不整脈を治療するかどうかの決定は,その症状と潜在的な重症度に依存する。治療は原因に対して行う。必要に応じて,抗不整脈薬,カルディオバージョン/電気的除細動,植込み型除細動器(ICD),ペースメーカー(および特殊な形態のペーシング,心臓再同期療法),カテーテルアブレーション,手術,またはこれらの併用などによる直接的な抗不整脈療法が用いられる。
胸壁を介して十分な強さのDCショックを加えると,心筋全体を脱分極させることができ,反復する脱分極に対して心臓全体が一瞬不応になる。その後,最も速い内因性のペースメーカー組織(通常は洞房結節)により心拍リズムの制御が再開される。したがって,カルディオバージョン/電気的除細動を行うと,リエントリーに起因する頻拍性不整脈を極めて効果的に停止させることができる。しかしながら,自動能による頻拍性不整脈では回復後の調律も自動能による頻拍性不整脈となる可能性が高いため,この種の不整脈を停止させる効果は低い。心室細動(VF)および無脈性心室頻拍(VT)以外の頻拍性不整脈の場合,受攻期(T波のピーク付近)にショックを加えるとVFが誘発される可能性があるため,ショックをQRS波に同期させる必要がある(カルディオバージョンと呼ばれる)。VFでは,QRS波へのショックの同期は不要であり,また不可能である。QRS波に同期させずに加えるショックは電気的除細動と呼ばれる。
以下のいずれかによるカルディオバージョンまたは除細動を行う:
単相性電流
二相性電流
単相性電流は,2つの電極の間を一方向に流れる。二相性の装置では,ショック波形の途中で電流の向きが反転する。
安全性と有効性が高いとみられることから,手動式および自動体外式除細動器(AED)の大半が二相性となっている。コントロールされた状況下で患者に心室細動を誘発したランダム化試験では,低エネルギーの二相性波形のショックを加えたところ,単相性波形の場合と同程度の除細動効果が認められ,前者では心筋損傷が軽減される可能性がある(1)。しかしながら,この潜在的な便益は,院外心停止というコントロールされていない状況で単相性または二相性波形の除細動を受けた患者を対象とした試験では証明されていない(2)。二相性の装置はサイズも小さい(そのため持ち運びが容易である)。
カルディオバージョンの手技
カルディオバージョンを待機的に行う場合には,誤嚥の可能性を避けるため,手技の前に6~8時間の絶食を設けるべきである。この手技には恐怖と痛みを伴うため,短時間の全身麻酔か鎮痛薬および鎮静薬の静注(例,フェンタニルとミダゾラム)が必要である。気道を維持し,さらなる呼吸補助を行うための機器と人員の配置が不可欠である。
カルディオバージョンに使用する電極(パッドまたはパドル)は,前後方向(第3および第4肋間胸骨左縁と左肩甲下部)または前外側方向(鎖骨と第2肋間胸骨右縁ならびに第5および第6肋間の心尖部)に配置する。QRS波への同期がモニター上で確認されてから,ショックを与える。
最適なエネルギーレベルは,治療対象の頻拍性不整脈によって異なる。カルディオバージョンおよび除細動の効果は,二相性ショックを用いることで向上する。
心室細動または無脈性心室頻拍に対する除細動の場合,成人に対する初回のショックには以下のエネルギーレベルを選択する:
二相性の装置では120~200J(または製造業者の指定に従う);ただしこの場合,多くの医師が最大出力を選択する。
単相性の装置では360J(または製造業者の指定に従う)
2回目以降のショックには,二相性の装置では初回と同じかそれ以上のエネルギーレベルを選択し,単相性の装置では初回と同じエネルギーレベルを選択する。
心房細動に対するカルディオバージョンの場合,成人に対する初回のショックには以下のエネルギーレベルを選択する:
二相性の装置では120~200J(または製造業者の指定に従う)(3)
単相性の装置では200J(または製造業者の指定に従う)
2回目以降のショックには,単相性および二相性のいずれの装置でも,典型的にはより高いエネルギーレベルを選択する。
またカルディオバージョン/電気的除細動は,開胸時または心臓内の電極カテーテルを介して直接心臓に適用することも可能であり,その場合,はるかに低いエネルギーレベルでのショックが必要である。
カルディオバージョンの合併症
合併症は通常軽微であり,具体的には心房および心室性期外収縮や筋肉痛などがある。頻度はより低いが,左室機能が正常下限の場合や複数回のショックが用いられた場合には,カルディオバージョンは心筋細胞障害や電気収縮解離の発生頻度を高める可能性がより高くなる。
参考文献
1.Faddy SC, Powell J, Craig JC.Biphasic and monophasic shocks for transthoracic defibrillation: a meta analysis of randomised controlled trials. Resuscitation 2003;58(1):9-16.doi:10.1016/s0300-9572(03)00077-7
2.Faddy SC, Jennings PA.Biphasic versus monophasic waveforms for transthoracic defibrillation in out-of-hospital cardiac arrest. Cochrane Database Syst Rev 2016;2(2):CD006762.Published 2016 Feb 10.doi:10.1002/14651858.CD006762.pub2
3.Link MS, Atkins DL, Passman RS, et al.Part 6: Electrical therapies: automated external defibrillators, defibrillation, cardioversion, and pacing: 2010 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care [published correction appears in Circulation 2011 Feb 15;123(6):e235]. Circulation 2010;122(18 Suppl 3):S706-S719.doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.110.970954



