心臓腫瘍

執筆者:Lauren A. Baldassarre, MD, Yale School of Medicine;
Emmanuel Akintoye, MD, MPH, Yale School of Medicine
Reviewed ByJonathan G. Howlett, MD, Cumming School of Medicine, University of Calgary
レビュー/改訂 修正済み 2024年 6月
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心臓腫瘍は原発性(良性または悪性)の場合と転移性(悪性)の場合がある。原発性心臓腫瘍で最も頻度が高いものは,良性腫瘍である粘液腫である。心臓腫瘍は心臓のあらゆる組織に発生する。弁または流入路・流出路の閉塞,血栓塞栓症,不整脈,心膜疾患などの原因となりうる。診断は心エコー検査としばしば心臓MRIによる。良性腫瘍の治療は通常,外科的切除であるが,再発することがある。転移性悪性腫瘍の治療法は,腫瘍の種類と原発部位に依存するが,一般に予後は不良である。

原発性心臓腫瘍は,剖検例では5000例当たり1例未満の頻度で発見される(1)。転移性腫瘍の方がはるかに多く,ある症例集積研究では,がん患者の8%以上に認められた(2)。通常,原発性心臓腫瘍は心筋または心内膜を起源とするが,弁組織,心臓結合組織,または心膜に由来することもある。転移性心臓腫瘍は典型的には肺を起源とする。心転移を起こす頻度の高い他の腫瘍としては,乳癌,腎癌,黒色腫,リンパ腫などがある(2, 3)。

総論の参考文献

  1. 1.Reynen K: Frequency of primary tumors of the heart. Am J Cardiol 77(1):107, 1996.doi:10.1016/s0002-9149(97)89149-7

  2. 2.Silvestri F, Bussani R, Pavletic N, Mannone T: Metastases of the heart and pericardium.G Ital Cardiol 27(12):1252–1255, 1997.PMID: 947005

  3. 3.Klatt EC, Heitz DR: Cardiac metastases. Cancer 65(6):1456–1459, 1990.doi:10.1002/1097-0142(19900315)65:6<1456::aid-cncr2820650634>3.0.co;2-5

心臓腫瘍の分類

比較的頻度の高い原発性および続発性心臓腫瘍の一覧を心臓腫瘍の種類の表に提示する。原発性心臓腫瘍は以下のものに分類される:

  • 良性(全症例の約80%[1])

  • 悪性(残りの約20%)

良性原発性心臓腫瘍

例として粘液腫,乳頭状線維弾性腫,横紋筋腫,線維腫,血管腫,奇形腫,脂肪腫,傍神経節腫,心膜嚢腫などが挙げられる。

粘液腫が最も多く,原発性心臓腫瘍全体の40~60%を占める(2)。女性での発生率が男性の2~3倍である(3)。まれにみられる家族性の腫瘍(Carney complex)は,男性に多くみられる。粘液腫の大半は左房に発生するが(2),残りは他の心腔に孤立性の腫瘍として生じることもあれば,比較的まれながら複数の部位に生じることもある。粘液腫の直径は最大15cmになることもある。大半が有茎性で,拡張期に僧帽弁に落ち込んで,心室充満を妨げることがある。残りの腫瘍は広基性および無茎性である。粘液腫には,粘液状ないしゼリー状のもの,平滑で堅く分葉状のもの,もろく不整のものなどがある。もろく不整な粘液腫は全身性塞栓症のリスクを増大させる。

Carney complexは,常染色体顕性(優性)の形式で遺伝する家族性症候群であり,再発性心臓粘液腫に加えて,皮膚粘液腫,粘液様乳線維腺腫,色素性皮膚病変(黒子,雀卵斑,青色母斑),多発性内分泌腫瘍症(原発性の色素性結節性副腎皮質疾患で,クッシング症候群,成長ホルモンおよびプロラクチン分泌性の下垂体腺腫,精巣腫瘍,甲状腺腺腫または甲状腺癌,および卵巣嚢胞を引き起こす),砂粒腫性のメラニン性神経鞘腫,乳管腺腫,骨軟骨粘液腫などが様々な組合せで発生する。しばしば若年で発症し(年齢の中央値は20歳),多発性粘液腫が出現し(特に心室),粘液腫再発のリスクが高い。

乳頭状線維弾性腫は,約80%の症例で心臓弁に生じる無血管性の乳頭腫である(4)。乳頭腫は左心系に発生することが多く,大半が大動脈弁と僧帽弁に生じる。男女とも等しく罹患する。中心部の核から乳頭状の葉部が枝分かれして伸び,イソギンチャクのように見える。大半が有茎性である。弁機能障害を引き起こすことはないが,塞栓症のリスクを増大させる。

横紋筋腫は主に乳児および小児に発生し,そのうち最大90%が結節性硬化症を併発している(5)。横紋筋腫は通常多発性であり,左室の中隔壁または自由壁の内部に発生し,心臓の刺激伝導系を障害する。腫瘍は白色で硬い分葉状を呈し,典型例では年齢とともに退縮する。少数の患者では,左室流出路閉塞により頻拍性不整脈および心不全が発症する。

線維腫も主に小児で発生し,皮膚の脂腺腫および腎腫瘍との関連がみられる。主に左心系で発生し,心室の心筋内に位置することが多く,炎症への反応として発生することがある。刺激伝導系への圧迫や浸潤を起こすことがあり,その場合は不整脈や突然死を引き起こす。線維腫には,全身性の過成長,下顎の角化嚢胞,骨格異常,ならびに様々な良性および悪性腫瘍が併発する症候群(Gorlin症候群ないし基底細胞母斑症候群)の部分症として発生するものもある。

血管腫の症状は少数の患者でしかみられない。他の理由で行われた診察で偶然発見されることが最も多い。

心膜の奇形腫は主に乳児および小児で発生する。しばしば腫瘍が大血管の基部に接している。大半が前縦隔に,残りは主に後縦隔に位置する。

脂肪腫は幅広い年齢層で発生する。心内膜または心外膜に発生し,有茎性の大きな基部を有する。多くは無症状であるが,血流閉塞または不整脈を引き起こすものもある。

傍神経節腫褐色細胞腫も含む)が心臓に発生することはまれであるが,この種の腫瘍が心臓に発生した場合には,心基部の迷走神経終末付近に限局するのが通常である。カテコラミンの分泌による症状(例,心拍数と血圧の上昇,大量発汗,振戦)で発症することもある。傍神経節腫は,良性の場合と悪性の場合がある。

心膜嚢腫は,胸部X線像では心臓腫瘍や心膜液貯留に類似することがある。通常は無症状であるが,圧迫症状(例,胸痛,呼吸困難,咳嗽)を引き起こすものもある。

悪性原発性心臓腫瘍

悪性原発性腫瘍には,肉腫,心膜中皮腫,原発性リンパ腫などがある。

肉腫は,最も多くみられる悪性心臓腫瘍である(1)。肉腫は主に中年成人に生じる(平均44歳)。40%近くが血管肉腫であり,その大半が右房に発生して心膜に浸潤して,右室流入路閉塞および心タンポナーデを引き起こし,肺転移を来す(6)。その他の組織型としては,未分化肉腫,悪性線維性組織球腫,平滑筋肉腫,線維肉腫,横紋筋肉腫,脂肪肉腫,骨肉腫などがあり,これらは左房から発生することが多く,僧帽弁閉塞から心不全を引き起こす。

心膜中皮腫はまれである。あらゆる年齢で発生し,女性より男性に多い(7)。心タンポナーデを引き起こして心臓の動きを制限するほか,脊椎,隣接する軟部組織,および脳に転移することがある。

原発性リンパ腫は極めてまれである。通常はHIV感染症の患者やその他の免疫不全患者に生じる。それらの腫瘍は急速に増殖し,心不全不整脈心タンポナーデ,および上大静脈症候群を引き起こす。

転移性腫瘍

他臓器の腫瘍が心臓に転移する経路としては,血行性転移と直接浸潤が多い。

黒色腫は心臓を侵す傾向の強い腫瘍である。肺癌,乳癌,軟部肉腫,および腎癌も心転移を起こす頻度の高い腫瘍である(8, 9)。白血病リンパ腫もしばしば心臓に転移するが,心転移は無症状で偶然発見されることがある。免疫不全のある患者(通常はHIV感染症の患者)でカポジ肉腫が全身に進展した場合に,腫瘍が心臓に及ぶことがあるが,臨床的な心合併症を起こすのはまれである。

表&コラム
表&コラム

分類に関する参考文献

  1. 1.Molina JE, Edwards JE, Ward HB: Primary cardiac tumors: experience at the University of Minnesota. Thorac Cardiovasc Surg 38 Suppl 2:183–191, 1990.doi:10.1055/s-2007-1014064

  2. 2.Tazelaar HD, Locke TJ, McGregor CG: Pathology of surgically excised primary cardiac tumors. Mayo Clin Proc 67(10):957–965, 1992.doi:10.1016/s0025-6196(12)60926-4

  3. 3.Sido V, Volkwein A, Hartrumpf M, et al: Gender-Related Outcomes after Surgical Resection and Level of Satisfaction in Patients with Left Atrial Tumors. J Clin Med 12(5):2075, 2023.doi:10.3390/jcm12052075

  4. 4.Tamin SS, Maleszewski JJ, Scott CG, et al: Prognostic and Bioepidemiologic Implications of Papillary Fibroelastomas. J Am Coll Cardiol 65(22):2420–2429, 2015.doi:10.1016/j.jacc.2015.03.569

  5. 5.Bosi G, Lintermans JP, Pellegrino PA, Svaluto-Moreolo G, Vliers A: The natural history of cardiac rhabdomyoma with and without tuberous sclerosis. Acta Paediatr 85(8):928–931, 1996.doi:10.1111/j.1651-2227.1996.tb14188.x

  6. 6.Ramlawi B, Leja MJ, Abu Saleh WK, et al: Surgical Treatment of Primary Cardiac Sarcomas: Review of a Single-Institution Experience [published correction appears in Ann Thorac Surg 2016 Dec;102(6):2139]. Ann Thorac Surg 101(2):698–702, 2016.doi:10.1016/j.athoracsur.2015.07.087

  7. 7.Thomason R, Schlegel W, Lucca M, Cummings S, Lee S: Primary malignant mesothelioma of the pericardium.Case report and literature review. Tex Heart Inst J 21(2):170–174, 1994.

  8. 8.Klatt EC, Heitz DR: Cardiac metastases.Cancer 65:1456‒1459, 1990.

  9. 9.Agaimy A, Rösch J, Weyand M, Strecker T: Primary and metastatic cardiac sarcomas: a 12-year experience at a German heart center. Int J Clin Exp Pathol 5(9):928–938, 2012.

心臓腫瘍の症状と徴候

心臓腫瘍が引き起こす症状および徴候は,はるかに頻度の高い他の疾患(例,心不全脳卒中冠動脈疾患)の典型的な症候と同じである。良性の原発性心臓腫瘍の症状および徴候は,腫瘍の種類,位置,大きさ,脆弱性に依存する。

症状と徴候の種類

症状は以下のように分類できる:

  • 心臓外

  • 心筋内

  • 心腔内

心臓外の症状および徴候には,全身性のものと,機械的なものがある。粘液腫によって発熱,悪寒,嗜眠,関節痛,体重減少の全身症状が引き起こされることがあり,それらはサイトカイン(例,インターロイキン6)の放出に起因すると考えられるが,粘液腫があっても全身症状がみられないことも多い(1)。点状出血やレイノー症候群も生じることがある。これらの所見と他の所見から,誤って細菌性心内膜炎,全身性リウマチ性疾患,または潜在がんが想定されることもある。一部の腫瘍(特にゼリー状を呈する粘液腫)では,血栓または腫瘍断片が体循環(例,脳,冠動脈,腎臓,脾臓,四肢)もしくは肺で塞栓を発生させ,これらの臓器に特異的な症状を引き起こすことがある。機械的症状(例,呼吸困難,胸部不快感)は,心腔または冠動脈の圧迫や,心膜腔内での腫瘍増大または出血に起因する心膜刺激ないし心タンポナーデによって引き起こされる。心膜腫瘍は心膜摩擦音を発生させることもある。

心筋内の症状と徴候は,不整脈に起因するもので,通常は刺激伝達系への圧迫または浸潤に起因する房室もしくは心室内ブロック,発作性上室頻拍,または心室頻拍によるものである(横紋筋腫と線維腫で顕著)。

心腔内の症状と徴候は,腫瘍が弁機能,血流またはその両方を阻害することに起因する(それにより弁狭窄,弁閉鎖不全,心不全を引き起こす)。体位によって腫瘍に関連する血行動態と物理的な力が変化する可能性があり,それに伴って心腔内の症状と症候が変化することがある。

腫瘍の種類別に見た症状と徴候

粘液腫は,心不全,塞栓性疾患,および全身症状の三徴で発症することがある。粘液腫では僧帽弁狭窄による雑音によく似た拡張期雑音が聴取されることがあるが,その大きさと聴取部位が体位により心拍毎に変化する。有茎性の左房粘液腫の約15%では,拡張期に腫瘍が僧帽弁口に落ち込むことで「tumor plop」が聴取される(1)。粘液腫は不整脈を引き起こすこともある。レイノー症候群ばち指がみられるが,あまり典型的ではない。

線維弾性腫は通常は無症状であり,しばしば剖検で偶然発見されるが,全身性塞栓症の発生源となることもある。

横紋筋腫は通常,無症状である。

線維腫は不整脈を引き起こし,突然死や閉塞症状を引き起こす可能性がある。

血管腫は通常は無症状であるが,心臓外,心筋内,心腔内のいずれの症状も呈することがある。

奇形腫は,大動脈および肺動脈の圧迫による呼吸窮迫およびチアノーゼ,または上大静脈の圧迫による上大静脈症候群を引き起こす。

悪性心臓腫瘍の症状と徴候は,良性腫瘍と比較して発症がより急性で,より急速に進行する。心臓肉腫は最も一般的には,心室流入路閉塞および心タンポナーデの症状を引き起こす。中皮腫は心膜炎または心タンポナーデの症状を引き起こす。原発性リンパ腫は,難治性かつ進行性の心不全,心タンポナーデ,不整脈,および上大静脈症候群を引き起こす。転移性心臓腫瘍は,突然の心拡大,心タンポナーデ(血性心膜液の急速な貯留による),心ブロック,その他の不整脈,または原因不明の突然の心不全などを呈する。発熱,倦怠感,体重減少,盗汗,および食欲不振もみられることがある。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Pinede L, Duhaut P, Loire R: Clinical presentation of left atrial cardiac myxoma.A series of 112 consecutive cases. Medicine (Baltimore) 80(3):159–172, 2001.doi:10.1097/00005792-200105000-00002

心臓腫瘍の診断

  • 心エコー検査

  • 心臓MRI

  • 心臓CT

  • PET

  • 生検

はるかに頻度の高い他疾患と症候がよく似ていることから,しばしば診断に遅れが生じるが,確定診断は心エコー検査で得られる。心房腫瘍の描出には経食道心エコー検査が良好であり,心室腫瘍の描出には経胸壁心エコー検査が良好である。心エコー検査は時間分解能に優れているため,移動が大きい心臓腫瘍,特に小さな腫瘍を描出する上で第1選択の画像診断法である。腫瘍の特徴をさらに評価する目的で他の画像診断法も用いられる(1, 2)。

心臓MRIは,腫瘍組織の評価において選択すべき画像診断法であり,腫瘍の組織型について最良の手がかりが得られる。

3次元取得を用いる空間分解能に優れた造影心臓CTにより,他の手法と比べて,より詳細な解剖情報を得ることができる。

PETでは,心臓外の悪性腫瘍患者において心転移を示唆する最初の所見が得られる可能性がある。しかしながら,PETでは心臓組織への集積が生理的か病的かを判断できないことがあり,MRIやCTのように腫瘍組織の特徴を評価することはできない。

画像検査で良性腫瘍と悪性腫瘍を鑑別できることが多いため,生検は通常施行されず,また,悪性原発性腫瘍を有する患者では生検によりがん細胞が意図せず広がる可能性がある。慎重に選択された患者では,心エコーガイド下の経皮的経カテーテル生検を開心術なしで施行することができ,管理方針を左右する情報が得られる(3)。

粘液腫患者では,症状が非特異的であるために,心エコー検査の前に多くの検査が行われることが多い。貧血,血小板減少,白血球数増加,赤沈亢進,C反応性タンパク(CRP)高値,およびγグロブリン高値がよくみられる。心電図では左房拡大のパターンを認めることがある。ルーチンの胸部X線検査では,右房粘液腫または奇形腫のカルシウム沈着が前縦隔腫瘤として認められることがある。粘液腫はしばしば,外科的に除去された塞栓中に腫瘍細胞が検出されることで診断される。

結節性硬化症の特徴がみられる患者で不整脈および心不全がある場合は,横紋筋腫または線維腫が示唆される。心臓外の部位で悪性腫瘍が判明している患者で新たに心臓の症候が出現した場合は,心転移が示唆される。胸部X線で心陰影内に奇妙な変化を認めることがある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Lyon AR, López-Fernández T, Couch LS, et al: 2022 ESC Guidelines on cardio-oncology developed in collaboration with the European Hematology Association (EHA), the European Society for Therapeutic Radiology and Oncology (ESTRO) and the International Cardio-Oncology Society (IC-OS) [published correction appears in Eur Heart J 2023 May 7;44(18):1621]. Eur Heart J 43(41):4229–4361, 2022.doi:10.1093/eurheartj/ehac244

  2. 2.Tyebally S, Chen D, Bhattacharyya S, et al: Cardiac Tumors: JACC CardioOncology State-of-the-Art Review. JACC CardioOncol 2(2):293–311, 2020.Published 2020 Jun 16.doi:10.1016/j.jaccao.2020.05.009

  3. 3.Reddy G, Maor E, Bois MC, et al: Percutaneous transcatheter biopsy for intracardiac mass diagnosis. EuroIntervention 13(12):e1436–e1443, 2017.doi:10.4244/EIJ-D-17-00707

心臓腫瘍の治療

  • 良性原発性:切除

  • 悪性原発性:緩和療法

  • 転移性:腫瘍の原発巣に依存する

治療としては切除,緩和療法,その他の方法を単独または組み合わせて用いることができる(1)。

良性原発性腫瘍の治療は外科的切除であり,その後は5~6年間にわたる継続的な心エコー検査により再発のモニタリングを行う。手術の禁忌となる他の疾患(例,認知症)がない限り腫瘍を切除する。通常は手術で根治が得られる(例,ある症例集積研究では,生存率が1年で96%,5年で83%,10年で75%であった[2])。例外として,横紋筋腫はその大半が自然に退縮するため治療が不要であり,心膜奇形腫には緊急の心膜穿刺が必要になることがある。線維弾性腫患者には,弁修復または弁置換が必要になることがある。横紋筋腫または線維腫が多発性に生じた場合は,外科的切除は通常効果がなく,1年以降になると予後不良となり,5年生存率は非常に低い可能性がある。

良性の原発性心臓腫瘍が化学療法または放射線療法の適応となることはほとんどない。慎重に選択された患者で腫瘍が切除不能と考えられる場合には,心臓移植を考慮してもよい(3)。複雑な腫瘍(すなわち,in situで容易に切除できないもの)を有する慎重に選択された患者を経験豊富な医療機関で治療する場合においては,自家移植(心臓の摘出,腫瘍の切除,心臓の再建,および再建した心臓の再移植で構成される)の実現可能性も複数の報告で強調されている(4)。

悪性原発性腫瘍は予後不良であるため,その治療は通常,緩和療法(例,放射線療法,化学療法,合併症の管理)となる。

転移性心臓腫瘍の治療は,腫瘍の原発巣に依存する。全身の化学療法または緩和療法を含める場合がある。

治療に関する参考文献

  1. 1.Joshi M, Kumar S, Noshirwani A, Harky A: The Current Management of Cardiac Tumours: a Comprehensive Literature Review. Braz J Cardiovasc Surg 35(5):770–780, 2020.doi:10.21470/1678-9741-2019-0199

  2. 2.Mkalaluh S, Szczechowicz M, Torabi S, et al: Surgical Treatment of Cardiac Tumors: Insights from an 18-Year Single-Center Analysis. Med Sci Monit 23:6201–6209, 2017.doi:10.12659/msm.905451

  3. 3.Gowdamarajan A, Michler RE: Therapy for primary cardiac tumors: is there a role for heart transplantation? Curr Opin Cardiol 15(2):121–125, 2000.doi:10.1097/00001573-200003000-00010

  4. 4.Reardon MJ, Malaisrie SC, Walkes JC, et al: Cardiac autotransplantation for primary cardiac tumors. Ann Thorac Surg 82(2):645–650, 2006.doi:10.1016/j.athoracsur.2006.02.086

要点

  • 大半の心臓腫瘍は転移性であり,その原発腫瘍として最も頻度が高いものは,肺癌,乳癌,黒色腫,軟部肉腫,および腎癌である。

  • 原発性心臓腫瘍は,はるかに頻度が低く,大半は心筋または心内膜を起源とするが,心臓のあらゆる組織で発生する可能性があり,良性のこともあれば悪性のこともある。

  • 臨床像は腫瘍の部位と種類に依存するが,全身症状,弁または流入路・流入路閉塞,血栓塞栓症,不整脈などがみられる。

  • 診断は心エコー検査のほか,しばしば他の心臓画像検査(例,MRI,CT,PET)による。

  • 良性腫瘍に対する治療は切除であり,悪性腫瘍と大半の転移性腫瘍に対する治療は緩和療法である。

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