水とナトリウムの平衡

執筆者:James L. Lewis III, MD, Brookwood Baptist Health and Saint Vincent’s Ascension Health, Birmingham
Reviewed ByGlenn D. Braunstein, MD, Cedars-Sinai Medical Center
レビュー/改訂 修正済み 2024年 5月
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体液量および電解質濃度は,食事摂取量,代謝活動,環境ストレスの大幅な変化にもかかわらず,正常ではごく狭い範囲内に維持される。体液のホメオスタシスは主に腎臓によって維持される。

男性では体重の約60%,女性では体重の約50%が水分で構成されている(肥満の人での約50%から,BMIが正常以下の人での70%まで幅がある)。出生時および小児期早期では,体重に占める水分量の割合が高くなる(70%)。体内総水分量(TBW)のほぼ3分の2が細胞内にあり(細胞内液,ICF),残り3分の1は細胞外にある(細胞外液,ECF)。正常では細胞外液の約25%が血管内にあり,残る75%は間質液である(平均的な70kgの男性の体液コンパートメントの図を参照)。

平均的な70kgの男性の体液コンパートメント

体内総水分量 = 70kg × 0.60 = 42L(280mOsm/kg[280mmol/kg])。

体内総水分量の計算ツール
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体内の様々なコンパートメントにある体液の電解質組成は一様ではない。主な細胞内陽イオンはカリウムである。主な細胞外陽イオンはナトリウムである。細胞内および細胞外の陽イオンの濃度は以下の通りである:

  • 細胞内カリウム濃度は平均140mEq/L(140mmol/L)である。

  • 細胞外カリウム濃度は3.5~5mEq/L(3.5~5mmol/L)である。

  • 細胞内ナトリウム濃度は12mEq/L(12mmol/L)である。

  • 細胞外ナトリウム濃度は平均140mEq/L(140mmol/L)である。

浸透圧の力(osmotic force)

水分中の全溶質の濃度を容量オスモル濃度(溶液1L中の溶質の量)といい,これは体液中では重量オスモル濃度(溶液1kg中の溶質の量)に近似する。水は,低濃度の溶質領域から高濃度の溶質領域へと自由に細胞膜を通過する。したがって,浸透圧は様々な体液コンパートメントをまたいで平衡化する傾向を示し,これは溶質ではなく主として水が移動することで生じる。しかしながら,尿素など一部の溶質も細胞膜を横切って自由に拡散し,この場合は水の移動にほとんど,または全く影響を及ぼさない(浸透圧活性がほとんど,または全くない)。いくつかの電解質などの他の溶質は,主に1つの体液コンパートメントにとどまり,最大の浸透圧活性を有する。例えば,ナトリウムは細胞外コンパートメントにとどまり,カリウムは細胞内にとどまる。体液の浸透圧は正常では275~290mOsm/kg(275~290mmol/kg)であり,検査室で直接測定することも,式を用いて推定することもできる。

血漿浸透圧の推定値を従来単位(mOsm/kg) で計算する。

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ここでは,血清ナトリウム濃度はmEq/L,ブドウ糖および血中尿素窒素(BUN)はmg/dLである。

血漿浸透圧の推定値はSI単位で計算することもできる。equation

この式の値は全てmmol/Lで表される。

血漿浸透圧の主要決定因子はナトリウムである。計算された浸透圧の見かけ上の変化は,重度の脂質異常症または高タンパク血症の患者で起こる可能性のあるナトリウムの測定誤差に起因する場合があるが,これは分析用に採取した血清中で脂質またはタンパク質が容積を占めることによるもので,血清ナトリウム濃度自体は影響を受けていない。イオン選択性電極を用いた直接法で血清電解質を測定することによってこの問題は回避される。

測定された浸透圧が予測浸透圧を10mOsm/kg(10mmol/kg)以上上回っている場合,浸透圧ギャップが存在する。これは,血漿中に存在するが測定されていない浸透圧物質によるものである。このような物質として最も多いのはアルコール(エタノール,メタノール,イソプロパノール,エチレングリコール),マンニトール,およびグリシンである。

張度は,液体の有効浸透圧である。2つのコンパートメント内の体液の張度差により,2つのコンパートメント間に浸透圧の力が生じ,張度の低いコンパートメントから高いコンパートメントへの水の移動が促進される。ホメオスタシスでは,体液の浸透圧活性は身体の主要なコンパートメント間で均衡が保たれているため,これらのコンパートメント間では正味の体液移動は比較的少ない。浸透圧の力により,これらのコンパートメントへの水分の流入または流出が生じうる。例えば,血漿タンパク質は血清ナトリウムとともに血漿内に水分を引き込む浸透圧効果を多少有するが,この浸透圧効果は正常では血漿から水分を押し出す血管の静水圧によって相殺されている。

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水の摂取と排泄

飲水量は口渇によって調節される。口渇は,前外側視床下部の受容体が血漿浸透圧上昇または血管内容量の減少に応答することによって誘発される。

腎臓による水分排泄は,主にバソプレシン(抗利尿ホルモン[ADH])によって調節される。バソプレシンは下垂体後葉から放出され,遠位ネフロンでの水の再吸収を増加させる。バソプレシンの放出は以下のいずれかにより刺激される:

  • 血漿浸透圧の上昇

  • 血液量の減少

  • 血圧の低下

  • ストレス

口渇により水分摂取量の増加が誘導されると,血漿浸透圧が低下し,ホメオスタシスが維持される。血漿浸透圧の低下によって,次に口渇感が減少し,バソプレシンの分泌が阻害され,これにより腎臓で希釈尿が再度生成される。

1日の平均飲水量は約2.5Lである。健康成人では,尿および他の部位からの喪失を補充するために必要な量は,約1~1.5L/日である。しかし短期的には,腎機能が正常な平均的な若年成人であれば,毎日わずか200mLを飲水すれば細胞代謝によって発生する窒素老廃物およびその他の老廃物を排出できる。腎濃縮能がいくらかでも失われている場合は必要量が増す。腎濃縮能の低下は以下でみられる:

それ以外の回避できない水分喪失の大半は肺および皮膚からの不感蒸泄であり,1kg当たり平均0.4~0.5mL/時,すなわち70kgの成人で約650~850mL/日の水分を喪失する;発熱がある場合は,代謝率の上昇により,さらに水分が失われる。消化管からの喪失は,著明な嘔吐,下痢,またはその両方が生じていない限り通常は無視できる。暑さへの曝露または過度の運動時は,発汗からの喪失が顕著となりうる。

若年成人の正常な腎臓の希釈能は,最大で1日25Lもの飲水を可能とする;それ以上の量では,血漿浸透圧が急速に低下する。

脱水は,水分摂取(および細胞呼吸により産生される少量の水分)が水分喪失(排泄および不感蒸泄)を補充するのに十分でない場合に生じる(体液量減少を参照)。

まれに,下垂体後葉の腫瘍もしくは下垂体後葉に浸潤する疾患,または脳への外傷によってバソプレシンの分泌が障害されている場合に,視床下部機能障害により口渇を感じられないことがある。特異的原因を同定できないことも多い。(バソプレシン分泌低下症も参照のこと。)

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