婦人科的診断検査および手技は,腟感染症(例,トリコモナス症,細菌性腟症,カンジダ感染症)およびがんの同定に役立ち,月経周期およびホルモン値に関する情報が得られる。
妊娠検査
妊娠可能年齢の女性で,妊娠を試みている場合,意図しない妊娠が懸念される場合,または婦人科症状がみられる場合には,妊娠検査を行う。
最も感度の高い妊娠検査は,ヒト絨毛性ゴナドトロピンβ-サブユニット(β-hCG)の血清検査である。これにより,月経予定日の直前または直後という早いタイミングで妊娠を検出することができる。大半の検査室で用いられている検査法では,hCG値が5mIU/mL以下であれば検出できず,それらの検査室の大半で妊娠検査結果は陰性とみなされる。検査法によっては1または2mIU/mLの低値まで検出できるものもある。
尿妊娠検査でもβ-hCGを測定するが,血清検査より感度が低い。尿検査でのβ-hCGの検出下限は,典型的には12~50mIU/mLである(1)。またhCG濃度は血清中より尿中で低くなる。尿検査で陽性となるのは,典型的には無月経となって月経予定日の初日から約1週間後である。月経予定日の翌日では,約半数の妊婦で検査結果が陰性となる。
自宅での尿妊娠検査の感度および特異度は,使用する検査キット,使用者の使い方,および解釈に応じて変動する可能性がある。したがって,自宅で行った妊娠検査で陽性となった場合は,尿または血清のいずれかによる臨床検査によって妊娠を確認すべきである。
妊娠検査に関する参考文献
1.Cole LA: The hCG assay or pregnancy test. Clin Chem Lab Med.2012;50(4):617-630.doi:10.1515/CCLM.2011.808
感染症の検査
腟炎の検査
腟炎を評価する検査としては以下のものがある:
腟pH:pH紙で検査する(正常な腟pHは3.8~4.2;細菌性腟症およびトリコモナス症ではpHの上昇[さらなるアルカリ化]がみられる)
生理食塩水によるウェットマウント:0.9%塩化ナトリウム溶液で調製する;所見から細菌性腟症(クルー細胞,多形核白血球)またはトリコモナス症(運動するトリコモナス原虫)が示唆されることがある
KOH直接鏡検:10%水酸化カリウム溶液で調製する;所見から細菌性腟症(臭気テスト陽性)またはカンジダ症(菌糸)が示唆されることがある
核酸増幅検査(NAAT):細菌性腟症,カンジダ症,およびトリコモナス症に対して用いることができる
性感染症の検査
女性生殖器の性感染症の検査としては以下のものがある(CDC: Screening Recommendations and Considerations Referenced in Treatment Guidelines and Original Sourcesを参照):
局所に存在する特定の微生物(トリコモナス[Trichomonas],淋菌[Neisseria gonorrhoeae],Chlamydia trachomatis)を調べるためには,子宮頸部,腟,もしくは尿道から採取した検体または尿検体を用いたNAAT;ときに,性器分泌物の検体に対して用いられるグラム染色および培養
性器ヘルペスウイルス感染症を調べるためには,病変部のスワブ検体を用いたPCR検査,ウイルス培養,または直接蛍光抗体法
全身性感染症(HIV感染症,B型もしくはC型肝炎,または梅毒)に対しては,血液検査
子宮頸癌検診
子宮頸癌スクリーニング
ルーチンの子宮頸癌スクリーニングは,浸潤前の病変や早期病変を効果的に検出することができ,子宮頸癌の発生率および死亡率を低下させる。
子宮頸部異常のスクリーニング検査には以下の2種類が利用されている:
高リスクのヒトパピローマウイルス(HPV)遺伝子型を検出する検査
Pap検査(子宮頸部細胞診)
スクリーニング検査の選択,頻度,スクリーニングの開始および中止年齢に関する推奨は様々である(の表を参照)。American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)はUnited States Preventive Services Task Force(USPSTF)による以下の推奨に従っている(1, 2):
21歳:子宮頸癌スクリーニングを開始する
21~29歳:3年毎の子宮頸部細胞診(または,25歳以上で平均的リスクの患者は,5年毎のHPV検査のみでスクリーニングを開始してもよい)
30~65歳:子宮頸部細胞診のみを3年毎;またはHPV検査のみを5年毎;または細胞診とHPVの併用検診を5年毎
65歳以上:過去10年間のスクリーニングで十分な陰性判定が得られている場合は,スクリーニングを中止する;過去のスクリーニングの記録がない女性には,中止基準に該当するまでスクリーニングを継続する
特定の適応(例,HIV感染,免疫抑制状態,過去の子宮頸癌スクリーニングでの異常結果)がある女性には,より頻回なスクリーニングが必要になる場合がある。
子宮全摘出術(子宮頸部および子宮の摘出)を受けた患者で,子宮頸癌または高悪性度の子宮頸部上皮内腫瘍の既往がない場合,さらなる子宮頸癌スクリーニングは適応とならない。
子宮頸癌スクリーニング検査の結果が異常であった場合は,必要に応じてさらなる評価が必要である。
子宮頸部に対する診断および治療手技
内診,子宮頸部細胞診,またはHPV検査で異常所見が認められた場合は,子宮頸部に対する診断または治療手技を行う。肉眼的に確認できる子宮頸部病変があり,診察しても診断が不確かな場合は,頸部生検も行う。
診断手技には以下のものがある:
コルポスコピー:拡大鏡を用いて腟と子宮頸部を検査する(例,生検が必要な部位の同定)
頸部生検:子宮頸部の生検で,通常は1~2mmの検体を採取する
子宮頸管内掻爬:キュレットを挿入して子宮頸管から細胞を採取する
診断および/または治療のために,子宮頸部の円錐切除術が用いられる可能性がある。このような手技では,以下のような様々な方法を用いて頸部組織を円錐状に切除する:
LEEP法(loop electrical excision procedure):電流が流れる細いループ状のワイヤーを用いて行う
メスを用いた円錐切除術:メスを用いて行う
レーザーを用いた円錐切除術:レーザーを用いて行う
治療のためのみに用いられる手技としては以下のものがある:
子宮頸部のアブレーション:凍結療法,CO2レーザー療法,熱焼灼,ジアテルミーなどの方法がある
子宮頸部の検査に関する参考文献
1.American College of Obstetricians and Gynecologists: Updated cervical cancer screening guidelines.Published October 2016.Reaffirmed April 2023.
2.US Preventive Services Task Force: Screening for Cervical Cancer: US Preventive Services Task Force recommendation statement.JAMA 320 (7):674–686, 2018.doi:10.1001/jama.2018.10897
他の婦人科生検
頸部生検に加え,下部性器の他の部位にも生検が適応となることがある。
外陰の生検
以下がみられる患者は外陰の生検の適応となる:
外陰上皮内腫瘍,外陰悪性腫瘍(例,扁平上皮癌,黒色腫),または外陰の皮膚疾患(例,硬化性苔癬,扁平苔癬)を示唆する症状または診察所見
身体診察では確定診断できない視認可能な外陰病変
内科的治療に十分に反応しなかった病変または内科的治療後に再発した病変
異常な血管パターンを示す病変
切除術による根治的治療が必要な病変
外陰の生検は,局所麻酔下に(1~2%リドカインを生検部位の皮下に注射)診察室で行う手技である。パンチ生検器具を用いて3~4mmのパンチ生検を行うことが多い。一部の症例では,外科用の剪刀を用いて病変を切除するか(例,小さな有茎性病変),メスで切除生検を行うか(例,外陰腫瘍に対する広範囲局所切除),またはshave biopsy(例,スキンタッグ,疣贅)を行う。止血は圧迫するか,塩基性硫酸第2鉄溶液(モンセル溶液)または硝酸銀棒を用いて行う。出血が持続する場合や生検部位が大きい場合は,ときに縫合が必要になる。
外陰の生検に対する相対的禁忌には,出血性素因や現在の抗凝固療法などがある。
腟の生検
腟の生検は一般的に行われるものではなく,腟上皮内腫瘍や腟の悪性腫瘍が懸念される場合や,診断のために病理学的評価を必要とする異常な病変がある場合に適応となる。
腟の生検は,長さのあるパンチ生検器具またはstitch and cut法(疑いのある病変または部位を縫合し,ハサミで病変を切除する手技)を用いて実施する。止血は追加の縫合により行うか,塩基性硫酸第2鉄溶液(モンセル溶液)または硝酸銀棒を用いて行う。
腟の生検に対する相対的禁忌には,出血性素因や現在の抗凝固療法などがある。
子宮内膜生検
子宮内膜採取は,診察室での子宮内膜生検として,または外科的手技(場合により子宮鏡検査を併用する頸管拡張・内膜掻爬)として行われることがある。
以下が子宮内膜生検の適応となる(1):
閉経後の子宮出血
異常子宮出血(AUB)がみられる患者で,年齢が45歳以上であるか,45歳未満であれば子宮内膜がんの危険因子(例,肥満,黄体ホルモン拮抗のないエストロゲン曝露歴)を有するか,AUBの内科的管理が不成功に終わっているか,またはAUBが持続する場合
子宮内膜増殖症のフォローアップのためのモニタリング
子宮頸部細胞診で子宮内膜がんのリスク増加と関連する腺細胞が認められる場合:45歳以上の患者で良性に見える子宮内膜細胞が認められる;子宮内膜由来の異型腺細胞(AGC)が認められる;35歳以上の患者でAGCまたは上皮内腺癌(AIS)が認められるか,35歳未満の患者で子宮内膜がんの危険因子または症状がある場合;いずれかのAGCカテゴリーで子宮頸部細胞診の異常が持続する(2)
子宮内膜がんのリスクが高い患者(例,リンチ症候群)におけるスクリーニング
子宮内膜生検の唯一の絶対的禁忌は,子宮内妊娠を希望する場合である。相対的禁忌には以下のものがある:
出血性素因または現在の抗凝固療法
腟,子宮頸部,子宮,または卵管の急性感染症
子宮頸管狭窄症
女性生殖器の先天異常
子宮内膜生検は通常,診察室で行われる。一部の閉経後患者では,ミソプロストール(手技施行前夜に200~400μgを腟内または経口投与)による頸管の前処置が頸管を拡張させるのに役立つことがある(3)。麻酔は必要ないが,一部の医師は患者に非ステロイド系抗炎症薬の手技前の使用を助言するか,頸部への局所麻酔スプレーまたは傍頸管ブロックを勧める(4)。抗菌薬の予防投与は必要ない。
手技では,細くて(3mm未満)柔軟性があり,プラスチック製の使い捨て低圧吸引キュレットを頸管から子宮底の位置まで挿入する;機械的拡張は通常必要としない。通常,子宮を安定させるために支持鉗子で頸部の前唇を把持する。内部のプランジャーを引くことにより吸引を行う。子宮内膜腔から十分な検体を採取するために,医師は器具を360°回転させ,上下に3回動かす。閉経後女性では,吸引器具よりもブラシを用いた子宮内膜採取の方が十分な検体が得られる可能性が高い(5)。
最も頻度の高い有害事象は,子宮の痙攣痛または血管迷走神経反射である。子宮穿孔はまれではあるが,より重篤となりうる合併症である。
他の婦人科生検に関する参考文献
1.Committee on Practice Bulletins—Gynecology.Practice bulletin no. 128: diagnosis of abnormal uterine bleeding in reproductive-aged women. Obstet Gynecol.2012;120(1):197-206.doi:10.1097/AOG.0b013e318262e320
2.Perkins RB, Guido RS, Castle PE, et al.2019 ASCCP Risk-Based Management Consensus Guidelines for Abnormal Cervical Cancer Screening Tests and Cancer Precursors [published correction appears in J Low Genit Tract Dis. 2020 Oct;24(4):427]. J Low Genit Tract Dis.2020;24(2):102-131.doi:10.1097/LGT.0000000000000525
3.Al-Fozan H, Firwana B, Al Kadri H, Hassan S, Tulandi T.Preoperative ripening of the cervix before operative hysteroscopy. Cochrane Database Syst Rev.2015;(4):CD005998.Published 2015 Apr 23.doi:10.1002/14651858.CD005998.pub2
4.Charoenkwan K, Nantasupha C.Methods of pain control during endometrial biopsy: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Obstet Gynaecol Res.2020;46(1):9-30.doi:10.1111/jog.14152
5.Williams AR, Brechin S, Porter AJ, et al: Factors affecting adequacy of Pipelle and Tao Brush endometrial sampling. BJOG.2008;115(8):1028-1036.doi:10.1111/j.1471-0528.2008.01773.x
画像検査
女性の生殖器異常を評価する上で最も一般的な画像検査は骨盤内超音波検査であり,熟練した放射線科医または婦人科医が経腟プローブ,経腹プローブ,ときに経直腸プローブを用いて行う。特異的な適応がある場合,以下のような他の画像検査を行う場合がある:
MRIまたはCT:超音波検査による評価が十分でない場合は,MRI(骨盤内臓器の病態に対して特異度が非常に高いが,高価である)が施行されることがある。CTは婦人科の病態に対してやや正確さに欠け,かなりの放射線被曝をもたらし,造影剤を必要とすることが多いため,通常あまり望ましくない。CTは主に婦人科悪性腫瘍の転移の評価に用いられる。
ソノヒステログラフィー(生理食塩水を注入するソノグラフィー):超音波検査の際に等張液を子宮頸部から子宮内に注入する。この液体により子宮腔内が膨張し,子宮内腫瘤(例,子宮内膜ポリープ,粘膜下平滑筋腫)の検出が容易となる。
子宮卵管造影:造影剤を子宮腔内に注入してから子宮および卵管のX線透視を行う。子宮卵管造影は通常,不妊症患者における卵管の開通を確認するために行われるが,この画像検査で子宮内病変も検出できることがある。
診断手技
病歴聴取,身体診察,および診察室での手技で診断を同定できない場合は,診断手技が適応となる。この種の手技は治療に用いられることもある。
頸管拡張・内膜掻爬
頸管拡張・内膜掻爬(D&C)は,頸管を拡張し,キュレットを挿入して子宮内膜組織を除去する手技であり,通常は子宮内膜増殖症または子宮内膜がんが疑われる場合に行われる。D&Cはときに,異常子宮出血の治療手技として施行される。
子宮鏡検査
子宮腔の観察が必要な場合は,D&Cと同時に子宮鏡検査を施行してよい。頸管拡張後,カメラ(子宮鏡)を頸管から子宮腔へ挿入する。内腔を視診して,異常がないか確認する。その後,子宮鏡を介して器具を挿入することにより,標的生検または筋腫核出術を行うことがある。
腹腔鏡検査
ダグラス窩穿刺



