ピロリン酸カルシウム関節炎

(ピロリン酸カルシウム結晶沈着症;急性ピロリン酸カルシウム関節炎;軟骨石灰化症;pyrophosphate arthropathy;偽痛風)

執筆者:Sarah F. Keller, MD, MA, Cleveland Clinic, Department of Rheumatic and Immunologic Diseases
Reviewed ByBrian F. Mandell, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2022年 7月 | 修正済み 2022年 9月
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ピロリン酸カルシウム関節炎(CPP関節炎)では,関節内および/または関節外にピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)結晶の沈着がみられる。臨床像は多彩であり,最小限の症状のみのこともあれば,間欠的な急性関節炎の発作(偽痛風や急性CPP関節炎とも呼ばれる)と,しばしば重度となる退行性の関節症がみられることもある。診断には滑液中でのCPPD結晶の同定が必要である。偽痛風発作の治療は,コルチコステロイドの関節内注射,またはグルココルチコイド,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),もしくはコルヒチンの経口投与による。

結晶誘発性関節炎の概要も参照のこと。)

CPPD結晶の沈着(軟骨石灰化,pyrophosphate arthropathy)は,症状の有無にかかわらず,加齢に伴いよくみられるようになる。

無症候性の軟骨石灰化は,膝関節,中手指節関節,股関節,手関節,椎間板線維輪,恥骨結合,および脊椎によくみられる。発生率は男性と女性でほぼ同じである。単純X線やその他の画像検査で軟骨石灰化が偶然発見されることは,CPP関節炎に対する治療の必要性を意味するものではない。

ピロリン酸カルシウム関節炎の病因

CPP関節炎の原因は不明である。CPP関節炎にはしばしば他の病態との関連がみられ,具体的には外傷(手術を含む),低マグネシウム血症副甲状腺機能亢進症痛風ヘモクロマトーシス低ホスファターゼ症ギッテルマン症候群X連鎖性低リン血症性くる病家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症,高齢などがある。これらとの関連から,ピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)結晶の沈着は罹患組織における変性または代謝性変化が原因である可能性が示唆される。

一部の症例は家族性であり,通常は常染色体顕性(優性)パターンで遺伝し,40歳までに完全に浸透する。

アンキリン(ANK)タンパク質は,細胞外で起きるピロリン酸の過剰産生における中枢因子であり,これがCPPD結晶の形成を促進する。ANKタンパク質は輸送体の一種で,細胞内またはマイクロベシクルのピロリン酸をCPPDが結晶化する細胞外の領域へと輸送する。

ピロリン酸カルシウム関節炎の症状と徴候

急性,亜急性,または慢性の関節炎が通常は膝関節,手関節,その他の末梢の大関節に生じるが,そのため,ピロリン酸カルシウム結晶沈着症は他の多くの病型の関節炎に類似する可能性がある。急性発作は痛風と類似するが,重症度がより多様で,より遷延する傾向があり,しばしば治療がより困難となる。関節リウマチまたは変形性関節症と同様に,発作と発作の間にCPP関節炎の症状がみられない場合や,複数の関節に軽度の症状が持続的にみられる場合がある。これらのパターンは生涯続く傾向がある。

Crowned dens症候群(X線上で第2頸椎の歯突起周辺に「王冠」状の所見がみられる)は,CPP沈着による急性の体軸性関節炎で,頸部に炎症による著明な疼痛とこわばりが生じることがある。リウマチ性多発筋痛症,巨細胞性動脈炎,血清反応陰性脊椎関節炎,頸椎骨髄炎,髄膜炎などと誤診される可能性がある。

ピロリン酸カルシウム関節炎の診断

  • 関節液検査

  • 結晶の顕微鏡的な同定

関節炎の高齢患者,特に繰り返す関節炎の既往がある患者では,CPP関節炎を疑うべきである。

CPP関節炎の診断は,偏光顕微鏡検査で複屈折性を示さないか弱い正の複屈折性を示す,菱形または桿状の結晶を滑液中に同定することで確定する。急性発作時の滑液には,典型的な炎症の所見がみられるため,感染性関節炎と痛風(滑液に炎症所見がみられる他の一般的な原因である)の同時発生も除外する必要がある。感染性関節炎は,グラム染色および培養の所見に基づいて除外する。痛風は,炎症を起こした関節から採取した液体中に尿酸結晶が検出されないことをもって除外するのが最良である。注意すべき点として,痛風とCPP関節炎が併発することもある。分析用の滑液を採取できない場合はX線または超音波検査の適応となり,関節軟骨(特に線維軟骨)に複数の線形または点状のカルシウム沈着所見を認めれば,診断の裏付けになるものの,痛風および感染症は除外できない。

ピロリン酸カルシウム関節炎の予後

急性CPP関節炎における個々の発作の予後は通常,極めて良好である。しかしながら,慢性関節炎が起こる可能性があり,神経病性関節症(シャルコー関節)に似た重度かつ破壊性の関節症がときに発生する。痛風とは異なり,CPPD結晶の負荷を効果的に排除または軽減する治療法がないため,慢性CPP関節炎の管理は容易ではない。CPPDの再燃が頻回にみられる患者,特に若年患者では,基礎にある誘因および疾患に対する評価を行うべきである。

ピロリン酸カルシウム関節炎の治療

  • コルチコステロイドの関節内注射

  • 経口コルチコステロイド(例,プレドニゾン,メチルプレドニゾロン)

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)

  • コルヒチン

  • インターロイキン1(IL-1)阻害薬(例,アナキンラ)

急性CPP関節炎の治療は急性痛風のそれと同様である。急性の関節液貯留の症状は,関節液のドレナージと微晶質のコルチコステロイドエステル懸濁液の関節裂隙への投与により軽減する(例,膝関節内に40mgの酢酸プレドニゾロンまたはテブト酸プレドニゾロン)。

インドメタシン,ナプロキセン,または他のNSAIDを抗炎症用量で投与すると,しばしば急性発作を止めることができる。コルヒチンによる急性発作の治療は,痛風の場合と同じである。コルヒチン0.6mgを1日1回または1日2回経口投与すると,繰り返す急性発作の頻度が減少することがある。経口コルチコステロイドは急性CPP関節炎の発作の治療に効果的であり,経口NSAIDおよびコルヒチンの禁忌がある患者で特に有用となる。しかしながら,急性発作が消退しない場合には,より高用量でより長期間の投与が必要になることがある。アナキンラなどのインターロイキン1阻害薬も効果的となる可能性がある。

要点

  • 無症候性の軟骨石灰化が加齢とともにより多くみられるようになるが(特に膝関節,股関節,手関節,椎間板線維輪,および恥骨結合),治療の必要はない。

  • CPP関節炎が膝関節および末梢の大関節を侵すことがあり,他の種類の関節炎(例,痛風,関節リウマチ,変形性関節症)に類似することがある。

  • 滑液に複屈折性を示さないまたは弱い正の複屈折性の特徴的な菱形または桿状の結晶がないか調べ,関節の感染症を除外する。

  • 急性症状については,コルチコステロイドの関節内注射,経口NSAID,コルヒチン,または経口コルチコステロイドにより治療するが,アナキンラも効果を示す可能性がある。

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