免疫系を構成する分子

執筆者:Peter J. Delves, PhD, University College London, London, UK
レビュー/改訂 2021年 9月
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免疫系は,共同で抗原を破壊する細胞成分および分子成分から成る。(免疫系の概要も参照のこと。)

急性期反応物質

急性期反応物質は血漿タンパク質で,感染または組織損傷の発生時に生じるインターロイキン1(IL-1)およびIL-6の血中濃度上昇に呼応して,濃度が劇的に増加したり(正の急性期反応物質と呼ばれる),一部の例では,減少したりする(負の急性期反応物質と呼ばれる)。最も劇的に増加するのは以下のものである:

  • C反応性タンパク(CRP)

  • 血清アミロイドA

その他の急性期反応物質としては以下のものがある:

  • マンノース結合レクチン

  • 血清アミロイドP成分

  • α1酸性糖タンパク質

  • フィブリノーゲン

C反応性タンパク(CRP),マンノース結合レクチン,および血清アミロイドP成分は,補体を活性化してオプソニンとして働く。血清アミロイドAとα1酸性糖タンパク質は輸送タンパク質であり,フィブリノーゲンは凝固因子である。C反応性タンパク(CRP)高値は,感染または炎症の非特異的指標である。フィブリノーゲン濃度の上昇は,急性炎症における赤沈亢進の主な理由である。

多くの急性期反応物質は肝臓で作られる。全体で,これらの物質は,組織損傷の制限,感染に対する宿主の抵抗性増強,ならびに組織修復および炎症消退の促進に役立つ可能性がある。

抗体

抗体はB細胞表面上の抗原受容体として働き,抗原に応答すると,その後に形質細胞によって分泌される。抗体は,抗原(例,タンパク質,多糖体,核酸)の表面上の特異的な構造(エピトープ,つまり抗原決定基)を認識する。抗体と抗原は,形状および他の表面特性(例,電荷)が相補的であるため,密に結合する。1つの抗体分子でも,関連する抗原のエピトープが最初の抗原のものと十分に類似していれば,交差反応できる。

抗体の構造

抗体は,ジスルフィド結合で連結した4本のポリペプチド鎖(同一の重鎖2本および同一の軽鎖2本)から成り,Y字型の形状を示す(B細胞受容体の図を参照)。重鎖および軽鎖は,可変(V)領域と定常(C)領域に分けられる。

B細胞受容体

B細胞受容体は,細胞表面に埋め込まれたIg分子から成る。CH = 重鎖定常領域;CL = 軽鎖定常領域;Fab = 抗原結合フラグメント;Fc = 結晶化フラグメント;Ig = 免疫グロブリン;LκまたはLλ = 2種類の軽鎖;VH = 重鎖可変領域;VL = 軽鎖可変領域。

V領域はY字の腕のアミノ末端の先端にある;そこに含まれるアミノ酸が各種の抗体で異なるため,可変領域と呼ばれる。V領域内の超可変領域が免疫グロブリン(Ig)の特異性を決定づける。超可変領域は抗原(イディオタイプ決定基)としても機能し,それに対して特定の自然(抗イディオタイプ)抗体が結合することができ,この結合はB細胞応答の調節に役立つことがある。

重鎖のC領域には比較的一定したアミノ酸配列(アイソタイプ)が含まれ,Igクラスごとに異なる。B細胞は自ら産生するアイソタイプを変化させて,Igのクラスを切り替えることができる。Igでは重鎖V領域の可変部および軽鎖全体が保たれているため,抗原特異性が保持される。

抗体のアミノ末端(可変部)の先端が抗原に結合して,抗原抗体複合体を形成する。Igの抗原結合(Fab)部分は,軽鎖および重鎖の一部から成り,Ig分子のV領域(すなわち,結合領域)を含む。結晶化フラグメント(Fc)領域には重鎖のC領域のほとんどが含まれる;Fcは補体の活性化に関与するとともに,細胞表面のFc受容体に結合する。

抗体のクラス

抗体は以下の5つのクラスに分けられる:

  • IgM

  • IgG

  • IgA

  • IgD

  • IgE

クラスは重鎖の種類(IgMはμ,IgGはγ,IgAはα,IgEはε,IgDはδ)により定義されている。軽鎖にもκλの2種類がある。5つのIgクラスはそれぞれκ型軽鎖またはλ型軽鎖のいずれかを有する。

IgMは,新たな抗原に曝露した後に最初に形成される抗体である。Y字型分子が5つあり(重鎖が10本および軽鎖が10本),1本の結合(J)鎖によって連結されている。IgMは主に血管内を循環している;抗原と複合体を形成して凝集し,補体を活性化することができ,それによって食作用を促進する。同種血球凝集素は主にIgMである。IgMの単量体は,B細胞上で表面抗原受容体として働く。高IgM症候群患者には,抗体のクラススイッチに関与する遺伝子(例,CD40,CD154[CD40Lとしても知られる],AID[活性化誘導型シチジンデアミナーゼ],UNG[ウラシルDNAグリコシラーゼ],またはNEMO[NF-κB essential modulator]をコードする遺伝子)に異常があり,したがって,IgA,IgG,およびIgEが低値となるか認められず,血中IgMがしばしば高値となる。

IgGは,血清中で最も多いIgアイソタイプで,血管内および血管外に存在する。IgGは抗原を覆って補体を活性化し,好中球およびマクロファージによる食作用を促進する。IgGは,抗原に再び曝露した(二次免疫応答)後に産生される主な循環Igであり,市販の免疫グロブリン製剤に含まれる主なアイソタイプである。IgGは細菌,ウイルス,および毒素に対する防御を担っており,胎盤を通過する唯一のIgアイソタイプである。したがって,このクラスの抗体は新生児を守るために重要であるが,病原性のあるIgG抗体(例,抗Rh0[D]抗体,刺激性の抗甲状腺刺激ホルモン受容体自己抗体)が母親にあると,胎児に重大な疾患を引き起こす可能性がある。

IgGには,IgG1,IgG2,IgG3,およびIgG4の4つのサブクラスがある。これらの番号は,血清中濃度の降順になっている。IgGのサブクラスには,主に補体の活性化能力で機能的な差がある;IgG1およびIgG3が最も能力が高く,IgG2はそれより劣り,IgG4は無効である。IgG1およびIgG3は抗体依存性細胞傷害活性(antibody-dependent cellular cytotoxicity)の有能なメディエーターである;IgG4およびIgG2はそれより劣る。

IgAは,粘膜表面,血清中,および分泌物中(唾液,涙液,気道分泌物,泌尿生殖器分泌物,消化管分泌物,初乳)に存在し,これらの場所で初期の抗菌および抗ウイルス防御を担っている。J鎖によりIgAが連結されて二量体となり,分泌型IgAを形成する。分泌型IgAは,消化管および呼吸器の上皮下層に存在する形質細胞により合成される。選択的IgA欠損症は比較的よくみられるが,他のクラスの抗体と交差機能性があるため,臨床的な影響は少ないことが多い。

IgDは,ナイーブB細胞の表面上でIgMと共発現している。これらのB細胞表面上の2つのクラスの機能が異なるかどうか,もしそうであれば,どの程度異なるかは不明である。単に分子的縮合の一例である可能性もある。IgDの血清中濃度は非常に低く,循環血中でのIgD固有の機能は不明である。

IgEは,血清中,呼吸器および消化管の粘膜分泌物中に存在するが低濃度である。IgEは,肥満細胞および好塩基球の表面に高レベルで存在する受容体や,樹状細胞を含むその他いくつかの造血細胞の表面に低レベルながら存在する受容体に対して,高い親和性で結合する。肥満細胞または好塩基球の表面に結合した2つのIgE分子が抗原により架橋されると,細胞が脱顆粒して,炎症反応を引き起こす化学伝達物質が放出される。IgE濃度は,アトピー性疾患(例,アレルギー性または外因性喘息,花粉症,アトピー性皮膚炎)と寄生虫感染症で上昇する。

サイトカイン

サイトカインは免疫細胞およびその他の細胞によって分泌されるポリペプチドで,これらの細胞が特異抗原,内毒素などの病原体関連分子,または他のサイトカインと相互作用した際に分泌される。主なカテゴリーには以下のものがある:

  • ケモカイン

  • 造血性コロニー刺激因子

  • インターロイキン(IL)

  • インターフェロン(IFN-α,IFN-β,IFN-γ)

  • 形質転換増殖因子(TGF)

  • 腫瘍壊死因子(TNF-α,リンホトキシン-α,リンホトキシン-β)

リンパ球の特異抗原との相互作用がサイトカイン分泌の引き金となるが,サイトカインそのものは抗原特異的ではない;そのため,サイトカインは自然免疫と獲得免疫を橋渡しすることで,普遍的に炎症反応または免疫応答の大きさに影響を及ぼす。サイトカインは,連続的,相乗的,または拮抗的に作用する。サイトカインは,オートクリン方式で作用することも,パラクリン方式で作用することもある。

サイトカインは,細胞表面受容体を介してそのシグナルを伝える。例えば,IL-2受容体には,αβ,およびγの3本の鎖がある。この受容体の構成によって,IL-2に対する親和性は以下のようになる:

  • 3鎖全てが発現すれば親和性は高い

  • β鎖およびγ鎖のみが発現すれば親和性は中程度

  • α鎖のみの発現では親和性は低い

γ鎖の変異または欠失は,X連鎖重症複合免疫不全症の基本原因である。

ケモカイン

ケモカインは,白血球の走化性および遊走を誘導する。4つの種類(C,CC,CXC,CX3C)があり,N末端システイン残基の数および間隔によって定義される。ケモカイン受容体(メモリーT細胞,単球/マクロファージ,および樹状細胞上のCCR5;静止期T細胞上のCXCR4)は,HIVが細胞内に侵入する際に補助受容体として働く。

コロニー刺激因子

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は,内皮細胞および線維芽細胞によって産生される。

G-CSFの主な作用は以下の通りである:

  • 好中球の前駆細胞の増殖を促す

G-CSFの臨床的用途としては以下のものがある:

  • 化学療法,放射線療法,または両方を施行した後の好中球減少を回復させる

顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は,内皮細胞,線維芽細胞,マクロファージ,肥満細胞,およびヘルパーT(Th)細胞によって産生される。

GM-CSFの主な作用は以下の通りである:

  • 単球,好中球,好酸球,および好塩基球の前駆細胞の増殖を促す

  • マクロファージを活性化する

GM-CSFの臨床的用途としては以下のものがある:

  • 化学療法,放射線療法,または両方を施行した後の好中球減少を回復させる

マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)は,内皮細胞,上皮細胞,および線維芽細胞によって産生される。

M-CSFの主な作用は以下の通りである:

  • 単球の前駆細胞の増殖を促す

M-CSFの臨床的用途としては以下のものがある:

  • 組織修復を促す治療的効果を有する可能性がある

幹細胞因子(SCF)は,骨髄間質細胞によって産生される。

SCFの主な作用は以下の通りである:

  • 幹細胞の分裂を促す

SCFの臨床的用途としては以下のものがある:

  • 組織修復を促す治療的効果を有する可能性がある

インターフェロン(IFN)

IFN-αは,白血球によって産生される。

IFN-αの主な作用は以下の通りである:

  • ウイルス複製を阻害する

  • 主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスIの発現を増強する

IFN-αの臨床的用途としては以下のものがある:

IFN-βは,線維芽細胞によって産生される。

IFN-βの主な作用は以下の通りである:

  • ウイルス複製を阻害する

  • MHCクラスIの発現を増強する

IFN-βの臨床的用途としては以下のものがある:

  • 再発性の多発性硬化症における急性増悪(flare-up)の頻度を低減させる

IFN-γは,ナチュラルキラー(NK)細胞,1型細胞傷害性T(Tc1)細胞,および1型ヘルパーT(Th1)細胞によって産生される。

IFN-γの主な作用は以下の通りである:

  • ウイルス複製を阻害する

  • MHCクラスIおよびクラスIIの発現を増強する

  • マクロファージを活性化する

  • IL-4のいくつかの作用に拮抗する

  • Th2細胞の増殖を阻害する

IFN-γの臨床的用途としては以下のものがある:

  • 慢性肉芽腫症における感染症を制御する

  • 重度の悪性大理石骨病の進行を遅らせる

インターロイキン(IL)

インターロイキン(IL-1~IL-38)は多様な細胞によって集合的に産生され,細胞の発生および免疫応答の調節において多くの作用を有する。特によく解明され,臨床的意義が研究されているインターロイキンには以下のものがある:

IL-1(αおよびβ)は,B細胞,樹状細胞,内皮細胞,マクロファージ,単球,およびナチュラルキラー(NK)細胞によって産生される。

IL-1の主な作用は以下の通りである:

  • サイトカイン(例,IL-2およびその受容体)の産生を増強することによってT細胞の活性化を共刺激する

  • B細胞の増殖および成熟を促す

  • NK細胞の細胞傷害活性を亢進させる

  • マクロファージによるIL-1,IL-6,IL-8,TNF,GM-CSF,およびプロスタグランジンE2の産生を誘導する

  • ケモカイン,ICAM-1,および内皮細胞上のVCAM-1を誘導することによって炎症を促進する

  • 睡眠,食欲不振,組織因子の放出,急性期反応物質,および破骨細胞による骨吸収を誘導する

  • 内因性発熱作用

IL-1の臨床的意義としては以下のものがある:

IL-2は,Th1細胞によって産生される。

IL-2の主な作用は以下の通りである:

  • 活性化T細胞および活性化B細胞の増殖を誘導する

  • NK細胞の細胞傷害活性,ならびに単球およびマクロファージによる腫瘍細胞および細菌の殺傷作用を亢進させる

IL-2の臨床的意義としては以下のものがある:

  • IL-2は,転移性腎細胞癌および転移性黒色腫の治療に用いられる

  • 抗IL-2受容体モノクローナル抗体は,腎臓の急性拒絶反応の予防を補助する

IL-3は,T細胞,NK細胞,および肥満細胞によって産生される。

IL-3の主な作用は以下の通りである:

  • 造血前駆細胞の増殖および分化を促す

  • 肥満細胞の増殖を促す

IL-3の臨床的意義としては以下のものがある:

  • モノクローナル抗体またはCAR-T細胞を用いてIL-3受容体α鎖を標的とすることで,再発・難治性急性骨髄性白血病の患者に有益となりうる

IL-4は,肥満細胞,NK細胞,ナチュラルキラーT(NKT)細胞,γδT細胞,Tc2細胞,およびTh2細胞によって産生される。

IL-4の主な作用は以下の通りである:

  • Th2細胞を誘導する

  • 活性化B細胞,活性化T細胞,および活性化肥満細胞の増殖を促す

  • B細胞上およびマクロファージ上のMHCクラスII分子とB細胞上のCD23の発現を亢進させる

  • IL-12の産生を抑制させ,それによりTh1細胞の分化を阻害する

  • マクロファージの食作用を増強する

  • IgG1およびIgEへの切替えを誘導する

IL-4の臨床的意義としては以下のものがある:

  • IL-4は,(IL-13とともに)アトピー性アレルギーにおけるIgEの産生に関与する

  • 抗IL-4受容体モノクローナル抗体は,中等度から重度のアトピー性皮膚炎の患者の治療に用いられる

IL-5は,肥満細胞およびTh2細胞によって産生される。

IL-5の主な作用は以下の通りである:

  • 好酸球および活性化B細胞の増殖を誘導する

  • IgAへの切替えを誘導する

IL-5の臨床的意義としては以下のものがある:

  • 抗IL-5モノクローナル抗体は,重度の好酸球性喘息および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症患者の治療に用いられる

  • 抗IL-5受容体モノクローナル抗体は,重度の好酸球性喘息患者の治療薬として効力がある

IL-6は,樹状細胞,線維芽細胞,マクロファージ,単球,およびTh2細胞によって産生される。

IL-6の主な作用は以下の通りである:

  • B細胞の形質細胞への分化および骨髄幹細胞の分化を誘導する

  • 急性期反応物質の合成を誘導する

  • T細胞の増殖を促す

  • Tc細胞の分化を誘導する

  • 発熱作用

IL-6の臨床的意義としては以下のものがある:

  • 抗IL-6モノクローナル抗体は,HIVおよびヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)陰性の多中心性キャッスルマン病患者の治療に用いられる。

  • 抗IL-6受容体モノクローナル抗体は,TNF阻害薬に十分に反応しない関節リウマチの治療のほか,若年性特発性関節炎巨細胞性動脈炎,およびキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法後の重度のサイトカイン放出症候群の治療に用いられる。デキサメタゾンとの併用で,低酸素および全身性炎症を起こしたCOVID-19患者の治療

IL-7は,骨髄および胸腺の間質細胞によって産生される。

IL-7の主な作用は以下の通りである:

  • リンパ系幹細胞から,T細胞およびB細胞の前駆細胞への分化を誘導する

  • 成熟T細胞を活性化する

IL-7の臨床的意義としては以下のものがある:

  • ウイルス感染症,がん,および敗血症によるリンパ球減少の治療において免疫賦活化の可能性がある

IL-8(ケモカイン)は,内皮細胞,マクロファージ,および単球によって産生される。

IL-8の主な作用は以下の通りである:

  • 好中球の走化性および活性化を媒介する

IL-8の臨床的意義としては以下のものがある:

  • IL-8拮抗薬は,慢性炎症性疾患の治療に有用となる可能性がある

IL-9は,Th細胞によって産生される。

IL-9の主な作用は以下の通りである:

  • 胸腺細胞の増殖を誘導する

  • 肥満細胞の増殖を促す

  • IL-4と相乗的に作用し,IgG1およびIgEへの切替えを誘導する

喘息に対する抗IL-9モノクローナル抗体の臨床試験は,概して効力の実証に成功していない。

IL-10は,B細胞,マクロファージ,単球,Tc細胞,Th2細胞,および制御性T細胞によって産生される。

IL-10の主な作用は以下の通りである:

  • Th1細胞によるIL-2分泌を抑制する

  • 単球,マクロファージ,および樹状細胞によるMHCクラスII分子およびサイトカイン(例,IL-12)の産生を抑制し,それによりTh1細胞の分化を阻害する

  • T細胞の増殖を阻害する

  • B細胞の分化を促す

IL-10の臨床的意義としては以下のものがある:

  • アレルギーおよび自己免疫疾患の原因となる免疫応答を抑制する可能性がある

IL-11は,骨髄間質細胞によって産生される。

IL-11の主な作用は以下の通りである:

  • プロB細胞および巨核球の分化を促進する

  • 急性期反応物質の合成を誘導する

IL-11の臨床的意義としては以下のものがある:

IL-12は,B細胞,樹状細胞,マクロファージ,および単球によって産生される。

IL-12の主な作用は以下の通りである:

  • Th1細胞の分化に必須である

  • Th1細胞,CD8陽性T細胞,γδT細胞,およびNK細胞の増殖ならびにそれらの細胞からのIFN-γ産生を誘導する

  • NK細胞およびCD8陽性T細胞の細胞傷害活性を亢進させる

IL-12の臨床的意義としては以下のものがある:

IL-13は,肥満細胞およびTh2細胞によって産生される。

IL-13の主な作用は以下の通りである:

  • マクロファージの活性化およびマクロファージによるサイトカイン分泌を抑制する

  • B細胞の増殖を共活性化する

  • B細胞上および単球上のMHCクラスII分子およびCD23の発現を亢進させる

  • IgG1およびIgEへの切替えを誘導する

  • 内皮細胞上の血管細胞接着分子(VCAM-1)を誘導する

IL-13の臨床的意義としては以下のものがある:

  • IL-13は,(IL-4とともに)アトピー性アレルギーにおけるIgEの産生に関与する

IL-15は,B細胞,樹状細胞,マクロファージ,単球,NK細胞,およびT細胞によって産生される。

IL-15の主な作用は以下の通りである:

  • T細胞,NK細胞,および活性化B細胞の増殖を誘導する

  • NK細胞およびCD8陽性T細胞のサイトカイン産生および細胞傷害性を誘導する

  • T細胞に走化性を与える

  • 腸上皮の増殖を促す

IL-15の臨床的意義としては以下のものがある:

  • IL-15はがん治療において免疫賦活薬として利用できる可能性がある

IL-16はヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞によって産生される

IL-16の主な作用は以下の通りである:

  • CD4陽性T細胞,単球,および好酸球に走化性を与える

  • MHCクラスIIを誘導する

IL-16の臨床的意義としては以下のものがある:

  • HIV感染患者においてCD4陽性T細胞の再構築を促進する可能性がある

  • IL-16拮抗薬はアレルギー疾患および自己免疫疾患において有用性がある可能性がある

IL-17(AおよびF)は,Th17細胞,γδT細胞,NKT細胞,およびマクロファージによって産生される。

IL-17の主な作用は以下の通りである:

  • 炎症促進作用

  • サイトカイン(例,TNF,IL-1β,IL-6,IL-8,G-CSF)の産生を促す

IL-17の臨床的意義としては以下のものがある:

IL-18は,単球,マクロファージ,および樹状細胞によって産生される。

IL-18の主な作用は以下の通りである:

  • T細胞によるIFN-γ産生を誘導する

  • NK細胞の細胞傷害活性を亢進させる

IL-18は,がんにおける免疫療法薬として研究されているが,効力は確認されていない。

IL-21は,NKT細胞およびTh細胞によって産生される。

IL-21の主な作用は以下の通りである:

  • CD40の架橋結合後にB細胞の増殖を促す

  • NK細胞を刺激する

  • T細胞を共刺激する

  • 骨髄前駆細胞の増殖を促す

IL-21の臨床的意義としては以下のものがある:

  • 臨床試験では,がんにおける細胞傷害性T細胞およびNK細胞の活性化

  • IL-21拮抗薬については自己免疫疾患の治療に有用な可能性

IL-22は,NK細胞,Th17細胞,およびγδT細胞によって産生される。

IL-22の主な作用は以下の通りである:

  • 炎症促進作用

  • 急性期反応物質の合成を誘導する

IL-22の臨床的意義としては以下のものがある:

  • IL-22拮抗薬については自己免疫疾患の治療に有用な可能性

IL-23は,樹状細胞およびマクロファージによって産生される。

IL-23の主な作用は以下の通りである:

  • Th細胞の増殖を誘導する

IL-23の臨床的意義としては以下のものがある:

IL-24は,B細胞,マクロファージ,単球,およびT細胞によって産生される。

IL-24の主な作用は以下の通りである:

  • 腫瘍細胞の増殖を抑制する

  • 腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす

IL-24の臨床的意義としては以下のものがある:

  • がん治療に有用な可能性

IL-27は,樹状細胞,単球,およびマクロファージによって産生される。

IL-27の主な作用は以下の通りである:

  • Th1細胞を誘導する

IL-27の臨床的意義としては以下のものがある:

  • がん治療に有用な可能性

IL-32は,NK細胞およびT細胞によって産生される。

IL-32の主な作用は以下の通りである:

  • 炎症促進作用

  • T細胞の活性化誘導細胞死に関与する

IL-32の臨床的意義としては以下のものがある:

  • 自己免疫疾患の治療に有用な可能性

IL-33は,内皮細胞,間質細胞,および樹状細胞によって産生される。

IL-33の主な作用は以下の通りである:

  • Th2サイトカインを誘導する

  • 好酸球増多を促す

IL-33の臨床的意義としては以下のものがある:

  • IL-33拮抗薬については喘息の治療に有用な可能性

IL-35は,制御性T細胞,マクロファージ,および樹状細胞によって産生される。

IL-35の主な作用は以下の通りである:

  • 制御性T細胞およびB細胞を誘導してTh17細胞を阻害するなどの機序によって,炎症を抑制する

IL-35の臨床的意義としては以下のものがある:

  • アレルギーおよび自己免疫疾患の原因となる免疫応答を抑制する可能性がある

IL-37は,マクロファージおよび炎症組織によって産生される。

IL-37の主な作用は以下の通りである:

  • 抗炎症

  • IL-18受容体に拮抗する可能性がある

IL-37の臨床的意義としては以下のものがある:

  • 炎症を阻止する可能性がある

形質転換増殖因子(TGF)

TGFにはα型とβ型があり,TGF-βには3つのサブタイプがある。

TGF-αは,上皮細胞,単球,マクロファージ,脳細胞,および角化細胞によって産生される。

TGF-αの主な作用は以下の通りである:

  • 細胞の増殖および分化を促す

  • 粘液産生を調節する

  • 胃酸分泌を抑制する

TGF-αの臨床的意義としては以下のものがある:

  • TGF-α拮抗薬はメネトリエ病の症状を軽減する

TGF-βは,B細胞,マクロファージ,肥満細胞,およびTh3細胞によって産生される。

TGF-βファミリーの主な作用は以下の通りである:

  • 炎症促進作用がある(例,単球およびマクロファージの化学的誘引による)が,抗炎症作用(例,リンパ球増殖を抑制することによる)もある

  • IgAへの切替えを誘導する

  • 組織修復および線維化を促す

TGF-βの臨床的意義としては以下のものがある:

  • がんを対象として,拮抗薬(例,アンチセンスオリゴヌクレオチド)の試験が実施されている。

腫瘍壊死因子(TNF)

TNF-α(カケクチン)は,B細胞,樹状細胞,マクロファージ,肥満細胞,単球,NK細胞,およびTh細胞によって産生される。

TNF-αの主な作用は以下の通りである:

  • 腫瘍細胞を傷害する

  • 悪液質をもたらす

  • いくつかのサイトカイン(例,IL-1,GM-CSF,IFN-γ)の分泌を誘導する

  • 内皮細胞上のE-セレクチンを誘導する

  • マクロファージを活性化する

  • 抗ウイルス活性

TNF-αの臨床的意義としては以下のものがある:

TNF-β(リンホトキシン)は,Tc細胞およびTh1細胞によって産生される。

TNF-βの主な作用は以下の通りである:

  • 腫瘍細胞を傷害する

  • 抗ウイルス活性

  • 好中球およびマクロファージの食作用を亢進させる

  • リンパ器官の発達に関与する

TNF-βの臨床的意義としては以下のものがある:

  • TNF-β阻害薬については,確立されたTNF-α阻害薬と同様の作用を示すが,優位性を示すには至っていない

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