリーニングを推奨している専門家もいる;米国の一部の州では検査をルーチンに行っている。

液性免疫不全が疑われる場合,例えば,ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK),CD40およびCD40リガンド,ならびにNEMO(NF-κB essential modulator)をコードする遺伝子の特定の変異について検査を行うことがある。汗試験は典型的には嚢胞性線維症を除外するための評価時に行う。

細胞性免疫および液性免疫の複合免疫不全があり,SCIDが疑われる場合,特定の(例,IL-2受容体γ鎖[IL-2RG,またはIL-2Rγ]の遺伝子における)典型的変異について検査することがある。

食細胞の異常が疑われる場合,フローサイトメトリーによりCD15およびCD18を測定し,好中球走化性を調べる。フローサイトメトリーによる活性酸素産生能(呼吸バースト)測定(ジヒドロローダミン 123[DHR]またはニトロブルーテトラゾリウム[NBT]によって測定)で,食作用で酸素ラジカルが産生されるかどうかを検出できる;産生がないことが慢性肉芽腫症の特徴である。

感染の種類またはパターンから補体欠損が示唆される場合は,抗体で覆われた赤血球を50%溶解するのに必要な血清希釈率を計測する。この試験(CH50と呼ばれる)では,古典経路における補体成分の欠損を検出できるが,どの補体成分に異常があるかは示せない。同じような試験(AH50)が副経路における補体成分の欠損を検出するために実施できる。

診察またはスクリーニング検査でリンパ球または食細胞の異常を示唆する所見を検出した場合は,他の検査を行うことでより正確に具体的な疾患の特徴を明らかにできる ( 免疫不全症*に対する特異的で高度な臨床検査)。

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免疫不全症*に対する特異的で高度な臨床検査

検査

適応

解釈

液性免疫不全*

IgE濃度の測定

膿瘍

膿瘍および気瘤(高IgE症候群),部分的なT細胞の欠損,アレルギー疾患,または寄生虫感染症の患者では濃度が高い。

B細胞の機能不全または欠損が完全ではない患者では,濃度が高いことも低いこともある。

単独の欠損は臨床的に問題ない。

フローサイトメトリーによるB細胞の定量

Ig低値

B細胞が1%未満であれば,X連鎖無ガンマグロブリン血症が示唆される。

Omenn症候群ではB細胞がみられない。

リンパ節生検

リンパ節腫脹を認める一部の患者では,胚中心が正常か確認するとともに,癌および感染症を除外する

解釈は組織像によって異なる。

遺伝子検査(遺伝子配列決定または遺伝子変異解析)

B細胞が1%未満(フローサイトメトリーで検出)

特徴的変異が1つ以上ある疾患が疑われる

以下のように遺伝子異常で診断が示唆または確定される:

検査結果から予後情報も得られる。

T細胞の欠損または異常

フローサイトメトリーおよびモノクローナル抗体を用いたT細胞の計数

リンパ球減少症,SCIDまたは完全型DiGeorge症候群の疑い

解釈はSCIDの分子型によって異なる。

マイトジェン,抗原,または放射線照射した同種白血球に対するT細胞増殖試験

T細胞の割合の低下,リンパ球減少症,SCIDまたは完全型DiGeorge症候群の疑い

細胞分裂時の放射性チミジンの取り込みが少ないか無ければ,T細胞の異常または複合免疫不全を示す。

モノクローナル抗体または血清学的HLAタイピングを用いる抗原(例,MHCクラスII分子)の検出

MHC欠損症の疑い,細胞によるMHC刺激の欠如

血清学的HLAタイピングによるクラスIまたはクラスII HLA抗原の欠如は,MHC欠損症の診断に有用である。

赤血球 アデノシンデアミナーゼ試験

重度のリンパ球減少症

SCIDの特定の型では低値である。

プリンヌクレオシドホスホリラーゼ測定

重度の持続性リンパ球減少症

Ig濃度が正常または高値の複合免疫不全症では低値である。

T細胞受容体およびシグナル伝達の検査

マイトジェン抗原に応答して正常に増殖しないが表現型上は正常なT細胞

解釈は検査によって異なる。

T細胞受容体切除サークル(TREC)検査

SCIDおよび他のT細胞疾患に関するスクリーニング

低値は,T細胞の発達または成熟を妨害する欠陥,またはT細胞のアポトーシスを引き起こす欠陥があることを示唆する。

液性免疫および細胞性免疫の複合免疫不全

遺伝子検査

複合免疫不全症の疑い

遺伝子の異常から特定の疾患が示唆または確定される;例えば,NEMOの異常ではNF-κBの調節に欠陥がある免疫不全症が示唆され,IL-2RGの異常ではSCIDが示唆される。

食細胞の異常

活性酸素(過酸化水素,スーパーオキシド)またはタンパク(CR3[CD11]接着性糖タンパク,NADPHオキシダーゼの成分)の検査

ブドウ球菌性膿瘍,特定のグラム陰性菌感染症,または真菌感染症(例,Serratia marcescensによる感染症,アスペルギルス症)の病歴

異常があれば,食細胞の欠陥または欠乏が確定する。

STAT1 およびSTAT4を含むSTAT(シグナル伝達兼転写活性化因子)のリン酸化検査

反復性の抗酸菌感染症

この検査は,メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD)を調べる上で最初に行われる検査である。

補体欠損

具体的な補体成分の濃度測定

補体障害の疑い

解釈は検査によって異なる。

*これらの検査の一部をスクリーニングまたは初回検査に用いることがある。

SAPはSH2 domain protein 1A (SH2D1A)またはDSHP とも呼ばれる。

検査では,汎T細胞に対して抗CD3抗体,ヘルパーT細胞に対して抗CD4抗体,細胞傷害性T細胞に対して抗CD8抗体,活性化およびナイーブT細胞に対して抗CD45ROまたは抗CD45RA抗体,制御性T細胞に対して抗CD25抗体,ならびにNK細胞に対して抗CD16および抗CD56抗体を使用する。

BTK = ブルトン型チロシンキナーゼ;CH = 溶血性補体;Ig = 免疫グロブリン;IL2RG = IL-2受容体γ;MHC = 主要組織適合抗原複合体;NADPH = ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸;NEMO = NF-κB essential modulator;NF-κB = 核内因子κB;SAP = SLAM結合タンパク;SCID = 重症複合免疫不全症;SLAM = シグナル伝達リンパ球活性化分子。

出生前診断および出生時診断

絨毛採取,羊膜細胞培養,または胎児血液採取により,ますます多くの原発性免疫不全症が出生前に診断可能となっているが,こうした検査は,家系員に変異がすでに同定されている場合にのみ用いられる。

X連鎖無ガンマグロブリン血症,Wiskott-Aldrich症候群,毛細血管拡張性運動失調症,X連鎖リンパ増殖症候群,SCIDの全ての型(TREC検査を用いて),慢性肉芽腫症の全ての型を検出できる。

X連鎖疾患を除外するために,超音波検査による性別判定が利用可能である。

予後

予後は,原発性免疫不全症の種類で異なる。

Ig欠損または補体欠損の患者では,早期に診断されて適切な治療を受け,かつ慢性疾患(例,気管支拡張症などの肺疾患)を合併していなければ,ほとんどの予後が良好で余命も正常に近い。

その他の免疫不全症の患者(例,食細胞の異常,またはWiskott-Aldrich症候群もしくは毛細血管拡張性運動失調症などの複合免疫不全症の患者)は予後について慎重な監視を要する;ほとんどが集中的かつ頻繁な治療を要する。

一部の免疫不全症の患者(例,SCIDの患者)は,移植により免疫機能を回復させない限り,乳児期に死亡する。新生児で臍帯血または末梢血の白血球数および目視法による白血球分画をルーチンに実施した場合,全ての病型のSCIDを出生時に診断できる。迅速な診断が生存に不可欠であるため,小児科における真の緊急事態であるSCIDに対して疑念を高くしておかなければならない。生後3カ月になる前にSCIDと診断された場合,適合または半適合(ハプロタイプが一致する)の血縁者からの幹細胞の移植で,95%を救命できる。

パール&ピットフォール

  • 早期死亡を防ぐために,全ての新生児に対してT細胞受容体切除サークル(TREC)検査を用いたSCIDのスクリーニングを積極的に検討する。

治療

  • ワクチンの接種と感染曝露の回避

  • 抗菌薬およびときに手術

  • 欠損している免疫成分の補充

免疫不全疾患の治療には一般に,感染予防,急性感染症の管理,および可能な場合は欠損している免疫成分の補充などがある。

感染予防

感染は,環境性曝露を避けるよう患者に助言するとともに,生ウイルスワクチン(例,水痘,ロタウイルス,麻疹,ムンプス,風疹,帯状疱疹,黄熱病,経口ポリオ,経鼻インフルエンザワクチン)またはBCGを接種しないことによって予防できる可能性がある。

重篤な感染症のリスクがある患者(例,SCID,慢性肉芽腫症,Wiskott-Aldrich症候群,または無脾症の患者),または特異的感染症(例,T細胞疾患の患者におけるPneumocystis jirovecii感染症)のリスクがある患者には,抗菌薬を予防投与できる(例,トリメトプリム/スルファメトキサゾール5mg/kgを1日2回経口投与)。

輸血後の移植片対宿主病を予防するためには,サイトメガロウイルス陰性のドナー由来の血液製剤を用いるべきである;製剤はフィルターを通して白血球を取り除き放射線(15~30Gy)を照射する。

急性感染症の管理

適切な培養を手配した後に,可能性の高い原因菌を標的とした抗菌薬を迅速に投与すべきである。ときに手術(例,膿瘍からの排膿)が必要である。

通常,易感染性患者では,自然に軽快するウイルス感染症でも重度の持続性疾患を引き起こす。抗ウイルス薬(例,インフルエンザに対してアマンタジン,リマンタジン,オセルタミビル,ザナミビル;単純ヘルペスおよび水痘帯状疱疹感染症に対してアシクロビル;RSウイルスまたはパラインフルエンザ3型感染症に対してはリバビリン)で救命できることがある。

欠損している免疫成分の補充

こういった補充が感染予防に役立つ。複数の原発性免疫不全症に用いられる治療法としては以下のものがある:

  • 免疫グロブリン静注(IVIG)は,抗体欠損症のほとんどの病型に対して効果的な補充療法である。通常の用量は400mg/kgの1カ月1回の投与である;治療はゆっくりした投与速度で開始する。一部の患者では,より高い用量またはより頻回の投与が必要である。従来の用量では十分に反応しない一部の抗体欠損症患者(特に慢性肺疾患を有する場合)には,IVIG 800mg/kgの1カ月1回投与が有用である。高用量IVIGの目的は,IgGのトラフ濃度を正常範囲(> 600mg/dL)に維持することである。

  • 皮下注用免疫グロブリン製剤(SCIG)はIVIGの代わりに投与できる。SCIGは家庭で,通常は患者自身が投与する。通常の用量は100~150mg/kg,週1回である。SCIGとIVIGは生物学的利用能が異なるため,IVIGからSCIGに切り替えた患者では,用量の調節が必要になることがある。SCIGでは,注射部位の反応が起こるリスクがあるが,SCIGは全身性の有害作用はより少ないようである。

  • 骨髄,臍帯血,または成人の末梢血幹細胞を用いる造血幹細胞移植は,致死性のT細胞免疫不全症およびその他の免疫不全症に効果的である。T細胞が欠失した患者(例,SCID患者)に移植前化学療法は不要である。しかし,T細胞機能が損なわれていない患者またはT細胞欠損が部分的な患者(例,Wiskott-Aldrich症候群,T細胞機能は不十分であるが欠如はしていない複合免疫不全症)では,移植片が確実に生着するように,移植前化学療法が必要である。適合同胞ドナーが得られない場合,ハプロタイプが一致する親から採取した骨髄を用いることができる。そのような場合,移植前に親の骨髄から移植片対宿主病を起こす成熟T細胞を徹底的に除去しなければならない。HLAが適合する同胞の臍帯血も,幹細胞の供給源として使用できる。場合によっては,適合する非血縁ドナーの骨髄または臍帯血が使用できるが,移植片対宿主病を予防するために移植後に免疫抑制薬が必要であり,その使用によって免疫機能の回復が遅れる。

レトロウイルスベクターによる遺伝子治療がX連鎖およびADA欠損SCIDの少数の患者で成功しているが,一部のX連鎖SCID患者が白血病を発症したため,この治療法が広く用いられることはない。

要点

  • 感染症が異常に頻発もしくは重度の場合,特に家系員にみられる場合,または患者が鵞口瘡,口腔内潰瘍,歯周炎,もしくは特定の皮膚病変を有する場合は,原発性免疫不全症を考慮する。

  • 皮膚,全ての粘膜,リンパ節,脾臓,および直腸を含め,徹底した身体診察を行う。

  • 血算(目視法による白血球分画を含む),定量的Ig値,抗体価の検査,および遅延性過敏症に対する皮膚テストを開始する。

  • 疑われる免疫不全の種類(液性免疫,細胞性免疫,食細胞の異常,または補体欠損)に基づいて追加の検査を選択する。

  • 免疫不全症が確認された家系員がいる場合は,胎児の検査(例,胎児の血液,絨毛採取,または羊膜細胞培養を用いた検査)を行う。

  • 感染を回避する方法を患者に教え,適応となるワクチンを接種し,特定の疾患がある患者には予防的抗菌薬を処方する。

  • 抗体欠損に対して免疫グロブリン補充,および重度の免疫不全症で,特にT細胞の免疫不全症に対して造血幹細胞移植を考慮する。

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