不整脈に対する薬剤

執筆者:L. Brent Mitchell, MD, Libin Cardiovascular Institute, University of Calgary
Reviewed ByJonathan G. Howlett, MD, Cumming School of Medicine, University of Calgary
レビュー/改訂 修正済み 2025年 2月
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不整脈を治療するかどうかの決定は,その症状と潜在的な重症度に依存する。治療は原因に対して行う。必要に応じて,抗不整脈薬,カルディオバージョン/電気的除細動植込み型除細動器(ICD),ペースメーカー(および特殊な形態のペーシング,心臓再同期療法),カテーテルアブレーション手術,またはこれらの併用などによる直接的な抗不整脈療法が用いられる。

大半の抗不整脈薬は,主要な細胞電気生理学的作用に基づき,大きく4つの群(Vaughan Williams分類)に分類されるが,新薬用に分類体系が更新されている(抗不整脈薬[Vaughan Williams分類]の表を参照)(1, 2)。

  • I群:I群薬は,速いナトリウムチャネルを遮断し,fast-channel組織(心房および心室の作業心筋細胞,ヒス-プルキンエ系)での伝導を遅延させるナトリウムチャネル遮断薬(膜安定化作用を有する)である。I群薬はa,b,cに細分される。

  • II群II群薬はβ遮断薬であり,主にslow-channel組織(洞房および房室結節)に作用して,自動能のレートを低下させ,伝導速度を遅延させ,不応期を延長させる。

  • III群III群薬は基本的にカリウムチャネル遮断薬であり,slow-channelおよびfast-channel組織の活動電位持続時間および不応期を延長させる。

  • IV群IV群薬は非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬で,slow-channel組織においてカルシウム依存性活動電位を抑制するため,自動能のレートおよび伝導速度を低下させ,不応期を延長させる。

ジゴキシン,アデノシン,およびイバブラジンは,当初のVaughan Williams分類には含められなかった。Vaughan Williams分類は後に拡張され,これらの薬物と最初の分類以降に導入された他の抗不整脈薬(例,アミオダロン,ソタロール,フレカイニド)が含められている(2)。

ジゴキシンは心房および心室の不応期を短縮させ,迷走神経刺激作用を有するため,房室結節伝導および房室結節の不応期を延長させる。

アデノシンは房室結節伝導を遅延または遮断し,房室結節伝導に依存して持続する頻拍性不整脈を停止させることができる。

イバブラジンは洞房結節のIf電流(funny current)を抑制し,洞房結節のレートを遅くする。

表&コラム
表&コラム

抗不整脈薬に関する参考文献

  1. 1.Vaughan Williams EM.Classification of antidysrhythmic drugs. Pharmacol Ther B 1975;1(1):115-138.doi:10.1016/0306-039x(75)90019-7

  2. 2.Lei M, Wu L, Terrar DA, Huang CLH: Modernized classification of cardiac antiarrhythmic drugs.Circulation 138(17):1879–1896, 2018. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.118.035455

I群抗不整脈薬

I群抗不整脈薬としては以下のものがある:

  • ナトリウムチャネル遮断薬:速いナトリウムチャネルを遮断し,fast-channel組織(心房および心室の作業心筋細胞,ヒス-プルキンエ系)での伝導を遅延させる(膜安定化作用を有する)

心電図上では,この作用はP波幅またはQRS幅の増大,PR間隔の延長,またはこれらの組合せとして反映される。

I群薬は,電気生理学的作用が現れる心拍数を規定するナトリウムチャネル作用の動態によって,さらに細分される。

Ib群薬は速い動態を示すため,その電気生理学的作用は速い心拍数でのみ発現する。したがって,正常心拍数の正常な調律中に記録した心電図には,fast-channel組織の伝導遅延を示す所見は通常認められない。Ib群薬はそれほど強力な抗不整脈薬ではなく,心房組織に及ぼす作用はごくわずかである。

Ic群薬は遅い動態を示すため,あらゆる心拍数でその電気生理学的作用を発現する。したがって,正常心拍数の正常な調律中に記録した心電図では通常,fast-channel組織の伝導遅延が認められる。Ic群薬はIb群薬より強力な抗不整脈薬である。

Ia群薬は中程度の動態を示すため,正常心拍数の正常な調律中に測定した心電図では,fast-channel組織の伝導を遅延させる作用が認められる場合と認められない場合がある。Ia群薬はカリウムチャネルの再分極も遮断し,fast-channel組織の不応期を延長させる。心電図上では,この作用は心拍数が正常でもQT間隔の延長として反映される。Ib群薬およびIc群薬はカリウムチャネルを直接遮断しない。

全てのI群薬の最も重要な適応は,心室性頻拍性不整脈(心室頻拍および心室細動)である。Ia群薬とIc群薬は,上室性頻拍性不整脈(心房細動,心房粗動,上室頻拍)も適応とする(1)。

I群薬の有害作用には,治療対象の不整脈よりも悪性の薬剤性不整脈を引き起こす催不整脈作用があり,これが最も懸念される有害作用である。I群薬はいずれも心室頻拍(VT)を悪化させる可能性がある。I群薬は心室の収縮性を抑制する傾向もある。これらの有害作用は構造的心疾患の患者で発生しやすいことから,I群薬は通常,構造的心疾患のない患者と構造的心疾患を有するがほかに治療選択肢がない患者にのみ使用される。I群薬には,ほかにも下位分類や個々の薬剤に特異的な有害作用が存在する。

Ia群抗不整脈薬

Ia群薬は,速い動態を示すIb群薬と遅い動態を示すIc群薬の中間程度の動態を示す。心拍数正常かつ調律正常の状態で測定した心電図では,fast-channel組織の伝導を遅延させる作用が認められる場合と認められない場合がある。Ia群薬はカリウムチャネルの再分極を遮断し,fast-channel組織の不応期を延長させる。心電図上では,この作用は心拍数が正常でもQT間隔の延長として反映される。

Ia群薬の主な適応は以下のものである:

  • 上室性頻拍性不整脈(心房細動,心房粗動,心房頻拍)

  • 心室性頻拍性不整脈(心室頻拍および心室細動)

Ia群薬は心房性または心室性期外収縮の抑制にも用いられる。

Ia群薬はトルサードドポアント型心室頻拍を引き起こす可能性がある。Ia群薬は心房性頻拍性不整脈を十分に抑制および緩徐化して,心室拍数の著明な上昇を伴う1:1の房室伝導を生じさせる。

Ib群抗不整脈薬

Ib群薬は速い動態を示し,その電気生理学的作用は速い心拍数でのみ発現する。したがって,正常心拍数の正常な調律中に記録した心電図には,fast-channel組織の伝導遅延を示す所見は通常認められない。Ib群薬はそれほど強力な抗不整脈薬ではなく,心房組織に及ぼす作用はごくわずかである。Ib群薬はカリウムチャネルを直接遮断しない。

Ib群薬は,心室性頻拍性不整脈(心室頻拍心室細動)および心室性期外収縮の抑制に用いられる(2)。

Ic群抗不整脈薬

Ic群薬は遅い動態を示し,あらゆる心拍数でその電気生理学的作用を発現する。したがって,正常心拍数の正常な調律中に記録した心電図では通常,fast-channel組織の伝導遅延が認められる。Ic群薬はIb群薬より強力な抗不整脈薬である。Ic群薬はカリウムチャネルを直接遮断しない。

Ic群薬は心房性頻拍性不整脈を十分に抑制および緩徐化して,心室拍数の著明な上昇を伴う1:1の房室伝導を生じさせる。

Ic群薬は以下の抑制に用いられる:

I群抗不整脈薬に関する参考文献

  1. 1.Brugada J, Katritsis DG, Arbelo E, et al.2019 ESC Guidelines for the management of patients with supraventricular tachycardia The Task Force for the management of patients with supraventricular tachycardia of the European Society of Cardiology (ESC) [published correction appears in Eur Heart J 2020 Nov 21;41(44):4258. doi: 10.1093/eurheartj/ehz827]. Eur Heart J 2020;41(5):655-720.doi:10.1093/eurheartj/ehz467

  2. 2.Al-Khatib SM, Stevenson WG, Ackerman MJ, et al.2017 AHA/ACC/HRS Guideline for Management of Patients With Ventricular Arrhythmias and the Prevention of Sudden Cardiac Death: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society [published correction appears in J Am Coll Cardiol 2018 Oct 2;72(14):1760. doi: 10.1016/j.jacc.2018.08.2132]. J Am Coll Cardiol 2018;72(14):e91-e220.doi:10.1016/j.jacc.2017.10.054

II群抗不整脈薬

II群抗不整脈薬としては以下のものがある:

  • β遮断薬

β遮断薬は,主にslow-channel組織(洞房および房室結節)に作用して,自動能のレートを低下させ,伝導速度を遅延させ,不応期を延長させる。したがって,心拍数は低下し,PR間隔は延長して,房室結節では速い心房脱分極がより低い頻度で伝導する。

II群薬は主に,上室頻拍(洞頻拍を含む)の治療と心房細動または心房粗動での心室拍数の抑制を目的に使用される。また,心室頻拍の治療として,心室細動の閾値を引き上げ,βアドレナリン受容体刺激の心室に対する催不整脈作用を抑制する目的でも使用される。

β遮断薬の忍容性は一般に良好であり,有害作用には,倦怠感,睡眠障害,消化管障害などがある。この種の薬剤は喘息患者では禁忌である。

III群抗不整脈薬

III群薬としては以下のものがある:

  • 膜安定化作用を有する薬剤(基本的にカリウムチャネル遮断薬)

III群薬はslow-channelおよびfast-channel組織の活動電位持続時間と不応期を延長させる。したがって,高頻度で刺激を伝導する能力は全心臓組織で低下するが,伝導速度は顕著な影響を受けない。活動電位が延長するため,自動能のレートが低下する。心電図に及ぼす主な影響はQT間隔の延長である。

このクラスの薬剤は上室頻拍および心室性頻拍性不整脈の治療に用いられる。III群薬には心室に対する催不整脈作用,特にトルサードドポアント型心室頻拍のリスクがあり,トルサードドポアント型心室頻拍の患者には使用されない。

IV群抗不整脈薬

IV群薬としては以下のものがある:

  • 非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬

このクラスの薬剤は,slow-channel組織においてカルシウム依存性活動電位を抑制するため,自動能のレートおよび伝導速度を低下させ,不応期を延長させる。心拍数は低下し,PR間隔は延長して,房室結節では速い心房脱分極がより低い頻度で伝導する。このクラスの薬剤は主に上室頻拍の治療に用いられる。心房細動または心房粗動に対して心室拍数を抑制する目的で使用されることもある。ある種のVT(左室中隔起源VT,Belhassen VT,または左脚分枝起源VT)はベラパミルで治療することができる。

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