虚血性脳卒中

執筆者:Ji Y. Chong, MD, Weill Cornell Medical College
レビュー/改訂 2020年 4月
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虚血性脳卒中とは,局所的な脳虚血に起因して突然生じる神経脱落症状のうち,永続的な脳梗塞(例,MRIの拡散強調画像で陽性となるもの)を伴うものである。一般的な原因は(頻度の高い順に)太い動脈のアテローム血栓性閉塞;脳塞栓症(塞栓性脳梗塞);深部の細い脳動脈の非血栓性閉塞(ラクナ梗塞);および近位部の動脈狭窄に加えて動脈分水嶺領域の脳血流量を減少させる血圧低下を伴うもの(血行力学性の脳卒中)である。診断は臨床的に行うが,出血を除外して脳卒中の存在および範囲を確認するため,CTまたはMRIを施行する。一部の患者では,急性期の血栓溶解療法が有用となる場合がある。脳卒中の原因によっては,頸動脈内膜剥離術もしくはステント留置術,抗血小板薬,またはワルファリンが脳卒中再発リスクの軽減に役立つことがある。

虚血性脳卒中の病因

虚血性脳卒中のリスク増大に最も寄与する是正可能な危険因子を以下に示す:

是正できない危険因子としては以下のものがある:

  • 脳卒中の既往

  • 性別

  • 人種/民族

  • 高齢

  • 脳卒中の家族歴

虚血性脳卒中の最も一般的な原因は以下のように分類できる:

  • 潜因性(すなわち,心原性塞栓,ラクナ梗塞,動脈硬化による明らかな発生源を認めないもの;原因として最多)

  • 心原性塞栓

  • ラクナ梗塞

  • 大径血管の動脈硬化(4番目に多い原因)

大径血管の動脈硬化

大径血管の動脈硬化は,頭蓋内と頭蓋外いずれの動脈にもみられる可能性がある。

アテロームは血栓の素因となり,潰瘍を形成すると特にその傾向が強くなる。アテロームはいずれの脳主幹動脈にも生じる可能性があり,乱流が生じる場所(特に頸動脈分岐部)でよくみられる。血栓による部分または完全閉塞は,中大脳動脈の主幹部とその分枝に好発するが,脳底部の太い動脈,深部穿通枝,および細い皮質枝にもよくみられる。脳底動脈のほか,内頸動脈の海綿静脈洞と前床突起の間の区間でしばしば閉塞が生じる。

心原性塞栓

塞栓は脳動脈のあらゆる部位で詰まる可能性がある。

塞栓源は心原性血栓であることがあり,特に以下の病態ではその可能性が高い:

  • 心房細動

  • リウマチ性心疾患(通常僧帽弁狭窄)

  • 心筋梗塞後

  • 細菌性または衰弱性心内膜炎(marantic endocarditis)における心臓弁上の疣贅

  • 人工心臓弁

  • 機械的循環補助装置(例,左室補助人工心臓,LVAD[2])

その他の塞栓源としては,開心術後に形成された血栓,頸部の動脈または大動脈弓に生じたアテロームなどがある。まれに,脂肪(長管骨骨折から),空気(減圧症),または卵円孔開存を介した右左短絡による静脈血栓(奇異性塞栓)が塞栓子となることがある。塞栓子は自然に遊離することもあれば,あるいは心血管系に対する侵襲的処置(例,カテーテル挿入)の後に遊離することもある。まれに,鎖骨下動脈の血栓が椎骨動脈またはその分枝において塞栓性脳卒中を引き起こすこともある。

ラクナ梗塞

虚血性脳卒中はラクナ梗塞から生じることもある。そのような小さな( 1.5cm)梗塞は,深部の皮質組織を栄養する細い穿通動脈の非アテローム性閉塞に由来し,通常は脂肪硝子変性(細い動脈の中膜が変性して脂質およびコラーゲンで置換される変化)が原因である。塞栓がラクナ梗塞の原因となりうるかについては議論がある。

ラクナ梗塞は,糖尿病またはコントロール不良の高血圧を有する高齢患者で発生する傾向がある。

その他の原因

脳卒中の比較的まれな原因としては,急性または慢性髄膜炎や血管炎疾患,梅毒などの疾患に続発する血管の炎症;頭蓋内動脈または大動脈の解離;凝固亢進性の疾患(例,抗リン脂質抗体症候群,高ホモシステイン血症);過粘調性の疾患(例,赤血球増多症,血小板増多症,異常ヘモグロビン症,形質細胞疾患);その他のまれな疾患(例,線維筋性異形成,もやもや病,ビンスワンガー病)などがある。

小児では,鎌状赤血球症が虚血性脳卒中の一般的な原因である。

全身の血液循環を妨げる因子(例,一酸化炭素中毒,重度の貧血または低酸素症,赤血球増多症,低血圧)はいずれも,全ての病型の虚血性脳卒中のリスクを増大させる。脳卒中は動脈支配域の境界(分水嶺領域)に沿って発生することがあるが,それらの領域では血流がそもそも少なく,血圧低下や脳主幹動脈の狭窄がある患者では特にその傾向が強い。

より頻度の低い虚血性脳卒中の原因としては,血管攣縮(例,片頭痛時,くも膜下出血後,コカインやアンフェタミンなどの交感神経刺激薬の使用後),静脈洞血栓症(例,頭蓋内感染時,術後,周産期,凝固亢進性の疾患に続発)などがある。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Kernan WN, Viscoli CM, Furie KL, et al: Pioglitazone after ischemic stroke or transient ischemic attack.N Engl J Med 374 (14):1321–1331, 2016. doi: 10.1056/NEJMoa1506930.

  2. 2.Morgan JA, Brewer RJ, Nemeh HW, et al: Stroke while on long-term left ventricular assist device support: incidence, outcome, and predictors.ASAIO J 60 (3):284–289, 2014. doi: 10.1097/MAT.0000000000000074.

虚血性脳卒中の病態生理

単一の脳動脈の血流が不十分になると,しばしば効率の高い側副血行路(特にウィリス動脈輪の吻合を介して頸動脈と椎骨動脈の間と,より程度は低いが大脳半球に血液を供給する複数の主幹動脈間)によって代償される。しかしながら,ウィリス動脈輪や種々の側副血行の血管径にみられる正常変異,動脈硬化,その他の後天性の動脈病変が原因となって側副血行路が遮断されることがあり,そのような場合には1本の血管の閉塞で脳虚血が発生する危険性が増大する。

灌流量が正常の5%を下回る状態が5分以上持続すると,一部のニューロンに細胞死が生じるが,脳損傷の程度は虚血の重症度に依存する。軽度であれば損傷は緩徐に進行するため,たとえ灌流量が正常の40%であっても,脳組織が完全に死滅するまでには3~6時間かかる可能性がある。しかしながら,重度の虚血が15~30分以上続けば,病変部の全ての組織が壊死に陥る(梗塞)。損傷は高体温時にはより急速に,低体温時にはより緩徐に進行する。組織が虚血に陥っていても不可逆的な損傷はまだ起きていない場合は,迅速な血流回復により損傷を軽減または回復させることが可能である。例えば,介入によって重度の虚血領域の周囲に存在する中等度の虚血領域(ペナンブラ)を救済できることがしばしばあり,ペナンブラがあるのは側副血行路が存在するゆえである。

虚血性損傷の機序としては以下のものがある:

  • 浮腫

  • 微小血管の血栓症

  • プログラム細胞死(アポトーシス)

  • 細胞壊死を伴う梗塞

炎症メディエーター(例,インターロイキン1β,腫瘍壊死因子α)は,浮腫および微小血管血栓症の一因となる。浮腫が重度または広範囲であると,頭蓋内圧が亢進することがある。

壊死性細胞死には多くの因子が寄与する可能性があり,具体的な因子としては,貯蔵ATP(アデノシン三リン酸)の喪失,イオンの恒常性の喪失(細胞内カルシウムの蓄積を含む),フリーラジカルによる細胞膜の脂質過酸化傷害(鉄を介した反応),興奮性神経毒(例,グルタミン酸),乳酸蓄積による細胞内アシドーシスなどがある。

虚血性脳卒中の症状と徴候

虚血性脳卒中の症状と徴候は脳の病変部位に依存する。神経脱落症状のパターンからしばしば責任動脈が示唆されるが(主な脳卒中症候群の表を参照),その相関は不正確であることが多い。

表&コラム

機能障害は発症から数分以内に最大となることがあり,これは塞栓性脳卒中で典型的にみられる。比較的頻度は低いが,機能障害が緩徐に(通常は24~48時間かけて)進行する場合もあり(進行性脳卒中[evolving strokeまたはstroke in evolution]と呼ばれる),アテローム血栓性脳卒中で典型的である。

ほとんどの進行性脳卒中では,頭痛,疼痛,および発熱を伴わずに一側性の神経機能障害(一側の上肢に始まって同側性に進展する場合が多い)が拡大する。進行は通常段階的で,安定期による中断がある。

病態が完成した後も患部に機能が残存している場合は,submaximal strokeとされ,生存組織には損傷のリスクがあることが示唆される。

塞栓性脳卒中はしばしば日中に発生し,頭痛が神経脱落症状に先行することがある。血栓は夜間に発生する傾向があるため,最初に気づかれるのは覚醒時である。

ラクナ梗塞では,古典的ラクナ症候群(例,純粋運動性不全片麻痺[pure motor hemiparesis],純粋感覚性発作[pure sensory hemianesthesia],運動失調不全片麻痺[ataxic hemiparesis],構音障害と一側の巧緻運動障害[dysarthria-clumsy hand syndrome])のいずれかが生じるが,皮質機能障害の徴候(例,失語)はみられない。多発性ラクナ梗塞は多発梗塞性認知症を引き起こしうる。

脳卒中発症時に痙攣発作が起こることがあるが,血栓性脳卒中よりも塞栓性脳卒中で多くみられる。痙攣発作は数カ月から数年後に発生することもあり,そうした遅発性の痙攣発作は虚血部位の瘢痕またはヘモジデリン沈着に起因する。

発症後最初の48~72時間の悪化,特に進行性の意識障害は,脳梗塞の拡大よりも脳浮腫が原因であることの方が多い。梗塞が大きいか広範囲ではない限り,一般的には最初の数日で機能の改善がみられ,最長1年間でさらなる改善が徐々に得られる。

虚血性脳卒中の診断

  • 主に臨床的な評価

  • 脳画像検査およびベッドサイドでの血糖測定

  • 原因を同定するための評価

虚血性脳卒中の診断は,特定の動脈領域に対応する突然の神経脱落症状から示唆される。虚血性脳卒中は,類似の局所神経脱落症状を引き起こす以下のような病態(stroke mimicと呼ばれることがある)と鑑別する必要がある:

頭痛,昏睡または昏迷,および嘔吐は,出血性脳卒中で生じる可能性の方が高い。

虚血性脳卒中の評価には,脳実質,血管系(心臓および太い動脈を含む),および血液の評価が必要である。

脳卒中の病型の臨床的な鑑別は精度が高くないが,症状の進行,発症時刻,および障害の型に基づく一部の手かがりが役立つことがある。

診断は臨床的に行うが,脳画像検査およびベッドサイドでの血糖測定は必須である。

病歴,診察,および脳画像検査に基づいたラクナ梗塞,血栓性脳卒中,塞栓性脳卒中の鑑別は常に信頼できるとは限らないため,これら全ての病型の脳卒中について,一般的な原因または治療可能な原因とそれらの危険因子を同定する検査をルーチンに行うべきである。評価すべき原因および危険因子のカテゴリーとして以下のものがある:

  • 心臓(例,心房細動,塞栓源となりうる構造物)

  • 血管(例,危機的な動脈狭窄)

  • 血液(例,凝固亢進状態)

一部の脳卒中は原因を同定することができない(潜因性脳卒中)。

脳の評価

まずCTまたはMRIによる神経画像検査を施行して,脳内出血,硬膜下または硬膜外血腫,ならびに急速に増大する腫瘍,出血を伴う腫瘍,および突然症状が現れる腫瘍を除外する。CT所見は,前方循環系の大きな虚血性脳卒中でさえ,最初の数時間は軽微なことがあり,そのような変化としては,脳溝または島皮質陰影(insular ribbon)の不明瞭化,皮質白質間の皮髄境界の消失,中大脳動脈の高吸収所見(dense MCA sign)などがある。虚血から6~12時間以内には,中程度から大きな梗塞は低吸収域として描出されるようになるが,小さな梗塞(例,ラクナ梗塞)はMRIでしか描出されないことがある。

CTによる最初の脳画像検査後には,直ちにMRIの拡散強調画像(早期の虚血に対する感度が高い)を撮影することができる。

虚血性脳卒中の画像
低酸素性虚血性脳損傷と脳浮腫
低酸素性虚血性脳損傷と脳浮腫
この画像は,低酸素性脳損傷と脳浮腫を来した患者の単純CTである。灰白質/白質境界の不明瞭化と脳溝の消失に注目すること。

© 2017 Elliot K.Fishman, MD.

島皮質陰影の消失(insular ribbon loss)
島皮質陰影の消失(insular ribbon loss)
このCT画像では,脳患側のシルビウス裂および島皮質(直線矢印)が健側の島皮質(曲線矢印)と比べて不明瞭化していることが分かる。

By permission of the publisher. From Geremia G, Greenlee W.In Atlas of Cerebrovascular Disease.Edited by PB Gorelick and MA Sloan.Philadelphia, Current Medicine, 1996.

中大脳動脈梗塞
中大脳動脈梗塞
中大脳動脈の支配領域に透明の大きな梗塞巣がみられる。

By permission of the publisher. From Furie K, et al: Cerebrovascular disease.In Atlas of Clinical Neurology.Edited by RN Rosenberg.Philadelphia, Current Medicine, 2002.

左中大脳動脈の虚血性脳卒中(CT)
左中大脳動脈の虚血性脳卒中(CT)
この頭部単純CTでは,左中大脳動脈に高吸収域が認められる。この所見は左中大脳動脈の局所的な血栓(矢印)を示唆する。

Image courtesy of Ji Y.Chong, MD.

左島皮質および前頭葉における急性虚血性脳卒中(MRI)
左島皮質および前頭葉における急性虚血性脳卒中(MRI)
このMRI画像では,急性虚血性脳卒中と一致する拡散の制限された領域が左側の島皮質および前頭葉に認められる。

Image courtesy of Ji Y.Chong, MD.

ラクナ梗塞
ラクナ梗塞
このCT画像では,基底核にラクナ梗塞による境界明瞭な低吸収域(矢印)がみられる。

By permission of the publisher. From Geremia G, Greenlee W.In Atlas of Cerebrovascular Disease.Edited by PB Gorelick and MA Sloan.Philadelphia, Current Medicine, 1996.

心臓関連の原因

心臓関連の原因に対する典型的な検査としては,心電図検査,テレメトリーまたはホルター心電図検査,血清トロポニン値,経胸壁または経食道心エコー検査などがある。

血管関連の原因

血管関連の原因の検査には,MRアンギオグラフィー(MRA),CT血管造影(CTA),duplex法による頸動脈および経頭蓋超音波検査,従来の血管造影などがある。検査の選択および順序は,臨床所見に基づいて患者毎に決定する。MRA,CTA,および頸動脈超音波検査は,いずれも前方循環系の評価が可能であるが,後方循環系の評価では,頸動脈超音波検査よりもMRAおよびCTAの方がより良好な画像が得られる。検査中に(アーチファクトを避けるために)患者の体動を抑えられる場合は,一般にCTAよりMRAの方が望ましい。通常,CTAまたはMRAを緊急に施行すべきであるが,適応がある場合にtPA静注を遅らせてはならない。

血液関連の原因

血液関連の原因(例,血栓性疾患)の評価では,血液検査を行って,血液関連の原因とその他の原因がどの程度寄与しているのかを調べる。典型的なルーチン検査として,血算,血小板数,プロトロンビン時間/部分トロンボプラスチン時間(PT/PTT),空腹時血糖値,脂質プロファイルなどがある。

臨床所見から疑われる原因に応じた追加検査としては,ホモシステイン値の測定,血栓性疾患の検査(抗リン脂質抗体,プロテインS,プロテインC,アンチトロンビンIII,第V因子Leiden変異),リウマチ性疾患の検査(例,抗核抗体,リウマトイド因子,赤血球沈降速度[赤沈]),梅毒の血清学的検査,ヘモグロビン電気泳動,コカインおよびアンフェタミンに対する尿中薬物スクリーニングなどがありうる。

虚血性脳卒中の予後

脳卒中の重症度および進行の評価には,NIH脳卒中スケール(National Institutes of Health Stroke Scale)などの標準化された測定指標がしばしば用いられる(NIH脳卒中スケール[National Institutes of Health Stroke Scale]の表を参照);このスケールに基づくスコアは機能障害の程度および予後と相関する。1日目の時点では,進行および予後の予測は困難な場合がある。高齢,意識障害,失語,および脳幹徴候は予後不良を示唆する。早期の改善と低い発症年齢は予後良好を示唆する。

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表&コラム

中等度または重度の片麻痺がある患者の約50%とより軽症の患者の大半は,意識清明であり,最終的には基本的に必要なことを自分自身で行い,十分に歩行できるようになる。約10%の患者では,神経学的に完全な回復が得られる。通常は患肢の使用に制限がみられ,12カ月経過後も残存する障害は大半が永続的である。脳卒中を起こしたことのある患者では,脳卒中の再発リスクが高く,発作のたびに神経学的機能が悪化する傾向がある。最初の脳卒中から回復した患者の約25%が5年以内に新たな脳卒中を起こす。

虚血性脳卒中を起こした患者の約20%は病院で死亡し,死亡率は年齢とともに上昇する。

虚血性脳卒中の治療

  • 一般的な脳卒中の治療

  • 特定の状況でのみ急性期降圧療法

  • 抗血小板療法

  • 急性期治療では,ときに再灌流療法として遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(静注または局所血栓溶解療法),および/または機械的血栓除去術

  • ときに抗凝固療法

  • 危険因子の長期的管理

  • 頸動脈内膜剥離術またはステント留置術

急性脳卒中の治療

脳卒中の早期管理に関するガイドラインがAmerican Heart Association and American Stroke Associationから公開されている。急性虚血性脳卒中の患者は通常入院させる。

初期評価と状態の安定化を進める過程で以下のような支持療法が必要になることがある。

  • 意識低下または延髄機能障害により気道が損なわれている場合,気道確保および換気補助

  • 94%超の酸素飽和度を維持するのに必要な場合に限り,酸素投与

  • 高体温(38℃超)は解熱薬により是正し,低体温は原因を同定して治療する

  • 低血糖(血糖値 < 60mg/dL)の治療

  • 高血糖の治療(妥当な選択肢)として,低血糖が起こらないよう注意深くモニタリングしながら血糖値を140~180mg/dLまで低下させる

自己調節能が失われているため,虚血が生じた脳領域の灌流を維持するには血圧を高く保つことが必要になる場合がある;そのため,以下の場合を除いて,降圧を試みるべきではない:

  • その他の末端臓器損傷(例,大動脈解離,急性心筋梗塞,肺水腫,高血圧性脳症,網膜出血,急性腎不全)の徴候がみられる。

  • 遺伝子組換え型組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)および/または機械的血栓除去術を選択する可能性が高い。

15分の間隔を置いた一連の測定において,2回連続で収縮期血圧 ≥ 220mmHgまたは拡張期血圧 ≥ 120mmHgとなった場合,脳卒中発症後24時間以内に血圧を15%下げるのが妥当である。

血圧 > 185/110mmHgである点を除いては急性期再灌流療法に適格な患者では,以下のいずれかにより血圧を185/110mmHg未満に低下させることが可能ある:

  • ラベタロール10~20mgを1~2分で急速静注(1回繰り返してもよい)

  • ニカルジピン5mg/時を点滴静注で開始(用量を5~15分毎に2.5mg/時ずつ,最大15mg/時まで増量する)

  • クレビジピン(clevidipine)1~2mg/時の点滴静注(目標血圧に達するまで,最大21mg/時として,2~5分毎に用量を倍増する)

血栓または塞栓が推定される患者には,以下のいずれかまたは複数を組み合わせた治療を行う。

  • tPA,局所血栓溶解療法,および/または機械的血栓除去術

  • 抗血小板薬

  • 抗凝固薬

ほとんどの患者で血栓溶解療法の適応はなく,入院時に抗血小板薬(通常はアスピリン325mg,経口)を投与すべきである。抗血小板薬に対する禁忌としては,アスピリンまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)により誘発される喘息または蕁麻疹,アスピリンまたはタートラジンに対するその他の過敏反応,急性消化管出血,グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症,ワルファリン使用などがある。

遺伝子組換え型tPA(アルテプラーゼ)は,症状出現後3時間未満の急性虚血性脳卒中の患者でtPAに対する禁忌(脳卒中における組織プラスミノーゲンアクチベーターの使用に関する除外基準の表を参照)がない場合に使用される。専門家の中には,症状出現後4.5時間までtPAの使用を推奨する意見もあるが(Expansion of the Time Window for Treatment of Acute Ischemic Stroke With Intravenous Tissue Plasminogen Activatorを参照),発症から3~4.5時間が経過している場合には,追加の除外基準が適用される(脳卒中における組織プラスミノーゲンアクチベーターの使用に関する除外基準の表を参照)。

tPAは致死的または症候性の脳出血を引き起こす可能性があるが,プロトコルを厳守したtPA治療を受けた患者では,神経学的機能の回復が得られる可能性がより高くなる。急性脳卒中患者に対するtPAによる治療は,脳卒中管理の経験を豊富に有する医師のみが行うべきであり,もし経験のない医師が行えば,プロトコルに違反して脳出血や死亡につながる可能性が高くなる。tPAが不適切に使用された場合(例,除外基準に該当するにもかかわらず使用された場合),tPAによる出血リスクは主に脳卒中患者で高くなる;stroke mimicの患者では脳出血のリスクが非常に低い(約0.5%:95%信頼区間は0~2.0%[1])。経験豊富な医師がその場にいない場合は,可能であれば脳卒中センターの専門医へのコンサルテーション(テレビ電話による患者評価[遠隔医療]など)を行うことで,tPAの使用が可能になる場合がある。プロトコルを厳格に遵守しないと最悪の転帰が生じるため,選択および除外基準のチェックリストを使用するべきである。

tPAは症状出現から4.5時間以内に投与しなければならないが,これは難しい条件である。正確な症状出現時刻が不明の場合もあるため,臨床医は患者が正常な状態にあったことが最後に目撃された時点からの時間で判断しなければならない。

tPAによる治療を行う前に,以下の条件を満たす必要がある:

  • CTで脳出血を除外しなければならない

  • 収縮期血圧 < 185mmHgでなければならない

  • 拡張期血圧 < 110mmHgでなければならない

  • 血糖値 > 50mg/dLでなければならない

上記の通り降圧薬(ニカルジピン静注,ラベタロール静注,クレビジピン[clevidipine]静注)が投与されることがある。tPAによる治療後は少なくとも24時間にわたり,血圧を180/105mmHg未満に維持すべきである。

tPAの用量は0.9mg/kg,静注(最大90mg)であり,最初に10%を1分で急速静注し,残りを60分かけて持続注入する。治療後24時間はバイタルサインを注意深くモニタリングする。出血性の合併症が生じた場合は積極的に管理する。tPAによる治療後24時間は,抗凝固薬および抗血小板薬は使用しない。

表&コラム

血栓または塞栓に対する局所血栓溶解療法(thrombolysis-in-situ)(血管造影のガイド下で動脈内で血栓を溶解する)は,症状出現後の経過時間が6時間未満である場合に,major stroke(特に中大脳動脈の大きな閉塞による脳卒中で,遺伝子組換え型tPAの静注では治療できない症例)に対してときに用いられる。脳底動脈内の血栓には,脳卒中の発症から最長12時間後まで動脈内血栓溶解療法が可能であり,臨床状況によっては,ときにそれ以降に施行されることもある。一部の大規模な脳卒中センターでは,この治療が標準となっているが,他の病院では利用できないことが多い。

機械的血栓除去術(血管造影のガイド下でステント型血栓除去デバイスにより血栓または塞栓を動脈内から除去する)は,最近前方循環に大径血管の閉塞があった患者に対して大規模な脳卒中センターで行われている標準治療である。急性虚血性脳卒中の症状出現後4.5時間以内における遺伝子組換え型tPA静注の適応がある患者に対して,その代わりに用いるべきではない。血栓除去に使用されるデバイスは改良が続いており,最近のモデルでは,灌流量を90~100%まで回復させることができる。

機械的血栓除去術は,重症脳卒中を起こしており,NIH Stroke Scoreが6以上の患者の治療に用いることができる。しかしながら,最近の試験ではNIH Stroke Scoreが2以上の患者において(3),さらにはNIH Stroke Scoreに関係なく(4),便益が示されており,そのため血栓除去術(または血栓溶解療法)が適応となる。

機械的血栓除去術は,これまでは内頸動脈または中大脳動脈に閉塞がある患者で症状出現から6時間以内の場合に適応が限定されていた。しかしながら,包括的な脳卒中センターでは,梗塞のリスクがある組織(ペナンブラ)が相当存在することを示唆する臨床所見および/または画像所見があれば,より時間が経過してからの治療が正当化される場合がある。例えば,梗塞組織の体積と灌流低下がみられリスクのある組織(虚血ペナンブラ)の体積を,CT灌流画像またはMR灌流画像を用いて同定することができる。拡散強調画像で同定された梗塞体積と灌流強調画像で同定された梗塞体積との間に相当のミスマッチがあれば,まだ救済可能なペナンブラ領域がかなり残っている可能性がある。DEFUSE 3試験では,梗塞巣が小さくペナンブラが大きい(いずれも画像検査の基準に基づく)患者において,発症後16時間後までの明らかな便益が認められた(5)。DAWN試験では,画像検査に基づく梗塞体積と臨床基準に基づく臨床的障害の重症度との間に大きなミスマッチがある患者において,症状出現後24時間後までの便益が認められ(6),したがって,この所見は救済可能なペナンブラの存在を示唆する。

急性期脳卒中の治療では経口抗血小板薬が使用される。以下の薬剤が使用できる:

  • 脳卒中発症後48時間以内にアスピリン100~325mg

  • 抗血小板薬2剤併用療法:一過性脳虚血発作(TIA)のリスクが高い患者(ABCD2スコア ≥ 4)または軽度脳卒中のリスクが高い患者では,脳卒中発症から24時間以内にアスピリン + クロピドグレル(例,300~600mg,経口,1回,その後75mg,経口,1日1回)

アスピリンを48時間以内に投与すると,脳卒中患者の早期再発および死亡のリスクが低下する(7)。

ABCD2スコアは以下の値を加算して算出される:

  • A(age[年齢]):≥ 60 = 1

  • B(blood pressure[血圧]):収縮期血圧 ≥ 140mmHgまたは拡張期血圧 > 90mmHg = 1

  • C(clinical feature[臨床的特徴]):筋力低下 = 2,筋力低下を伴わない発話障害 = 1

  • D(TIA duration[TIAの持続時間]):60分以上 = 2,10~59分 = 1,10分未満 = 0

  • D2(diabetes[糖尿病])= 1

ABCD2スコアに基づく2日以内の脳卒中のリスクは以下の通りである:

  • スコア6~7:8%

  • スコア4~5:4%

  • スコア0~3:1%

TIAまたは軽症脳卒中の場合,症状出現後24時間以内にクロピドグレルとアスピリンの併用を開始し,21日間継続すると,アスピリンの単剤投与と比べて最初の90日間の脳卒中リスクの低減により効果的と考えられ,出血リスクを高めることもない(8)。しかしながら,長期的な脳卒中の二次予防においては,クロピドグレルアスピリンの併用はアスピリン単剤と比べて利点があるわけではなく,むしろ出血性合併症を増加させるため,長期的な併用(例,3カ月以上)は避けられる。

ヘパリンまたは低分子ヘパリンによる抗凝固療法は,脳静脈血栓症に起因する脳卒中のほか,ときに頸動脈解離に起因する脳卒中に用いられる。抗凝固療法は,心原性塞栓の再発リスクが高い患者(例,心臓の血栓または機械弁を有する患者)にも使用できる。

急性期には出血(出血性梗塞への変化)のリスクがより高いため(特に大きな梗塞の場合),通常は急性期の抗凝固療法は回避する。

脳卒中の長期的治療

回復期には支持療法を継続する:

  • 高血糖および発熱のコントロールは,脳卒中後の脳損傷を抑え,機能的転帰の改善につながる可能性がある。

  • 患者が飲食や服薬を開始する前に嚥下困難のスクリーニングを行うことは,誤嚥のリスクが高い患者の同定に役立つ可能性があり,このスクリーニングは言語聴覚士か訓練を受けたその他の医療従事者が行うべきである。

  • 経腸栄養が必要な場合は,急性脳卒中後に入院してから7日以内に開始すべきである。

  • 動くことができない脳卒中患者には,禁忌がなければ,深部静脈血栓症予防のための間欠的空気圧迫法(IPC)が推奨される。

  • 動くことができない脳卒中患者には,禁忌がなければ,低分子ヘパリンを投与してもよい。

  • 褥瘡の予防対策を早期に開始する。

長期管理では,脳卒中の再発予防(二次予防)にも焦点を合わせる。是正可能な危険因子(例,高血圧,糖尿病,喫煙,アルコール依存症,脂質異常症,肥満)を治療する。収縮期血圧の低減は,目標血圧を典型的な水準(140mmHg未満)ではなく,120mmHg未満とすることで,より効果的となる可能性がある。

頸動脈内膜剥離術またはステント留置術の適応は,機能障害を伴わないsubmaximal strokeを最近経験した患者において,その原因が同側頸動脈の内腔を70~99%閉塞させている病変か潰瘍性のプラークと考えられ,かつ期待余命が5年以上ある場合である。症状がみられる他の患者(例,TIAの患者)では,潰瘍の有無にかかわらず60%以上の頸動脈閉塞性病変があり,期待余命が5年以上ある場合に,動脈内膜剥離術またはステント留置術と抗血小板療法との併用が適応となる。これらの手技は,その手技を行う予定の病院での成功歴が高い(すなわち,合併症発生率および死亡率が3%未満の)外科医または血管内治療専門医が施行すべきである。頸動脈狭窄が無症状の場合には,頸動脈内膜剥離術またはステント留置術は,豊富な経験を有する外科医または血管内治療専門医が行った場合にのみ有益であり,その有益性も小さい可能性が高い。多くの患者では,塞栓防止用デバイス(一種のフィルター)を用いた頸動脈ステント留置術の方が頸動脈内膜剥離術より好ましく,特に患者が70歳未満の場合と手術のリスクが高い場合はその傾向が強くなる。頸動脈内膜剥離術またはステント留置術は,脳卒中の予防において同等の効果がある。周術期には,頸動脈内膜剥離術後は心筋梗塞の可能性がより高く,ステント留置後は脳卒中再発の可能性がより高い。

頭蓋外椎骨動脈の血管形成術および/またはステント留置術は,至適な内科的治療にもかかわらず椎骨脳底動脈の虚血症状が再発した患者と50~99%の椎骨動脈閉塞がある患者で施行されることがある。

頭蓋内主幹動脈の血管形成術および/またはステント留置術は,至適な内科的治療にもかかわらず脳卒中またはTIA症状が再発した患者と頭蓋内主幹動脈に50~99%の閉塞がある患者において,研究段階の治療法として考慮される。

卵円孔開存の血管内閉鎖術は,脳卒中予防において内科的管理より効果的とはみられていないが,現在も研究が進められている。

経口抗血小板薬は,非心原性(アテローム血栓性,ラクナ性,潜因性)脳卒中の予防に用いられる(二次予防)。以下の薬剤が使用できる:

  • アスピリン81または325mg,1日1回

  • クロピドグレル75mg,1日1回

  • アスピリン/徐放性ジピリダモール25mg/200mgの配合剤,1日2回

ワルファリンを服用中の患者では,抗血小板薬は出血リスクを相加的に増大させるため,通常は使用されないが,一部の高リスク患者においては,ときにアスピリンがワルファリンと同時に使用される。クロピドグレルはアスピリンアレルギーを有する患者で適応となる。クロピドグレルの服用中に虚血性脳卒中の再発または冠動脈ステントの閉塞が発生した場合には,クロピドグレルの代謝障害(チトクロムP450 2C19[CYP2C19]の活性低下のため,効率よくクロピドグレルを活性型に変換できない)を疑うべきであり,CYP2C19の状態を判定する検査(例,CYPの多型に対する遺伝子検査)が推奨される。代謝障害が確認された場合は,アスピリンまたはアスピリン/徐放性ジピリダモール配合剤が妥当な代替手段である。

クロピドグレルとアスピリン(急性期治療中に開始された場合)の併用は,アスピリン単剤と比べて長期的な脳卒中二次予防効果が高いわけではなく,むしろ出血性合併症を増加させるため,短期間(例,3カ月未満)のみ使用される。クロピドグレルとアスピリンの併用の適応は,ステント留置術の術前と術後30日間以上(通常6カ月以下)であるが,患者がクロピドグレルに耐えられない場合は,チクロピジン250mg,1日2回で置き換えることができる。

経口抗凝固薬は心原性脳卒中の二次予防(および一次予防)に適応となる。非弁膜症性または弁膜症性心房細動患者の一部では,国際標準化比(INR)の目標値を2~3に設定して,用量調節ワルファリン(ビタミンK拮抗薬)を使用する。人工心臓弁を使用している患者では,INRの目標値を2.5~3.5に設定する。非弁膜症性心房細動の患者に対するワルファリンの代替薬で効力が認められているものとして,以下に挙げる新しい抗凝固薬がある:

  • ダビガトラン(直接トロンビン阻害薬)150mg,1日2回,ただし重度の腎不全(クレアチニンクリアランス < 15mL/min)および肝不全(INR高値)がない患者に限る

  • アピキサバン(直接第Xa因子阻害薬)は80歳以上の患者で5mg,1日2回,ただし血清クレアチニン1.5mg/dL以上かつクレアチニンクリアランス25mL/min以上の患者と,ワルファリンを服用できない患者でアスピリンの代用とする場合に限る

  • リバーロキサバン(直接第Xa因子阻害薬)20mg,1日1回,ただし重度の腎不全(クレアチニンクリアランス < 15mL/min)がない患者に限る

これらの新しい抗凝固薬の主な利点は,使用しやすいことである(例,初回投与後に血液検査によって抗凝固効果のレベルを確認する必要がない,注射剤から経口剤の抗凝固薬に移行する際に未分画ヘパリンなどの注射剤を持続注入で使用する必要がない)。主な欠点は,出血性合併症の発生時に抗凝固作用に対する中和剤がないことであるが,ダビガトランは例外で,これには中和剤としてイダルシズマブを使用できる(9)。これらの新しい抗凝固薬を抗血小板薬と併用することの効力および安全性は確立されていない。

スタチン系薬剤は脳卒中予防に使用される;脂質値はかなり下げる必要がある。アテローム性脳卒中の所見が認められ,かつLDL(低比重リポタンパク質)コレステロール値が100mg/dL以上の患者には,アトルバスタチン80mg,1日1回が推奨される。LDLコレステロール値の妥当な目標は,50%の低下または70mg/dL未満への低下である。その他のスタチン系薬剤(例,シンバスタチン,プラバスタチン)も使用できる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Tsivgoulis G, Zand R, Katsanos AH, et al: Safety of intravenous thrombolysis in stroke mimics: prospective 5-year study and comprehensive meta-analysis.Stroke 46 (5):1281–1287, 2015. doi: 10.1161/STROKEAHA.115.009012.

  2. 2.Powers WJ, Rabinstein AA, Ackerson T, et al: 2018 Guidelines for the early management of patients with acute ischemic stroke: A guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association.Stroke 49 (3):e46–e110, 2018.doi: 10.1161/STR.0000000000000158.Epub 2018 Jan 24.

  3. 3.Berkhemer OA, Fransen PSS, Beumer D, et al: A randomized trial of intraarterial treatment for acute ischemic stroke.N Engl J Med 372:11–20, 2015.doi: 10.1056/NEJMoa1411587.

  4. 4.Campbell BCV, Mitchell PJ, Kleinig TJ, et al: Endovascular therapy for ischemic stroke with perfusion-imaging selection.N Engl J Med 372:1009–1018, 2015.doi: 10.1056/NEJMoa1414792.

  5. 5.Albers GW, Lansberg MG, Kemp S, et al: A multicenter randomized controlled trial of endovascular therapy following imaging evaluation for ischemic stroke (DEFUSE 3).Int J Stroke 12 (8):896–905, 2017.doi: 10.1177/1747493017701147.Epub 2017 Mar 24.

  6. 6.Nogueira RG, Jadhav AP, Haussen DC, et al: Thrombectomy 6 to 24 hours after stroke with a mismatch between deficit and infarct.N Engl J Med 378 (1):11–21, 2018.doi: 10.1056/NEJMoa1706442.Epub 2017 Nov 11.

  7. 7.Zheng-Ming C, CAST (Chinese Acute Stroke Trial) Collaborative Group: CAST: Randomised placebo-controlled trial of early aspirin use in 20,000 patients with acute ischaemic stroke. Lancet 349 (9065):1641–1649, 1997.

  8. 8.Hao Q, Tampi M, O'Donnell M, et al: Clopidogrel plus aspirin versus aspirin alone for acute minor ischaemic stroke or high risk transient ischaemic attack: Systematic review and meta-analysis.BMJ 2018 363:k5108,2018。doi: 10.1136/bmj.k5108.

虚血性脳卒中の要点

  • 虚血性脳卒中は低血糖,発作後(トッド)麻痺,出血性脳卒中,および片頭痛と鑑別する。

  • 臨床所見に基づく鑑別は精度を欠くものの,一般的な脳卒中の病型の鑑別に役立つ手がかりとしては,症状の進行(塞栓性では発症から数分以内に神経学的異常が最大になる一方,血栓性ではときに段階的ないし緩徐に発症する),発症時刻(塞栓性では日中である一方,血栓性では夜間),神経学的異常の種類(例,ラクナ梗塞では特定の症候群を認め,皮質徴候を欠く)などがある。

  • 心臓の異常(心房細動を含む)および動脈狭窄に対する検査を施行するとともに,適応に応じて血液検査(例,血栓性疾患,リウマチ性疾患,その他の疾患に対するもの)を行う。

  • 一般に,急性虚血性脳卒中の発症直後には積極的な降圧療法は行わない。

  • tPAに対する適格性の判定には,チェックリストを使用し,可能であれば直接または遠隔医療制度を介して専門医へのコンサルテーションを行う。

  • ペナンブラ組織を最大限救済するために,適応のある血栓溶解療法または機械的血栓除去術を可及的速やかに開始する(「time is brain」)。

  • 将来の虚血性脳卒中を予防するため,是正可能な危険因子の管理および治療を行い,状況に応じて抗血小板療法,スタチン療法,および/または頸動脈内膜剥離術もしくはステント留置術を施行する。

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