潜在性菌血症(occult bacteremia)とは,発熱があるものの明らかな感染巣がなく,元気そうに見える幼児の血流中で細菌が認められる状態である。診断は血液培養と病巣感染の除外による。治療は抗菌薬により入院または外来で行い,一部の患児には血液培養の結果を待たずに治療を開始する。
潜在性菌血症の原因,評価,および管理は小児の年齢および予防接種状況によって変わる。乳児および小児の発熱も参照のこと。
生後3~36カ月の小児
結合型ワクチンが普及する前は,局所的異常のない発熱性疾患(すなわち,原因不明の38.5℃を超える発熱)を有する生後3~36カ月の小児の約3~5%に潜在性菌血症が認められていた。対照的に,生後36カ月以降の菌血症の小児は,ほぼ全例が容態不良に見え,感染源が同定可能(すなわち非潜在性)であった。結合型ワクチンの定期接種の導入前は,潜在性菌血症の大半(80%)が肺炎球菌によるものであった。インフルエンザ菌b型によるものの割合は低く(10%),髄膜炎菌によるものはさらに少なかった(5%)。
現在米国と欧州では,乳児への肺炎球菌(S. pneumoniae)およびインフルエンザ菌(H. influenzae)b型に対する多糖体結合型ワクチンの定期接種により,インフルエンザ菌(H. influenzae)b型による感染症が99%超排除され,侵襲性の肺炎球菌(S. pneumoniae)感染症が70%以上(全体)および90%以上(ワクチン型)と大幅に減少した。そのためこの年齢群では,予防接種を受けていないまたは完全に受け終わっていない小児や,免疫不全の小児を除いて,潜在性菌血症はまれになっている。
感染率は低下したものの,感染源が不明の発熱や潜在性菌血症のある幼児では侵襲性細菌感染症(invasive bacterial infection:IBI)のリスクが依然として懸念となっている(1)。IBIは典型的には敗血症,髄膜炎,および尿路感染症(UTI)がみられる場合と定義されるが,化膿性関節炎や骨髄炎もその範疇に含まれる。原因不明の高熱(40.5℃以上)があり,それまで健康であった生後3~24カ月の小児203人を対象とした前向き研究では,99%が肺炎球菌結合型ワクチンの接種を1回以上受けていて,3%が菌血症と診断され,12%がUTIまたは肺炎と診断された(1)。このような感染症は,菌血症の早期発見・早期治療により最小限に抑えられる可能性がある。IBIに進行する可能性は,起因菌によって異なり,インフルエンザ菌(H. influenzae)b型の菌血症では7~25%であるが,肺炎球菌(S. pneumoniae)の菌血症では4~6%である。
生後3カ月未満の小児
生後3カ月未満の発熱のある乳児は,月齢の高い乳児と比べて,依然としてIBIのリスクが非常に高い(約8~10%)。過去には,生後3カ月未満の低月齢乳児におけるIBIは,B群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus),肺炎球菌(S. pneumoniae),およびインフルエンザ菌(H. influenzae)b型によって引き起こされることの方が多かった。しかしながら,B群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus)保菌妊婦への分娩中の化学予防により,早発型(生後7日未満に発生する)B群レンサ球菌感染症は80%超減少した(2)。加えて,結合型ワクチンの定期接種により,肺炎球菌(S. pneumoniae)やインフルエンザ菌(H. influenzae)b型に対する免疫をもった兄や姉で保菌が減少したため,これらの病原体によるIBIも同時に減少した(集団免疫)。また,食品安全の改善によって,低月齢乳児におけるListeria monocytogenes感染症の発生率も低下している可能性がある。
注目すべき点として,遅発型(生後7日以降に発生する)B群レンサ球菌感染症は分娩中の化学予防では防ぐことができず,また,UTI(大半が大腸菌[Escherichia coli]による)やまれにあるSalmonella属細菌および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による菌血症などの他の重篤な細菌感染症は,身体所見の乏しい生後3カ月未満の乳児にみられる不明熱の病因として重要である。
発熱のある生後8~60日の乳児における菌血症の発生率は,かつては8~10%であったのと対照的に,現在では2~5%近くまで低下しており(3),原因としては髄膜炎や未鑑別の菌血症よりもUTIの方が多くなっている。
総論の参考文献
1.Gangoiti I, Zubizarreta A, Elgoibar B, Mintegi S; Infectious Diseases Working Group, Spanish Society of Pediatric Emergencies (SEUP): Occult Bacteremia in Young Children with Very High Fever Without a Source: A Multicenter Study.Pediatr Infect Dis J 39(12):e462-e464, 2020.doi: 10.1097/INF.0000000000002891
2.Nanduri SA, Petit S, Smelser C, et al: Epidemiology of Invasive Early-Onset and Late-Onset Group B Streptococcal Disease in the United States, 2006 to 2015: Multistate Laboratory and Population-Based Surveillance.JAMA Pediatr 173(3):224-233, 2019.doi: 10.1001/jamapediatrics.2018.4826
3.Pantell RH, Roberts KB, Adams WG, et al: Evaluation and Management of Well-Appearing Febrile Infants 8 to 60 Days Old [published correction appears in Pediatrics. 2021 Nov;148(5):]. Pediatrics 148(2):e2021052228, 2021.doi: 10.1542/peds.2021-052228
症状と徴候
潜在性菌血症の主要な症状は発熱である。生後3カ月未満の乳児における高熱は,体温が39℃(102.2°F)以上,または最近のガイドラインでは38.0℃(100.4°F)以上である場合と定義されている(1)。
定義により,明らかな局所疾患(例,肺炎を示唆する咳嗽,呼吸困難,および肺の断続性ラ音;蜂窩織炎または化膿性関節炎を示唆する皮膚紅斑)を伴うものは除外される(潜在性ではないため)。
重症感(toxic appearance)(例,元気のなさ,嗜眠,循環不良の徴候,チアノーゼ,著明な低換気または過換気)は敗血症または敗血症性ショックを示唆し,このような小児の菌血症も,潜在性菌血症または不明熱には分類されない。しかしながら,早期の敗血症は潜在性菌血症との鑑別が困難なことがある。
症状と徴候に関する参考文献
1.Pantell RH, Roberts KB, Adams WG, et al: Evaluation and Management of Well-Appearing Febrile Infants 8 to 60 Days Old [published correction appears in Pediatrics. 2021 Nov;148(5):]. Pediatrics 148(2):e2021052228, 2021.doi: 10.1542/peds.2021-052228
診断
血液培養
尿培養および尿検査
血算および分画
血清炎症マーカー(C反応性タンパク[CRP],プロカルシトニン[PCT])
年齢と臨床状況に応じて,髄液検査のため腰椎穿刺
菌血症の診断には血液培養が必要である;理想的には2つの検体を採取し(それぞれ別の部位から採取することで,皮膚汚染による偽陽性の問題を最小限に抑えられる),24時間以内に結果が出るようにすべきである。
検査方法とその選択に関する推奨事項は,年齢,体温,および臨床像により異なるが,その目標は,最小限の検査でIBIを同定することである。局所感染症を示唆する病歴または診察所見がある小児は,それに基づいて評価する。
原因が明らかでない発熱がみられる生後30日以上の乳児の評価では,利用可能であれば,エンテロウイルス,RSウイルス,およびインフルエンザウイルスの迅速診断検査(例,呼吸器系ウイルスに対するPCRパネル検査)が有用であり,これは,これらの検査で陽性と判定された乳児は,そのウイルスが原因で発熱を来しているのであって,IBIに対するそれ以上の検査はほとんどまたは全く必要ない可能性が高いためである。その他のウイルスに対する迅速診断検査もあるが,それらは十分な研究を経ていないため,その結果をもってIBIに対する検査方針を変更することは正当化されない。ウイルス感染症がIBIのリスクを低下させるという知見は全ての研究で一貫しているわけではなく,特に生後30日未満の乳児では,そうならないことが多い。
IBIの乳児の血算では通常,白血球数が高値となるが,好中球数の方が診断的価値が高い。炎症性マーカーであるCRPとPCTも,その高値はIBIを示唆する傾向がある。健康そうに見える(well-appearing)が発熱を呈する生後8~60日の正期産児において発熱,好中球数高値,CRP高値,およびPCT高値を全て認めることが,意思決定(入院の要否および抗菌薬投与の判断)の指針として用いられている(1,2,3)。
生後3~36カ月の小児
重篤感または重症感(toxic appearance)のある発熱を呈する全ての乳児に対し,予防接種歴にかかわらず,徹底的な診察および臨床検査による評価を行う(血算と分画,血液培養,尿培養,腰椎穿刺に加え,大半の症例では入院と経験的抗菌薬療法を行う)必要があることを肝に銘じておくべきである。この年齢群で予防接種を受けていない,予防接種を完全に受け終わっていない,または易感染性の乳児は,同年齢の他の小児に比べてIBIにかかりやすく,同様の徹底的な診察および検査によるIBIの評価ならびに経験的抗菌薬投与が必要となるのが一般的である。呼吸困難または酸素飽和度の低下がある小児では,胸部X線撮影も行うべきである。
予防接種を受けている生後3~36カ月の乳児または小児が元気そうに見える場合(非重症例),菌血症のリスクは皮膚汚染による血液培養の偽陽性率と同じかそれより低いことさえあるため,多くの専門医はこのような小児での血液培養を差し控えている。とはいえ,鏡検および尿培養を伴う尿検査こそ一般的に推奨されているが,それ以上の臨床検査(例,血算,胸部X線)は推奨されていない。このような小児の大部分はウイルス感染症であるが,健康そうに見える(well-appearing)小児の極少数に初期のIBIがみられるため,保護者に進言して症状のモニタリング,解熱薬の投与,および24~48時間以内の医師とのフォローアップ(状況や保護者が信頼できるかどうかに応じて受診または電話相談)をさせる。状態が悪化するまたは解熱しない小児には,検査(例,血算と分画,血液培養,ときに胸部X線または腰椎穿刺)を行うべきである。
生後3カ月未満の小児
重症感(toxic appearance)または重篤感(seriously ill-appearrance)のある乳児には,直ちに臨床的評価,血液,尿,および髄液の採取および培養,ならびに入院と経験的抗菌薬療法を行う。月齢の高い乳児とは異なり,生後3カ月未満の乳児では,臨床的に重症感(toxic appearance)がないからといって常に検査を延期できるわけではない。
この年齢群の小児の評価指針となるアルゴリズムが作成されている。従来のアルゴリズム(例,Rochester criteria)は,演繹的な臨床基準と臨床検査基準の組合せに基づくもので,それらの基準はやや恣意的に策定され,発熱を呈するが他の点では健康そうに見える乳児を対象とした大規模症例集積研究で検証されたものであった。それらのアルゴリズムは,IBIに対する診断感度は中等度(90~95%)であったが,より重要な点として,陰性適中率が非常に高かった(97~99%)。そのため,IBIのリスクが低い乳児を予測する目的で用いられ,入院や抗菌薬投与を行わずに安全にモニタリングすることが可能であった。それらのアルゴリズムの長所はその簡便性にあったが,IBIに対する特異度が比較的低かったことが短所で,これは,IBIを有さない多くの乳児にも抗菌薬が投与されたことを意味している。また,それらのアルゴリズムは潜在性菌血症や細菌性髄膜炎の発生率が高かった時代,すなわち結合型ワクチンの定期接種が開始される前に開発されたものであり,現在の状況下ではその精度が低下している可能性がある。
IBIの検出を目的とする新しいアルゴリズムが開発されており,それらは高度な統計モデリング手法で解析されたデータに基づく予測ルールを用いたもので,乳児における細菌感染症の疫学的変化(すなわち,ワクチン接種を受けた患者集団では菌血症の原因として肺炎球菌感染症より大腸菌[Escherichia coli]によるUTIの割合が高くなっていること)が考慮されている。診断精度を最大化し,IBIを有さない乳児に対する不要な治療を最小限に抑えるべく,診断の感度および特異度の向上が重視されている。さらに,新しいアルゴリズムには診断検査や病原体同定における技術的進歩も反映されている。利点としてはIBIに対する感度の向上が挙げられるが,顕著な欠点として,意思決定のためのガイドラインが著しく複雑化している点が指摘される。
米国の多くの小児病院では,それらの新しいアルゴリズムが導入されている。2021年にAmerican Academy of Pediatricsが発表した,発熱を呈するが健康そうに見える生後8~60日の乳児の評価および管理に関するガイドラインでは,アルゴリズムが日齢に基づいて,生後8~21日用,生後22~28日用,生後29~60日用の3つに層別化されている(1)。
入院,抗菌薬投与,またはその両方について決定を下す際には,炎症マーカーの異常に関する新たな定義も役立つ(1,2,3)。高リスクの定義には以下に該当する患者が含まれる(1,2,3):
髄液の異常
38.0°C以上の発熱
CRP > 2mg/dL(> 20mg/L)
PCT > 0.5ng/mL(> 0.5μg/L)
PCTと組み合わせる場合は好中球数 > 4000/μL(> 4 × 109/L),または血清PCT値を測定できない場合は好中球数 > 5200/μL(> 5.2 × 109/L)
診断に関する参考文献
1.Pantell RH, Roberts KB, Adams WG, et al: Evaluation and Management of Well-Appearing Febrile Infants 8 to 60 Days Old [published correction appears in Pediatrics. 2021 Nov;148(5):]. Pediatrics 148(2):e2021052228, 2021.doi: 10.1542/peds.2021-052228
2.Kuppermann N, Mahajan P, Dayan PS: Fever, Absolute Neutrophil Count, Procalcitonin, and the AAP Febrile Infant Guidelines.Pediatrics151(2):e2022059862, 2023.doi: 10.1542/peds.2022-059862
3.Yaeger JP, Richfield C, Schiller E, et al: Performance of AAP Clinical Practice Guideline for Febrile Infants at One Pediatric Hospital.Hosp Pediatr 13(3):e47-e50, 2023.doi: 10.1542/hpeds.2022-006820
治療
抗菌薬(経験的,培養の結果を待つ選択された患者および培養陽性の患者に対して)
不快感に対して解熱薬
十分な補液(発熱や食欲不振により水分喪失が増えているため);可能であれば経口,そうでなければ輸液による
血液培養による菌血症の確定診断前に抗菌薬の投与を受けた小児では,病巣感染発症が発生する可能性が低下するようであるが,データは一貫していない。しかしながら,菌血症の全体としての発生率が低いことから,仮に検査を受けた全例に経験的治療を行うとすれば,多くの患児が不必要な治療を受けることになる。上述のように,管理方針は年齢とその他の臨床因子によって異なってくる。
年齢にかかわらず,全例で24時間以内に再評価を行うこととされており,形態は再診による対面診察とするか,年齢および臨床状況に応じて選択した患児には電話でのフォローアップも可能である。そのとき,まだ治療を受けていない状況で発熱が持続するか血液または尿培養で陽性と判定された患児には,さらに培養を行うとともに,敗血症の可能性の評価と注射剤による抗菌薬療法を行うために入院させる。再診察時に局所感染症の新しい徴候が見つかれば,それに応じた評価および治療を行う。
生後3~36カ月の小児
体重に応じた用量の解熱薬を投与する。抗菌薬は培養が陽性とならない限り投与しない。尿路感染症があるが元気そうに見える小児には,小児のUTI用の経口抗菌薬を外来で処方する;それ以外の患児(例,より重症に見える患児,十分なフォローアップを確実に行えない患者)には,入院させて抗菌薬を静脈内投与する必要がある。
生後3カ月未満の小児
American Academy of Pediatricsの2021年版ガイドラインでは,IBIの評価を受ける発熱のある生後8~21日の乳児に対しては,全例で入院の上,抗菌薬の静脈内投与を行うべきであり,単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症の危険因子を有する患児に対しては,さらに静脈投与によるアシクロビルを併用すべきと提唱されている(1)。
同ガイドラインでは,診断目的の腰椎穿刺と血液および尿培養を行うべきであり,また炎症性マーカーの測定をたとえ通常の入院管理でも行うべきと提唱されている。
生後22~60日の乳児については,入院管理か在宅管理かの選択と抗菌薬を投与するか経過観察とするかの方針決定は,尿検査結果の異常,炎症マーカーの測定値,ならびに行った場合は腰椎穿刺の結果に基づいて判断する。
現行の診療ガイドラインは,IBIの発症可能性やその原因となる病原体の疫学的変化に応じて,また臨床所見と検査所見の組合せに基づくIBIの予測因子に関するデータの蓄積が進むにつれて,さらなる改定が加えられると考えられる。
治療に関する参考文献
1.Pantell RH, Roberts KB, Adams WG, et al: Clinical Practice Guideline: Evaluation and Management of Well-Appearing Febrile Infants 8 to 60 Days Old.Pediatrics 148(2):e2021052228, 2021.doi: 10.1542/peds.2021-052228
要点
生後36カ月未満の発熱のある乳幼児で,インフルエンザ菌(H. influenzae)b型および肺炎球菌結合型ワクチンの予防接種を受けており,元気そうに見えて明らかな感染巣がない場合,潜在性菌血症または侵襲性細菌感染症(invasive bacterial infection:IBI-例,敗血症,髄膜炎)の可能性は低い。
発熱のある選択された小児で潜在性菌血症を診断するには,血液培養(2つの異なる部位から2検体)を行う。
発熱を伴うIBIの原因として現在最多のものは尿路感染症(UTI)であるため,生後36カ月未満の発熱のある全ての乳幼児に対し,尿検査および尿培養によりUTIの評価を行うべきである。
重症感(toxic appearance)のある小児(またおそらくは生後1カ月未満の発熱のある全ての小児)には,血液および髄液培養と入院による経験的抗菌薬療法も必要である。
39℃以上の発熱のある生後3~36カ月の小児で,適切な予防接種を受けている場合,元気そうに見えるのであれば尿培養以外の検査は適応とならない;それ以外の患児は,臨床所見やその他の状況に応じて,検査を行うべきである(例,時期に応じてインフルエンザウイルス,RSウイルス,エンテロウイルスの迅速診断検査)
38℃以上の発熱のある生後3カ月未満の乳児では,元気そうに見えてもIBIを完全に除外できるわけではないため,この年齢群では全例が検査適応であり,具体的には尿検査,血算と分画,血液および尿培養,腰椎穿刺(特に低月齢乳児において),血清C反応性タンパク(CRP)のほか,可能であれば,血清プロカルシトニン(およびインフルエンザウイルス,RSウイルス,エンテロウイルスの迅速診断検査,またはPCRパネル検査)などが行われる。



