経腸栄養

執筆者:Kris M. Mogensen, MS, RD-AP, Department of Nutrition, Brigham and Women's Hospital;
Malcolm K. Robinson, MD, Harvard Medical School
Reviewed ByGlenn D. Braunstein, MD, Cedars-Sinai Medical Center
レビュー/改訂 修正済み 2024年 9月
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消化管は機能しているものの,経口摂食ができないか,またはしたがらないために経口で十分な栄養素を摂取できない患者は,経腸栄養の適応となる(1)。

静脈栄養と比較して,経腸栄養には以下の長所がある:

  • 消化管の構造と機能がよりよく維持される

  • 安価

  • おそらく合併症(特に感染症)がより少ない

経腸栄養の具体的な適応としては以下のものがある:

その他の適応としては,手術前に栄養障害がみられる場合の栄養状態の最適化,広範な腸管切除後の腸管順応過程(安定後),ペプチドベースの経腸栄養剤を必要とする吸収不良疾患(例,クローン病)などがある。

総論の参考文献

  1. 1.Bechtold ML, Brown PM, Escuro A, et al.When is enteral nutrition indicated?. JPEN J Parenter Enteral Nutr.2022;46(7):1470-1496.doi:10.1002/jpen.2364

経腸チューブの種類と留置

経管栄養を必要とする期間が4~6週間以内であれば,シリコンまたはポリウレタン製の小口径で柔らかい経鼻胃管または経鼻腸管(例,経鼻十二指腸管,経鼻空腸管)が通常は用いられる。

鼻腔の損傷または変形によって鼻腔への挿入が困難である場合,または経管栄養が4~6週間を超えて必要とされる場合は,胃瘻チューブまたは空腸瘻チューブを留置すべきである。

胃瘻チューブの禁忌のある患者(例,胃切除,空腸近位部の腸閉塞)には,空腸瘻チューブが有用である。しかし,空腸瘻チューブは,しばしば考えられているように,胃瘻チューブより気管気管支内への誤嚥のリスクが低いわけではない。空腸瘻チューブは抜去しやすく,空腸アクセスが必要な患者(例,食道切除または胃切除後)に使用すべきである。

機械的人工換気下にある患者には,経口胃管または経口腸管を留置することがある。

パール&ピットフォール

  • 空腸瘻チューブを用いた場合の気管気管支内への誤嚥のリスクは,胃瘻チューブと同程度に高い。

意識清明な患者には,経鼻胃管または経鼻腸管をベッドサイドで盲目的に留置することがある;正しく留置されているかどうかをX線で確認する。別の方法として,チューブの留置を内視鏡的,外科的,またはIVR(interventional radiology)を用いて行うことがある。方法の選択はしばしば医師の能力および患者の希望に基づく;ただし,内視鏡下およびX線透視下での留置が利用できない,技術的に不可能,または安全でない場合には(例,腸管が上に重なっているため),外科的に留置する。開腹下または腹腔鏡下手術を使用できる。

経鼻胃管の挿入も参照のこと。)

経腸栄養剤

経腸栄養の液体栄養剤には,多種類型,部分的に加水分解されたもの,または完全に加水分解されたものがある。特定の疾患用の栄養剤が利用可能である。患者の個々のニーズに合わせて栄養を調整するためのモジュール製品が利用可能である。

多種類型の栄養剤は,タンパク質,炭水化物,および脂肪をそのまま含んでいるもので,食物繊維を加えたものもある。このような製品は,完全なバランス食となるように,また微量栄養素の需要を満たすように設計されている。最も一般的に用いられている栄養剤である。市販されている製品のほとんどは乳糖を含まないものである;ミルクを含む製品には乳糖を含まないミルクが一般に用いられており,経腸チューブではなく経口摂取を意図したものである。ミキサーにかけた食物から作られた栄養剤も市販されており,家庭で調製することもできる。

部分的または完全に加水分解された栄養剤は,小さなペプチド(部分的に加水分解されたもの)または遊離アミノ酸(完全に加水分解されたもの,ときに成分栄養剤と呼ばれる)に分解されたタンパク質を含有する。このような栄養剤は脂肪分が少なく,中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)としての脂肪の割合が高い。また,このような栄養剤は吸収不良を引き起こす疾患のある患者用に設計されている。部分的または完全に加水分解された栄養剤は購入可能である。

特別な調製の栄養剤には,部分的または完全に加水分解されたものだけではなく,腎疾患や糖尿病などの特定の疾患用に設計されたものも含まれる。その他の疾患特異的な栄養剤としては,創傷治癒を促進するものや,外傷または代謝ストレスに対する免疫応答を調節するものなどがある。特別な調整の栄養剤の中には,臨床上の重要なニーズを満たすものもある一方で(例えば,カリウム,リン,および水分制限を必要とする腎不全患者のためのもの),臨床転帰によって費用を正当化できるだけの強力なエビデンスがないものもある。特別な調製の栄養剤は購入可能である。

モジュール製品には,単一またはときに2種類の栄養素が含まれている。タンパク質需要の高い患者において総タンパク質摂取量を増加させるために,市販の多種類型栄養剤に加えてタンパク質のモジュール製品を使用できる。タンパク質を追加せずにエネルギーを追加する必要がある患者には炭水化物と脂肪のみが含まれているような複合製品を使用することがある;食物に混ぜることが多いが,経腸栄養剤の補助として使用することもある。食物繊維のモジュール製品は,下痢または便秘の管理のために追加の繊維が必要な患者に対して,可溶性繊維または可溶性繊維と不溶性繊維の混合物として入手可能である。モジュール製品は購入可能である。

経腸栄養の投与

経腸栄養の投与は,栄養チューブの種類と投与への耐容性に依存する。

経鼻胃管または胃瘻チューブによる経管栄養は,1日数回のボーラス投与として行うことができる。ボーラス投与はより生理的であり,各ボーラスの炭水化物含有量に合わせたインスリン投与が可能であるため,安定している糖尿病患者に好まれる可能性がある。栄養剤の1日当たりの総量を4~6回に分け,シリンジで経管注入するか,高い位置に上げたバッグから重力により注入する。誤嚥性肺炎の発生を最小限に抑え,重力で胃排出が促進されるようにするため,患者には経管栄養時とその後の1~2時間は30~45°の座位をとらせるべきである。悪心または嘔吐のために患者がボーラス投与に耐えられない場合(および経腸栄養剤の変更で改善しない場合)は,持続栄養投与の適応となりうる。

経鼻十二指腸,経鼻空腸,または空腸瘻チューブによる経管栄養には,経腸栄養ポンプが必要である。小腸には大量の栄養剤を短時間で投与することに耐えられる容量がないため,ボーラス投与は適切ではない。通常は,栄養剤の投与を持続注入で開始するが,その後は患者が日常生活動作のための時間を確保できるように,より短時間で速度を上げて注入することがある(すなわち,間欠投与)。ボーラス投与と同様に,誤嚥性肺炎のリスクを低減するため,経管栄養時には患者を30~45度の座位にすべきである。

ポンプによる投与は,20~30mL/時で開始した後,4~8時間毎に10~20mL/時ずつ,目標量を得るために必要な目標速度に達するまで進めてもよい。栄養剤の目標量は,患者のエネルギー所要量を栄養剤のkcal/mLで除した値である(例,1日当たりのエネルギー所要量が2400kcalで,1kcal/mLの栄養剤の場合,2400mL/日,または持続投与であれば100mL/時)。患者が経腸栄養剤に耐えられない可能性がある(例,腹部不快感,腹部膨満,または下痢を発症する)ことを医師が懸念する場合は,幽門後ルートで投与を低速で開始し,ゆっくりと進めてもよい。空腸栄養の最大速度は典型的には125mL/時である;ただし,患者によってはこれより速度を上げても耐えられる場合がある。

ボーラス投与は典型的には目標量の半分から開始し,その後は目標量および回数に達するまでボーラス投与を続ける。

必要水分量を満たすために,経腸栄養のアクセスデバイスからシリンジで追加水を注入する必要がある。栄養剤のカロリー密度は1.0~2.0kcal/mLである;濃度が上昇するにつれて,kcal当たりの水分含有量が減少する。医師は患者の必要水分量を計算し(経腸栄養での一般的な方法は,投与kcal当たり1mLの水を追加することである),栄養剤で投与される水分量(製造業者からの製品情報から入手)を引き,残りの水分量を1日4~6回に分けて注入すべきである。空腸アクセスを有する患者は,大量の水の注入(例,150~200mLを超える)に耐えられない可能性があり,水分補給のニーズを満たすために,少量をより頻回に注入する必要がありうる。チューブの開存性を維持するために,最低でも4時間毎に30mLの水のフラッシュが推奨される。薬剤とともに投与される水も,患者への総投与量に加えるべきである。入院している患者では,特に体液喪失(例,嘔吐,下痢,発汗,または発熱による)が正常量を超えている場合には,輸液を用いて欠乏した水分を補うことができる。

経腸栄養の合併症

経腸栄養の合併症はよくみられ,中には重篤となりうるものもある(の表を参照)。

表&コラム
表&コラム

要点

  • 消化管は機能しているものの,経口摂取できないまたはしたがらないため経口では十分な栄養素を摂取できない患者では,経腸栄養を考慮する。

  • 経管栄養が4~6週間を超えると予測される場合,内視鏡的,外科的,もしくはX線透視下に留置する胃瘻チューブまたは空腸瘻チューブを考慮する。

  • 多種類型栄養剤が最も一般的に用いられ,通常は投与が最も容易な栄養剤である。

  • 院内誤嚥性肺炎の発生を最小限に抑え,重力で胃排出が促進されるようにするため,経管栄養中とその後の1~2時間は患者を30~45度の座位に保つ。

  • 経管栄養の合併症(例,チューブ関連,栄養剤関連,誤嚥)がないか,定期的に患者を確認する。

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