子宮内膜症

執筆者:James H. Liu, MD, Case Western Reserve University School of Medicine
Reviewed ByOluwatosin Goje, MD, MSCR, Cleveland Clinic, Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 4月
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子宮内膜症では,骨盤内の子宮腔以外の部位に機能をもった子宮内膜細胞が生着する。症状は生着部位による。症状の古典的三徴は,月経困難症,性交痛,および不妊であるが,症状としては排尿困難や排便困難などもある。症状の重症度は病期と無関係である。診断は直接観察のほか,ときに生検(通常は腹腔鏡下)による。より進行した症例(例,卵巣に及んでいる子宮内膜症[子宮内膜症性嚢胞])の診断には,画像検査(経腟超音波検査,MRI)が有用である。治療法としては,非ステロイド系抗炎症薬,卵巣機能と子宮内膜組織の増殖を抑制する薬剤,子宮内膜症組織の外科的な除去および切除のほか,挙児希望がない重症例に対する子宮摘出術単独または子宮摘出術と両側卵管卵巣摘出術などがある。

子宮内膜症は通常,腹膜または骨盤内臓器の漿膜面に限局し,一般的には卵巣,子宮広間膜,ダグラス窩,仙骨子宮靱帯,腹膜に生じる。

比較的まれではあるが,卵管,直腸腟中隔,小腸や大腸の漿膜表面,尿管,膀胱,腟,子宮頸部,手術創のほか,さらにまれに肺,胸膜,心膜でも発生する。

腹腔内での子宮内膜症組織からの出血によって無菌性の炎症反応が惹起され,それに続いてフィブリン沈着と癒着形成が生じ,最終的には瘢痕化が起きると考えられている。

17の研究を対象としたメタアナリシスにおける子宮内膜症の有病率は以下の通りである(1):

  • 妊娠可能年齢の女性の18%

  • 不妊女性の31%

  • 慢性骨盤痛を有する女性の42%

子宮内膜症の診断は遅れる場合がある。症状出現から診断までの期間は4~11年と様々であり(2),診断時の平均年齢は28歳である(3)。子宮内膜症は青年期にも発生し,まれに初経前の女児にみられる。

参考文献

  1. 1.Moradi Y, Shams-Beyranvand M, Khateri S, et al: A systematic review on the prevalence of endometriosis in women. Indian J Med Res.2021;154(3):446-454.doi:10.4103/ijmr.IJMR_817_18

  2. 2.Arruda MS, Petta CA, Abrão MS, Benetti-Pinto CL: Time elapsed from onset of symptoms to diagnosis of endometriosis in a cohort study of Brazilian women. Hum Reprod.2003;18(4):756-759.doi:10.1093/humrep/deg136

  3. 3.Singh S, Soliman AM, Rahal Y, et al: Prevalence, Symptomatic Burden, and Diagnosis of Endometriosis in Canada: Cross-Sectional Survey of 30 000 Women. J Obstet Gynaecol Can.2020;42(7):829-838.doi:10.1016/j.jogc.2019.10.038

子宮内膜症の病因と病態生理

子宮内膜症の発生機序に関する仮説のうち最も広く受け入れられているのは,月経時に子宮内膜細胞が子宮腔から運ばれ,他の部位に異所性に生着するというものである。月経血の卵管を通じた逆流はよくみられ,それにより子宮内膜細胞が腹腔内に運ばれる可能性が考えられる。

子宮内膜症の発生機序に関する他の仮説としては,体腔上皮化生(腹膜中皮から子宮内膜様の腺への変換),ミュラー管遺残(胎生期のミュラー管細胞の遺残からの子宮内膜様の細胞の発生),リンパ系または循環系を介した子宮内膜細胞の輸送などがある(1)。

子宮内膜症患者の第1度近親者で発生率が高く,また大規模な双生児研究(2)でも発生率が高いことから,遺伝が一つの要因であることが示唆される。

子宮内膜症の潜在的な危険因子としては,以下のものがある:

  • 第1度近親者の子宮内膜症の家族歴

  • 高齢での出産または未経産

  • 早い初経

  • 遅い閉経

  • 月経周期が短く(27日未満),月経が重くて長い(8日超)

  • ミュラー管欠損(例,非交通性副角子宮,子宮流出路の閉塞を伴う頸管低形成)

  • ジエチルスチルベストロールの子宮内曝露

以下の因子が防御因子とみられている:

  • 複数回の出産

  • 長期間の授乳

  • 遅い初経

  • 低用量の経口避妊薬の長期使用(連続的または周期的)

  • 定期的な運動(特に15歳未満で開始した場合,週4時間以上行う場合,これら両方に該当する場合)

顕微鏡的には,子宮内膜症組織は組織学的に子宮内の子宮内膜と同じ腺と間質で構成される。これらの組織は,エストロゲンおよびプロゲステロン受容体が発現しているため,通常は月経周期に伴うホルモン濃度の変化に反応して増殖,分化,出血を起こし,また一部の組織はエストロゲンとプロスタグランジンを産生することができる。子宮内膜症組織は自立して存在している場合もあれば,妊娠中にみられるように退縮する場合(おそらくプロゲステロン値が高いことによる)もある。最終的には,子宮内膜症組織が炎症を惹起し,活性化マクロファージの数と炎症性サイトカインの産生量を増加させる。

重症子宮内膜症で骨盤内構造に歪みが生じている患者では,おそらくは歪んだ構造と炎症によって卵子の取込み,受精,および卵管内輸送の機構が阻害されるために,不妊症の発生率が高くなっている。妊孕性低下の理由は明らかにされていないが,以下のものが考えられる:

  • 黄体化未破裂卵胞症候群の発生率の上昇(卵子が放出されない)

  • 受精,精子,および卵子機能に影響を及ぼす可能性がある,腹腔内でのプロスタグランジン産生の増加または腹腔マクロファージの活動性亢進

  • 子宮内膜の受容性低下(黄体機能不全または他の異常による)

病因と病態生理に関する参考文献

  1. 1.Burney RO, Giudice LC: Pathogenesis and pathophysiology of endometriosis. Fertil Steril.2012;98(3):511-519.doi:10.1016/j.fertnstert.2012.06.029

  2. 2.Saha R, Pettersson HJ, Svedberg P, et al: Heritability of endometriosis.Fertil Steril 104 (4):947–952, 2015.doi: 10.1016/j.fertnstert.2015.06.035

子宮内膜症の症状と徴候

広範囲に子宮内膜症がある女性でも無症状のことがある一方,微症でも日常生活に支障を来す痛みが生じることがある。

子宮内膜症の症状の古典的三徴は,月経困難症,性交痛,および不妊である。月経前または月経中の周期的な骨盤正中部の痛み(月経困難症)や性交中の腹痛(深部性交痛)が典型的であり,進行性かつ慢性(6カ月以上続く)のことがある。比較的痛みのない月経が数年続いた後に始まる月経困難症は重要な診断の手がかりとなる。

子宮内膜症は不妊症の女性で,特に骨盤痛を伴う場合に疑われる。

付属器腫瘤(子宮内膜症性嚢胞)も典型的である。月経間期出血がみられる可能性がある;卵巣の機能障害により卵胞からのエストロゲンおよびプロゲステロン産生が早期に停止し,その結果,子宮内膜の支持作用が早期に失われる。

子宮内膜症の女性では,恥骨上部痛,排尿困難,頻尿,および切迫性尿失禁を伴う間質性膀胱炎がよくみられる(1)。

症状はしばしば妊娠中に軽減または解消する。閉経後にはエストロゲンプロゲステロンの濃度が低下するため,子宮内膜症の活動性は低下する傾向にある。

症状および徴候は子宮内膜症組織の部位により様々である。

  • 卵巣:子宮内膜症性嚢胞の形成(卵巣に限局する嚢胞性腫瘤),ときに破裂または漏出し,急性腹痛および腹膜刺激徴候を起こす

  • 付属器:付属器癒着の形成,骨盤内の腫瘤または疼痛の原因となる

  • 膀胱:排尿困難,血尿,恥骨上部痛または骨盤痛(特に排尿時),頻尿,切迫性尿失禁,またはこれらの組合せ

  • 大腸:排便困難,腹部膨満,下痢または便秘,月経中の下血

  • 骨盤外の構造:腹部の鈍い痛み(ときに)

内診所見は正常であるか,または正中線から逸脱した子宮頸部,後傾して固定された子宮,固定された卵巣腫瘤,卵巣の圧痛,肥厚したもしくは結節性の直腸腟中隔,仙骨子宮靱帯の結節がみられる場合がある。まれに,外陰や子宮頸部,腟,臍,手術瘢痕に病変がみられる。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Wu CC, Chung SD, Lin HC: Endometriosis increased the risk of bladder pain syndrome/interstitial cystitis: A population-based study. Neurourol Urodyn.2018;37(4):1413-1418.doi:10.1002/nau.23462

子宮内膜症の診断

  • 直接観察,通常は骨盤の腹腔鏡検査

  • 生検

  • ときに骨盤内超音波検査またはMRI

典型的な症状に基づき子宮内膜症を疑う。骨盤内炎症性疾患尿路感染症過敏性腸症候群と誤診されることが多い。頸管培養および/または尿培養が陰性の場合,子宮内膜症の可能性が示唆される。

子宮内膜症の診断は,直接の観察(通常は骨盤の腹腔鏡検査によるが,ときに開腹,内診,S状結腸鏡検査,または膀胱鏡検査による)によって確定する必要がある。生検は必須ではないが,結果によって診断が確定する。

子宮内膜症組織の肉眼的外観(例,透明,赤色,青色,褐色,黒色)や大きさは,月経周期の中で変動する。ただし典型的には,早期病変は透明または赤色(出血性)である。病変内の血液が酸化するにつれて,色が紫色に変わり,次に褐色になる;その後,散布状黒斑(powder burn)様で5mmを超える青色または紫褐色の斑点に変化する。

顕微鏡的には,通常は子宮内膜の腺および間質が認められる。腺成分がなく間質成分が認められる場合は,子宮内膜症のまれな病型である間質性子宮内膜症が示唆される。

画像検査によって子宮内膜症が確実に検出されるわけではない。しかしながら,骨盤内超音波検査またはMRIで子宮内膜症性嚢胞と一致する卵巣嚢胞が認められた場合は,本症が強く示唆される。卵巣の子宮内膜症性嚢胞の存在および大きさは子宮内膜症の病期分類システムの一部であり(III期:小さな子宮内膜症性嚢胞;IV期:大きな子宮内膜症性嚢胞),子宮内膜症性嚢胞の縮小は治療に対する反応を示している可能性がある。

子宮内膜組織は固有のMR信号を発するため,MRIは子宮内膜症が疑われる患者の評価にますます有用になってきている(1)。MRIのT1およびT2強調像により,骨盤内の一部の子宮内膜症病変,特に大きな病変を検出することができる。血流の増加を伴わない卵管内または卵巣嚢胞内の出血は,子宮内膜症を示唆する。ダグラス窩に子宮内膜症の大きな領域が複数ある場合は,重症(IV期)であることを意味する。

子宮内膜症の診断に役立つ臨床検査はないが,血漿中のマイクロRNAなどのバイオマーカーが臨床試験で研究されている(2)。

パール&ピットフォール

  • 持続的で周期的な骨盤痛がある場合,特に性交痛または不妊が認められる場合は,子宮内膜症を考慮する。

子宮内膜症の病期分類は,医師が治療計画を作成し,治療に対する反応を評価するのに役立つ。American Society for Reproductive Medicineによると,子宮内膜症は以下に基づいて,I期(微症),II期(軽症),III期(中等症),IV期(重症)に分類される。

  • 子宮内膜症組織の数,部位,深さ

  • 子宮内膜症性嚢胞および膜状または強固な癒着の存在(子宮内膜症の病期の表を参照)

表&コラム
表&コラム

子宮内膜症に関する他の分類または臨床転帰を予測するシステムが開発されているが,臨床的に有用であることが明らかにされているものはほとんどない。Endometriosis fertility index(EFI)は,子宮内膜症に対する手術後の自然妊娠率(生殖補助医療を用いない)と相関することが明らかにされているが,結果は研究によって異なっていた(3)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Guerriero S, Saba L, Pascual MA, et al: Transvaginal ultrasound vs magnetic resonance imaging for diagnosing deep infiltrating endometriosis: systematic review and meta-analysis.Ultrasound Obstet Gynecol 51 (5):586–595, 2018.doi: 10.1002/uog.18961

  2. 2.Nisenblat V, Bossuyt PM, Shaikh R, et al: Blood biomarkers for the non-invasive diagnosis of endometriosis. Cochrane Database Syst Rev 2016;2016(5):CD012179.Published 2016 May 1.doi:10.1002/14651858.CD012179

  3. 3.Vesali S, Razavi M, Rezaeinejad M, et al: Endometriosis fertility index for predicting non-assisted reproductive technology pregnancy after endometriosis surgery: a systematic review and meta-analysis. BJOG.2020;127(7):800-809.doi:10.1111/1471-0528.16107

子宮内膜症の治療

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)

  • エストロゲン-プロゲスチン避妊薬

  • 卵巣機能を抑制する薬剤

  • 子宮内膜症組織の外科的切除または除去

  • 重症の患者で以降出産の希望がない場合は,腹式子宮全摘出術単独または腹式子宮全摘出術と両側卵管卵巣摘出術

子宮内膜症が疑われる患者には,まず経験的治療が行われることが多い。非侵襲的な方法で症状をコントロールできれば,手術を回避できる。

鎮痛薬(通常はNSAID)およびホルモン避妊薬で対症療法を開始する。これらが無効である場合は,より集中的な薬物療法(GnRHアナログ,アロマターゼ阻害薬,またはダナゾール)を開始すること,または診断確定と治療を同時に行うための腹腔鏡検査施行について患者にカウンセリングを行う。

診断的腹腔鏡検査は,子宮内膜症または症状の他の病因を検出するために行われる。子宮内膜症が認められた場合は,同手技中に病変を治療する。保存的な外科的治療として,子宮内膜症組織の切除または除去と骨盤内癒着の切除がある。卵巣の子宮内膜症性嚢胞が認められる場合は,卵巣嚢胞摘出術が施行されることがある。より根治的な治療は,患者の年齢,症状,妊孕性温存の希望の有無,および疾患の進展範囲に基づき個別に決定しなければならない。

子宮内膜症の外科的治療後は,典型的にはホルモン避妊薬または他の薬剤を投与する。卵巣機能が永久的かつ完全に廃絶されない限り,大半の患者で手術単独または薬剤中止の後,6カ月から1年以内に子宮内膜症が再発する。

腹式子宮全摘出術単独または腹式子宮全摘出術と両側卵管卵巣摘出術は,子宮内膜症の根治的な治療法と考えられている。しかしながら,閉経前女性またはエストロゲン療法中の女性では,子宮摘出術後であっても子宮内膜症が再発する可能性がある。

薬物療法

通常,疼痛の緩和にNSAIDを使用する。症状が軽度の患者で挙児希望がない場合は,この種の薬剤のみで十分なことがある。

卵巣機能を抑制する薬剤は,子宮内膜症組織の増殖および活動性を阻害する。薬物療法は疼痛のコントロールに効果的であるが,微症または軽症子宮内膜症の女性では,この治療を行っても妊娠率は変化しない。

以下のホルモン避妊薬が初期治療として一般的に使用される:

  • 混合型(エストロゲン-プロゲスチン)避妊薬の連続投与

  • エストロゲン療法の禁忌がある患者には,プロゲスチン

以下の薬剤は通常,NSAIDまたはホルモン避妊薬で症状を十分にコントロールできない場合にのみ使用される:

  • ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト(例,リュープロレリン)およびアンタゴニスト(例,エラゴリクス[elagolix])

  • アロマターゼ阻害薬(例,アナストロゾール,レトロゾール)

  • ダナゾール

GnRHアゴニストは,最初は視床下部からのGnRH分泌を増加させるが,継続使用すると下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌が一時的に減少し,その結果,卵巣からのエストロゲン産生が低下する;しかしながら,長期間使用すると骨量減少につながる可能性があるため,治療は6カ月以下に制限される。治療が > 4~6カ月続く場合は,骨量減少を最小限に抑えるため,プロゲスチンまたはビスホスホネートを同時に使用してもよい。子宮内膜症が再発すれば,再び治療が必要になることがある。

GnRHアンタゴニストであるエラゴリクス(elagolix)はGnRH分泌を直接減少させ,それによって下垂体からのFSH分泌および卵巣からのエストロゲン産生を抑制する。2種類の用量で使用可能である;高用量では性交痛のほか他の子宮内膜症の症状の治療に使用可能である。長期使用により骨量減少を来すことがある。治療が6カ月以上続く場合は,骨量減少を最小限に抑えるため,プロゲスチンを同時に使用してもよい(add-back療法)。

GnRHアンタゴニストであるレルゴリクスとエストラジオール1mgおよびノルエチステロン0.5mgの併用が子宮内膜症の一次治療として臨床試験で検討されている;この併用によりホットフラッシュおよび骨量減少が最小限に抑えられる。継続的な骨量減少が起こる可能性があり,不可逆性となりうるため,使用は24カ月に制限する。

アロマターゼ阻害薬はGnRHアナログが子宮内膜症の抑制に無効である場合に考慮してもよく,その理由は,子宮内膜症組織にアロマターゼ活性がみとめられる場合,これによって循環血中のアンドロゲン前駆体が変換されエストロゲンが産生される可能性があるためである(1)。

ダナゾールは,抗ゴナドトロピン作用をもつ合成アンドロゲンであり,排卵を阻害する。しかしながら,アンドロゲン作用による有害作用により使用は制限される。

混合型経口避妊薬は,GnRHアナログまたはアロマターゼ阻害薬による集中的な薬物療法後に周期的または連続的に投与することで疾患の進行を遅らせる可能性があり,これらの薬物療法の中止/終了後に直ちに妊娠する予定のない女性に適応となる。

手術

中等症から重症の子宮内膜症患者の大半では,骨盤内構造を正常化させながら妊孕性を温存しつつ,可能な限り子宮内膜症組織を除去または切除することが最も効果的な治療となる。表在性の子宮内膜症組織は除去が可能である。深在性の広範な子宮内膜症組織は切除すべきである。

腹腔鏡手術の具体的な適応としては以下のものがある:

  • 薬物療法に反応しない中等度または重度の骨盤痛

  • 子宮内膜症性嚢胞

  • 著明な骨盤内癒着

  • 卵管閉塞

  • 手術後数カ月以内の妊娠希望

  • 性交痛(外科的治療は,診断的腹腔鏡検査中に行われない限り,第2選択の治療である)

子宮内膜症組織に対する最も一般的な外科的手技は腹腔鏡下での除去または切除である;腹膜または卵巣病変に対しては,ときに電気焼灼または切除,まれにレーザー蒸散が可能である。投薬なしでは,子宮内膜症組織は通常1~2年以内に再発する。子宮内膜症のホルモン療法は妊娠中は禁忌であるため,不妊症の患者には通常,手術後すぐに妊娠を試みるようにカウンセリングを行う。

卵巣の子宮内膜症性嚢胞が認められる場合は,卵巣嚢胞摘出術の適応となる。

腹腔鏡検査または嚢胞摘出術後,妊娠率は子宮内膜症の重症度に逆比例する。切除が不完全である場合には,ときにGnRHアゴニストが周術期に使用されるが,この方法によって妊娠率が上昇するかどうかは不明である。電気焼灼やレーザーによる仙骨子宮靱帯の腹腔鏡下切除術が,骨盤正中部の痛みを軽減する場合がある。

最も重症度の高い病型である直腸腟中隔子宮内膜症は,子宮内膜症に対する通常の治療法で治療できるが,結腸の閉塞を予防するために,結腸切除が必要になる場合がある。

子宮摘出術は,両側卵管卵巣摘出術と併施するか否かにかかわらず,通常は中等度から重度性の骨盤痛があり,挙児希望がなく,根治的な治療を希望する患者にのみ施行すべきである。子宮摘出術では,癒着組織や子宮またはダグラス窩に癒着した子宮内膜症組織を切除する。

50歳未満の女性に子宮摘出術と両側卵管卵巣摘出術を行う場合は,エストロゲン療法を考慮すべきである(例,更年期症状を治療するため)。エストロゲンを単独で投与すると残存組織が増殖して再発の可能性があるため,継続的なプロゲスチンの併用(例,酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mg,経口,1日1回)もしばしば推奨される。50歳以上の女性で卵管卵巣摘出術後に症状が持続する場合は,持続的なプロゲスチン単独療法(例,酢酸ノルエチステロン2.5~5mg,酢酸メドロキシプロゲステロン5mg,経口,1日1回,微粒子化プロゲステロン100~200mg,経口,就寝時)を試すことができる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Ferrero S, Gillott DJ, Venturini PL, Remorgida V: Use of aromatase inhibitors to treat endometriosis-related pain symptoms: a systematic review. Reprod Biol Endocrinol.2011;9:89.Published 2011 Jun 21.doi:10.1186/1477-7827-9-89

要点

  • 子宮内膜症は,骨盤内の子宮腔以外の部位に子宮内膜組織が生着することであり,最も一般的には卵巣,子宮広間膜,ダグラス窩,仙骨子宮靱帯,腹膜に生じる。

  • 症状の古典的三徴は,月経困難症,性交痛,および不妊であるが,症状としては排尿困難や排便困難などもある。

  • 子宮内膜症が疑われる場合は,鎮痛薬(例,NSAID)およびホルモン避妊薬で疼痛を治療する。

  • 初期の薬剤が無効の場合は,より集中的な薬物療法(GnRHアナログ,アロマターゼ阻害薬,またはダナゾール)または腹腔鏡検査を行う。

  • 目視によって診断を確定するために診断的腹腔鏡検査を行う;生検は必須ではないが,診断の一助となる。

  • 腹腔鏡検査では,可能な限り多くの子宮内膜症組織を除去または切除し,癒着を解除して正常な骨盤内構造を回復させ,子宮内膜症性嚢胞を切除する;妊孕性に関する患者の希望に応じて,通常は子宮内膜症組織の増殖と活動性を阻害するために卵巣機能を抑制する薬剤を使用する。

  • 子宮内膜症には重症度に基づく病期分類システムがあるが,その病期は症状の重症度と相関しない。

  • 子宮摘出術は両側卵管卵巣摘出術と併施か否かにかかわらず,挙児希望がない女性,または根治的な治療を希望する女性に限られる。

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