異常な性器出血または子宮出血の病因,診断,および管理は,生殖に関するライフステージや状況(初経前,妊娠可能年齢,妊娠,または閉経)によって異なる。ここでは,乳児と初経前の小児にみられる異常性器出血について考察する。
性器出血の出血源は,外陰,腟,子宮頸部,子宮体部を含めた生殖器のあらゆる部位が考えられる。性器出血の出血源が子宮内にある場合は,異常子宮出血(AUB)と呼ぶ。
小児における性器出血の病因
小児における性器出血の評価
最優先すべきことは,性器出血が救急治療を必要とするほど多量であるかどうかの判断である。
病歴
一般的な病歴を聴取する;乳児では,出生歴および母親の妊娠・分娩歴を含める。がんの家族歴が重要である。親(または養育者)および年齢に応じて小児から病歴を聴取する。
現病歴の聴取には,出血の特徴を明らかにするための質問を含めるべきである:
発症:出血の始まり方と原因として考えられる因子があったかどうか
パターン:間欠性または持続性
期間
量:出血はわずか,少量,またはそれ以上の場合がある
他の症状との関係:骨盤部もしくは腹部の疼痛もしくは圧迫感,発熱,または泌尿器症状もしくは腸管症状の有無
システムレビュー(review of systems)では,可能性のある原因の症状として,以下のようなものがないか検索すべきである:
骨盤痛,悪心,嘔吐:付属器捻転
帯下,発熱,および骨盤痛:骨盤内感染症,性的暴行の可能性がある
小児の性的虐待が疑われる場合には,National Institute of Child Health and Human Development (NICHD) Protocolに基づく法医学的な構造化面接を用いることができる。これは経験した出来事に関する情報を小児が報告する助けとなり,得られる情報の質を改善する。
身体診察
一般身体診察を行う。腹部を評価して,腹部膨隆,腫瘤,腹水,圧痛,および腹膜刺激徴候がないか確認する。
内診が必要な場合は,何が起こりうるのかを親と小児が把握でき,小児と医師との間に信頼関係が構築できるよう,親と小児に対して診察に関する十分な説明を行うべきである。診察の目標は,小児に恐怖や不必要な不快感を与えることなく,必要な情報を得ることである。
外性器,会陰部,および鼠径部の診察では,出血,分泌物,皮下出血,または損傷に注意すべきである。
小児では,典型的には麻酔下で内診を行う。腟および子宮頸部の診察は,生理食塩水で洗浄しながらKillian鼻鏡,光ファイバー腟鏡(vaginoscope),膀胱鏡,または軟性子宮鏡を用いて行う場合がある。
警戒すべき事項(Red Flag)
以下の所見には特に注意が必要である:
帯下,発熱,悪寒,下腹部の圧痛,および/または性器損傷の徴候がある:骨盤内感染症の可能性(卵管卵巣膿瘍を伴う可能性や性的虐待の可能性あり)
早発思春期:卵巣の女性化腫瘍の可能性
所見の解釈
多量の出血または重度の疼痛は,緊急治療を必要とする病因を示唆する。
性器出血が腹部腫瘤と併発している場合は,悪性腫瘍が懸念される。
検査
出血が重度もしくは持続する場合,または骨盤内感染症と一致する徴候および症状がある場合は,血算を行う。
帯下がみられる場合は,腟鏡診なしで,小児に適した方法を用いて,培養のために検体を採取することができる。その検体で腟の一般的な細菌感染症またはカンジダ症について検査を行う。性的虐待が疑われる場合は,血液検査および尿検体または腟検体(子宮頸部検体は麻酔下でのみ採取すべきである)による性感染症の検査を行う(1)。
早発思春期の徴候がみられる場合は,内分泌学的評価を行う。
骨盤内腫瘤が疑われる場合は,画像検査を行う。幼児および思春期前の青年では,経腟超音波検査よりも経腹的超音波検査の方が望ましい。超音波検査で腫瘤の大きさ,位置,硬さが明確に捉えられなければ,別の画像検査(典型的にはMRI)が必要になることがある。卵巣腫瘤があり,非上皮性腫瘍が疑われる場合,腫瘍マーカー(例,α-フェトプロテイン,乳酸脱水素酵素,インヒビン)を測定する。
評価に関する参考文献
1. Chiesa A, Goldson E.Child Sexual Abuse. Pediatr Rev.2017;38(3):105-118.doi:10.1542/pir.2016-0113
小児における性器出血の治療
小児における性器出血には,原因に応じた治療を行う。病因が感染性の場合は抗菌薬で治療を行う。腟から異物を除去するには通常,麻酔下での処置が必要である。
画像検査または腫瘍マーカーに基づいて良性または悪性腫瘍が疑われる場合は,手術が必要となる。可能な場合は,妊孕性温存手術が望ましい(1)。
性的虐待が疑われる場合は,身体診察ならびに性的暴行被害者に関する現地の医学的および法的要件に基づいて記録を行う。患児の診察および評価中や評価後の支援は,訓練を受けた医療専門職が行うべきである。
治療に関する参考文献
1.Delehaye F, Sarnacki S, Orbach D, et al: Lessons from a large nationwide cohort of 350 children with ovarian mature teratoma: A study in favor of ovarian-sparing surgery. Pediatr Blood Cancer.2022;69(3):e29421.doi:10.1002/pbc.29421
要点
出血は腟からのもののように見えることがあるが,その出血源は,外陰,腟,子宮頸部,子宮体部,卵管,卵巣を含めた女性の生殖器のあらゆる部位が考えられ,尿路または消化管の場合も考えられる。
初経前では,腟炎,異物,および外傷が性器出血の一般的な原因である;性的虐待は比較的まれな原因であるが,疑われる場合には迅速な評価が必要である。
腟炎は外性器の診察により評価する。
骨盤内腫瘤が疑われる場合は,骨盤の画像検査により評価する。



