外陰がん

執筆者:Pedro T. Ramirez, MD, Houston Methodist Hospital;
Gloria Salvo, MD, MD Anderson Cancer Center
レビュー/改訂 2022年 7月
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外陰がんは通常,扁平上皮癌であり,高齢女性に最も多く発症する。通常は触知可能な病変として顕在化する。診断は生検による。治療として一般に,切除およびリンパ節郭清またはセンチネルリンパ節マッピングを行う。

外陰がんは米国で4番目に多い婦人科がんであり,女性の生殖器癌の6%を占める。米国において2022年には推定6330例の外陰がんの新規症例が発生し,推定1560人が死亡した(1)。

診断時年齢の中央値は約70歳であり,年齢に伴い発生率は増加する。

外陰がんはしばしば大陰唇に発生する。頻度は低いが,外陰がんは小陰唇,陰核,または腟腺を侵す。外陰がんは通常,何年かかけて緩徐に発生する。前がん性の細胞変化が(浸潤を伴わずに)外陰上皮の表面に長期間かけて発生することがある。この病態(外陰上皮内腫瘍[VIN]と呼ばれる)は,浸潤性に変化する(がん化する)可能性があるため,診断して治療すべきである。

外陰がんの危険因子としては以下のものがある:

大半の外陰がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染により発生する。外陰上皮内腫瘍(VIN)は外陰がんの前駆病変である。

総論の参考文献

  1. 1.American Cancer Society: Key Statistics for Vulvar Cancer.Accessed 6/21/22.

外陰がんの病理

外陰がんの約90%は扁平上皮癌である;約5%が黒色腫である。その他は,腺癌と移行上皮癌,腺様嚢胞癌,および腺扁平上皮癌である;全てがバルトリン腺に由来する可能性がある。肉腫,および腺癌を基礎にもつ基底細胞癌も生じる。

外陰がんは以下の形態で進展する:

  • 直接進展(例,尿道,膀胱,腟,会陰,肛門,または直腸へ)

  • 血行性転移

  • 鼠径リンパ節へ

  • 鼠径リンパ節から骨盤および傍大動脈リンパ節へ

外陰がんの診断

  • 生検

外陰がんは,性感染症による陰部潰瘍(例,軟性下疳),基底細胞癌,外陰パジェット病(蒼白な湿疹様病変),バルトリン腺嚢胞もしくは膿瘍,または尖圭コンジローマ(性器疣贅)に類似した症状を呈することがある。 性感染症(STI)のリスクが低い女性に外陰病変が発生したり,病変がSTIに対する治療に反応しない場合,医師は外陰がんを考慮すべきである。

局所麻酔を用いた皮膚パンチ生検が通常診断に有用である。ときに,VINをがんと鑑別するのに広範囲局所切除が必要となる。微妙な病変は,外陰をトルイジンブルーで染色するか,コルポスコピーを使用して明確に観察しうる。

パール&ピットフォール

  • 性感染症(STI)のリスクが低い女性に外陰病変が発生したり,病変がSTIに対する治療に反応しない場合には,外陰がんを考慮する。

進行期診断

外陰がんの進行期診断は,腫瘍の大きさと部位,および最初の外科的治療の一部として行われるリンパ節郭清またはセンチネルリンパ節(SLN)生検により確認される所属リンパ節への転移に基づく(外陰がんの進行期の表を参照)。

表&コラム
表&コラム

外陰がんの予後

全体での5年生存率は約70%である。リンパ節へ転移するリスクは腫瘍径と浸潤の深さに比例する。黒色腫は転移することが多く,転移は浸潤の深さに最も依存するが,腫瘍径にも関係する。

外陰がんの治療

  • 間質浸潤が1mm以下の場合を除き,広範囲切除およびリンパ節郭清術

  • III期またはIV期の患者には手術,放射線療法,および/または化学療法

National Comprehensive Cancer Network (NCCN): NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Vulvar Cancer [Squamous Cell Carcinoma]も参照のこと。)

腫瘍が外陰に限局していて,隣接する会陰組織に進展していない場合は,局所腫瘍に対する根治的な広範(マージン2cm以上)切除の適応となる。間質浸潤が1mmを超える場合はリンパ節郭清を行ってもよいが,間質浸潤が1mm以下の場合には必要ない。広汎外陰切除術は通常,バルトリン腺癌にのみ選択する。

片側に偏在する2cm以下の病変には,片側の広範囲局所切除および片側のSLN郭清が推奨される。正中線近くの病変と2cmを超える大半の病変には,両側のSLN郭清が必要である。

尿道,腟,肛門など隣接する会陰組織に進展している腫瘍には,腫瘍の大きさに関係なく,modified radical vulvectomyが適応となる。

外陰扁平上皮癌の一部の患者では,リンパ節郭清の代替として,センチネルリンパ節生検が適切である。臨床所見から腫瘍が鼠径部に進展していることが示唆される場合,SLNマッピングを考慮すべきでない。SLNマッピングでは,トレーサー(青色色素,テクネチウム99[99Tc],インドシアニングリーン[ICG])を外陰がんの周囲および先進部の前方の皮内に注射する。

リンパ節のさらなる評価および治療は,SLN生検またはリンパ節郭清の結果に基づく。鼠径大腿リンパ節が陰性の場合は,経過観察が妥当である。1つまたは複数のSLNが陽性の場合,治療は転移の大きさに依存する。微小転移(≤ 2mm)に対しては,鼠径大腿部の放射線療法(50Gy)が鼠径リンパ節郭清の安全な代替となる。SLNへの肉眼的転移に対しては,孤立性の鼠径部再発を予防するために鼠径リンパ節郭清術を行う (1)。

III期例に対しては,リンパ節郭清に続いて術後外照射療法と化学療法(化学放射線療法)(シスプラチンが望ましいが,フルオロウラシルも可)を行う治療を,広範な根治的切除術の前に施行するのが通常である。代替療法は,さらに根治的な手術または骨盤除臓術である。

IV期については,治療は骨盤除臓術,放射線療法,および全身化学療法(シスプラチン,カルボプラチン,シスプラチンまたはカルボプラチン/パクリタキセル,またはシスプラチン/パクリタキセル + ベバシズマブ)をいくつか組み合わせて行う。

治療に関する参考文献

  1. 1.Oonk MHM, Slomovitz B, Baldwin PJW, et al: Radiotherapy versus inguinofemoral lymphadenectomy as treatment for vulvar cancer patients with micrometastases in the sentinel node: Results of GROINSS-V II.J Clin Oncol 39 (32):3623–3632, 2021.doi: 10.1200/JCO.21.00006 Epub 2021 Aug 25.

要点

  • 外陰がんの大半は扁平上皮癌である;約5%が黒色腫である。

  • そう痒を伴う病変や潰瘍を含む外陰病変がSTIに対する治療に反応しないか,そうした病変がSTIのリスクが低い女性に生じた場合,外陰がんを考慮する。

  • 生検により外陰がんを診断し,手術により進行期診断を行う。

  • 遠隔転移を認めなければ,広範囲局所切除を行うとともに,間質浸潤が1mm未満の場合を除き,リンパ節郭清またはセンチネルリンパ節生検を行う。

  • リンパ節転移例または遠隔転移例では,手術,放射線療法,および/または化学療法の組合せにより治療する。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Cancer Institute: Vulvar Cancer: This web site provides links to information about causes, prevention, and treatment of vulvar cancer, as well as links to information about screening, statistics, and supportive and palliative care.

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