病院でのケアと高齢者

執筆者:Debra Bakerjian, PhD, APRN, University of California Davis
レビュー/改訂 2020年 7月
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病院は,救急処置,診断検査,集中治療,または手術を提供し,入院を必要とする場合とそうでない場合がある。高齢患者は,若年患者と比較して病院を多く利用する;高齢患者は救急外来からの入院がより多く,入院回数と期間がより多く,入院中により多くの資源を使用している。

救急外来ケア

2015年において,約57,000人の65歳以上の成人が救急外来を受診し,そのうち33.6%が入院となったが,これは2006年の42%から20%の減少であった(1)。高齢患者は病状がより深刻な傾向にある。一部の病院では現在,高齢者医療の訓練を受けた看護師と医師が配置された高齢者専門の救急外来が設置されており,これが入院の減少に寄与している可能性がある(2)。50%を上回る患者が新たに薬剤を処方される。高齢者は,プライマリケアの代用として救急外来を利用したり,またはプライマリケア医から十分な治療を受けていないために救急外来を受診したりすることがある。救急外来の受診は,フレイルな高齢患者の社会構造の破綻が原因となって生じることが多く,例えば,介護者が不在または病気であることにより,かかりつけの医師を受診するのではなく,救急車が呼ばれる場合がある。しかし,多くの場合,受診理由は本当の緊急事態である。

救急外来には,一般的に,高齢者のための特別な宿泊設備(例,静かな部屋,低床ベッド,余分な枕,間接照明)がないため,救急外来の受診は,高齢者により大きなストレスをもたらすことがある。しかしながら,一部の病院システムでは高齢者専門の救急外来を設置しており,これは通常の救急外来の中に設けられた高齢者ケア専用のスペースである。これらの高齢者専門の救急外来には,高齢者医療の訓練を受けた医師および看護スタッフが配置されているほか,褥瘡のリスクを低減する減圧マットレス付きのストレッチャーや,見えやすく聞こえやすくするために改善された照明や音響などの特別な機器が備わっている。

多くの高齢者は明確または典型的な疾患の症候を示さないため,高齢者の評価には通常,より長い時間がかかり,より多くの診断検査が必要になる。例えば,心筋梗塞が胸痛として出現するのは,80歳以上の患者のうち50%未満である。その代わり,高齢患者は全身の脱力感を訴えたり,または単に調子が良くないと訴えることがある。

明白でない要因(例,多重投薬:polypharmacy,薬物有害作用)が高齢患者の症状に影響を及ぼすことがある。例えば,転倒は,虐待,薬物有害作用(例,過鎮静),自宅の危険,身体的問題(例,視力低下),うつ病,または慢性アルコール中毒によって生じる可能性がある。高齢者の入院の5%以上が薬物有害作用によるものである。

救急外来を受診した高齢患者の約30~40%は,認知障害を有しているにもかかわらず,認知症と診断されない;10%は,せん妄と一致する認知障害が認識されていない。必要な場合(例,高齢患者に人,場所,または時間についての見当識障害が認められる場合)には,救急外来にて,標準化された認知評価を施行すべきである。ただし,標準化された認知評価は救急外来を受診したあらゆる高齢患者に適している。認知障害は病歴および診断の信頼性に影響し,入院中のせん妄のリスクを高めるため,患者の処遇を計画する場合にこれを考慮しなければならない。認知障害が最近発症したのかどうかを把握することは,救急外来で認知障害を全面的に評価すべきかどうかを判断するのに役立つ。最近発症した認知障害は,敗血症,潜在性の硬膜下出血,または薬物有害作用を示すことがある。

フォローアップを手配できるように,救急外来にて,自殺リスク,転倒リスク,失禁,栄養状態および予防接種状況を評価すべきである。

入院

病床を利用する成人のほぼ半数が65歳以上である;この割合は高齢化に伴い大きくなると予想される。有床の病院や高度看護施設,入院に関連する在宅ケア,ホスピスケアに対する2020年のメディケアの支出は約2169億ドルと推定され,これは米国の病院でのケアにおける同様の支出の25%に相当する。(1)。

入院は,加齢に伴う生理的変化を増強し,罹病率を高める。

他の場所では適切なケアを受けられない重篤な状態にある高齢患者に限り入院させるべきである。入院は,閉じこもること,不動状態,診断検査,および治療(特に薬剤レジメンの変更)を伴うため,入院そのものが高齢患者にリスクをもたらす。患者が入退院する際,薬剤が追加または変更される可能性が高いことで,有害作用のリスクが増大する。病院での治療は,人間性を奪うような,非人格的なものになりうる。病院での急性期ケアは,在宅ケア,高度看護施設,または外来リハビリテーションプログラムへの移行が可能になるのに十分な期間のみにとどめるべきである。

入院の転帰は,加齢に伴い悪化すると思われるが,暦年齢よりも生理的年齢の方が転帰の予測因子として重要性が高い。待機的処置(例,人工関節置換術)のために入院した患者の方が,重篤な疾患(例,多臓器不全)のために入院した患者よりも転帰が良好である。

入院時に機能的に自立していた75歳以上の患者のうち,約75%が退院時には機能的に自立していない状態である;75歳以上の患者の15%が退院後,高度看護施設に入所する。これらの割合が高い理由は,急性期の入院期間が短縮され,その後に高度看護施設にて亜急性期のケアおよびリハビリテーションが施行される傾向があることで,ある程度説明できる可能性がある。しかし,疾患が治療可能であるか,または合併症がないようでも,入院前の身体機能状態に回復しないことがある。研究では,入院中に中等度の運動(特にウォーキング,レジスタンストレーニング,バランストレーニングに重点を置いた運動)を行った患者では,入院中に機能低下がみられなかったことが示されている(2)。このことは,高齢者が入院中にできるだけ早く理学療法を開始することの重要性を強調している。

薬物有害作用

高齢患者の薬物有害作用による入院率(約17%)は,若年患者(4%)の4倍高くなっている。薬物有害作用の原因としては以下のものがある:

  • 多重投薬(polypharmacy)

  • 薬物動態および薬力学における加齢変化

  • 入院中および退院時の薬剤の(意図的なおよび意図的でない)変更( see page 高齢者における薬物関連の問題

  • 複数の異なる薬剤を必要とする併存症

予防

処方および受領済みの毎日服用する薬剤のリストを整備することが,薬物有害作用および薬物相互作用の予防に役立つ。

薬剤の分布,代謝,および排泄は高齢患者によって大きく異なるため,以下を実施すべきである:

  • 用量を慎重に調節すべきである。

  • 腎臓を介して排泄される薬剤の場合,用量調節時に,クレアチニンクリアランスを算出すべきである。

  • 血清中薬物濃度を測定すべきである。

  • 患者の反応を観察すべきである。

高齢者では,特定の薬剤または特定の薬剤カテゴリーを避けるべきである( see table 高齢者において潜在的に不適切な薬剤(American Geriatrics Society 2015 Beers Criteria Updateに基づく))。タキフィラキシーが生じる可能性があり,転倒およびせん妄のリスクが増大するため,睡眠薬の使用は最小限に抑えるべきである;薬剤の前に,睡眠衛生を改善する方策を試みるべきである。薬剤が必要な場合は,通常,短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤が最適である。抗ヒスタミン薬は抗コリン作用があり,鎮静に使用すべきではない。高齢者が服用する薬剤の数を減らすため,また薬剤間相互作用のリスクを低減するために,処方者は定期的に薬剤を見直し,用量を減量できるかどうか,または薬剤を安全に中止できるかどうかを判断すべきである。

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臥床の影響

入院中の長期臥床はデコンディショニングにつながるため,妥当となることはめったにない。結果として生じる運動不足は以下の影響を及ぼす:

  • 全く身体を動かさないと,筋力が5%/日ずつ低下し,転倒リスクが増大する。

  • 筋肉が短縮し,関節周囲の構造および軟骨性の関節構造が変化する(下肢で最も速い)ため,運動が制限され,拘縮が発生する一因となる。

  • 有酸素能力が著しく低下し,最大酸素摂取量が大幅に低下する。

  • 骨量減少(脱石灰化)が加速する。

  • 深部静脈血栓症のリスクが増大する。

たとえ数日でも臥床が続くと,生理的予備能の低下にもかかわらず自立的に生活できていた高齢患者が,その能力を喪失することがある。このような喪失が可逆性であったとしても,リハビリテーションには,広範で,高額な,かつ比較的長期の介入が必要である。

高齢患者では,臥床によって,若年患者と比較して,椎骨の骨量減少が50倍速くなる。10日間の臥床により生じた骨量減少は,回復に4カ月かかる。看護師は,入院中の歩行が高齢者の機能的能力を維持する上で極めて重要であるとするAmerican Academy of Nursingの推奨に沿ったケアが確実に病院で行われるようにすべきである。

予防

特別な理由によって禁止されている場合を除き,運動(特にウォーキング)を奨励すべきである。歩行に介助が必要な場合は,あらかじめ決められた時刻に療法士が介助を行う場合がある。しかし,医師,看護師,および家族も1日を通じて患者の歩行を介助すべきである。病院からの指示事項として運動の必要性を強調し,運動を促進すべきである。

不動状態が必要な場合,または長期疾患により不動状態となった場合は,禁忌がない限り,深部静脈血栓症の予防処置を施行することが望ましい。

リハビリテーションが必要なことが多い。自宅でのリハビリテーションの現実的な目標は,患者の入院前の活動レベルおよび現在のニーズに基づき決まる;自宅での理学療法および/または作業療法の指示を考慮すべきである。

転倒

加齢変化(例,圧受容器の感受性低下,体内水分量減少および血漿量減少)により,起立性低血圧の発生傾向が生じる。このような変化に加え,臥床の影響ならびに鎮静薬および特定の降圧薬の使用により,転倒(および失神)リスクが増大する。

入院中の高齢患者の転倒のうち,60%を超える転倒が浴室で発生する;患者は硬いものにぶつかることが多い。椅子から立ち上がったり,病院のベッドから出たりするときに転倒する患者もいる。患者は見知らぬベッドや環境にいることで,錯乱を起こしやすくなることがある。ベッドの手すりは,起き上がろうとする前に助けを呼ぶよう高齢患者に促すのに役立つことがあるが,乗り越えよう,または迂回しようという気にさせることもあるため,転倒の一因になる可能性がある。転倒のリスクが高いため,ベッドの手すりは一般に推奨されない。

予防

通常,ベッドの手すりは取り外すか,または下げておくべきである。身体的または化学的拘束の使用に代わる最適な選択肢は,転倒(興奮を含む)の危険因子を特定し,慎重に分析し,改善または修正するとともに,リスクのある患者を十分に観察することである。認知障害のある患者では低床ベッドを使用するとともにベッド横の床にパッドを敷くこと,液体がこぼれた場合は速やかに清掃すること,ならびに病室内の通路や廊下を邪魔なものがなく行き来しやすい状態にしておくことも,転倒リスクの低減に役立つことがある。

失禁

65歳以上の入院患者のうち40%を超える患者に,しばしば入院当日に尿失禁または便失禁が発生する。原因としては以下のものがある:

  • 慣れない環境

  • トイレへの通り道が散らかっている

  • 歩行を障害する疾患

  • ベッドが高すぎる

  • ベッドの手すり

  • 静脈ライン,経鼻酸素の管,心電図モニター,および心臓カテーテルなどの邪魔になる器具

  • 尿意の知覚を低下させる,膀胱もしくは腸の機能を阻害する,または歩行を障害する向精神薬

  • 尿失禁を引き起こす薬剤(例,抗コリン薬およびオピオイドは溢流性尿失禁を引き起こす;利尿薬は切迫性尿失禁を引き起こす)

オマルは,特に術後患者または慢性関節炎のある患者では,使い心地が悪い場合がある。認知症または神経疾患のある患者は,トイレの介助を依頼するナースコールを使えないことがある。

宿便,消化管感染症(例,Clostridium difficile大腸炎),薬物有害作用,および液体の栄養補助食品は,コントロール不能な下痢を引き起こすことがある。

適切な診断および治療により,多くの場合,禁制(continence)を再確立できる。

精神状態の変化

高齢患者は,認知症,せん妄,うつ病,またはその組合せが原因で,錯乱しているように見えることがある。しかし,医療従事者は,錯乱には別の原因がある可能性があり,錯乱が認められる場合には徹底した評価が必要であることを常に念頭においておかなければならない。

錯乱は特定の疾患に起因する場合がある( see table せん妄の原因)。しかし,院内環境が急性疾患および認知における加齢変化の影響を悪化させたことが原因で,錯乱が発生したり,または増悪したりすることがある。例えば,眼鏡および補聴器をつけていない高齢患者では,静かな,薄暗い明かりが灯った病室内では見当識が失われることがある。また患者は,院内の生活,日課(例,慣れない環境および室内での頻繁な覚醒),向精神薬の影響,麻酔への曝露,および手術または疾患のストレスによって錯乱を発症することもある。集中治療室では,常に光と騒音があるため,興奮,妄想様観念,ならびに精神および身体の疲労が発生することがある。

予防

眼鏡および補聴器が手元にない場合は持参するよう家族に依頼する。病室内に壁時計,カレンダー,および家族の写真を置くことは,患者の見当識を保つのに役立つ。病室は,室内に何があるか,誰がいるか,および自分がどこにいるかを患者が認識できる程度に明るくしておくべきである。必要に応じ,スタッフおよび家族が定期的に患者に時間と場所を思い出させるべきである。処置について,施行前および施行中に説明すべきである。

身体的拘束の使用は控える。興奮した患者は,拘束すると必ず興奮の程度が高まる。興奮の危険因子を特定し改善するとともに,患者を十分に観察することは,興奮を防止するか,または最小限に抑えるのに役立つ。患者に取り付けられた侵襲的および非侵襲的器具(例,パルスオキシメーター,尿道カテーテル,静脈ライン)も興奮を引き起こすことがある;こうした介入のリスク・ベネフィット比を考慮すべきである。

褥瘡

入院中の高齢患者では,皮膚の加齢変化が原因で,褥瘡が発生することが多い。直接的な圧力が毛細血管の灌流圧である32mmHgを超えると,わずか2時間で皮膚壊死が生じることがある。一般的な救急外来受診時において,高齢患者が硬いストレッチャーに横たわって診察を待っている間に褥瘡が発生し始めることがある。短時間の不動状態で,仙骨部の体圧は70mmHgに達し,支持されていない踵部の体圧は平均45mmHgとなる。車椅子に座っている状態や挙上したベッドで上体を支えている状態で体が下方に滑ると,ずれ力が生じる。失禁,栄養不良,および慢性疾患が褥瘡発生の一因になることがある。

予防

褥瘡を予防および治療するためのプロトコルを入院後すぐに開始し,BradenスケールやNortonスケールなどの妥当性が確認されたツールを用いてリスク評価を行うべきである。このプロトコルは,担当のケア提供者によって連日実施され,集学的チームによって定期的に再検討されるべきである。退院後,褥瘡だけが原因で,患者が地域社会に戻るのではなく,介護施設に入所することがある。

低栄養

高齢患者は入院後すぐに低栄養になったり,または低栄養の状態で入院することがある。長期入院により,既存疾患が増悪し,重大な栄養喪失に至ることが多い。低栄養は,感染に対する抵抗力,皮膚の完全性を維持する能力,およびリハビリテーションに参加する能力を低下させるため,入院患者では特に深刻な問題である;手術創も治癒しないことがある。

入院は以下のいくつかの点により低栄養の一因となる:

  • 厳格な食事スケジュール,空腹感や味覚に影響しうる薬剤の投与,および環境の変化が食欲および栄養摂取に影響を及ぼすことがある。

  • 病院食および治療食(例,減塩食)はなじみがなく,食欲がわかないことが多い。

  • 病院のベッドでトレイから食事を食べるのは難しく,ベッドの手すりや拘束で動きが制限されている場合や嚥下困難がある患者の場合特に困難となる。

  • 高齢患者は食事の介助が必要なことがある;介助者が来るのが遅れ,料理が冷めてしまい,食欲がさらに失せてしまうことがある。

  • 高齢患者は,口渇の知覚が低下していること,水に手が届きにくいこと,またはその両方の理由により,十分な水分を摂取しない場合がある;重度の脱水が発生することがある(ときに,昏迷および錯乱につながる)。

  • 義歯を自宅に忘れてきたり,または置き違えたりして,噛むのが難しいことがある;入れ歯にラベルを付けることで,紛失したり,食事のトレイと一緒に処分したりすることを防止するのに役立つ。

予防

入院時に,すでに栄養障害がある患者を同定し,適切に治療すべきである。医師およびスタッフは高齢患者の栄養欠乏を予測しておくべきである。

以下の対策が役立つ可能性がある:

  • 食事制限の指示をできるだけ早く撤回する

  • 栄養摂取量を毎日モニタリングする

  • 食べ物の好みについて患者および家族と話し合い,患者別に妥当な食事を手配するよう努める

  • 誰かと一緒に食べる方が食が進むため,食事の時に一緒にいてもらうよう家族に勧める

  • 患者に常に十分な食事が提供されるようにする(例,患者が検査または治療のために食事時間に病棟にいない場合には,食事を必ず取っておく)

  • 病状が非常に深刻で飲み込むことができない場合には,一時的な静脈栄養または経管栄養の使用を考慮する

  • 経口補液を明確に指示する(例,水分摂取を制限されていなければ,水差しにきれいな水を入れてベッドサイドのすぐに手の届くところに置いておくか,その他の飲み物を提供する;定期的に患者に飲み物を提供するよう,家族,友人,およびスタッフに指示する)

ケアの移行

ケアの移行とは,患者があるケア環境から他のケア環境へ移ることである。移行中に患者ケアが寸断され,拙速になされることが多く,医療従事者間のコミュニケーションを欠き,全てが不良な患者アウトカムをもたらすことが,過去10年間に有意な研究により示されてきた。ケアの移行時は最も多くのエラーが起こる時であり,罹患および死亡のリスクが増加する(特に,必ずしも自分自身で訴えることのできない高齢者において)。高齢者へのケアを提供する医療従事者は,高齢者が医療ケアシステムに入ってきた場合に生じる数多くの移行に特別な注意を払わなければならない。最良の実践には,以下を確認することが含まれる:

  • 関係する全ての医療記録が引き継がれること

  • 新しい医療施設で何を期待できるかに関して患者と家族に十分な情報が与えられること

  • 温かな引き継ぎが行われること―少なくとも送り出す組織と受入れ組織の間の電話連絡,また理想的には送り出す側の医療従事者と受入れ側の医療従事者の間の電話連絡が行われること

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Transitions of Care Coalition (NTOCC): Tools for health care professionals, government leaders, patients, and caregivers to raise awareness about transitions of care, increase the quality of care, reduce medication errors, and enhance clinical outcomes

退院計画および転院

早い段階での効果的な退院計画の策定には,多くの便益がある:

  • 入院期間が短縮される

  • 再入院の可能性が低下する

  • より安価な代替ケアが特定される

  • 患者の自宅への機器(例,医療用ベッド,酸素)の設置が円滑化される。

  • 患者の満足度を高めるのに役立つ。

  • 介護施設への入所を防止できる可能性がある。

患者が入院するとすぐに,集学的チームの全員が退院計画の策定を開始する。ソーシャルワーカーまたは退院計画のコーディネーターは入院から24時間以内に患者のニーズを評価する。看護師は,安全に退院できる時期,およびどの環境が最適かについて医師の判断を支援する。

自宅への退院

退院後,自宅に戻る患者にはフォローアップケアについて詳細に指示する必要があり,家族またはその他の介護者には,ケアを提供するための訓練が必要になることがある。患者および家族が,薬剤の投与方法,治療の施行方法,および回復のモニタリング方法について教育を受けなければ,有害な転帰および再入院の可能性が高まる。フォローアップのための予約日時および投薬スケジュールを書き出すことは,患者および家族の助けになることがある。プライマリケア医が正式な退院計画概要を受領する前に患者または家族からケアについて質問が出た場合に備えて,退院時に,簡潔な退院計画概要の写しを患者または家族に渡すべきである。

他の医療施設への転院

退院後,介護施設またはその他の施設に入所する場合は,退院計画をまとめた文書を患者に持たせ,全文を受入れ施設に電子的に送付すべきであり,また,受入れ施設に電話連絡もすべきである。理想的には,送り出す側の医療従事者が,新しい施設で患者をケアすることになる医師,ナースプラクティショナーまたは医師助手(physician assistant)に電話連絡すべきである。退院計画概要には,以下に関する完全で正確な情報を含めなければならない:

  • 患者の精神状態および身体機能状態

  • 薬剤の最終投与時刻

  • 現時点で服用している薬剤および用量,投与経路,服用回数の一覧

  • 既知の薬物アレルギーまたは有害反応

  • 蘇生処置拒否指示の有無を含む事前指示書

  • 家族の連絡先および支援状況

  • フォローアップのための予約日時および検査

  • 病院で提供されたケアの概要(関連する検査や処置の結果の写しを含む)

  • 追加情報を提供できる看護師および医師の氏名および電話番号

転院時に,患者の病歴および社会歴を記載した文書の写しを患者に持たせるべきであり,また情報不足がないようにするために,この文書を受入れ施設に電子的に送付する場合がある。

両施設のスタッフ間の効果的なコミュニケーションはケアの継続性を確保するのに役立つ。例えば,担当の看護師が,転院の直前に受入れ施設に電話して情報をレビューしたり,退院後に患者のケアを行う看護師に電話することができる。

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